えくぼ

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後藤由紀恵の「あおき時間」

2013-06-12 14:05:00 | 歌う

         ~後藤由紀恵の「あおき時間」~

 6月11日朝日夕刊の<あるきだす言葉たち>は後藤由紀恵の「百年先も」。その作者について
調べてみました。

後藤由紀恵 1975年愛知県生まれ。2003年角川短歌賞次席。第一歌集『冷えてゆく耳』で
さいたま市が主宰する現代短歌賞第6回の受賞者となる。「まひる野」所属。「まひる野」はつねに
生活実感を尊重し詩としての豊かな表現を希求する短歌の集団。代表は篠弘。

       「百年先も」  ~あるきだす言葉たち~より

★雨後の夜のあおき時間にだれを呼ぶ浜をゆきかう声の数々
                                 後藤由紀恵

 この一首のキー・ワード「あおき時間」について考えてみたい。「あお」は辞書には青、蒼、藍、碧などいくつもの「あお」がある。初夏の作品として読むとき、青、藍、碧がふさわしいのではないか。
「青」は青年、青空、青葉、青海など若々しく明るいイメージ。藍も紺も碧も若々しいが蒼は蒼白などマイナスのイメージになりやすい。「あおき時間」は様々なひとときである。下句の「浜をゆきかう声の数々」から私は青海をおもい、若き日の海辺での語らいをおもう。そろそろ中年になる作者が遠ざかってゆく青春を回想する、初夏の雨上がりの夜、いいですね。青春がまだ追いかけられる距離、疾走すれば戻れる距離だなんて。 6月12日 松井多絵子