えくぼ

ごいっしょにおしゃべりしましょう。

紅バラは紅バラの木に

2013-06-11 13:45:29 | 歌う

           「紅バラは紅バラの木に」

★怖いこと言ってくれるな紅バラは紅バラの木にしか咲かないなんて
                            松井多絵子歌集『えくぼ』より

 いつのまにか私の歌友だちが少なくなっている。何人かはこの世を去ったが、短歌をやめた人のほうが多い。「私には才能がないから」という理由がほとんど。バラの咲く頃になると思い出すK子のあの言葉を。「紅バラは紅バラの木にしか咲かない」、だから短歌をやめると言い、6年前にやめてしまった。バイオが発達しても当分は紅バラはゴムの木に咲かないだろう。バラの花は才女を思わせる。紅バラは際立ってうつくしい。一輪で部屋のムードを変えてしまう。

★シルバーのスプーンを磨きいて淋し才能とうは天つ賜物
                            歌集『えくぼ』より

 B子は某歌会に入ってまもなく会のリーダーから「あなたは才能がある」と言われた。うれしくて、でも誰にも言わずリーダーの歌人の言葉をお守りのように大切にしていた。ところが新年歌会の二次会で会員たちとビールを飲んでいたときに、C子もD子もE子もリーダーから同じ「お言葉」を頂いたことを知った。「なあーんだ、アナタたちも」「ヤル気にさせるために皆さん言われてるわ」

 それにしても「才能」って何なんだろう。一粒の宝石は大きな原石を削り磨いて、それでもない場合もあるらしい。やってみないとわからない。「あの人がこの歌を?」というサプライズはいくらでもある。お隣の庭に黄色いバラが咲きだした。園芸がお好きな夫妻が真冬も手入れしていたバラを、何もしなかった私が我が家の居間から眺めている。
             6月11日  霧雨の昼  松井多絵子