まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

夜の街の敬語文化

2009-08-23 12:33:21 | 人間文化論
日本という国は、敬語文化がひじょうに発達した国です。
儒教思想など、上下関係を重んずる倫理が浸透していたからだと思いますが、
相手への敬意の有無によって動詞そのものや、動詞の語尾まで変わってしまうなんて、
日本語を外国語として学ぼうと思っている人には、厄介な言語なんだろうなと思います。

ところで私は学生時代、銀座や歌舞伎町でバイトしていました。
水商売を始めて最初に誰もが驚くのは、
出勤のときの挨拶です。
夜なのに「おはようございます」なんです。
すぐに慣れてしまいましたが、しばらくは違和感を覚えたものです。

なんでこんな時間なのに「おはよう」なんだろうとずっと疑問でしたが、
あるときいつもの挨拶の光景を見ながら、私の中に仮説がひらめきました。
そのときの様子はこんな感じでした。

出勤してきた店の女の子 「おはようございまーす
出迎える店のママ 「おはよう

そうなんです。上下関係なんです。敬語なんです。
これが、時間に合わせた正しいあいさつだったらどうなるでしょうか。

出勤してきた店の女の子 「こんばんはっ
出迎える店のママ 「こんばんは

これでは締まらないんです。
ママの威厳が失われるんです。
それではいけないのです。

「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」という3種類のあいさつの中で、
丁寧語の「ございます」を付けられるのは「おはよう」のみです。
「こんばんはでございます」なんていう言葉はありません。
「おはよう」だけが、「おはよう」と「おはようございます」の使い分けが可能なのです。
唯一、上下関係を表すことのできるあいさつ言葉だったから、
水商売の世界で広まったのではないか。
それが私の仮説です。

ところで私は福島に来て生まれて初めて、
「お晩でございます」という言葉に触れました。
忘れもしない、世界史のI先生が学部長をやっていた頃、
送別会のあいさつに立って開口一番、この言葉をおっしゃったのです。
私にとってその衝撃たるや、
夜の街の「おはようございます」なんてものじゃありませんでした。
ええっ、そんな丁寧語があったんだ。えっ、何? これって福島弁?
と度肝を抜かれて周りを見回しましたが、
みんな当たり前のような顔をして聞いていましたから、
横浜育ちの私だけがたまたま知らなかったということなのでしょうか。
皆さんは「お晩でございます」って聞いたことありますか?

「こんばんは」の丁寧語が実在するんだとしたら、
先の私の仮説は崩壊してしまいます。
「こんばんは」と「お晩でございます」のセットを使えばいい話なので、
わざわざ朝用のあいさつセットを持ち出す必要はありません。
つまり夜の街で「おはよう」を使うのは何か別の理由があるということになるでしょう。
それともやはりあれは福島の方言で、他の地域には存在しない言葉なのでしょうか。
だから関東圏では「おはよう」セットを使っているんでしょうか。
ひょっとして福島の夜の街では「こんばんは」セットであいさつしている?
妄想は広がりますが、やはり私はちょっとついていけないなあ、こんな世界↓。

出勤してきた店の女の子 「お晩でございます
出迎える店のママ 「こんばんは
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