世界の街角

旅先の街角や博物館、美術館での印象や感じたことを紹介します。

シンガポール・アジア文明博物館#5

2018-05-31 09:10:38 | 博物館・シンガポール

<続き>

中国陶磁の愛好家でもないので、申し訳ないが大幅に中抜きして、いわゆる呉須赤絵として名高い漳州窯陶磁まで飛ぶことをお許し願いたい。欧米では船積み地である汕頭を冠して、スワトウ・ウエアとして名が知られている。以下の陶磁は全て漳州窯陶磁で時代は16-17世紀であるが、それなりの点数が展示されていたので、2回に分割して紹介する。

これは日本で知られている、見込みに”魁”を描きこんだ呉須赤絵の碗である。

これは呉須赤絵ではなく青呉須。以下、いわゆる芙蓉手とよぶ呉須手の大盤を紹介する。

以下、盤ではないが碗を一点。

以下、餅花手を4点。

いずれも優品揃いで見応え十分である。次回も漳州窯陶磁を紹介する。

<続く>

 


シンガポール・アジア文明博物館#4

2018-05-30 09:08:31 | 博物館・シンガポール

<再開>

長らく中断していたが、今回より再開する。前回は鞏縣窯緑釉陶まで紹介して来た。それ以降について年代順に紹介したい。

左:青磁水注 岳窯(岳州窯) 9世紀 湖南省長沙付近

中:青磁唾壺(だこ) 岳窯 9世紀

右:青磁水注 邢窯 (邢州窯) 9世紀

奥左:青磁碗 岳窯 9世紀

奥右:白磁劃花葉文鉢 邢窯 9世紀

手前左:青磁鉢 邢窯 9世紀

手前中:白磁鉢 邢窯 9世紀

手前右:白磁鉢 岳窯 9世紀

左右:青磁鉢 梅縣窯または潮州窯 9世紀

耳付水注 梅縣窯ないしは潮州窯 9世紀

青磁花文透彫香炉 岳窯 9世紀

左:青磁刻花花文角皿 岳窯 9世紀

中:青磁リブ付鍔縁盤 岳窯 9世紀

右:青磁蓋合子 岳窯 9世紀

青磁双魚壺 岳窯 9世紀

褐釉魚肖形 湖南省産 9世紀

9世紀の焼物を中心に紹介した。当該博物館は中国陶磁の宝庫である。

<続く>

 


改装なったチェンマイ国立博物館#12

2018-05-29 09:01:58 | 博物館・タイ

<最終回>

以下紹介するのは、改装前後で同じだが、案内プレートは改修されていた。前庭に移設されたワンヌア窯とパーン・ポンデーン窯を紹介して、一連のシリーズを終わりとする。

<ワンヌア窯>

ランパーン県ワンヌア郡に在った窯址をチェンマイ国立博物館前庭に移設。オリジナルは地下式の横焔式単室窯、いわゆる穴窯である。移設にあたって、前庭には地上に設置されたものである。煉瓦は使われず丘陵の斜面を掘って築窯された。したがって粘土窯である。

<パーン・ポンデーン窯>

窯はワンヌア窯と同じ横焔式単室窯であるが、こちらは煉瓦構築の地上式である。穴窯の最進化形で時代は16-17世紀まで下る。パーン・ポンデーン窯では精緻な青磁が焼成され、特に40cm近い大径の盤に優品が多い。

青磁焼成は多くの焼成技術を要した。特に窯の気密と強度が必要である。青磁は鉄分を含有した釉薬を還元焼成することにより得られる。この還元焼成が難しい。流入空気を制限して、窯内部を還元雰囲気にする必要がある、いわゆる窒息状態での焼成である。その還元焼成では必然的に窯の圧力が高くなる。冷却時には負圧状態となり、窯が膨らんだり縮んだりするので、窯壁が崩落し易くなる。最下段の写真を見て頂こう。その窯壁が二重になっている。この崩落対策、あるいは気密度向上対策以外の何物でもない。過去何も考えずにみていたが、パーンでは対策が行われていたのである。

<了>

 


改装なったチェンマイ国立博物館#11

2018-05-28 10:06:46 | 博物館・タイ

<続き>

今回は、ワット・プラシン伝来の仏足跡を紹介する。従来の展示は仏足跡がポツンと展示されていたが、改装後は説明パネルとともに展示されていた。

展示パネルの概要は以下の内容であった。仏足の上部は、五の爪先が均等に配置されている。そこには円形の渦巻き文が表されている。この渦巻き文についての説明はないが、一説によると太陽を示し、煩悩を焼き尽くす意味合いもあるとか・・・? 

仏足の中央は円圏で宇宙を表すコスモロジカル文様で、その周囲は108に区画され、それぞれ幸運をもたらす文様が描かれているとパネルは説明している。しかしパネルは108の区画については、108の煩悩とは説明していない。

下部には須弥山世界が描かれている。須弥山の無熱悩地(Anotatta湖)からは、四方に水が流れ出す。そして須弥山は7つの山と7つの海に囲まれ、その外周は山脈で囲まれていた。7つの海では睡蓮の間に水棲動物がおり、水中の豊かな世界観を示している。この仏足跡は宇宙の楽園風景である。下層は地球、海、その他で構成される人間の土地である。幸運を賛歌する仏足跡はランナーで最も人気があり、ラタナコーシン朝へと続いた。

またパネルによると、この仏足跡はランナーの15世紀に作られ、1794年に全面修復されたと記されている。螺鈿細工の漆塗りで立派なものであるが、螺鈿の魚などが欠落し、保存処理が必要であろう。幸いにも、この仏足跡の複製品が作られ、それは本家のワット・プラシンに展示されている。細部を確認するには、この仏足跡がよいであろう。下の2葉はワット・プラシンの復元仏足跡である。

こちらは剥落した螺鈿が復元されている。ランナーの統治に須弥山の世界観を取り入れ、ランナー王はその庇護と権威を持つとの姿を創り出したのであろうと思われる。

<続く>

 


改装なったチェンマイ国立博物館#10

2018-05-26 09:14:03 | 博物館・タイ

<続き>

タイ中世各地の美術様式の紹介として、造形物展示コーナーの品々を各美術様式別に紹介する。

◎ ロッブリー・アート

ヴィシュヴァカルマン 11世紀

ヴィシュヴァカルマンviśvakarman)は、インド神話においてあらゆるものを設計したといわれる神。その意味はサンスクリット語で「全てをなすもの」「全知であるもの」である。仏典では毘首羯摩天と漢訳されている。彼の娘サンジュニャーは太陽神スーリヤの妻。

 

ガネーシャ 11世紀

ガネーシャ 11世紀

仏陀頭部 砂岩 11-13世紀

菩薩頭部 砂岩 11-13世紀

◎ アユタヤ・アート

6.仏陀立像 施無畏印 ブロンズ 15-16世紀

7.仏陀立像 ブロンズ 17-18世紀

◎ スコータイ・アート

青磁象・騎乗人物像 15-16世紀 シーサッチャナーライ窯

褐釉象形瓶 15-16世紀 シーサッチャナーライ窯

鉄絵唐草文蓋付壺 15-16世紀 スコータイ窯

◎ ランナー・アート

仏陀座像 降魔印 15-16世紀

ミニチュア王座 ホート郡ワット・チェディースン出土 17世紀

ランナー王はこのような王座を用いたであろうことが、想像されるミニチュアである。

<続く>