えくぼ

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日々の「ねぐら」はバス

2015-03-05 09:03:52 | 歌う

             ~ 日々の「ねぐら」はバス ~

♠ 新宿の都庁の地下のガレージが寝室だなんて住居なき人の  松井多絵子

 朝日歌壇にホームレス歌人・公田耕一が現れたのは2008年12月、そして翌年7月を最後にこの欄から消えた。4年後の冬に第2のホームレス歌人・宇堂健吉、に続き第3の歌人・坪内政夫が登場。しかし公田耕一の時のようには読者に注目されない。ホームレスらしき人をあまり見かけないためか。3月3日の朝日朝刊に次のような記事があった。

 IT企業の活況に沸く米シリコンバレーを24時間走る路線バスがある。「ルート22」。ホームレスが夜を明かすための「ホテル22」とも呼ばれる。シリコンバレーを北へ約40キロ走る。料金は一律2ドル(240円) バスの乗客のホームレス・67歳男性は「毎晩2往復、そのうちに夜が明ける」と。バスはアップル、米ヤフー、グーグルなど有名企業の城下町を抜けていく。時折仕事を終えた人たちも乗り込んでくる。

 シリコンバレーは技術革新や経済活動で全米をリードする一方、激しい所得格差を生んだ。IT企業で働く富裕層が急増して住宅不足になり、家賃が急騰している。アメリカの光と陰を伝えるこの記事を、公田さん、宇堂さん、坪内さん。お読みになりましたか。2月23日の朝日歌壇に、ホームレス歌人NO3が第三席に。選出したのは永田和宏。

❤ 割高の深夜労働願い出て長靴の水ぬくもりくる暁 (ホームレス) 坪内政夫

 稼ぐためには真冬の深夜の肉体労働をいとわない、坪内さんはいずれホームレスを卒業
するのではないか。朝日歌壇は採用率が2%とか。ホームレスでも選者に作品が認められなければ入選しないらしい。 <長靴の水がぬくもる> のは長時間働いていたからだろう。さりげなく詠みながら実感がともなっている。読者に響く1首だ。

         この冬の東京には雪が降らず私の長靴は眠っています。

                           3月5日  松井多絵子