まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

続けるという才能

2009-11-21 09:17:51 | ダンス・ダンス・ダンス
私、全東北学生競技ダンス連盟会長なんていう肩書きを持ってます。
会長といってもただの挨拶要員で、
年3回+α開催される大会のパンフレットに挨拶文を寄せ、
できる限り大会には出席して、来賓として挨拶するというのが役目です。
今日も仙台で秋大会が開催されており、
本来なら出席して挨拶するとともに、4年生の最後の試合ですので、
彼らの踊りの集大成を見届けてあげたいところですが、
あいにく日本カント協会の学会と重なってしまったため、
カント研究者としては学会を優先せざるをえません。
4年生の最後の踊りを見てあげられないというのは本当に残念ですが、
今頃はみんな死力を尽くして踊っていることでしょう。

さて、秋大会の挨拶文は例年、4年生への送る言葉になります。
挨拶文を書くのは毎年、毎試合のことなので、
そろそろネタにつまってきているのですが、
2年前の秋大会のときに書いた文章が、ことのほかいい内容だったので、
ここに再録いたします。
ダンスやってる人間だけでなく、
卒論執筆中のゼミ生その他、がんばってるみんなに当てはまる内容だと思っています。


               「続ける」という才能について  
 
                             全東北学生競技ダンス連盟会長 
                                     小野原 雅夫


 昔話をさせてください。私は学生時代、東京外国語大学の舞踏研究会 (今で言う競技ダンス部) に所属していました。外大の舞研は私たちの代の3~4年前に一度潰れかかっており、2年連続でリーダー (注:男子部員のこと) がひとりずつしか入部せず、今にも危ないという状態だったのだそうです。ただし、そのときの上の学年の先輩 (Aさん) は、試合で何度も優勝し、全日本チャンピオンにもなったことのあるラテンダンサーで、外大舞研の長い歴史の中でも最も輝かしい成績を収めた方でした。一方、その1コ下の先輩 (Bさん) は、ものすごい努力家でしたが、器用なほうではなく、1年の時から試合に出ては予選落ち (たいていは一発落ち) を繰り返していたそうです。そんな感じですからカップルも長続きせず、パートナー (注:女子部員のこと) も本当に誰もいなくなって、たったひとりで部活を支えていた時期もあったそうです。Aさんは自分の踊り以外のことにはまったく関心を示さないワンマンで、部活の運営その他はすべてBさんに任せっきりだったようです。Bさんはそれを苦に思うこともなく、A先輩がダンスに打ち込めるようにサポートし続け、サークル棟の移転問題に伴って部室をどう確保するかというダンス部存亡の危機に関わるような問題でもひとりで大学相手に交渉していたそうです。そして自分は黙々とシャドウ (注:カップルではなくひとりで踊ること) の練習を続けていたのです。
 さてこの話で、Aさんにダンスの才能があったというのは誰もが認めるところでしょう。たった4年間という短い学生ダンス生活の中で一度でも優勝できればそれだけですごいことですが、彼は一度のみならず、最後は全日本のチャンピオンにまで輝いてしまったのですから。当然、彼は4年の最後までダンスを続けることができました。おそらく彼にとって、ダンスを続けることになんの苦労もなかったでしょう。
 それに対してBさんはというと、Aさんを見送って4年生になってからもあいかわらず芽は出ないまま。それどころか必死になって彼が存続させたダンス部にようやく入り始めた後輩たちに、試合で負けてしまうなんていうこともしばしばでした。ちょうどそのとき1年生として入部した私たちは、そのBさんを見て「イタイな」 (当時そんな言葉はありませんでしたが) と思い、陰で噂をしたりもしていました。しかし、ある日そんな私たちに、当時3年生だった (Bさんに試合で勝ってしまう) C先輩がこんなことを言ってくれたのです。「B先輩はものすごいダンスの才能をもっているんだよ」。私たちにはそうは思えませんでした。納得いかない顔の私たちにC先輩はこう言いました。「続けられるってことが才能なんだ。もしもその才能がなかったら、Bさんはとっくにダンスなんてやめてたろうし、うちの舞研もなくなってたかもしれない。好きで好きで、どんなに思い通りの結果に恵まれなくても、それでも続けられるっていうのはそれだけで才能なんだよ」。
 B先輩は最後の引退試合で初めて準決勝まで勝ち残りました。それは最後まであきらめなかったBさんに、神様がくれたご褒美だったのかもしれません。でもそんなご褒美なんてもらわなくても、Bさんにダンスの才能があったことはもう明瞭でした。
 才能に溢れる4年生の皆さん、4年間、本当にお疲れさまでした。君たちのその才能は、これから社会に出たときにもきっと君たちを助けてくれるでしょう。自信をもち胸を張って、新たなフロアで新しいダンスを踊り続けていってください。


うーん、我ながら名文だっ

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