「朝日歌壇6月9日」
<高野選>
★現在(いま)ならば出生前検査ではじかれる病とつきあいわたしを生きる
(東京都) 太田有喜子
※重い歌である。安全な出産のため赤ちゃんの発育状況を確認する検査<エコー>はいつから始まったのだろう。最近では染色体の状態まで推測可能になり両親が深刻に悩む場合が増えているらしい。もし自分が胎児だったときにこの検査をされていたら、生まれることはなかったのではないか。病と闘いながら生きなければならない。作者の苦しみが読者に伝わってくる。
太田さん、医学は進んでいます。希望を持って生きてください。
<高野選>
★子宝の願掛け札をいまだ持つ失意の日々も我の日々なり
(姫路市) 岩下 玲子
※子供がぜひ欲しかったのに授からなかった。もう妊娠は不可能は歳になってしまったのだろうか作者は。しかし願掛け札はまだ大切にしている。女の切ない歌である。今週の高野選者は一席も二席も辛い女の歌である。「どちらの歌も、詠んで励まされる思いを持つ人がいるだろう」という評
▲入りゆく産婦人科Sクリニックここは鍾乳洞ではないか
松井多絵子歌集『えくぼ』より