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大丈夫か日本財政17年版 その2 日銀保有の国債はどうなる

2017年05月23日 | 大丈夫か日本財政

    日本のことに戻ります。前回は日銀による巨額の国債保有リスクに関して、金利上昇の及ぼすインパクトをシミュレーションしてみました。

  前回記事の一部を引用しますと、

日銀の保有する国債のポートフォリオの全体像は、

償還までの平均残存年限;8年5か月

平均クーポン金利;1.08%

保有残高は昨年12月末で410兆円です。

(前回の記事では、何故か16年12月末の数字が420兆円と間違っていましたので、ここで正しい410兆円に訂正させていただきます。すみません。)

平均年限8年5か月の金利がそれぞれ3・5・7%に上昇した場合、価格100の債券が、どれだけ安くなり評価損が出るかを計算しました。

        3%   5%    7%

価格     86.5%  74.7%  64.7%

評価損    55兆   104兆  145兆

  クーポン金利1.08%の国債価格は、8年5か月の市場金利が3%に上昇した場合、100の価格が86.5に下落します。減価分13.5%を金額に換算すると、それは55兆損をした、となります。同様に5%に上昇すると104兆円の損、破綻に近いと言われる7%なら価値の3分の1が毀損され、145兆円の損失と計算できます。

  では、そうした大きな価格の減価が日銀のバランスシートに与える影響を見てみましょう。それが今回のメイン・テーマです。

  まず日銀のバランスシート上、自己資本がどれくらいあるかを見ます。日銀のサイトで、バランスシートを見ることができます。今年の3月末で引当金と準備金の合計は、わずか7.7兆円しかありません。資本金という項目もありますが、わずか1億円なので端数にもならず、無視します。

自己資本比率で言えば、  7.7兆÷490兆=1.6%

  極めて低い自己資本比率しかありません。破たん寸前のリーマンでも3%でした。自己資本の額は7.7兆円ときわめて端数に近い数字です。金利が3%になっただけで評価損が55兆も出るので計算上吹き飛んでしまいます。47兆円もの債務超過となる。それが金利上昇による損失のインパクトです。

  日銀の場合、名目の資本金は昔から1億円と決まっていて、日銀のもうけは政府が吸い上げるのと、引当金と準備金に組み入れられるため、民間企業の自己資本はこの2つの合計額である7.7兆円になります。

  前回は触れませんでしたが、今一つ指摘されている問題があります。日銀は国債を無理やり買うために、価格を釣り上げて購入してきました。そのためオーバーパーの国債を多く買っています。オーバーパーでの購入とは、償還価格が100と決まっている債券を、103とか105とかで買うことです。するとその分は償還まで保有しようがしまいが確実に損失が出ます。その累積額を細かく計算した推定値は16年9月末で8.7兆円と計算されています。その後も購入を続けているので、10兆円くらいには達しているはずです。しかし金利変動による数十兆円の損失に比べれば、もののかずではありません。それでもオーバーパーによる損失だけで自己資本の7.7兆円は吹き飛びます。もっとも最近の国債発行は非常に低金利のため、逆に大したオーバーパーの価格を示さなくても買える状態ですので、低金利下ではこの分の損失はさほど大きくなりません。

  では、ちょっと興味ある比較数字を見てみましょう。それは日銀のバランスシートの比較です。いわゆる「異次元緩和」を引っ下げてクロちゃんが登場したのが13年4月ですから、その直前の3月末と4年後の現在、17年3月末の比較をしてみます。

          13年3月31日     17年3月31日  兆円

資産   国債    125兆         412兆    3.3倍

     貸付金    25兆         44兆

     ETF      0          13兆

         その他    14兆          21兆

資産合計       164兆         490兆    3倍

 

負債   銀行券    83兆                    100兆

     当座預金   58兆          343兆   6倍

     その他        17兆                     35兆

資本

      引当金    3.2 兆         4.5兆

      準備金    2.7兆          3.2兆

負債・資本合計       164兆         490兆

 

   異次元緩和のおかげで、わずか4年で資産合計が164兆から490兆と3倍になっています。490兆円とは、日本のGDP総額に匹敵します。もちろんそれに見合って負債・資本合計も3倍になりました。現在の資産の中身ですが490兆円のうち412兆、84%が国債です。

   一方の負債ですが、13年に58兆円だった当座預金は343兆円と6倍になりました。これが金融機関のブタ積みの数字です。世の中に出回っている日銀券はその間に83兆円が100兆円と、わずか17兆円、2割ほどしか増えていません。

  何度も申し上げてきた通り、日銀がいくら国債を買おうが、世の中におカネは出回らずブタ積みばかりという実態が、このバランスシートの比較に表れています。

   クロちゃんはこの後始末をどうつけるつもりなのか。先日の会見では記者が「もう打つ手がないのでは」と質問すると、つぎのように答えています。

  「国債の4割は買ったが、まだ6割は市場に残っているので、いくらでもやる手はある」

  いくらやっても無駄なのに、まだいくらでもやる手は残っているとウソブク。おそろしやクロちゃん。

   その一方、政府は2020年度にプライマリーバランスを均衡させるという目標を、できそうもないので先送りすると言い始めています。

  つづく

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トランプ弾劾はあるか

2017年05月19日 | トランプのアメリカ

「トランプは弾劾されるの?」
「弾劾されたらアメリカはどうなるの?」


という難しい質問が何人かの友人たちから寄せられました。タイムリーな質問なので、今回はそれに対する私の見方を書くことにします。


  トランプの支持率を毎日フォローしているいくつかのサイトがあります。例えば世論調査では老舗で信用のあるギャラップ社や、多くの調査のおまとめサイトで、ギャラップ社の結果も含むリアル・クリアー・ポリティックスなどです。


Gallup社;http://www.gallup.com/poll/201617/gallup-daily-trump-job-approval.aspx


Real Clear Politics社;http://www.realclearpolitics.com/epolls/other/president_trump_job_approval-6179.html


  それらのサイトでのトランプの支持率がこのところのトランプを巡る混乱発生と同時に大きく低下しています。多くの調査で支持率は30%台に突入しました。日本の首相は3割台になると危険水域だと言われます。はたしてトランプはどうか。


   今回の弾劾騒ぎの直接の原因は大統領選の最中のロシアによる選挙介入疑惑で、キャンペーン最中に大統領の関与があったか否かです。しかしその後FBIによるマイケル・フリン元補佐官への調査が進む過程で、トランプが最近解任されたFBI元長官コミーに対し「追求から手を引け」と逆襲した疑惑が持ち上がりました。コミー氏の面談メモがそれを示していました。議会はまもなく彼を証人喚問します。


  最近に至ってもロシア疑惑への追及の手を緩めないコミー氏を大統領は10日ほど前に解任しました。それが逆に大統領による司法への不当介入だという疑惑も生じ、これには共和党内からも非難の声があがっています。解任劇がニクソン元大統領による特別検察官の解任と重ねあわされ、ウォーターゲートならぬロシアンゲートだとマスコミの追及も一段と厳しさを増しています。

  とまあ、サイコパスの特徴の一つである異常人格ぶりをいかんなく発揮しているかわいいトランプちゃん、ここでもまた自己弁護=墓穴堀りを連発しています。


墓穴その1.司直の手が迫ると解任し、ヤバイことを自ら認める


墓穴その2.「解任は自分の判断だし、就任前から考えていたことだ」と声明を出し、「解任は司法長官のすすめだ」という補佐官や副大統領の説明を完全否定
司法省は急きょ作成した「解任のおすすめ」文書をソデにされ、怒り狂い、「その文書は大統領に要求されて出した」と、自らの意志でないことを内部告発しています。


墓穴その3.「オレ様ほどマスコミからひどい扱いを受けている大統領ないない。歴史上最悪の扱いだ」と演説などでブチまくった。その言葉自体、自分が史上最悪の大統領であることを認めていることになるのをわかっていない(笑)


  とまあ、相変わらず墓穴を毎日掘ってどんどん深くしているのですが、ではいったい弾劾される可能性はあるのでしょうか。


  こんなニュースが流れています。昨日のロイターによると、PredictItという賭けサイトでは17年中の弾劾確率が3割程度となり、ロンドンのブックメーカーでは早期辞任を56%の高率だと報道しています。

  では弾劾とはどういうプロセスを経るのでしょうか。これも最近のロイター記事から引用します。

<米国大統領弾劾のプロセス>

「米下院」(議席数435:共和党238、民主党193)

1)下院議員あるいは特別検査官の助言などで下院が弾劾を発議
2)司法委員会、議事運営委員会が訴因調査を決議
3)司法委員会が調査、過半数の指示で弾劾勧告
4)下院全体で協議後、過半数(218議席)の賛成獲得で訴追が決定し、上院へ

「米上院」(議席数100:共和党52、民主党48)

1)上院で審理開始。最高裁長官が裁判長、上院議員は陪審員、下院調査担当者が検事役、ホワイトハウス法律顧問が弁護士役となる
2)公聴会を開催後、上院全体で審議
3)上院の3分の2(67議席)による賛成で大統領は罷免される


   以上を簡単に要約すれば、下院の過半数と上院の3分の2の賛成が必要だということになります。


  私自身は、弾劾は長期にわたる大変なプロセスだし、決定的証拠をロシア側に頼ることにもなるため、かなり難しいと思っています。


  しかし彼にはもう一つ、アキレス腱があります。それは「自分から投げ出す」というやりかたです。

  トランプが就任してしばらくして私は、脳科学者中野信子氏による「トランプはサイコパスである」という文芸春秋の記事を紹介しました。彼女の結論が「飽きて投げ出す」でした。


  まずサイコパスに関する一般的説明を復習します。サイコパスとは、

「一般的に正常とされている人格から逸脱しており、その人格が原因で自分自身や社会を悩ませる人と考えられています。具体的には、他人に対して冷淡、共感することができない、良心を失い罪悪感が全くない、自分の行動に対して責任を持つことができない、嘘をつくことが当たり前、非常に自己中心的、口が達者で表面だけで見ると魅力的に感じられるなどといった特徴があります。」

  彼は100%該当します。


  そして中野氏の指摘を引用しますと、サイコパスならではの弱点とは以下の2点だと述べています。


1. エサを与えれば人心をつかめると信じていること
人は彼の与えるエサだけでコントロールできるものではなく、裏切る可能性があるが、サイコパスにはそれが理解できない


2. 飽きて投げ出す
サイコパスには飽きっぽい人が多く、利害のみが物事の判断基準となっているため、長期的人間関係を築くことができない。大統領職が自分の価値を発揮できないとみれば、躊躇なく辞任する

   私も中野氏の投げ出し説に賛成します。


  弾劾にしろ投げ出すにしろ、早いにこしたことはない。それが世のため人のため!

   トランプが辞任したらアメリカはどうなるのかについては、次の機会に。

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大丈夫か日本財政17年版 その1 日銀保有の国債はどうなる

2017年05月14日 | 大丈夫か日本財政

  かわいいトランプちゃん、大きな墓穴を掘りまくっていますね。しゃべりすぎる犯罪者が自らボロを出し墓穴を掘るのを見ているようで、ほほえましい限りです(笑)。FBIの元長官コミーに対しても、「いいか、だまってろよ!」と毎日ツイートしています。そうすればするほどマスコミが喜ぶのにね。

  長官の解任理由を3日で完全に変更してしまったら、解任理由書を示しめして説明した報道官や副大統領が怒るもの当然です。その上「もう毎日のブリーフィングはしない」だとか、相変わらずのやんちゃぶりに、政権内部もだいぶいら立ちが目立ってきています。いつまで内部が持つのかも注目です。

  CNNでは著名批評家が、「アメリカ大統領に小学1年生が就いた」という批評を投稿していました(爆)。納得です。

 

  日本ではアベチャンが先走って、20年までの憲法改正を宣言し、野党だけでなく党内からも批判を浴びています。暴れる北朝鮮を使って改憲ムード高めようとするやり方が強引すぎるのでしょう。憲法学者のほぼ全員が憲法違反だという集団的自衛権を成立させてしまったのだから、それ以上何が必要なのでしょう。緊急性への対処は十分すぎるでしょう。

  と書くと、平和ボケとい批判が聞こえてきそうですが、この政権の三権分立の無視ぶりや違憲立法を見ていると、憲法などないも同然。改憲など全く無用にしか思えないのです。

   何度も申し上げますが、私は自衛隊を必要だと思うし、それに合わせたウソのない憲法を持つべきだと思っていました。しかし違憲立法をする安倍政権がいる限り、そのまま9条にさわらないほうがいいと思うようになりました。

  9条には、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」とあるのに、全く無視するのですから。「国防軍は持てる」などとしようものなら、空母どころか戦略核兵器だって保有しそうです。


  さて、言いたい放題言ったあとは、日本の話題に移ります。初回は日銀です。大利根決戦が終わったところで、私とクラスメートが話をした場面に戻ります。話題は日銀の黒田氏が18年に再任されるか否か、私の質問に大手金融機関のトップにいた友人が答えている話でした。

引用

私が友人に「こうした人事を見ると、黒田氏の再任は決まりかな?」と聞くと、彼は「今さら安倍さんも黒田氏を放り出せないよ。これまでのすべてを否定することになるしね」、と回答。

「じゃ、ますます緩和に突っ走るの?」。

「それしかないだろうな。そのつもりの人事だもん」

「出口はどうなるの?」。

「そんなものないよ。インフレさ。インフレで国の借金を実質帳消しにする以外に手はないだろう」。

「インフレで金利が上がったら日銀は大損して、信用を失うよね。保有国債の値洗いをしないことにするのかな」。

「もちろんそうさ。持ち切れば値洗いなしってことにするのさ」

「でも日銀は保有国債のポートフォリオを公表しているから、専門家はよってたかって値洗いしちゃうでしょ」。

「そうだな。でも、『だからどうした』って開き直るのさ(笑)。それを見た国債市場は売り一色になって、円も暴落だろうな。それが本格インフレの開始のサインだよ、きっと」。

  最後に私が「もっとも市場には売る国債も残ってないかも」というと一同爆笑で議論は終わりました。

引用終わり

  日銀は買える国債が少なくなったため、単なる国債の爆買いからイールドカーブ・コントロールなどという屁理屈をつけて国債の買いのペースをダウンさせています。しかし買っていることに変わりはなく、いまだに市場に存在する日本国債の価格変動リスクを市場から消し去ろうとしています。

  友人は価格変動リスクを覆い隠すため、日銀はきっとすべての国債を償還まで持ち切ることでリスクはないとしてしまうだろうとのことでしたが、私は債券の専門家なので、日銀保有国債の値洗いシミュレーションを簡便法でやってみます。

  値洗いシミュレーションとは、もし将来金利が上昇した場合、日銀はどれほどの評価損を抱えるかの試算のことです。

  シミュレーションに必要なのは、保有残高と保有国債の残存年限、利回り、さらに厳密には購入単価ですがそれだけは除いて計算します。このシミュレーションでは国債1本ずつの計算をするのは不可能ですので、すべて平均値を使い、国債の束を1本にまとめて計算します。結果は当たらずとも遠からずで、およその数字を把握することが可能です。

  まず日銀の保有国債の残高は、16年12月末の資金循環統計で長短国債合わせて420兆円です。その加重平均クーポン利率は公表されていないので、財務省が公表している残存国債全体の加重平均クーポン利率を適用します。日銀は長短国債をおよそ残存国債全体に合ったかたちで保有していますのでそれで当座の用は足ります。

  加重平均クーポン利率は1.08%です。長短すべての残存国債を合わせて加重平均しても、たったの1.08%とは驚くべき低さです。まだ過去の高い金利の分が残っているのに。そして同じく残存国債の平均年限は8年5か月です。これらの数字をもとに、保有国債全体をクーポン金利1.08%、年限8年5か月の1本の債券として価格変動をシミュレーションすることにします。

  8年5か月の1.08%の金利が、それぞれ3・5・7%に上昇した場合、価格100の債券が、どれだけ安くなり評価損が出るかを計算します。結果は以下のとおりです。

        3%   5%    7%

価格     86.5%  74.7%  64.7%

評価損    56.7兆  106兆  148兆

  数字の見方は、クーポン金利1.08%の国債価格は、市場金利が3%に上昇した場合、100の価格が86.5になる、というように見ます。減価分13.5%を金額に換算すると、それは56.7兆損をした、となります。同様に5%に上昇すると106兆円の損、破綻に近いと言われる7%なら価値の3分の1が毀損され、148兆円の損失と計算できます。とても恐ろしい数字です。

  では、次回はその評価損のインパクトが日銀のバランスシートに与える影響を見ることにします。

 

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一山越えたEU危機と、イギリスのしまった

2017年05月08日 | ニュース・コメント

  みなさん、連休はいかがでしたか。

  今年は天気に恵まれたので、旅行やスポーツには最高でしたね。

  私は娘夫婦とゴルフに1回行った以外は、主夫をしていました(笑)。家内のキャットシッターが一番忙しい時期なんです。開業して1年半ほどが経ち、お得意さまも定着したようです。ただ需要の山と谷の差が激しいので、今後はいかに平日のお得意様を多く確保するかが課題だとのこと。平日のニーズはどこにあるかと申しますと、仕事で出張の多い方と、病院関係や交通関係で、シフト勤務の方だそうです。

 

   さて、フランスは無事に選挙を終えましたね。

  BREXITやトランプの結果を受け、「世論調査は間違う事があるものだ」、フランスも安心はできないという人が多くいましたが、今度は間違わなかったのでしょうか。数字ヲタクの私は実はそうは思っていません。

  「世論調査はサンプリングなので、誤差があるものだ」なのです。

   BREIXTもアメリカのトランプ勝利も、もともとかなりの接戦で、最後の世論調査と最終結果は誤差程度の数字の差でした。実は今回もそうです。最終段階の調査はマクロン63対ルペン37くらいでしたが、やはり誤差は当然あって、最終結果は66対34でした。別に「今回は世論調査が当たった」ではないのです。

   BREXITとトランプは世論調査上の白黒と結果が反対の黒白だったので、「世論調査は間違えるものだ」という解説がなされました。世論調査はサンプリングなので数ポイントの誤差は当然あるものです。つまり接戦では白黒が逆になることは当然あるのです。

  世論調査の人たちが労働者や農民の本音を知らないから間違うのではありません。間違うのはサンプリングの不備だったり、統計上当然生ずる誤差だったりします。ですので、私は今後も、将来予想の世論調査をしっかりと見ていきますし、誤差を前提の上で大いに参考にしていきます。

 

   ルペンが負けたことで「EUの大きな波」は乗り越えたと思われます。ルペンをあからさまに応援していたトランプさん、プーチンさん、残念でしたー(笑)。

  今後注目される夏のドイツ議会選挙は、このところの地方選挙の結果から波乱はないと予想されています。ドイツの後は世界に大きな影響を与える選挙はありませんので、大きな波は乗り越えたと私は見ています。ただマイナーですが反EU的な動きが、昔の東欧諸国からかなりの勢いで起こっていますので、地政学上の大リスクとまではいきませんが、小さな波は続くでしょう。

   しかしそうした小さな波も、イギリスがBREXIT交渉で厳しい現実をEUから突き付けられているのを目の当たりにすると、萎縮するに違いありません。ギリシャしかり、イタリアもしかり。

  イギリスの甘い期待は、どんどん打ち砕かれています。イギリスはBREXIT交渉と同時並行で、離脱後FTA(個別の自由貿易協定)に移行するための交渉開始を希望していましたが、EUに一蹴されています。「まずは離脱条件の締結が先で、その後のことは離脱交渉が成立してからだ」、と言われてしまったのです。これはEUの全会一致のおまけつきです。

  そもそも反EUの動きに神経をとがらせているEU本部やドイツが、甘い交渉をするわけがありません。それに加えてドイツに次ぐ勢力のフランスでEU派のマクロンが完全勝利をおさめたのです。

  離婚は言い出しっぺの負けに決まっています。しかも男女の離婚より始末が悪いのは、交渉期限までついていることです。

  2年後の3月末、交渉期限がきてもまとまっていなかったらどうなるのか。

  単に放り出されるだけで、放逐された側は何も得られません。それどころか現在手切れ金としてEUが要求している分担金は7兆3千億円に達しますので、それだけは条件なしに払う必要があります。

  では、放り出されたら何がどうなるのでしょう。BBCが報道していた不都合な真実を列挙します。

1.国家として当然保持しなくてはならない様々な法律約1万2千件が不足する。EU加盟国は自国法とEU法がバッティングするとEU法が優先するため、自国法などほとんど無視してきたので、離脱がこうした事態を招くことすら予想できていなかった

2.EUからの補助金を当てにして運営されている研究機関や酪農などの資金手当てをしなくてならない。これも毎年数千億円単位になる

3.EUへの輸出に関税がかかる。当たり前のことですが、FTAなどの手当ができずに放り出されると、イギリスに工場を持ってEUに輸出している自動車産業などは10%の関税をかけられ、圧倒的に不利になる

  これらの不都合な真実を突きつけられたイギリスでは、「しまった」と言う声が起こっていると報道していました。

  さー、どうするメイ首相。解散選挙などやっている場合ですか?

  こうしたイギリスを見ていれば、大統領選に臨んだフランス人のこころは大きく揺れ動いたはずです。第1回の投票でマクロンが得た支持率はたった24%。ルペンは21%でかなり拮抗していました。しかし1回目の直後からマクロン対ルペンの支持率は6対4と大きな差が生じていました。その裏にはこうしたEUを出ることで突きつけられる不都合な真実があったのです。離婚率の大きなフランスだから、余計に身につまされたのかもしれません(笑)。

  今後EU離脱の声をあげそうなのは東欧諸国です。しかし彼らの深刻さはイギリスどころではありません。何故ならポンドを持っていたイギリスと違い、独自通貨をでっちあげなくてはならないからです。

  元々の通貨のひどさは、国民の誰もが長年痛感していました。それに戻ることなどできっこない。大きめの国であるイタリアのリラやギリシャのドラクマですら、不安定通貨の代表選手でした。ましてや東欧通貨など、自国民ですらだれも信用などしていませんでした。

  ということで、私には揺れ続けた欧州が一山越えた、と見えるのです。しかしこれだけでは必ずしも反グローバリズムが終焉に向かうとまでは行きません。トランプが吠え続けるからです。そして地政学上のリスクの焦点は東アジアに移りつつあるように思えます。

  今回は大きなイベントがあったためまた海外の話題になりましたが、次回から日本に移ります。

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大利根の決戦

2017年05月02日 | 日本の金融政策

  カテゴリーは「日本の金融政策」なのですが、ゴルフの話題から。

  昨年来の勝負の約束に、決着がつきました。昨年末の忘年会で、ゴルフで私に戦いを挑んできたクラスメートとの一騎打ちの結果をお知らせします。

  別にゴルフのことをみなさんにお伝えするのが目的ではなく、大手金融機関のトップにいて、依然としてリタイアせずに関連会社の現役会長である彼との意見交換をみなさんに伝えるのが目的なのですが、せっかくなのでゴルフの勝負の結末もお伝えします。

  4月の終わりに利根の河原じゃなくて、大利根カントリークラブでの決戦に臨みました。昨年末にスケジュールを調整したのですが、彼が空いている週末がなんと4月29日だったのです。いまだに日本の金融機関のトップはゴルフをやりっぱなしなんですね(笑)。

  ゴルフの勝負には全くハンディを考慮しない実力勝負もありますが、今回のやり方はお互いのオフィシャルハンディの差をそのまま適用するハンディ戦です。

  私と彼のハンディ差はちょうど10。例えば私が80ストロークで彼が90ストロークであれば、差がちょうどハンディ分なので勝負なしの引き分けとなります。

  大利根カントリークラブは私の大好きなコース・デザイナー井上誠一が設計し、男女ともに日本オープンゴルフ選手権などの公式戦をはじめ、多くのトーナメントを開催する日本屈指の難コースです。その日は朝から快晴で絶好のゴルフ日和。クラブ競技が行われる日でもあり、グリーンはとても早く、ピン位置はかなり難しい設定でした。

  私はこのコースは20年ぶりくらいのラウンドのため、井上誠一が仕掛けた各ホールの落とし穴など記憶から抜け落ちていて、かなり苦戦しました。そのため今年の平均スコアよりも10ストロークほど多く叩きました。一方彼はアベレージゴルファーのため難コースにてこずり、普段の平均スコアより相当悪いスコアとなってしまい、結果はハンディ考慮前で私とは18ストロークの差。ハンディを差し引いても8ストロークの差で私が勝ちました。

   我々の他にクラスメートの見届け人2人がプレーを伴にしたのですが、彼らの腕前もアベレージゴルファーのためいつもよりかなり悪く、やはり平均より20ストローク前後多く叩いていました。井上誠一に脱帽です。

   ということで、昨年末の忘年会で決戦を誓い、やっと実現した勝負でしたが私の勝利に終わり、彼が試合後の飲食代を奢ってくれました。

   プレー後は経済の見通しや金融市場動向の話になりました。今回は特に日銀の新審議委員や黒田総裁の任期、そして出口戦略に関して、あらましをみなさんにお伝えします。


   まず日銀の審議委員の交代人事についてです。審議委員のうち2名が7月に任期を迎えるため、交代の人事案が示されました。任期を迎えた2名はいずれも白川総裁時代の任命で、黒田総裁の超緩和策に対してたびたび反対票を投じてきました。

  安倍首相になってからは黒田総裁をはじめいわゆるリフレ派を任命してきたのですが、今回もごたぶんにもれず、バランス感覚のある2名をリフレ派に変更することになりました。

   この人事について4月18日のブルームバーグを引用します。

政府は18日、日本銀行の審議委員に三菱UFJリサーチ&コンサルティング経済政策部上席主任研究員の片岡剛士氏、三菱東京UFJ銀行取締役常勤監査等委員の鈴木人司氏を充てる人事案を国会に提示した。

片岡氏は44歳。経済政策の調査に約20年間携わっており、理論やデータに基づく「分析手法は高い評価を得ている」という。「アベノミクスのゆくえ-現在・過去・未来の視点から考える」などの著書がある。慶応大学大学院商学研究科修士課程修了。昨年4月、自民党の有志議員の勉強会「アベノミクスを成功させる会」(会長・山本幸三地方創生担当相)に講師として出席し、消費増税の凍結を提唱した。代替の社会保障財源として相続税や資産課税の強化を挙げていた。

  昨年11月4日付の片岡氏のリポートでは、「2%のインフレ目標に向けたモメンタムが維持されているとは全く思えない」とした上で、「早期の追加緩和という具体的なアクションを行うことが定石であり、かつ必要である」との見解を示していた。

  鈴木氏は63歳。1977年に慶応大学経済学部を卒業後、当時の三菱銀行に入行した。東京三菱インターナショナル・ロンドン副社長を経て、三菱東京UFJ銀行の市場企画部長や副頭取などを歴任し、2016年6月から現職。金融市場の実務に精通していることや国内外の幅広い人脈が評価された。

引用終わり

  以下は一問一答の形式にしてあり、彼の意見は太字にしました。

  私が今回の人事について、「あまりにもミエミエで、緩和に歯止めのかからなくなる人事だね」と言うと、彼も「そのとおりだ」と同意していました。

  さらに私が「二人とも慶応で三菱って、いいのかな?」と問いかけると、彼は「一人は銀行じゃなくてリサーチだから、それは特に問題ないと思うよ」とのこと。

  私が「こうした人事を見ると、黒田氏の再任は決まりかな?」と聞くと、「今さら安倍さんも黒田氏を放り出せないよ。これまでのすべてを否定することになるしね」、と回答。

「じゃ、ますます緩和に突っ走るの?」。

「それしかないだろうな。そのつもりの人事だもん」

「出口はどうなるの?」。

「そんなものないよ。インフレさ。インフレで国の借金を実質帳消しにする以外に手はないだろう」。

「インフレで金利が上がったら日銀は大損して、信用を失うよね。保有国債の値洗いをしないことにするのかな」。

「もちろんそうさ。持ち切れば値洗いなしってことにするのさ」

「でも日銀は保有国債のポートフォリオを公表しているから、専門家はよってたかって値洗いしちゃうでしょ」。

「そうだな。でも、『だからどうした』って開き直るのさ(笑)。それを見た国債市場は売り一色になって、円も暴落だろうな。それが本格インフレの開始のサインだよ、きっと」。

  最後に私が「もっとも市場には売る国債も残ってないかも」というと一同爆笑で議論は終わりました。


  次回からは「トランプのアメリカ」の話題から、日本の話題に舵を切ることにします。

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