世界の街角

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ワット・シーコムカム付属文化展示センター訪問記・#3

2015-11-10 10:07:40 | 博物館・タイ
<続き>

 
やや残念なことに所謂「パヤオ陶磁」の展示は少なかったが、「パーン陶磁」の展示があり、それは前回紹介した。
カロンや思いがけなくもランパーン(Ban Tao Hai)陶磁も展示されていたので、今回はそれを紹介する。
(カロン鉄絵霊鳥獣文大瓶 15-16世紀)
写真はカロン陶磁の中でも著名な高さ80cmを越える瓶である。これがワット・シーコムカム付属文化展示センター所蔵であることを初めて知った。聖なる動物が力強い筆致で描かれ、何やら躍動感を感じる。残念なのは口縁の4分の1が欠けている点である。日本で云えば重文クラスである。
(カロン青磁高坏 15-16世紀)
カロンと云えば鉄絵陶磁、白、緑釉陶磁が著名であるが、青磁も他窯に負けず劣らず優れている。写真の高坏は類例をあまり見ない程、脚部や畳付の径が大きく、中形品であるもののどっしりとした姿形をしている。
(カロン青磁仏座像 15-16世紀)

(カロン青磁蓋付壺 15-16世紀)
周囲はカロンの青磁小物群である。

以下思いがけずランパーンのBan Tao Hai窯陶磁を目にすることになった。過日ランパーンのワット・チェディーサオラーンでも見ることができなかったもので、多少大袈裟ではあるが感動した。
(Ban Tao Hai窯 黒褐釉二重口縁大壺 高さ70-80cm 15-16世紀)
びっくり仰天である。高さ80cmもあろう程の二重口縁壺である。もはやハニージャーの領域を越えていると思われる。発酵食品でも貯蔵したのであろうか?
(Ban Tao Hai窯 黒褐釉二重口縁壺 15-16世紀)

(Ban Tao Hai窯 小物類 15-16世紀)


 「ランパーン陶磁」の特徴は、チェンマイのサンサーイ窯と同様に黒褐釉にある。過日ランパーンのワット・チェディーサオラーン付属博物館を訪れた際、満足のいく展示物はなく、僅かの壺類と瘤牛の肖形物を見たに過ぎず、モヤモヤが残っていたが、ここワット・シーコムカム付属文化展示センターでそれが吹っ飛んだ。二重口縁壺の用途の再検討が必要であろう。尚、Ban Tao Haiは一般名詞であるが、現実にBan Tao Hai村が存在し、その古窯址も「ランパーン窯」の一つであることから、Ban Tao Hai窯と表記した。

                             <続く>

<予告>

 次回は、パヤオで出土した中国・明染付、さらにはクワン・パヤオ(パヤオ湖)で棲息する淡水魚(これらがパヤオ印花魚文のモチーフになったと思われる)を紹介する。