ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

O Grande Amor Ⅲ

2014-07-20 04:13:54 | Weblog
この曲はA-B-A-Cの形式だ。Bの部分は平行調のⅡ-Ⅴで始まる。で、そのあと当然Ⅰにいくわけだけど、ジョビンとジルベルトのアルバムではⅠ7、ドミナント7THのコードになっている。これが2小節続き、そのあと全音下がってⅦ♭7がまた2小節。このコードが一応オリジナルといえるのだろうか。このアルバムで吹いてたゲッツは自身のアルバムではこの部分をⅠM7-ⅣM7にしている。どちらがどうのという判定はできない。ただジルベルトの意図は「ブルージー」だ。ボサノヴァサウンドはモダンジャズの影響を受けまたジャズに逆に影響を与えるぐらいジャズサウンドと考えかたが近い。ここの部分のメロディーラインをシビアにチェックすると、確かにドミナント7THのコードのほうが合っている。でもM7にしても歌は歌えるしこっちの方がいいという人もいるだろう。その時、その時で選べばいい問題だと思う。音楽的にはこの部分の7Thの音はブルーノートだ。その前後の和声の動きと合わせて全体を見てみるとボサノヴァがブラジル音楽でありながらいかに多国籍であるかが分かる。20世紀以降の音楽に出所の単純なものはない。みんないろんな文化が混じりあっている。その混じり合いかたは年を追うごとに複雑になり、分析するのが大変だ。でもそれが今の地球なのだ。


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