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債券の世界から見たBREXIT

2016年06月26日 | イギリスのEU離脱 BRE

  離脱のインパクトが与えた金融市場の動揺の大きさに、離脱派さえも驚き、「ちょっとヤバったかも」と思っているようです。イギリスの若者はツイッターなどで、「もう一度投票をやり直してくれ」と言い、署名を集めデモまで始めています。25歳までの若者の残留への賛成は66%にも達しているという報道がありました。お気の毒にとしか言いようがありません。しかし再投票はないし、後戻りはできません。彼らはきっと無力感にとらわれるでしょう。

  日本の選挙でもきっとこの構図が当てはまるに違いないと私は思っています。若者に必要なのは増税延期ではなく、「消費増税」で、それこそが将来の安心感へわずかに残された細道ですが、すべての政党が「増税延期」で一致し、選挙の争点にすらならなくなってしまいました。きっと日本の若者は無力感でしらけ返っていることでしょう。

 

  さて、BREXITに対する私の見方、第2弾です。

  株式市場は実に単純明快です。先週の金曜日一日で失われた世界の株式価値はブルームバーグ調べで2,100億ドル、21兆円にものぼります。すべての市場で暴落した株式相場の解説は、その道のアナリストや報道におまかせします。

  私は債券の専門家ですから、このブログに集まるみなさんのために他では見ることができない、債券相場から見える今後の動向についてをお伝えします。米国在住債券初心者さんからいただいた、「新たな気付きを提供していただける本ブログ及びコメント欄はどの経済新聞やコラムよりも価値があると思っております。」との期待に応えたいと思います。

 

  まずBREXITが決定した6月24日金曜日の世界の債券相場を見てみましょう。繰り返しますが、債券というのは買われて価格が上昇すると、金利は低下します。逆に売られて価格が下落すると、金利が上昇します。そのことを念頭に各国の長期債の指標となる10年物国債の金利の動きを、前日との比較で見てみます。

   私は常々、「世界に大激震が走るとアメリカ国債は買われる」と言い続けてきました。そのアメリカ国債から、前日との金利差を数字で示します。数字の単位はbpという単位ですが、要は小数点以下の2桁で、-10とあれば、0.10%の金利低下で、その債券は買われたことを意味します。アメリカ国債はしっかりと買われました。

          

アメリカ国債10年物  1.56   -19  前日1.75%だったのが0.19%低下した

日本       -0.18 -3   

ドイツ       -0.05 -14

フランス       0.38 -7

 ここまでは買われて金利が低下した主要国。一方、売られたのは、

イタリア      1.55  +15

スペイン      1.62  +16

ギリシャ      8.31  +77

  アメリカ国債は激震に対していつものように大きく買われました。欧州では財政が健全な国は買われ、債務比率が大きく、信用格付けの低い国が売られています。そしてギリシャは危険水域に深々と入っています。

  「債券の金利はリスクの象徴でもある」と述べていたことが、まさしく金曜日に起りました。それが手に取るようにわかります。

  では当の英国国債(通称ギルトと言います)はどうだったか。

イギリス      1.08  -29

なんと主要国では最大の買われ方をしています。いったい何故か?

  この日、ムーディーズは「BREXITはイギリスの信用にネガティブな影響を与える」というコメントを発表しました。それにもかかわらず、買われたのです。コナンドラム?

  では現状のイギリスの格付けを、アメリカと比較して見てみましょう。

     S&P     Moody’s     Fitch

US        AA+     Aaa          AAA

UK        AAA     Aa1          AA+

(注)ムーディーズの小文字のaはS&Pなどの大文字のAと同じです。

  アメリカはS&PだけがダブルAプラスで、あとはトリプルAです。S&PによるアメリカのAA+は、何度か申し上げているように、財政収支の計算を彼らが大きく間違えて、社長の首が飛びましたが、それでも突っ張ったままでいるからです(笑)。イギリスはトリプルA一つ、ダブルA二つでアメリカより若干落ちるだけです。なお満点はドイツで、すべてトリプルAです。ちなみに日本はすべてシングルAと、危険水域に近づきつつあります。

   世界の株式市場はすべて暴落しましたが、債券市場は買われた国と売られた国がはっきり分かれました。これが債券市場の賢い一面です。ちょっとだけ迷いがあり、買われてはいるものの、価格上昇が小さかったのは日本とフランスです。

   ではイギリス国債が買われた理由は?

  市場アナリストの答えは「質への逃避」、英語ではFlight to Qualityだと言われています。長期的に見ればイギリス経済はEUからの離脱により低落傾向に入る可能性があるのに、本当に質への逃避でしょうか。

   私の見るところは全く異なります。何故ならアメリカ国債の-19に比較して-29と、すさまじい買われ方をしているからです。

   私は介入の匂いを感じています。欧州中銀と英国中銀は投票結果が出始めた金曜日の未明のうちに、金融市場を落ち着かせるため莫大なる資金供給を宣言していました。それが英国債を買う形で行われたのだと思います。日本と違い中央銀行が株式を買い支えることはできませんが、国債は買えるのです。特に緊急対応の場合は、こうした措置が取られるべきです。英国債を買い資金を供給するとともに金利を低下させ、金融市場を落ち着かせたのです。

   では、こうした一連の債券市場の動きから、さらに読み取る必要のある事象とは何か。

   それは、今後のEU各国の離脱の動きに対するけん制です。その象徴はギリシャで、

「もしお前たちが離脱の動きをしたら、数年前のように市場に撃たれ国債発行に行き詰まり、破たんだぞ」、そして

「イタリーとスペイン、あんたがたも同じだよ」、ということを示しているのです。

  これらの国に対しては株式市場よりずっと規模の大きな債券市場というとても怖い存在から、大きな警鐘が鳴らされました。

   じゃ、日本の国債は何故ちびっとだけ買われたのか。

   残念ながら日本は以前から申し上げているように、クロちゃんが体温計たる金利市場をぶち壊してしまったので、全く参考になりません。株式市場という血圧計は動きますが、体温計は動かぬまま突然死しかないのです。

   今後欧州各国で離脱の動きが出てきそうです。BREXITの直後に声明を出しているのはフランスとオランダの極右政党です。その他に、国ではなく地域ではありますが、スコットランドとスペインのカタルーニャです。果たして反知性派がちょっと複雑な債券市場を読み取れるか。それははなはだ疑問です。

 

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イギリスのEU離脱 BREXIT

2016年06月24日 | イギリスのEU離脱 BRE

   英国のEU離脱が決まりました。私の予想はハズレでした。

    私はこの戦いは失礼な言葉ながら「知性派対反知性派」の戦いだと位置づけました。人々の不満と不安を煽り代弁する反知性派の主張は、ワンフレーズで理解しやすくアピール力が強い。移民反対、EU分担金支払い反対、EUの独裁反対など、ワンフレーズのオンパレードです。

  それに対して知性派は、何故移民を受け入れなくてはならないか、何故分担金は支払わなくてはならないか、EUは決して独裁者ではないなどにつき、面倒な説明をしなくてはいけない。アピール度は全くないし、不満を持つ反知性派は、説明など聞こうともしないので、知性派は苦労するだろうと申し上げました。

   そして知性派は説得に失敗しました。英国の多くの錚々たる知識層、セレブリティー、IMFやOECDをはじめとする世界的機関のトップがこぞって残留をサポートしたにも関わらず。

   ブログの6月15日の記事をもとに、今後の心配事について記します。

引用

英国の離脱の影響について、エコノミストからいろいろな予測数値が出ています。もっとも悲観的数字を並べますと、

・日本のGDPを0.8%押し下げ

・ドル円は100円に下落

・日経平均は13,000円に下落

かなり衝撃的な数字が並んでいます。

引用終わり

  このうちドル円レートが一時的ではありますが、100円を割り込み、日経平均の終値は14,000円台に突入でした。

  しかしさらに私は自分の意見としてこう続けています。

引用

しかし私が考える、より本質的な悪影響は、そうしたある意味一過性の金融市場への影響ではなく、もっともっと深刻だと思っています。それがどこに出るのか、

一番は、戦後長期間かかって築いた欧州内の平和維持システム

二番は、同じく長期間かかって築いた経済の相互依存システム

こうした営々と築き上げたシステムに甚大なる悪影響を及ぼすと思われるのです。

引用終わり

  これらが現実になりそうなのは本当に危惧されます。現在日本時間で3時半ですが、すでにブラッセルのEU内ではイギリスの離脱をどうとらえるかの議論が始まっていて、対応に苦慮しているようです。


  一転して、この新たな現実に喜んでいるのは誰か。

  私はフェースブックに、「やめて、やめてーー」と題して、絶対に見たくない画像を掲げてあります。それはなんとドナルド・トランプと離脱派の旗手ボリス・ジョンソンがキスを交わしているおぞましい絵で、AFP通信が報道したものです。

こわいものみたさの方は、こちら→

http://www.afpbb.com/articles/photo-slide/3088208?pno=1#/1

  喜んでいるのはトランプだけではありません。5月11日の「もしトランプが大統領になったら」の記事で掲げた自己中心の独裁的政権のリーダーたちです。

  ロシア大統領プーチン、トルコ大統領エルドアン、習近平、金正恩。ついでにシリアのアサド大統領やその対抗勢力であるはずのISISも上げておきましょう。欧州を分断したがっていて、米英連合を分断したがっている独裁者たちです。きっと祝杯をあげているにちがいありません。

  そして欧州内の極右派のリーダー達です。フランスやイタリア、そしてデンマークでも離脱を論点にする国民投票の機運が高まりかねません。現在のリーダーが今後どうその機運を鎮めていけるかが問われます。

  いま日本時間の午後4時ですが、すでに始まった欧州の株式は軒並み8-9%暴落しています。私が見ているCNNのレポーターは、欧州株式を「Crashing」と表現しています。もちろん為替でもポンドが暴落し、連れてユーロも暴落。為替の暴落には上昇する相手が必要ですが、ドルと円が買われている2大通貨です。注意すべきは、ドルは欧州通貨に対しては暴騰しているということです。

  午後4時20分、ロンドン・ダウニング街10番地のドアが開き、キャメロン首相の敗北ステートメントが始まりました。彼はこの敗北により次の党大会で辞任することを伝えました。自分が首相として6年の間に英国経済が目覚ましく回復したこと。そして2年前の選挙で国民投票を約束し大勝利を挙げたことを述べています。しかし今回の敗北で潔さを示しました。

  後継の有力候補はトランプとキスした(笑)、ボリス・ジョンソンの可能性が高いと言われています。

  とりあえず、本日はここまでです。

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アメリカ経済と世界的金利低下 その2

2016年06月21日 | アメリカアップデート

   2回ほど横道に逸れましたが、本題の「アメリカ経済と世界的金利低下」に戻ります。

  アメリカは5月の雇用統計の新規雇用者数が衝撃的に少ない数字だったため、先行きに暗雲が漂い始めているというムードが広がりました。

  しかし私はGDPの構成比が高い小売や、住宅建設の数字が依然として悪くないため、深刻に考える必要はない、と楽観的見通しを示しました。

  1回目のいま一つの指摘は、日本のマイナス金利だけでなく、世界的な低金利でした。各国の長期金利の数字を並べましたが、その後ドイツの10年物国債も一時マイナスの域に達しましたので、日本に次いで主要国では2か国目のマイナス到達です。こうした低金利が続くと、この先何が起こる危険性があるのか。まずそれを指摘しておきます。

1.   債券バブルとその崩壊

低金利とは債券価格の高騰です。金利がマイナスにまで至っているということは、尋常ではないほど価格が高騰しているということで、実感はしづらいのですが、バブル症状を示しています。特にアメリカ国債やドイツ国債に買いが集まっていることに注目する必要があります。日本国債はクロちゃんによる爆買いが続いていて体温計の機能が失われてしまったため、最悪のバブルにもかかわらず症状が外に出なくなってしまいました。

2. 低金利に乗じた財政出動による信用力低下

そしてマイナス金利の陰に隠れて目立たなくなっていますが、主に日本を巡り取りざたされているのが、財政出動を巡る動きです。最近フィッチレーティングスが日本国債の見通しを下向きに改定しました。フィッチはS&P、ムーディーズに次ぎ第3番目の格付け会社で、今回の改定はシングルAのレーティングそのものを下げたのではなく、今後の見通しを下げたものです。見通しは①強含み、②安定的、③弱含みと3種類あり、今回は安定的から弱含みへの改定でした。6月13日の声明文をロイターから引用します。

「フィッチは声明で、見通しの変更について、安倍晋三首相が消費税増税の2年半の再延期を表明する一方、財政健全化目標達成のためのさらなる具体的措置を示しておらず、『当局の財政健全化の取り組みに対する信認が低下した』と指摘した。フィッチは声明で、消費増税の実現性を疑問視。アベノミクスついては、経済の潜在成長率の引き上げにはつながっていないとした上で、日本の成長停滞もまた、格付けにはマイナスとの見方を示した。」

  現状の日本では財政再建どころか、またぞろ財政出動が正々堂々と議論されています。

3. 日銀保有国債の償却処分、あるいは永久債への切り替え

最近、こんなことがよく取りざたされるようになりました。しかし今回は深入りせず、日本については機会を別に設けます。

 

  では焦点をアメリカに絞り直し、アメリカの長期金利についてどう見るかです。

   昨年12月に私は今年のアメリカの長期金利について、見通しはその前年つまり14年末の見通しとあまり変化はないと以下のように書いています。

「来年も際立った上昇は見込みづらく、せいぜい年の後半に3%前後だろうと見ています。来年中に政策金利が2~3回上げられても変わらないと思われます。」

  そして金利の上昇に関してプラスの要素とマイナスの要素について6つのポイントを上げ、それぞれにコメントを付けました。

①   FRBの政策金利上げ第2弾以降が見込まれる(金利には大きなプラス)

②   米国債の海外投資家のうち産油国からの買いがさらに減少、新たに売りに回る組も出る。9月までの1年でロシア保有分▲25%、OPEC保有分+5%(金利には大きな影響なし)。ちなみに巨額保有国である中国±ゼロ、日本▲4%。

③   連邦予算の赤字削減継続で国債供給は減少継続(金利にはマイナス)

④   雇用の順調な増加(金利には大きなプラス)

⑤   物価の落ち着き(金利には大きなマイナス)

⑥   世界の中央銀行の政策、FRBは正常化に向けさらに利上げ(金利には大きなプラス)。日本・中国・欧州は緩和継続あるいは増強(金利にはマイナス)

  まとめとしては「FRBの引き締が実行されても雇用に不安はなく、残るは物価のみとなった」

  以上の見通しを書いてから半年が経過しましたので、まずはそれを冷静にレビューしましょう。このシリーズの第1回目にはアメリカの経済指標をレビューしました。それと上記の6点を比較して、変化があって即刻訂正を要するものは実は見当たりません。せいぜい、

①  のFRBによる利上げが見込まれるものの、2~3回の想定よりも回数が減少している程度でしょうか。読者の方で、いやこれはだいぶ違ったよ、ということがあればどうぞご指摘ください。私の見方は手前ミソですから(笑)。

  ところが米国債10年物金利は私が見込んでいたよりもはるかに低下しています。年末の予測時点で2.2%程度だった10年物金利が、年央の今では1.6%台です。私の中では途中でせいぜい落ち込んでも1.8%くらいと思っていました。

  もちろんこの裏にはBREXITが現実味を帯びてしまったということがあります。私は昨年末の時点では、国民投票がここまで拮抗するとは思っていませんでした。金融市場へのインパクトは私の予想以上に大きくなっています。

  しかしこの問題は日本時間の金曜日には決着が着き、あっという間に落ち着くと思われます。

  つづく

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善良でない「第三者」にご注意を!

2016年06月18日 | ニュース・コメント

  「第三者」という言葉には、善良なる、あるいは中立的な、というニュアンスがにじみ出ます。しかしその言葉を使った非善良なる問題が続いていますので、ひとこと物申しておきます。

  都議会で追及される前までの舛添氏の言い訳に最も頻度高く使われた「第三者に依頼して厳正な調査をする」の第三者が、どんな第三者だったのか、みなさんはご存知ですか。

  いわゆるヤメ検でした。元々事件を追求する検察側にいて、それをやめて反対に犯人を弁護する側に回った方々の総称です。つまり追及する側の鋭いえぐり方を知り尽くし、防御に精通した弁護士です。

  しかし舛添氏のうしろの第三者は、いくらでもいる生易しいヤメ検ではありません。あの大臣を辞任した甘利氏の記者会見でうしろにいた弁護士でした。おかげで甘利氏は起訴を免れたというニュースが先週流れました。そしてさかのぼれば、彼は小渕優子氏の弁護士で、やはり彼女の救出に成功したやり手弁護士でもあります。

  事件を追求する側にいたプロ中のプロほど強い味方はいません。舛添氏が記者から「第三者とは誰か」と何度となく聞かれても絶対に答えなかった理由は、小渕氏・甘利氏を救い出した剛腕に頼んだことがバレるからでした。しかし今回は救出に失敗し、どうやら彼の神話も陰りが見えたようです。

 

  一昨日、「東電が原発事故でのメルトダウンの事実を言えなかった理由は、官邸からの圧力だった」と逆襲の報告をしましたが、それも東電が設置した「第三者検証委員会」です。

  しかもこの第三者検証委員会のメンバーに、またしてもあの同じヤメ検がいたというではありませんか。

  舛添氏の件で会見をリードしたこの弁護士は、記者から「調査される側に雇われているのはどうなのか」との質問に対して、「第三者委員会とは基本的にそういうもの」と臆面もなく答えたあのヤメ検です。ほとんど何も調べもしないで弁護に終始する。そんな善良とは程遠い第三者に怒りを覚えます。

  ここまで言えば、この国で使われる「第三者」の怪しさにみなさんも気づかれますよね。舛添氏のケースも東電も、自分がカネを払った単なるお雇い弁護士であって、本来の意味の「第三者」などでは全くありません。依頼者と一心同体の者のどこが第三者なのか。

   今後はみなさんも、そしてマスコミも「第三者」と聞けば、ただちに眉に唾をつけるよう、日ごろから訓練しておきましょう(笑)。

   腹立ちまぎれでした。

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イギリスのEU離脱問題 BREXIT

2016年06月15日 | イギリスのEU離脱 BRE

  私は今後の世界を震撼させる可能性のある脅威は、以下の3つだと見ています。

1.    英国のEU離脱=BREXITからEU崩壊

2.    中国の政治経済メルトダウン

3.    日本の財政バブル崩壊

   先日、トランプに勝ち目はあるかの解説を書いていますが、その最後に「トランプは勝てないのでアメリカが震源地になることはなく、BREXITのほうがよほど大きなリスクだ」と書きました。やはりこの問題は世界的に大きな問題になっています。

   英国の離脱の影響について、エコノミストからいろいろな予測数値が出ています。もっとも悲観的数字を並べますと、

・日本のGDPを0.8%押し下げ

・ドル円は100円に下落

・日経平均は13,000円に下落

かなり衝撃的な数字が並んでいます。

  しかし私が考える本質的な悪影響は、そうしたある意味一過性の金融市場への影響ではなく、もっともっと深刻だと思っています。それがどこに出るのか、

一番は、戦後長期間かかって築いた欧州内の平和維持システム

二番は、同じく長期間かかって築いた経済の相互依存システム

こうした営々と築き上げたシステムに甚大なる悪影響を及ぼすと思われるのです。

  EUからの離脱問題は一昨年ギリシャでも起こりました。その時の私のコメントは、すでに国民投票でチプラス首相への支持が上回っていた時点でも、「離脱など絶対にできっこない」というものでした。理由は、「国民は通貨ユーロから離れられないし、政府はEUの支援なくして国家運営ができないから」です。

  それに比べると英国の離脱問題は、簡単に離脱などできっこないと断言できません。何故なら英国は通貨ユーロを使っていないし、EUの支援なくしても国家運営ができるからです。

  みなさんは英国の前に前哨戦があったことはご存知でしょうか。EUの小国、オーストリアにおいてです。5月の大統領選挙で極右の候補と緑の党の候補が大接戦を演じ、なんとわずか1,000票の差で穏健派の緑の党候補が勝利したのです。極右の候補はEUに懐疑的で、もちろん移民に大反対です。欧州の極右勢力はどこの国においても、本当に要注意のところまで到達しています。

  では英国の国民投票のブレークポイントは何か。

  私は5月にアメリカ大統領の戦いは、「良識派対非良識派」の戦いで、トランプは勝てないと申し上げました。英国の場合はどうか。失礼の段はお許しいただきストレートに言えば、「知性派対反知性派」の戦いだと思っています。

  もちろんこれは、「ラフに言えば残留派には知性的な人が多く、離脱派には知性的でない人がより多くいる」という程度の話で、知識人でも離脱派は大勢いますし、逆も真なりです。

  オーストリアの公共放送ORFの以下の分析を参考にしてみましょう。『主要10都市のうち9都市で穏健派が優勢だったが、農村部では極右派が圧勝した。特に肉体労働者の9割近くが極右派を支持した。一方で、大卒その他の高等教育経験者は穏健派の支持が多かった』。こうした図式が英国でも当てはまるように思えます。

  アメリカ大統領選挙で両者の識別に使った良識派対非良識派とは似ていますが異なります。何故なら英国で離脱派を主導する人たちの言動の中に、トランプの主張のような暴言はないからです。トランプは「メキシコ国境に万里の長城を作って、カネはメキシコに払わせる」とか、宗教差別や男女差別のような暴言を吐き続けています。

  英国の離脱派には若干トランプに似てポピュリズムの旗手と見られているボリス・ジョンソンがいます。元ロンドン市長で現在は保守党の議員ですが、次期保守党党首最有力候補です。離脱のメリットを叫び続けますが、トランプほどの暴言は吐いていません。

  残留派は思わぬほど苦戦しています。その理由は、離脱派の主張が「反移民」とか「EU分担金はNO」とか、とても分かりやすいワンフレーズであるのに、残留派の言い分は長たらしい説明にならざるを得ないからです。

  反移民は何故いけないか、分担金は何故必要かなどは、かなりの長文で説明する以外、簡単には説明しきれないためアピール力に欠け苦戦を強いられているのです。

  さらに「EUは英国の独立を奪い、非民主主義的である」というような単純な主張に対し、そうでないことを即答することは極めて難しいのです。

  ではその長たらしい説明を理解しようとする知性派と、分かりやすいワンフレーズにしか反応しない反知性派の戦い、勝負はどうつくのでしょうか。

  私の見通しを率直に申し上げますと、最後は残留派の勝利に終わると見ています。以下その理由を説明します。

  長たらしい説明は避け、簡単にいきます。

・反移民に対してはキャメロン首相がEUから移民の人数を漸減させる合意を得ていること

・経済的メリットとデメリットは、個別の分野の積み上げを総合的に計算すると明らかに残留に軍配があがること

・離脱派が勢いを増すごとにポンドとロンドン株式市場がひどく下落していること。特にロンドンは欧州の金融拠点であるため、金融機関の株価下落がきつい

・EUが英国の独立を奪い、非民主主義的だという点に関しては、EUが見せたこれまでの譲歩が一方的にEUの独裁ではないとの根拠になっているが、これは数字では明らかにできないため、白黒はつけがたいと思われます。

  これらの理由により、最終的には残留に軍配が上がると思っています。


  では最後に国際政治と地政学上のリスクの専門家で、私の尊敬するイアン・ブレマー氏に聞いてみましょう。彼は先週、英国の国民投票に以下のようにコメントを付けています。

『離脱派はポリュリズムに傾斜し、現状への不満や不安を利用した扇動に走っている。英国が離脱したら大きな打撃をヨーロッパだけでなく世界の経済や政治に及ぼす。移民問題や、貧富の格差、そして不安が英国民を内向きにさせている。離脱派はEUに政治的なメリットを見出していないし、ユーロという通貨にも懐疑的である。もともと英国に欧州への忠誠心はないため、EUに残るメリットは経済メリットのみである。

しかしそれらとてもは狭い了見だ。もっと根本問題に目を向ける必要がある。最後は残留派が勝つと思われるが、たとえ勝ったとしても僅差だと政治的混乱は解消しない。55対45くらいで決まれば、かなり落ち着くだろう。』

彼の分析はいつも鋭く、毎年年初に「今年の世界の十大リスク」を発表しますが、注目に値する予測です。

  ということで、最後は私の見方をイアン・ブレマー氏に補強してもらいました。来週、23日には結論が出ますが、しっかりと注目していきましょう。

以上です。

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