東南アジア、中でも中世のタイ古陶磁についての当該ブログは、それなりの方々の目に触れているのではないかと自負していたが、そうでもなさそうである。
過日、ネットオークションを見ていると、怪しげなタイ古陶磁が出品されており、それなりの価格で入札されている。締め切り時間直前の価格は、阿保くさくて見ていないが、途中の経過は確認している。その期間中に当該記事をUP DATEすれば、参考になっったであろうが、商売の邪魔をしてもと思い、締め切りが終了した今般敢て記事にした。今後、このような被害者を出さないよう祈りたい。尚、当該ブロガーの指摘が外れている場合も考えられるので、怪しいとの表現にとどめている。
先ずサンカンペーン鉄絵双魚文盤である。この盤は真贋判定が非常に難しい事例として取り上げた。
一見すると何の矛盾もなく、本歌のように見える。鉄絵には濃淡や染付でダミとよぶ焦げ付きのような発色も見え、少なくとも低温の化学顔料ではなさそうである。また赤土の土銹もみられ、発掘品であることを伺わせている。外側面は無釉で、高台幅は極端に狭い。この特徴はサンカンペーンそのもので、何ら矛盾はない。この盤を見て、多少疑問に思うのは、中と外の際立つコントラストである。外側面が無釉の盤は多くはないものの、ときどき見かける。その外側面に対し、内面の釉薬の肌荒れが少ないように感ずる。
サンカンペーンに限らず北タイ陶磁は、日本渡来の伝世品は別として、全てが発掘品である。タイ王国の多くは赤土地帯であり、発掘された陶磁は多かれ少なかれ、必ず土銹をみる。それが一つの真贋判定ポイントとなるが、土銹があるからといって本歌とは限らない。何となれば狡猾な贋作者は焼成後10年山中に埋めて土銹をつけることを厭わない。そのような高度な技術をもつ贋作者の手と思われなくもない。しかし器胎は本物である。つまり後絵のように見える点が引っかかる。最終的には実物を見なければ、判断できない一つの事例である。この盤の話はこれで終わりにしておく。
これは、上のサンカンペーン鉄絵双魚文盤と同じ出品者である。これは土銹や肌荒れ云々の前の段階である。魚文や水草の描線が整いすぎて一気呵成に描き上げた、数物の筆致ではなく、鉄彩に濃淡もない。それ以外の指摘は必要なかろう。限りなく怪しい盤である。
タイ・サンカンペーン褐釉魚花刻文碗14-15世紀として出品されており、締め切り前13時間の時点で10,584円の入札額となっていた。サンカンペーンの碗は少ない、高台が高く畳付き幅が写真のように広いものは、サンカンペーンには存在しない。サンカンペーンに刻文は存在するが、その数は極めて少なく、しかも魚文の刻文を見た経験はない。限りなく怪しい。
写真の掲載は控えるが、同じ出品者から・・・
〇タイ・サワカローク鉄絵魚文鉢14-15世紀 締め切り残14時間の時点で入札額9,990円
〇タイ・カロン鉄絵平碗15-16世紀 締め切り残14時間の時点で入札額9,990円
いずれも今できで描線に濃淡のない、黒々とした化学顔料の鉄絵に見え、限りなく怪しい品である。このような品に約1万円を投ずるのは、どうかと?感ずる次第である。落札者の方々、一度当該ブログを見て頂くことを念じたい。