ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

Monk's Mood Ⅳ

2010-05-01 03:27:28 | Weblog
何十年も前、モンクのピアノを間近で聞いたとき、なによりも感じたのはその音色の美しさだった。ペダルも完璧で全く音が濁らない。ピアノという楽器はとにかく大胆な音量の強弱がつけられるようになっている。だから本名がピアノフォルテだ。初期のころはフォルテピアノと言っていたらしい。とにかくそれまでの弦をひっかく構造のものより圧倒的に大きな音がでたのだろう。その後楽器の音の質も上がり、いろんなピアノ技術者のおかげでピアノという楽器の良い音というのが世界の人に認知されるようになった。ピアニストはみんな良い音を出そうと長いあいだ努力を重ねる。でも良い音といっても感じ方には個人差があるし、実はとても抽象的なものだ。それでもやはり長い歴史の中で一定のレヴェルのピアノを弾く技術というのは暗黙の了解があるし、音色に関してもある程度の合意はある。そこでどんな音が良い音かというと、倍音が少なめの音、・・・こんな言い方でいいのか?やはりそのほうが澄み切って聞こえる。で、そのためにはどうすればよいか?小さい音を出すのだ。力まないというのは何にも共通することで当然のことだけど、音量は小さめの方が音質は良く聞こえる。録音の時もそうだ。ピアノの前に座るとみんなアドレナリンが出て力を入れてしまう。ライブでまわりにドラムやベースがいるとなおさらだ。そこで力を抜くというのはやはり身についた技術と経験だ。これはシングルトーンのことを言っているのだけど、同時に6つも7つも音を押さえるときはなおさらだ。人間の指は親指やひとさし指が力が強い。でもそのままその力で鍵盤を押さえるとコードの真ん中の方の音量が上がってしまってバランスの悪いサウンドになる。右手も左手も小指のほうが強めの音を出さないといい和音にならない。ピアノをいい音色で弾くというのはとても大事な技術だ。そして気持ちをコントロールして小さめの音量で弾くのも勇気がいる。でも結果としてよいサウンドと説得力のあるメロディーが発信できる。


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