世界の街角

旅先の街角や博物館、美術館での印象や感じたことを紹介します。

最近見たオークション出品の東南アジア古陶磁・#44

2022-12-16 09:27:14 | サンカンペーン陶磁

過日、ネットオークションに出品されていたサンカンペーン陶磁である。落札されたかどうかは未確認。

最終的には手にとって見なければ分からない点もあるが、後絵と思われる。器胎は本物である。

鉄絵の描線に絵の具の濃淡や滲みカスレが全くない。よほど純度の高い鉄絵顔料を用いたものとみられる。そのせいか、描線上のガラス質は弾かれている。それとも後絵のみで、その後の釉薬掛けは省略したのか?いずれにしても、この手の後絵らしき盤は初見である。

本歌の可能性もあるかと存ずるが、過去300点以上みている眼には、本歌の可能性は低いようだ。

<了>


チェンライ・ドイチェディの古代遺跡発掘調査

2021-12-08 08:59:59 | サンカンペーン陶磁

〇チェンラーイ・ドイチェディの古代遺跡発掘調査

前回に続きタイ芸術局第7支所のSNS情報の要約である。

チェンラーイ・ドイチェデイーの発掘場所は、宗教的な場所と居住地である。丘の上のエリアは宗教的な場所である。丘の頂上と丘の真ん中にある神聖な場所であることに加えて、周辺が見える場所でもあった。平坦なエリアは、コミュニティまたは住居である。これは、タイ陸軍第37軍管区キャンプの連隊の建物の前の芝生で、タバコのパイプ土製品などの考古学的証拠を発見した。

(発掘現場はチェンラーイ市街の西郊の第37軍管区連隊キャンプ内)

陶器製のそれらは、ランナーの地場製品と中国の窯の両方からのものである。天然水源に近い地域もある(当該ブロガー注:多分チェンマイ県ファーン郡から流れてくるコック川のこと?)。青磁の容器には、ワンヌア窯の蓋、瓶、ランタン、パーン窯やカロン窯の瓶等も出土した。その地域に住んでいる人が、おそらく地位の高い人や経済的に富のある人であったろう。なぜなら庶民は一般的な土器を使うからである。 第37軍管区内で見つかった遺跡のほとんどは、レンガで造られていた。1つを除いてラテライトが使われていた。調査の結果、バン・パオドンチャイ(当該ブロガーには場所がわからないのだが)でラテライトの切断現場が見つかった。

キャンプ内の調査と発掘で見つかった陶器類とWiang KaLong窯の両方の陶器、ドイチェディの古代遺跡で発見されたと言われる仏像の年代は、仏暦20世紀後半から仏暦21世紀の仏教時代の芸術形態を比較することで判断できる。これには、ドイチェディ遺跡の発掘によるレンガの科学的時代も含まれる。熱蛍光(TL)法によると、年代の値は仏暦21世紀であった。

得られた情報によれば、第37軍管区のキャンプエリアだけでなく、現在のチェンラーイ市エリアが少なくともメンライ王朝以来建てられたチェンラーイの古代都市の一部である。

仏暦20ー21世紀とあるので、西暦15-16世紀の遺跡と思われる。ドイ・チェディーとあるからにはチェンディーが建立されていたであろう。

(発掘前)

(発掘中)

(現れた仏塔(チェディー)基壇)

(出土したタイ北部窯陶片)

第7支所の積極的な情報発信で、数々の考古学的知見が増えて来た。チェンラーイの情報も其れなりになってきた。次回訪泰時にはチェンラーイにも足を伸ばす必要がありそうだ。

<了>


最近みたオークション出品の東南アジア古陶磁・#17

2020-05-08 08:21:46 | サンカンペーン陶磁

過日みたサンカンペーン古陶磁2題。最初は出品名『タイ北部 サンカンペン黒褐釉水注』である。

落札額は29000円とのこと。1万B(バーツ)以下であり、買い物であろう。これは本歌(本物)で、釉薬の調子からチェンマイ北郊のサンサーイ古窯の可能性が高いが、現物を手にとって見ない限り断言できない。

2点目は『16世紀タイ焼カロン窯黒釉双魚文大盤』で出品されていた。

一見、変哲はなさそうだが後絵の盤である。しかも簡単にそうとは分からないように細工されており悪質である。

鉄絵描線の上は、それとなくカセたように白濁しているが、これは薬品による表面処理と思われる。

この盤が何故後絵なのか、以下箇条書きで説明する。

1.外側面の刷毛掛けによる釉薬の痕跡、釉層が薄く長年の土中でカセて光沢など微塵もない。それに対し盤内面は昨日焼き上げたような光沢で、本歌ならあり得ないコントラストである。

2.その内面の釉薬に貫入はなく、従って長年の土中に埋まっていた証拠である、貫入の土銹を見ない。つまり低火度の化学的釉薬と絵具が用いられている。

3.鉄絵具の発色が黒褐色ではなく、黒く且つ濃淡がない。これは低火度絵具の特徴である。

落札価格は30900円とのこと。阿保くさ。冷静に写真をみていれば、或る程度は判断可能です。それにしても久しぶりに狡猾とも云える後絵の盤であった。

<了>

 


続・サンカンペーン陶磁の蛍光X線分析・その5

2019-02-12 08:19:44 | サンカンペーン陶磁

第1回目と今回の胎土分析の結果である。Dataの互換性がないので、第1回目のAt%を今回のMass%に換算した。

資料2とSam-3は同じ双魚文である。胎土成分比はなんとなく類似性ありそうだ。

Wch-03は草花文盤片であるが、この1点が外れている。その理由は不詳である。それ以外は完品を含めて強い相関(i=0.712)を示している。それが示すのは、胎土は年代差を越え、各窯共に同じ場所から採取していた可能性である。サンカンペーンの窯址を訪問された方なら気が付いておられるであるが、彼の地は赤土地帯である。その成分比は大同小異の可能性がある。フェイパヨーム窯の陶片素地分析を行なえば、上述のことがハッキリするが、これ以上分析する動機に欠ける。

印花双魚文盤を分析したいと考えるが、パヤオ窯の資料が3点しかなく、資料数が大幅に足りない。

以上、5回にわたり連載したが、今回と2年前の分析で判明したことは・・・

1.鉄絵顔料の組成分析結果は、バラツキが大きく、焼成窯の特徴を抽出できなかった。つまり、鉄絵顔料の分析では、ワット・チェンセーン窯を特定できない。

2.胎土の組成分析でも焼成窯の特定はできなかった。しかし、サンカンペーン窯群全体の特徴らしきものは掴めた。ただしサンカンペーン・ジャンパーボーン窯、サンカンペーン・トンジョーク窯やパヤオ窯等との比較はできていないとの前提である。

<了>

 

 

 

 

 

 

 

 


続・サンカンペーン陶磁の蛍光X線分析・その4

2019-02-11 08:28:34 | サンカンペーン陶磁

先ず、今回測定した生Dataを再掲する。測定値はMass(質量)%である。

2年前に第1回の蛍光X線分析を行なっている。それは鉄絵麒麟文陶片1点と完品4点で行った。この時の測定値はAt%であった。今回のDataと比較するには換算が必要である。換算するには周期表からMol質量を明らかにしてWt%を求める必要がある。

資料1の事例を上の表に掲げておく。そこで重量(Wt)%と質量(Mass)%の関係であるが、地球上であればWt%=Mass%の関係になる。そのようにして求めた資料1から資料5のDataが下表である。尚、資料2は焦点ボケで正確なDataを得られなかったので削除している。

さて換算した第1回測定値と今回のData比較である。先ず鉄絵顔料Dataを比較検討する。

鉄絵顔料については、表採陶片間でも組成の特徴バラツキが大きく、それらに第1回分の資料や今回の2点の完品資料を追加すると、そのバラツキは更に拡大する。確かなことは、いずれの資料も低温焼成顔料であるSnとPbが検出されていないことである。バラツキの話に戻すが、このようなバラツキは年代間隔が広いためと考えられる。表採陶片は掘り下げたわけではないので、せいぜい10-20年程度の年代差であろう。してみれば、顔料調達先の変化などが考えられるが、これ以上の分析は不可能であると同時に、鉄絵顔料分析のみで具体的な焼成窯の特定は無理がある。

資料3とSam-2は同一画工の手によるものと思われる。少なくとも外見上の筆致が似ている。しかし組成分析の結果は、必ずしも類似性はなさそうだ。焼成年代のズレか鉄絵顔料の調達先が変化したのか、調合時のズレか・・・これらを語る資料を持たない。

次回は胎土について、第1回測定Dataを換算したので、それについて紹介するが、それなりのDataが得られたと考えている。

<続く>