ジャズピアニストのジャズ批評

プロの耳で聞いたジャズをミュージシャン流に批評。

Songs

2007-10-02 23:54:45 | Weblog
ブラッドメルドーのトリオ作品、Volume3だ。メルドーのピアノはもちろんサイドメンの技術や録音状態、選曲も一流。完成されたジャズアルバムだ。「アルバム」という考え方は多分LP時代に定着してきたんだろうけど、与えられた1時間弱の時間の中に自分の音楽をなんらかの形で表現するというのは、リーダーにとっては大変なことではあるけど、やりがいのあることでもある。LP以前の時代は時間が短いからレコーディングの意味合いも多少違っていた。そしてCD時代になって今度は長くなりすぎた。リスナーはアルバムを通して聞くのではなく、一曲づつ取り出して聞くからだと業界の人は言う。だから曲数も多くなりがちだし、一枚の中にいろんなものを詰め込まざるをえなくなった。特にポップなボーカルアルバムの制作は大変だ。録音もその前後の作業もものすごい手間と費用がかかるようになった。それにここ数年はCDという現物なしに一曲づつ売るという手段も念頭にいれなければいけなくなった。その点ジャズアルバムは今や一枚を通して音楽を楽しむ、そしてそれを念頭に制作できるという一種の聖域だ。メルドーの作品はそういう時代の流れをうまく利用して彼の音楽を世界中に配信している。もちろんそれには厳しい観賞に耐えうる音楽のレベルの高さが不可欠だけど・・・。まあでも業界全体から見たらジャズアルバムの売り上げというのはほんの数パーセントだ。だからメルドーのような立場でアルバムを作れる人というのはほんとに限られた人材だ。それでいいのかもしれない。ジャズという音楽の音楽業界全体の中での役割も世代によって感じ方が全然違う。多分これからも変わっていくんだろう。でもあんまり早いスピードで変わられてもなあ・・・。ついていけない。


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