ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(フィクストインカムの専門家)

「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
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アメリカ経済と世界的金利低下 その6(ほんとは7回目)

2016年08月25日 | アメリカアップデート

  「アメリカ経済と世界的金利低下」のシリーズも終わりに近づきました。前回までに述べたことを少し振り返りますと、

1.アメリカ経済の足元は、雇用・小売り・住宅関連で結構強い。すでに景気循環の上昇局面が数年継続しているので、ちょっと休んでもよさそうだ

2.世界的なカネ余り状態が金利を押し下げていると言われるが、カネ余りとは相対的なもので、絶対的に数字で示せるものではない。しかし各国の金利を見る限り、先進国・新興国を問わず金利は低下しているので、カネ余りであることは確かだ

3.地政学上のリスクを見ると、中東などをめぐる戦争のリスクのみならず、先進国でもBREXITトランプリスクなど、予想もつかなかったリスクが頻発している。そのたびに米国債への「質への逃避」が起こってしまい、米国債金利を下げてしまう

4.金利下落リスクとして今後覚悟すべき最大のリスクは、中国の政治・経済の崩壊と日本の金融財政破綻リスクだ

5.7月に史上最低レベルの1.3%台まで米国債金利は下げたが、それに匹敵するレベルは12年7月にもあった。そこから3%に回復するのに、1年半ほどかかかった

  ここまでこうしたことを述べてきました。

  では先を見通すにあたり、直近のアメリカ経済はどうか。

  一昨日、米商務省が発表した7月の新築戸建て住宅の販売戸数は、年率換算でなんと前月比12.4%増の65万4,000戸で、8年9カ月ぶりの高水準。つまりリーマンショック前の高水準に肩を並べています。

  同日に発表されたトール・ブラザーズという超高級住宅販売会社の5-7月期の業績は、収入が24%増とこれまた絶好調。ちょっとバブルの心配をするほどです。住宅販売は幅広い住宅関連消費につながるため、非常によい材料とみなせます。もっとも昨日発表の中古住宅販売は若干見劣りする数字でした。原因の一つは価格が高すぎることと解説されています。しかしこれも含めアメリカ経済が依然として好調であることは間違いありません。

   一方、世界の金融市場は週末のジャクソン・ホールでのイエレン議長の発言内容を気にして、動きのとれない状況です。何人かの地区連銀総裁は、利上げに積極的な発言をしていますが、イエレン議長は驚くような発言はしないだろうと私は見ています。


   では、みなさんの関心事である今後の金利を私がどう見ているかです。

   私の基本的考え方は変化していません。それは、金利は何といっても「物価と雇用だ」という例の考え方です。雇用が絶好調ですので、残るは物価です。

   物価を見るにあたり、まず賃金から見てみましょう。アメリカの雇用者賃金は、雇用全体が好調なため穏やかな上昇を続けていて、それが消費を押し上げる原動力になっています。8月発表の平均時給の前年比上昇率は2.6%と、それまでの傾向を維持しています。アメリカ経済の特徴はGDPに占める個人消費が7割と高いことで、その中でもサービス消費が半分を占めることです。賃金上昇はサービス価格の上昇に直結しますので、物価の底上げにつながります。

   さらに石油価格がひところよりだいぶ持ち直してきました。物価というのは前年対比でみるので、価格の絶対レベルが低くても前年を下回らなければ全体の足を引っ張らなくなるのです。WTIなどの石油先物価格は1年前のレベルを上回り始めています。

  そして今後ですが、OPECにも生産を抑え価格維持をすべしとの機運が出てきていますので、エネルギー価格が物価抑制の主役の座を降りるのは近いと思われます。

  物価を見るにあたり、エネルギーと食料品価格を除くコア物価がより大事だと言われますが、エネルギー価格の変動はすべての物価に大きく影響を及ぼすので、その上昇は物価全般に大きなプラス材料なのです。

   そして先日触れたその他の国際商品価格全般の値上がりも物価上昇には好材料です。

 

  こうしてみてくると、「物価と雇用」のうちの物価にも上昇の兆しが見えてきています。これは今後の金利上昇には明らかに好材料です。

   しかし世界経済がグローバルにつながり一国内で完結することはないため、アメリカの金利動向は国内要因だけでは決まりません。世界のその他の国の低金利も影響するため、上昇していくにはかなりの時間を要すると思われます。

  先進国はこの数年がそうだったように、金利低下が景気上昇に直結していません。一方、新興国は資本が必ずしも自国に潤沢にあるわけではないため、企業は金利低下を渇望しており、低下が設備投資や住宅投資につながり、経済を成長させます。世界の金利低下はすべての国にデフレをもたらすわけではないことを忘れないようにしましょう。


   ではそうした先進国と新興国の状況を織り交ぜて考えて、アメリカの金利はこの先どうなるのか。

   私は低下したままでいるとは思っていません。あくまで循環的な動きが今後もあると思っています。7月の1.3%台への低下はむしろBREXITなどの外部要因が大きかったため、それがボトムである可能性もあるでしょう。

  しかし循環するとは言え、1980年代から始まった長期低落傾向がここで長期上昇傾向に転ずるのは難しいだろうと思います。長期低落に歯止めがかかったとしても、一進一退での循環的な上下動に留まりそうだ、とういうのがこの先半年1年の私の見立てです。

 

  ということで昨年12月の見通しのように3%をターゲットにするのは、しばらく難しいと思われます。上昇があっても2%台をターゲットにせざるをえないでしょう。

   では、マクロ経済のモデルを使った予想はどうなっているでしょうか。今年の予想を出した昨年末にみなさんに紹介したサイト、Trading Economicsの予測数値によりますと、17年第2四半期までは1.6%という低い予想になっています。そして20年でもわずか1.8%という低い予測です。私はそこまで悲観的には見ていません。 モデルは単に数字を統計処理して延長しているので、あくまで参考程度にご覧ください。


   これでこのシリーズ、「アメリカ経済と世界的低金利」を終えますが、この話題は今後ももちろん折に触れて書いていくようにします。

   最後に一言申し上げておきたいことがあります。

   それは米国金利関してある方から、「林さんは金利の上昇を望んでいるんですか」という質問を受けたことについてです。きっと私が米国債投資をこれからしようという方に向けた物言いになっているきらいがあるので、こうした質問が出てきたのだと思います。もちろん私はそれを望んでいるわけではありません。

  金利が投資のリターンであると考えれば、今後投資する方にとって高いにこしたことはありません。一方すでに投資をされた方にとって金利低下は債券価格の評価益につながります。私は両方の方に対して物をいう立場にいるので偏りは禁物なのですが、コメント欄は圧倒的に今後投資をされる方からの質問が多いため、あたかも私が金利上昇を望んでいるようになってしまっているのでしょう(笑)。ちょっと反省します。

  現在のような超低金利は一国の経済にとって決して望ましい姿ではありませんが、一方超高金利はもっと望ましくありません。企業の体力を奪い、財政を圧迫するからです。では望ましい金利レベルがあるのか。

   以前も触れたことがありますが、それは一国の発展段階によって変化するし、金利は景気循環をスムーズにする調整弁でもあるため、一概に何%が望ましとは言えません。

   望むらくは、ある程度の金融資産を持っている方が、キャピタルゲインなどなくとも、年金と安全な債券の金利で暮らしていけるレベルは欲しい、と私は願っています。

  このシリーズは以上です。

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リオ・オリンピックのゴルフ

2016年08月23日 | ゴルフ

  リオ・オリンピックは無事終了しましたね。日本選手の連日のメダルラッシュで、とても楽しく観戦できました。これで東京がもっと楽しみになりました。

  施設の状況やセキュリティなど、事前の観測よりはるかにましな大会だったという印象を持ちました。アメリカの競泳のメダリスト、ロクテ選手のようなことが日本選手にはなくてよかった、と言いたいところですが、実はマナーとプレーぶりでは問題が一つありました。それは100年以上ぶりに採用されたゴルフでの選手のプレーです。

   女子の代表はベテランの大山志保選手と23歳の若手のホープ野村敏京選手が出場し、野村選手が1打差で銅メダルを逃しています。野村選手の名前は「はるきょう」と読み、日韓の混血です。普段はアメリカをベースにしていて、すでにLPGAで2勝を挙げている有望選手です。

   その彼女がパー4のホールでパーパットをはずしたあとに事が起こりました。私はそれを偶然ライブで見ていました。ボギーパットはわずか20㎝しか残っていなかったので、悔しさも手伝ってか彼女はパターのお尻を使って逆打ちしたのです。するとボールは10㎝くらいしかころがりませんでした。野球で言えばファールチップです。彼女のパターはピン型のため、パターのお尻は縦に平板ではなく、わずか厚み2・3mmしかない薄板です。ボールの真ん中を少しでもはずせばしっかり打つことはできません。それは百も承知だったはずです。

   最初に申し上げましたが、彼女は4位。3位とは一打差しかなかったので、20㎝を普通に打っていればメダルが取れたはずでした。彼女は自分が日本を代表しているとか、税金で参加させてもらっているとか、オリンピックを目指したのに参加できなかった多くの選手がいることを意識していません。そして彼女にあこがれてゴルファーを目指す子供たちがいることを忘れているとしか思えません。

  最近ジュニアゴルファーのマナーの悪さが事あるごとにゴルフ界で叫ばれています。プレーを途中で投げ出したり、彼女と同じようにパターのお尻で打ったり、クラブを蹴飛ばしたりするジュニアが多いのです。彼女の行為はジュニアには最悪の見本です。

   私も昨年スコットランドでカーヌスティ―をラウンドしたとき、態度の悪いアメリカのジュニアと一緒になったことを書きました。ティーショットをミスすると毎回のようにクラブを叩きつけ、ティーを足で蹴飛ばすのです。それも親が一緒にプレーしているのに。そして親は注意もしませんでした。

  言うまでもなく、ゴルフはマナーのスポーツです。世界中が注目している中で、このようなプレーは絶対に許されません。私の不満はマスコミにも向けられます。マスコミはこのことを報道していません。少なくとも私の知る限り、そしてネットで検索できる限り。

   彼女の中にこの事実が今後どう残るのか、私には知るよしもありませんが、是非猛省して二度とこのようないい加減なプレーをしないようにしてほしいと思います。

  腹立ちまぎれでした。

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出版から5年

2016年08月17日 | ストレスフリーの資産運用

  リオでは嬉しいメダル獲得がつづいていますね。でも何故か銅メダルコレクターなのがちょっと残念!

   それでもメダルはメダルだし、世界に誇れると思うのですが、銅メダルを取った日本選手の多くが泣きながら「申し訳ありません」というのがちょっと気になります。

   それにしても台風一過の暑さは尋常じゃありませんね。4年後は今より暑くなっているでしょうから、とても心配です。リオよりもっと深夜に競技をやればいいのではと思ってしまいます。


   私の著書が出版されてから今月で5年が経ちました。購入していただいた方に、お礼申し上げます。

  その間の出来事を簡単に振り返りながら、著書に書いてあった林の見立てはどうだったのか、検証してみることにしました。

  著書のタイトルは「証券会社が売りたがらない、米国債を買え」という長たらしくて、ちょっとヘンなタイトルでした。私の案である「ストレスフリーの資産運用」は却下され、ダイヤモンド社がつけてくれたタイトルです。もっとも出版後は、刺激的だし満足できるタイトルだと思っています。

  資産運用対象としてアメリカ国債というのは世界標準の代表的リスクフリー資産なのですが、5年前の日本ではそういう認識はほとんどなかったようです。みなさんは最初どう思われたでしょうか。

   再三申し上げますが、私は日本が大好きな日本人で、この先も日本から出て海外に暮らすつもりなど毛頭ありません。ただ、このお粗末な日本政府とは心中したくない。そのための方策としてアメリカ国債の投資が安全でよいと、みなさんにお薦めしているのです。

  「備えあれば憂いなし」、ストレスフリー投資の神髄が米国債への投資です。

  著書の主旨に対して最初に巻き起こった議論は、「アメリカはこの先何十年も本当に安全なのか」という議論でした。不安の理由の第一は、アメリカがまだリーマンショックから立ち直る最中だと見られていてたということです。

   2011年、世の中では「アメリカにも日本と同じ失われた10年が来る」という意見が支配的でした。私がそれを聞いて思ったのは、「バブル崩壊以降の日本の凋落を悔しく思っている人たちが多いな」、ということでした。バブルの後始末で後れをとっている日本をしり目に、アメリカは先端技術やIT分野で世界をリードし先進国では珍しいほどの成長を遂げていました。ところが、いい気になってサブプライムの証券化商品でバブルを作ってしまい、それがはじけた。言葉は悪いですが、ざまーみろ、なのでしょう。

   そこに拍車をかけたのが理由の第二、いわゆる「財政の崖」というアメリカ議会内の「政争」です。それが日本から見ると単なる政争ではなく、アメリカ財政が深刻な危機を迎えていると誤解されたのです。その後も何度となく崖はやってきて、アメリカは落ちる寸前に回避しています。あたりまえです。財政問題なのではなく、共和党と民主党の政争にすぎないからで、何度か崖の淵を見た後は、さすがに単なる政争だと市場も理解したようです。

  現在は、アメリカ経済が失われた10年の中にいるとか、財政の崖から落ちるかもしれない、などと言う人はいなくなりました。

   そうした見当違いの議論がどこから起きるのかと言いますと、私が常々申し上げているように、金融・経済問題を数字で見ていないで、好き嫌いの感情や当て推量だけで見るからです。リーマンショックのマグニチュードも財政の崖問題も、数字でしっかり検証していれば深刻な問題などでないことはすぐわかったはずです。

   もっともリーマンショックはいまだに「100年に一度の」という枕詞がつく大金融恐慌だったという論調が支配的です。1930年代の大恐慌時の失業率は25%、リーマンショック時は10%。数字だけみれば、半分以下でしかありません。しかもリーマンショック後は、わずか数年で5%という絶好調レベルに回復しています。大恐慌のときは10年後、第2次大戦がはじまる寸前まで15%程度の失業率が続いていました。だから真正100年に一度の大恐慌なのです。

   では、アメリカはこの先も本当に安全なのでしょうか。今一度検証してみましょう。

 著書では将来を見るのに、以下の点をもって日本よりアメリカの方が遥かに安全だと言っていました。

 1.日本の安全保障はアメリカに依存

これはトランプが大統領にでもならない限り、ずっと有効です。彼は日米安保の主要目的の半分は、日本がアメリカに刃向かわないための歯止めだということを知らないのです。凶暴なアベチャンと核武装が持論の防衛大臣コンビの恐さを知らないのです。

 2.国債の格付け ムーディーズとS&P

アメリカ Aaa、AA+ で変化なし。  日本は11年時点でAa3、AA-であったものが、現在はダウングレードされてA1、A+。要するにダブルAがシングルAになってしまった。ちなみに累積債務の対GDP比率の5年間の変化はOECD統計によると、

      11年  16年

アメリカ  108%  111% +3

日本   209%  232%    +23

日本のひどさは留まるところをしりません。

3.日本の人口は減り、アメリカは増加

こんなことを言うと嫌われそうですが、少子高齢化対策が最高うまくいったとしても、効果が出るのは30年後、それが数字から見える不都合な事実です。

4.日本の若者の就職人気企業ランキングは1973年も2011年も、2016年もほとんど変化なし

あきれるほどの保守性を若い人が持っているのは、嘆かわしい限りです。

5.産業の未来を占うベンチャーキャピタル投資額の日米較差  

著書にある08年の調査では、日米のひらきは60倍と推定された。現在も継続する別の調査(Field Management Capital)では11年時点での30倍が、14年の時点では50倍にひらいている。投資額の数字は定義によって異なるため正確な比較はできませんが、同調査の08年では20倍のひらきがありましたので、それがどんどん広がっています。

6.アメリカ人は英語を話すが日本人はダメ、という状況に大きな変化はない


   こうした比較は実に単純な比較ですが、将来の経済成長力や安全性を予見するには有効です。それでもアメリカより日本が安全だという方がいらっしゃれば、どうぞコメント欄でご指摘ください。数字で議論しましょう。


  では、11年時点の将来見通しと決定的に違った、あるいは私が完全に見通しを誤った事項があるかないかを見てみます。

   自己申告しますと、11年時点で私が最も予想できなかったことは、12年年末の「アベノミクス」導入です。その結果が円安と株高につながりました。これについてはもちろん誰もが予想はできなかったし、新たな要素なのですが、問題はその後の展開です。

   私は導入当初は長続きしないと思っていましたし、異次元の金融緩和などという無謀な緩和策は打上げ花火の効果だけで、長期的に続けられないし日本財政の破たん時期を早めるだけと思っていました。

   確かに政策目標であるデフレの克服はできなかったし、今後もできそうにありません。しかし、円安が株高を呼び込んだため大歓迎され、財政は金利低下のお陰で長持ちしています。

  もちろん財政問題は解決したわけでもなく、ひたすらマグマを溜め込んでいるだけなので、破たんの威力は大きくなるのですが、今はその端緒も見えてきていません。

 以上がたぶん最も間違った部分だと思います。

 つづく

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山の日によせて

2016年08月13日 | エッセイ

  今年初めて山の日ができましたね。お盆にかけて、良い時期を選択してくれたと思います。

  みなさんは飛び石連休を活用されましたか。私はでかけていませんが、そのかわり山の思い出を書いてみました。私の山の思い出は、日本5位、3,180mの槍ヶ岳登頂です。それも中学2年生の夏のことでした。

   中学2年生が北アルプスの中でも最も厳しいと言われる山の一つである槍ヶ岳にどうして登れたのか。それも昭和38年、1963年のことですから、北アルプスも現在のように整備されてはいない時代でした。

   そのわけは学校にあります。ユニークな教育に力を入れる母校、成城学園の夏の行事で、中学2年は登山が公式行事でした。

   中学に入学すると1年生は夏の臨海学校で、全員が海で2kmの遠泳に挑みます。4月早々先生からそれを聞かされ、6月からプールでの訓練に入ります。泳げない生徒は特訓を受け、とにかく全員が挑むのです。私も6年生の時にやっと25mほど泳げただけなので、波のある海ではいったいどうなるんだろうと不安に思いました。

  しかし先生によれば、「プールで25m泳げれば海で2km泳ぐのはわけない」とのこと。その後の特訓でもプールでは平泳ぎで50mがやっとでした。しかし千葉県の富浦での臨海学校に行き訓練をすると、海では200mくらいは泳げるのです。でも2kmはその10倍です。

  挑戦の当日は生徒数200名くらいに対してサポートのボートが何艘も出て、大学の水泳部の先輩たちが泳ぎながらサポートしてくれます。生徒は全員掛け声とともに泳ぎ、途中ボートから水や氷砂糖をもらいます。その間だけボートにつかまることができるので、ついつい欲しくもない水や氷砂糖を欲しいとお願いしました。そしてたしか2時間ほどかかったと思うのですが、全員が泳ぎ切ったのです。なんという達成感だったでしょう。

    海の日の話になってしまいました(笑)。山に戻ります。

   2年生の春になると全員で神奈川県は丹沢山塊の大山に登山をして、登山訓練が始まります。実はこの大山登山、訓練と選別を兼ねています。遠泳と違い、さすがに何日もかけて登る槍ヶ岳は体力に差のある全員が登山するのは無理です。そのため自己申告で、槍ヶ岳組、白馬岳組、軽井沢高原組に分かれるのですが、その見極めのために大山に登るのです。槍ヶ岳や白馬岳に登るには本格的登山靴が必要で、その当時は小さな登山靴は売っていなくて、特別に学校がそろえてくれました。大山には厳しい登山道と穏やかな登山道があって、槍ヶ岳組は厳しい登山道を登らなければなりません。それをなんとかこなして、あこがれの槍ヶ岳組に入ることができました。

  槍ヶ岳登山に対して父兄はどうだったかと言いますと、すでに1年生のとんでもない遠泳と冬の志賀高原でのスキーを経験していたので、むしろ喜んで応援してくれました。クラスは男女半々で40数人ですが、男子は半分の10人ほどが槍ヶ岳に挑戦し、あとは白馬岳。女子は槍がわずか2名で、あとは白馬と軽井沢組に分かれました。

  槍への挑戦は2年生総勢50人ほど。それを登山好きの先生が5人、カメラマンを兼ねた山のガイドが1人、強力が2人でサポートしてくれました。当時の強力とは普段山荘に食料を運ぶ仕事をしている人たちですが、途中で疲れた生徒のリュックを背負ったり、時には生徒を背負ったりしてくれます。

  槍ヶ岳へは、燕岳から大天井岳(おてんしょうだけ)を経る北アルプスの「表銀座縦走コース」を取ります。日本のアルピニストの誰もが憧れる表銀座コースですが、中学生が縦走するのは本当に驚きだと、山好きの大学生の従兄が言っていたのを思い出します。

   私は小さいころから晴れ男だったので、全行程快晴に恵まれました。最も厳しかったのは初日の中房温泉から直登する燕岳、2,763mへの登山でした。とても大山登山の比ではなく、女の子は初日から強力に背負ってもらうほどでした。しかしそれを登り終えると、北アルプスの絶景が拡がっていました。この絶景を見るためにアルピニスト達は表銀座に来るのだそうです。

  当時の写真はモノクロだったし、プリントしかの残っていません。そこでみなさんには見ていただきたいサイトをお知らせします。知らない方のサイトですが、燕岳への登山と山頂小屋、そして360度のパノラマ動画をみることができます。感謝!

http://ohara98jp.exblog.jp/20873178/

 

  登山2日目はすごく遠方に見える槍ヶ岳まで一気に縦走しますが、あんなに遠くの山まで本当に一日で行けるのかと、気が遠くなるような思いで見たのを思い出しました。快晴の表銀座はとても気持ちのいい縦走ですが、途中でかなりの上り下りがあるため、中学生達はみんなで「もったいねー、降りるのヤダー」と大声で叫びました。すると北アルプスから「もったいねー、降りるのヤダー」と見事なコダマが返ってきました(笑)。

  縦走は途中で大天井岳を回りこむようにして槍ヶ岳の山頂脇にある「肩の小屋」まで行きます。翌朝は早朝に起きてご来光を仰ぎながら、山頂までのスリル満点のロッククライミングです。肩の小屋からは、ほとんど垂直のロッククライミングになります。

  別のサイトにはそのロッククライミングの写真があります。このサイトの登山ルートは我々が下った上高地から槍沢を経る登頂ルートですが、その間の写真がとてもきれいだし、槍ヶ岳の厳しさの様子がよく見てとれます。きっちょむさんに感謝!

http://kiccyomu.net/yarigatake.html

   槍ヶ岳のとんがりの横にちょっととんがっているのが「アルプス一万尺、小槍の上で・・・」という歌で有名な小槍です。小槍は自前のハーケンとロープでしか登れないはずです。

   頂上への最終ルートはオーバーハングにちかいのですが、数mだけはしごがかかっていました。最近登山した友人に聞くと、最近はもっとはじごがたくさんかかっていて、登りルートと下りルートが分かれているとのことでした。

  しかし思い起こすと、こんなに厳しい登山を中学2年生が毎年しているなんて、驚く以外ありません。我ながらよくやったものだと思います。

   最後は上高地に向かって槍沢を一気に下ります。下山も決して楽ではありません。膝が笑ってしまう体験を初めてしました。下山途中で大学の山岳部のグループが、一人30kgものリュックを背負って登って来ました。我々と出会うと、「お前ら槍に登ったのか、ホントか」と何度も聞かれ、我々は誇らしげに「ホントだよ」と答えたのを思い出しました。

   そして夕方には上高地の明神池にある明神荘に到着し、久々にお風呂に入って疲れをとりました。

   実は15年ほど前にこの上高地の明神池を再訪しました。60歳台で母親がなくなったあと一人になった父親に親孝行をしようと思い、写真好きの父親が昔から行きたいと言っていた上高地の帝国ホテルに泊まりに行ったのです。その時に上高地をトレッキングして明神池に行きました。そこには中学の時に泊まった古い明神荘がそのまま残っていました。なつかしい明神荘で、やまめの天ぷらをいただきました。その時父親に、成城学園にいれてもらったおかげで槍ヶ岳登山ができた話をしながら、感謝しました。

   「山の日」ができたおかげで、中学生時代の忘れがたき思い出を書き記すことができました。その年にはお隣のおじさんが、「せっかく登山靴を買ったんだから、富士登山を一緒にしよう」と言って連れて行ってくれ、3千メートル級の山を2つも登ることができました。でもそれを最後に本格的登山はしたことがありません。

 以上、山登りの思い出でした。

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日銀包囲網

2016年08月10日 | 日本経済コメント

  それにしても暑い。きっと「こんなに暑い日は外に出ず、オリンピックでも見ていろ」ということなんでしょうが、お仕事のある方はそうはいきませんよね。

  おとといは5時前に起きて、男子の体操団体競技を見ました。目をこすりながら順位を見ると、えっ、サイテー。やっぱり予選の通りかと思いました。ところがコーヒーを準備して飲むころから日本チームはどんどん順位を上げ、あと二つを残して1位に立つという驚きの追い上げ。観戦に力が入ってきて、着地が成功するたびについつい選手と一緒にガッツポーズをしてしまいました。

   「金メダル、オメデトウー!」

   私のブログも遂に200万アクセスを超えました。最初の100万アクセスには3年9か月かかりましたが、次の100万アクセスは約半分の1年8か月で達成することができました。みなさまのご支援のたまものと、大感謝いたします。今後も最低限、このペースが守れるように努力いたします。みなさまからのご支援をお願いします。

 

  さて、今回は日本です。日銀に包囲網が築かれつつあるようです。凶暴なるクロちゃんも、今年に入ってからは手を打つたびに市場から逆襲され、さすがに打つ手がないことがバレつつあります。いったいいつまでファイティング・ポーズを取り続けるのでしょうか。残念ながら彼は進むことも引くこともできず、最後は弁慶のような立ち往生以外に道はないと私は思っています。

  マイナス金利を導入して以来、経済団体のトップ金融関係者、そして学者・研究者などからも日銀に対する批判の声が大きくなってきています。そうした意見は政権内部日銀内部でも出ていることが、漏れ伝わってくるまでに至りました。

  そして今朝のニュースでは個人もマイナス金利の恐ろしさを感じマインドが委縮しているとのこと。マネックス証券による最近のアンケートによると、去年より消費を抑えている人が昨年同時期の4倍にも上っているとのこと。批判の声を上げているのは著名な有力者や団体だけでなく、声なき個人や中小企業も日銀のマイナス金利に悪影響を受け、ネガティブな反応を示しているという報道がなされていました。

  一方、当のマスコミでも日銀批判が次第に顕在化しつつあります。どちらかと言えば大政翼賛会寄りの日経ですが、8月7日朝刊トップ記事のタイトルは「ほころぶ鉄の三角形」で、政府・日銀・銀行間に築かれた鉄のトライアングルが崩れてきていることを記事にしていました。

   根本原因は黒田日銀総裁の「2年、2倍、2%」の宣言通りにことが進まないからですが、今回の批判のきっかけは1月のマイナス金利導入宣言以降、これまでとは逆に株式や為替相場が言うことを聞かなくなったこと、そして銀行収益が悪化したことです。さらに銀行界からの反発を象徴しているのが三菱UFJ銀行による国債入札プライマリー・ディーラー返上です。

  記事には三菱UFJ側の返上理由が詳しく述べられています。かいつまんで述べますと、三菱は会計士から「マイナス金利の国債を引き受けてはすぐ日銀に売却し損失を回避しているが、すぐに売るというのは短期保有であり、長期保有の会計処理とは異なる処理をする必要がある」。つまり保有国債の値洗いをする必要があると指摘されたのです。

  国債を償還まで保有するのであれば、途中の相場変動は会計上無視できますが、短期保有だと金利が上昇すると評価損を計上しなくてはいけないのです。だからといって、マイナス金利の国債を償還まで保有することは損失が確定してしまうため絶対にできません。

  プライマリー・ディーラーであるかぎり強制的にマイナス金利の国債を買わなくてはならず、一方では会計上損失を計上する可能性が生じる。その板挟みで出した結論が「資格返上」というごくまともな反応でした。

  会計処理は三菱UFJだけでなく、他のメガバンクを含め銀行一般に言えることで、今後こうした動きが他行でも出る可能性があります。

  この三菱UFJに対し財務省は猛反発して、日経記事の小見出しには財務省側のコメントとして「入札資格返上は裏切りだ」とまで書かれています。

  アベノミクスを金融面で支えてきた政府・日銀・メガバンクの運命共同体とも言うべき「鉄のトライアングル」にほころびが生じたというのが記事の主旨です。

  もちろんそのとおりですが、私は三菱UFJはすでに数年前から生き残りをかけたポートフォリオの見直しをしていたため、今に始まったことではないとみています。彼らは長期国債の金利が低金利になり始めたころから、国債のポートフォリオを残存期間が短いものにシフトしてきました。短期化ということは国債の信用力に疑義を感じ価格の暴落に備えていたということです。

  もちろんこうした自己防衛の動きは他行にも見られることです。別の報道によれば、みずほやりそなは、保有国債の3分の1を4-6月の3か月間で売却したとのこと。貸し出しや証券業務の収益力に自信のある比較的大手の銀行は国債から距離を置き始め、国債以外に大きな収益源のない地銀などは国債と心中を決め込んでいるというのが現状です。

  その国債も少なくとも金利がプラスでないと、すべての銀行にとり新規保有する意味はありません。経済性だけでなく、ガバナンスの観点からもマイナス金利国債の保有は株主に説明がつかないものになっています。しかし国に頼る以外に道のない地銀などはどうするのでしょう。

  最近、地方にお住まいで商売をされている方からひどい話をうかがいましたので、警告の意味でそれを書いておきます。その方の会社の税理士から聞いたそうですが、「地銀がもうけを確保するために、中小企業に株式などのファンドに投資するための資金を融資している」というのです。融資でもうけ、ファンドの販売手数料でもうける、一粒で2度おいしい商売です。

   しかし顧客にリスクの高い商品を借り入れで買わせるということは、結局相場が崩れると自分にはねかえることになります。バブル時代の二の舞です。80年代の終わりころには、中小企業だけでなく個人に対しても、株式投資やワラント債投資というとてつもない高リスク商品の投資用に、都銀が融資をすることがはやりました。

  日銀がマイナス金利などと言う無理な政策を押し進めると、大手銀行からは見放され、地銀はとんでもない融資にのめりこむことになり、意図したデフレの克服などには一切つながりません。マイナス金利は国債に頼るゆうちょ、かんぽや民間の生損保などの収益も直撃します。

  日銀は7月末の決定会合でETFの買い入れ額倍増という追加緩和策を発表しました。しかし直後に為替は円高に大きく振れ、肝心の債券相場は日銀の意図に反して暴落し、市場関係者は肝を冷やしています。今度からは日銀の決定会合ごとにカラウリをしておいて儲けましょう(笑)。

  一方政府はそれと同時期に公称28兆円規模の経済対策を発表しています。それらに対する海外メディアなどの主な反応をお知らせしておきます。まず政府の経済対策については、

ブルームバーグ;日本政府の対策は「Just the same old thing」 単なる使い古した策だ。真水は4分の1以下しかない

ロイター;90年代から行われ続けた政府の経済対策の真水と公称分をしっかり示し、「これまで続けてダメなものは今後もダメ」

  そして日銀の追加策に関しては、

ブルームバーグ;日銀の黒田氏は「はだかの王様だ」

日経;市場は追加策に国債の暴落で応えた。日経センターが行った計算によると、日銀が16年一年間で買うマイナス金利の国債の損失が10兆円になるとのこと。そのツケはいずれ国民に回ると指摘している。

  日銀は今回の発表の中で、9月の政策会合で現在の緩和策の「総合的な検証」を行うと表明しました。日銀包囲網が敷かれている中でのこの発表が、様々な思惑を呼んでいます。

  日銀を巡る話題については、「ヘリマネ」に関する話題とともに、アメリカシリーズの後にじっくり書いてゆくつもりです。

 

  明日は初めての「山の日」ですね。みなさんはすでに夏休みをお取りですか。それとも山の日やお盆にかけてでしょうか。うちは今年は夏の間に長い旅行はしません。以前お知らせしたとおり家内がキャット・シッターという仕事を始め、夏が一番の書き入れ時のためです。

  私自身は自分の頭を休め読書をするために、すこしばかりブログの更新をスローダウンさせます。どうかご承知おきください。

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