この曲の最初の段落の旋律はペンタトニック、5音音階でできている。ペンタトニックは種類に分けると全音階的なもの、ベロッグ、平調子、雲井・・・、などがある。この曲に使われているのは、全音階的なものだ。全音階的ペンタトニックも「旋法」というふうに区分けすると5種類あることになる。平たく言えば5種類のスタート地点があるからだ。全音階的ペンタトニックは半音を欠いているので、このシステムの中で和声を組み立てるとかなり限定的なものしか得られない。なので旋律と和声の両方にペンタトニックを使って楽曲を組み立てることは困難な面がある。必然的にコードは7音的、半音階的なものになる。でもこういう解説はこのガーシュウィンの曲にはあまりあてはまらないと思う。いろんな音のシステムを組み合わせて楽曲を創作するというのは、現代の作曲家の手法であり、それを否定するものではないが、ガーシュウィンの発想は一味違うのだ。これは逆にガーシュウィン自身の劣等感につながっていたものと深いつながりがある可能性がある。彼は楽曲の組み立ての順序が独特で要するにペンタトニックは結果的なペンタトニックなのだ。この曲はオペラの中の一曲だ。オペラを作曲しようとするととてつもない仕事量をこなさなければならない。それと同時に幅広い音楽教養が不可欠だ。天然の才能だけではどうにもならない。でもその一種追いつめられた状況の中でこそ作曲家の本当の表情が垣間見える。この曲は名曲で単体としてももちろん素晴らしいが、「Porgy And Bess」というガーシュウィンワールドの中での存在感はまた格別だ。
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