中日新聞の読者投稿欄に「勇気の厚意ありがとう」というタイトルで76歳の男性が投稿されていました。
日課の囲碁を打ち終えて地下鉄に乗ったら、学生らしき女性がはにかみながら席を譲ろうとしてくれた。
私は一駅だけの乗車予定だったので遠慮した。
立ち上がりかけた腰を恥ずかしそうに再び下ろそうとする女性を見て、故・吉野弘さんの詩「夕焼け」を思い出した。
この詩は車内で3度にわたり老人が前に立ち、その都度席を譲るべきかどうか悩んだ心優しき娘を詠んだものだ。
満員の車内でつり革につかまらざるを得ない私を思い、女性は危なかっかしさを覚えたのだろう。
勇気をだして席を譲ろうとした女性を思うと、申し訳なさと後悔の念にさいなまれた。
下車時、思い切って「ありがとうございました。好意を無にしてしまってごめんなさい」と言った。
すると女性はうれしそうに「いいえ」とほほ笑みを返してくれた。
この先、いかなる他人の厚意も素直に受け入れるようにしよう。
そう誓った。
以上です。
私も吉野弘さんの詩「夕焼け」をブログに書いたことがあります。
この投稿者さんのように、「夕焼け」の詩を思い出し、他人の厚意を素直に受け入れたいと思いました。
せっかくの好意を無にしたくないです。
吉野弘さんの詩「夕焼け」
いつものことだが
電車は満員だった。
そして
いつものことだが
若者と娘が腰をおろし
としよりが立っていた。
うつむいていた娘が立って
としよりに席をゆずった。
そそくさととしよりが坐った。
礼も言わずにとしよりは次の駅で降りた。
娘は坐った。
別のとしよりが娘の前に
横あいから押されてきた。
娘はうつむいた。
しかし
又立って
席を
そのとしよりにゆずった。
としよりは次の駅で礼を言って降りた。
娘は坐った。
二度あることは と言う通り
別のとしよりが娘の前に
押し出された。
可哀想に。
娘はうつむいて
そして今度は席を立たなかった。
次の駅も
次の駅も
下唇をギュッと噛んで
身体をこわばらせて---。
僕は電車を降りた。
固くなってうつむいて
娘はどこまで行ったろう。
やさしい心の持主は
いつでもどこでも
われにもあらず受難者となる。
何故って
やさしい心の持主は
他人のつらさを自分のつらさのように
感じるから。
やさしい心に責められながら
娘はどこまでゆけるだろう。
下唇を噛んで
つらい気持ちで
美しい夕焼けも見ないで。
映画「カサブランカ」から時の過ぎ行くままに As Time Goes by from "Casabanca"
日課の囲碁を打ち終えて地下鉄に乗ったら、学生らしき女性がはにかみながら席を譲ろうとしてくれた。
私は一駅だけの乗車予定だったので遠慮した。
立ち上がりかけた腰を恥ずかしそうに再び下ろそうとする女性を見て、故・吉野弘さんの詩「夕焼け」を思い出した。
この詩は車内で3度にわたり老人が前に立ち、その都度席を譲るべきかどうか悩んだ心優しき娘を詠んだものだ。
満員の車内でつり革につかまらざるを得ない私を思い、女性は危なかっかしさを覚えたのだろう。
勇気をだして席を譲ろうとした女性を思うと、申し訳なさと後悔の念にさいなまれた。
下車時、思い切って「ありがとうございました。好意を無にしてしまってごめんなさい」と言った。
すると女性はうれしそうに「いいえ」とほほ笑みを返してくれた。
この先、いかなる他人の厚意も素直に受け入れるようにしよう。
そう誓った。
以上です。
私も吉野弘さんの詩「夕焼け」をブログに書いたことがあります。
この投稿者さんのように、「夕焼け」の詩を思い出し、他人の厚意を素直に受け入れたいと思いました。
せっかくの好意を無にしたくないです。
吉野弘さんの詩「夕焼け」
いつものことだが
電車は満員だった。
そして
いつものことだが
若者と娘が腰をおろし
としよりが立っていた。
うつむいていた娘が立って
としよりに席をゆずった。
そそくさととしよりが坐った。
礼も言わずにとしよりは次の駅で降りた。
娘は坐った。
別のとしよりが娘の前に
横あいから押されてきた。
娘はうつむいた。
しかし
又立って
席を
そのとしよりにゆずった。
としよりは次の駅で礼を言って降りた。
娘は坐った。
二度あることは と言う通り
別のとしよりが娘の前に
押し出された。
可哀想に。
娘はうつむいて
そして今度は席を立たなかった。
次の駅も
次の駅も
下唇をギュッと噛んで
身体をこわばらせて---。
僕は電車を降りた。
固くなってうつむいて
娘はどこまで行ったろう。
やさしい心の持主は
いつでもどこでも
われにもあらず受難者となる。
何故って
やさしい心の持主は
他人のつらさを自分のつらさのように
感じるから。
やさしい心に責められながら
娘はどこまでゆけるだろう。
下唇を噛んで
つらい気持ちで
美しい夕焼けも見ないで。
映画「カサブランカ」から時の過ぎ行くままに As Time Goes by from "Casabanca"