ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(フィクストインカムの専門家)

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トランプのアメリカに投資しても大丈夫か?

2016年12月02日 | 米国債への投資

   トランプは選挙中も選挙後もツイッターにより世界を右往左往させています。私は彼のそうしたツブヤキなど商売のやり方同様、相手を煙に巻くための、ハッタリ、ウソ、ブラッフなどがほとんどで、まともに相手をしても意味はない、と申し上げてきました。10倍に吹っかけておき、取れなくて元々。1つか2つ取れれば上出来というのが彼のやり口です。

  もっと言えば、彼のツブヤキなどにいちいち反応せず「無視しろ」といいたいのですが、報道しなければならないマスコミや攻撃対象となった人々は無視できません。そうした方々には、「お気の毒に」、と言う以外ありません。

  気まぐれトランプの出現に揺れるアメリカですが株式市場は超楽観的で、トランプの政策のいいとこ取りをして上昇しています。逆に米国債は売られていて、金利が上昇。それに対し私は「チャンス到来」と申し上げました。

  しかしみなさんの中には、トランプ政権が最短でも4年、最長8年も継続したら、アメリカは本当に大丈夫か、と思われる方もいらっしゃると思います。そこで今回から短期展望とともに、ちょっと先の展望もしておきましょう。

  この数か月の短期を展望すると、私はトランプ効果による株高・債券安は、日本におけるアベノミクス宣言と黒田バズーカの域を出るか出ないかがせいぜいだと思っています。

  みなさんは「グレートローテーション」という言葉をご存じでしょうか。アメリカの金融市場で今起こっている、債券から株式への大きな資金シフトを指します。この言葉は13年に言われ始めた言葉で、FRBがテーパリングを終え、つまり国債の買い入れを終了し、その後は利上げもありうるという予想が出た頃の言葉です。その時債券価格は一時大きく下落し、イールドは2%から3%へ、1%くらい高くなりました。その後は債券がまた買われ、今年に入ってからは10年物国債の金利が1%台で定着してしまうほどになってしまいました。今回も金利上昇つまり債券売りと、株高が同時出現し、この言葉が使われ始めています。

  私は今回も本格的かつ長期的グレートローテーションには至らず、アベクロコンビの二の舞プラスアルファがせいぜいだと思っています。

  何故二の舞なのか。トランプの政策は以下に述べるように、実現性が薄いものが多いからです。プラスアルファは、潜在成長力のないままに導入されたアベノミクスと違い、アメリカは依然として潜在成長率が高く、しかも世界のイノベーションをリードする力を保持しているからです。つまりある程度裏付けのある株高・債券安なので、その分がプラスアルファになる可能性があるということです。

  ではまずこれまでにトランプが出した政策のうちの主な経済政策を並べ、順番にコメントします。主な点は3つです。

1. 法人税減税、所得減税

2. 保護主義

3. 財政出動によるインフラ整備

  まず1の減税から。今週財務長官に決まったと報道されたムニューヒン氏も法人税は減税すべきだと言っています。財源のあてなしでどこまでできるのか疑問ですが、実行されれば財政の赤字拡大を通じて、金利上昇に寄与するでしょう。これは大企業優先策で、労働者階級に恩恵はほとんどありません。そして将来の先進国間の減税競争を招きます。

  一方個人の所得減税はどうか。今回のトランプの票集めのポイントは、白人労働者の主張である格差解消でした。1%の高額所得者が18%もの所得を得ているのは不公平だというものです。税制の改正は、それを是正するための最高の材料であるはずが、これまた実は正反対になっています。高額所得者に対する減税幅が低所得者より大きいのです。

  そしてこの減税も税収を減らすため、金利には上昇圧力になります。

  もっともこの所得の格差議論ですが、もし逆にこう書かれていたらどうでしょう。

   「99%の人々が全所得の82%を得ている」

  この言葉にみなさんはどういう印象を持たれるでしょうか。こう書いてあると、「まーちょっと足りないけど、そんなもんか」というのが正直な印象かもしれません。

  それはさておき、この所得格差は最優先で是正しなければいけないはずなのに、トランプはそれで票を集めておきながら高額所得者の税率を最も下げるという、ほとんど詐欺と言えるような公約を掲げて当選しています。私の不安はここにあります。

  トランプ支持者は、これほど明らかな詐欺的政策を吟味もせずに支持する人達ですから、今後トランプのやることにどんなに激しい矛盾が出てウソがばれても、文句ひとつ言わずに妄信し続けることでしょう。それこそが私が最も懸念するところです。

  次は2の保護主義についてです。これはあまり心配していません。TPPはもともと始まっていないので、皮算用がまさに皮算用にすぎなかっただけです。昨年のTPPの議論の時私は、「これが決まって実行されても、日本には大きな影響なし」と申し上げています。理由は関税引き下げの速度があまりにも遅く、率もきわめて小さいからです。そしてTPP交渉で「日本が勝ち取った」ということは、「日本の消費者は負けた」ということだとも申し上げました。何度も申し上げますが、

  「業界の得は消費者の損」

  もっとも全体の方向は自由化するので消費者にとって決して悪いことではありません。そして実は厳しい競争こそ業界の体質強化につながるのです。オレンジの自由化で日本のみかん農家は壊滅どころか、非常に強くなったことを例に挙げました。

  TPP廃棄で残念なのは、中国牽制政策のかなめの一つがなくなり、中国を中心とする協定が支配しかねないことです。

  一方、すでに20年前から実施されているNAFTA、北米自由貿易協定はTPPと違います。これを本当に廃棄しメキシコからの輸入品に彼が言うように35%もの関税をかければ、アメリカの消費者が悲鳴を上げます。しかしこの公約もすでにデイワンの宣言からはずれているので、すぐには廃棄されないでしょう。

  対中国はどうか。為替操作国と認定し、輸入品に45%の関税をかけると言っています。すると衣料品や毎日使う日用品の価格にそのまま上乗せされ、貧困層・低所得者層は、悲鳴どころか干上がってしまいます。これも反貧困層政策です。

  中国がそれに対し「WTOに提訴する」と言えば、トランプは「そんなものは脱退してやる」と吠えるでしょう。

  しかし、もともと共和党は自由貿易主義を標榜している政党なので、トランプの言いなりにはならないでしょう。彼は共和党全体を敵に回してまで戦うことはなく政策を撤回し、選挙民には「自分は悪くない、悪いのは共和党議員団だ」と言い逃れるでしょう。

  こうしてTPPやNAFTA、対中国政策などを見れば、たとえ大統領の裁量だけで実行可能な政策があったとしても、「トランプの保護主義政策のほとんどは、のろしを上げただけで終わる可能性が高い」と私は見ています。

  保護主義と言う名のお門違いの懐古趣味、自国産業優先策、輸入制限と海外移転阻止。メキシコからの輸入品には35%の関税を課し、中国からの輸入には45%の関税を課し、日本の自動車には38%だという、おバカな政策など実行できるはずはないのです。

  数十年も昔にすでに海外に移転した産業を、自国に戻せるはずはありません。先日もグローバリゼーションについて語ろうで述べた通り、鉄鋼業ひとつとっても、アメリカ人の一人当たりGDP56,000ドルを、中国人並みに8.000ドルに下げられるのか。でもそうしなければアメリカ国内で鉄鋼業の全面復活などできっこないのです。

  最後は簡単に4のインフラ投資についてです。

  これまた財政支出を直接増やすため、長期金利の上昇要因です。

  アメリカは日本と違い、国を挙げてのゼネコン国家ではありません。インフラの更新が遅れていて必要なのは確かですが、失業率わずか4.9%の中でどうやって労働力を確保するのか。しかも3Kの代表である建設労働はこれまで白人が避けてきた仕事で、移民が労働者の大半を占めます。移民を排斥する政権が、大々的なインフラ整備を白人労働者に低賃金でやらせることなどできるのでしょうか。極めて疑問です。

つづく

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安倍首相がトランプに贈ったドライバー

2016年11月29日 | ニュース・コメント

  先週土曜日の朝、FMラジオのゴルフ番組で聞いたゴルフ話です。番組ホストのプロゴルファーT氏とゴルフ・ジャーナリストU氏の会話を適当にサマリーしました。

T;安倍さんがトランプに贈ったあの50万円もするホンマのゴルフクラブ、どうよ。

U;ハンディ3の使うドライバーじゃないね。金持ちじいさんのスペックじゃ、とてもトランプには合わないし、ハンディ3のゴルファーが人からもらったみやげドライバーを使うなんて、ありえない。あんなんでトランプと親しくなれたと思ったら、大間違いだよ。

T;外務省の役人が買って来たってよ、中国製ドライバーを(笑)。日本名のブランドだけど、株主はほとんど中国人だって知らないのかな。中国人の金持ちを騙すためのクラブだよ。

U;そう、トランプにしてみれば皮肉もいいところで、「なんて嫌味なやつだ」に違いない(爆笑)。

(林の注)ホンマゴルフは2005年に破たんし、日本のファンドが入って再生。それを中国系の投資会社が買収。日本では見向きもされなかった時代、台湾を含む中国人の金持ちをターゲットに、バカ高いクラブを売っていた。現在は香港に上場されていて、株主の9割以上が中国籍。最近はツアープロに高額の契約金を支払い専属契約を結ぶ戦略が奏功。最初は韓国勢プロが多かったが、日本人プロも使用するようになっている。

U;トランプ陣営は安倍首相がヒラリーと会っていることをにがにがしく思っているし、今回はファミリー同士なら会おうといって家に招き入れたのに、ファミリーは来ずに役人がぞろぞろ付いてきた。日本政府はあの会談でTPPの説得をしようとしたけど、大間違いだ。そんなこと、トランプが話すわけないよ。だいいち、まだオバマが大統領だからね。オバマを怒らせちゃったから、もし1月20日までに戦争でも起こって日本が攻められたら、政府はどうするつもりだ。

T;ところで、トランプ陣営にコネがあるんだって?

U;あるよ。日本人では数少ないコネがね。「政府のために使ってあげてもいいよ」って内閣府のしかるべき筋に申し入れたんだ。そしたら、なしのつぶてだった(笑)。オレがアドバイスしていたら、このタイミングであんなトンチンカンな会談なんかさせなかった。トランプ陣営は安倍首相に対してはヒラリーとの会談以来怒り心頭だから、ドライバーもらって喜んで親しくなれたなんて、これっぽっちも思っていない。

D;ドライバーなんて価値なかったってこと?

U;あれって中国製品だよ、トランプが嫌っている。嫌味だよ(笑)。彼はまだ大統領じゃないけど、アメリカじゃ普通、政府関係者への贈答や食事の接待は、せいぜい50―100ドルまでだよ。そんな基本的なこと外務省が知らないわけないのに。500ドルは立派な賄賂だよ。トランプの返礼の50―100ドルのポロなら許される範囲だけどね。

    サマリーは以上です。

  私はこの放送を早朝、ゴルフ練習場に向かう車の運転中に聞いたため、記述したことは正確とは言えませんが、趣旨ははずれていないつもりです。

  この番組は毎週土曜の朝5時から8時に放送される、ゴルフ場に向かうゴルファー向け「グリーン・ジャケット」というインターFMのゴルフ番組で、パーソナリティーはTBSテレビのサンデーモーニングで「屋根裏のプロゴルファー」と自称するタケ・小山氏。この日のゲストは政治ジャーナリスト廃業宣言をした上杉隆氏。いまはゴルフ・ジャーナリストとか、元ジャーナリストと自称しています。彼は以前NYタイムズの日本記者で、日本のジャーナリズムと政治の癒着を象徴する「記者クラブ」システムを批判したため、政治の主流からは完全にホサレています。

  ご存知のように省庁や政党、それに類する政治団体、さらには経済団体など、ほとんどの組織は自己防衛のため、記者会見の参加者を大手新聞などの御用記者に限定し、海外メディアやフリーのジャーナリストに門戸を閉ざしています。それは大手新聞社・放送局などが、自分たちの独占的権益を維持するためにも利用されています。

  彼は「報道の自由」以前に、門戸すら閉ざしている大手報道と政府などの鉄の結束を批判し続けました。そして挫折。その後フリーのジャーナリストとして3・11直後に原発のメルトダウン情報をいち早く得て暴露したところ、隠そうとする東電・政府サイドからこれまた徹底的に叩かれ、その後はほとんどすべてのメディアから追放されています。以前はフジテレビの「新報道2001」に準レギュラーで出演していましたが、舌鋒鋭い政府批判で降板させられた経歴も持っている鬼っ子ジャーナリストです。政治から締め出された後は、好きなゴルフを飯の種にゴルフ・ライターをしていましたが、やはり政治には未練たっぷりで先日の都知事選に出馬もしていますし、ネット放送を主催したりしています。。

  一方のタケ小山もプロゴルファーというよりも舌鋒鋭いゴルフ・ジャーナリストの呼び名の方が合っていて、上杉隆とはウマが合い、この番組の準レギュラーです。二人の共通項は、「日本ゴルフ改革会議」という団体で、議長はゴルフ好きの大宅映子、副議長にはアナウンサーの蟹瀬誠一やスポーツライターの玉木正之がいます。その会議の趣旨をウィキペディアから引用します。

日本ゴルフツアー機構国内男子ツアーの衰退、進まないゴルフ場利用税撤廃問題、若者のゴルフ離れや団塊の世代の高齢化、ゴルフとメディアの関係などの様々な問題を検討し、関係各所に具体的な提案を含む報告書を提出することを目的としている。既存の権益や利害関係に縛られずに「OPEN」で「FAIR」な議論を通じて、現実的な提案をすること、それによって日本のゴルフの健全で堅実な改革に少しでも貢献できるのではないか、という考えのもと月1回のペースで会議を行っている。」

  私は一ゴルファーとして、この趣旨に全面的に賛成します。

  日本の男子プロゴルフは不振を極めています。海外の事情に詳しく、ゴルフ好きで着眼点の優れた二人の言うことに耳を傾けたら、有力なヒントがえられるのではないかと思っています。

  タケ小山のゴルフはアメリカ仕込みです。彼はアメリカでプレーヤーとしてのゴルフだけでなく、ゴルフリゾート経営全般を学び、その後早稲田の大学院スポーツ科学研究科でスポーツマネージメントを修了しています。

  この二人の心情的共通点は、既得権益を守ろうとする古い体質の組織防衛に対し、実に的を射た批判と提案を展開するところです。私はそうしたジャーナリスト精神を評価しますが、なにせ二人とも的を射すぎるため、体制派からは嫌われ、不倶戴天の敵が多すぎます。

  上杉は政治ジャーナリズムの世界からシャットダウンされ、小山も古い体制派のゴルファーやゴルフ団体からは締め出されています。口の悪さは、私が聴いていても「それは言い過ぎだろう」という部分が2割くらいはあるほどです。

  それでもゴルフ界を含む世の中のためには、口の悪い二人の話にたまには耳を傾ける価値があると思っています。

  以上、つれづれなるままに


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米国債投資をお考えの方へ、今買うべきか

2016年11月26日 | 米国債への投資

    10日ほど前の記事の最後で、私はこう書いています。

「このままNYで株高、金利高、ドル高が一方的に昂進するとは思っていません。今の株高などは、日本株を含め、どう変節するかもわからないトランプノミクスのいいとこ取りにすぎないと思っています。」

   この見解は変わっていません。これに関しては、のちほど詳しい理由を説明させていただきます。

  今回は緊急に「米国債投資へのアドバイスがほしい」とのリクエストが多く寄せられましたので、それにお答えします。

  アメリカの株高と金利高がさらに昂進しました。これまでアメリカ国債に投資するかどうかを検討していた方も、10年債が2.3%台まで来ると決断をすべきか悩んでいる方も多いと思います。

   できれば円高局面でドルを仕入れ、その後の米金利高局面で米国債に投資することが理想です。トランプの勝利前までしばらくの間、円高と米金利安が続いていましたが、現在金利がかなり急上昇しました。いまそうした投資チャンスがきつつあります。すでに投資を実行された方には、「よいタイミングでした」と申し上げます。

   あるいは米国金利がさらに高くなるチャンスを待っている方もいらっしゃると思います。そうした方には「チャンス到来」と申し上げます。といっても、金利のことですから、来週、来月、来年はもっと高くなっていることもあるでしょう。ご自分である程度の目安を持っていらしたら、その目標金利を目指すべきです。

 

   私はまた、円高の時点では満期が数年以内の短期債を、満期を分けて買っておくというやり方もお薦めしました。数年とは5年以内くらいが目安です。そして満期到来時に金利が上昇していれば長期債に入れ替える、上昇していなければまた短期債でチャンスを待つやり方です。そうした戦略をすでに取られた方は今どうすべきでしょうか。

   まず一つの方策は、そのまま初心貫徹すること。二つ目は満期構成の中で一番短い期間の債券価格は大きく下落していないはずなので、それらの債券を売却し長期債に入れ替えること。

   二つのどちらでもよいと思いますが、どちらが良いかはご自分でご判断をお願いします。

 

   一方これから長い目で投資機会を探るという方は、現時点からこの短期債への分散投資戦略も有効だと思います。現在5年債が1.84%、2年債でも1.12%あります。くりかえしますが、ドルの現金で置いておくよりも多少なりとも金利を得て、債券価格の変動の影響を受けないよう、満期まで保有するということです。そして満期時点で金利が上昇していれば、長期債投資に踏み切ります。

 

   先日のコメント欄には、現時点で30年債に投資すべきか迷っているとのコメントもいただきました。個々の方への最適なアドバイスは、一般論ではできません。私は個人的に相談を受ける場合、その方の年齢、家族構成、全資産などの基本情報を得ることはもちろん、今後の生活設計までを伺った上でアドバイスを差し上げます。その方の将来を左右する大事なアドバイスですので。

   証券会社のように自社が儲かるものを薦めたり、セールス担当が自分の点数があがるような商品を薦めることは絶対にしたくないのです。

 

   それでも、ご自分のプロファイルなどはさておき、「現時点で米国債を買うべきかを教えろ」という方も多くいらっしゃるので、超一般論で今の時点、つまり10年物金利が2.36%での投資はどうかと聞かれれば、「悪くない」とお答えします。ドル円が100円そこそこで長い間うろうろしていた時にすでにドルへ転換していたなら、余計にそれをお薦めします。

 単純計算で、金利と為替を簡単に比較します。

2.3% X 10年 = 23%・・・これが113円 X 23%=26円分に相当、

    113円 ― 26円 = 87円

つまり現時点のドル円レート113円が、87円になっても損はないことになります。ですのでお薦めします、となるのです。

  しかも、もしドルがうろうろしていた時の103円程度ですでに買っていたとすると、さらに10円幅の円高にも耐えられることになります。

  以上、この時点での米国債投資でした。

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グローバリゼーションについて語ろう

2016年11月21日 | ニュース・コメント

  最近サイバーサロンに私が投稿した文章を、少しだけアレンジしてこのブログにのせることにしました。ちょっと語り口がいつもと違いますが、本人の文章です(笑)。

 

  アメリカ大統領選挙やBREXITで大きな問題となったのは、移民問題とともに「グローバリゼーションの光と影」だ。それについて語ってみようと思う。

   ポピュリストたちに限らず頻繁に主張される影の部分の代表的標語は、

  「行き過ぎたグローバリゼーションが格差を生み出している」

という言葉だ。マスコミの報道でもこれが毎日のように表れる。私はそれを全面否定はしないが、単純にうのみにもしない。

   グローバリゼーションには人や文化の交流も含まれるが、象徴はなんといっても物や技術移転などを含めた交易だ。海外との活発な交易によって経済成長が促進されるのは歴史が語る不変の真実だ。

   日本も江戸時代の鎖国から開国して明治を迎え、爆発的に成長した。現代でもミャンマーのような半鎖国状態から開国すると、貿易だけでなく海外から投資を呼び込むことができ、技術も移転され爆発的に成長を始めることができる。


   一方、「行き過ぎたグローバル化によって淘汰される企業が出たり、失業者が出たり、経済格差が拡大したりする」と言われる。

    それを主張される方もグローバル化を否定まではしないと言う。グローバル化も程度問題だと言うのだ。

   ではそう主張をされる方に、「どこまでが許容範囲のグローバル化なのか」うかがいたい。許容範囲を決められるだろうか。

   50歩譲って、ほどよいグローバル化はこれくらいだ、という定義ができたとしよう。ではそれを程よくコントロールし続けられるだろうか。それも百歩譲って「できる」としよう。

   しかしよく考えてほしい。それをコントロールするということは、貿易を制限し、テクノロジーの移転を遅らせ、その結果競争力のない産業や企業を温存することになる。

  実のところどこの国でも、ある程度どころかかなりの制限をしている。TPPはそれを少しでも緩和しようということなので、現在でも全参加国が大いに制限していることは明らかだ。

   制限することによって、失業の発生はある程度の期間抑えることができるかもしれない。だがそれは長期的に見れば一国全体の成長を抑え、意図的に競争力を削ぐことにつながる。

 

  日本国内の過去を振り返ってみよう。グローバル化によってだけでなく、一国内の同一産業でも、競争に破れた企業の従業員は失業する。ある産業全体でも、不要になれば産業全体が衰退し、失業者が出る。日本で言えば石炭産業は壊滅したし、繊維産業や縫製業はかなりの程度衰退し、失業者はたくさん出た。

   石炭産業を防御するために石油の輸入を抑えたりしたら、エネルギー効率を悪化させ産業全体が競争力を失うことになる。中国やバングラデシュからの繊維製品の輸入を制限したりしたら、国民服ユニクロを着ることはできない。それでも制限することに意味はあるのか。

   それよりも石炭産業をあきらめ新興自動車産業の発展に賭け、人手を使う縫製は中国にまかせ、エレクトロニクス産業に賭けたことで日本は大発展を遂げた。

   では、日本に利用された中国はどうか。グローバリゼーションにより日本に吸い尽くされたか。

  閉じた共産主義の国から貿易立国へと大変身することで人々の所得は爆発的に増加し、天安門広場にあふれかえっていた自転車はすべて自動車にとってかわられた。所得が増えたことで高品質・高価格の日本製品が売れ、中国人旅行客が来日して日本のデパートで爆買いし、ホテルが儲かり観光地にカネが落ちた。結局、日本にまで大きな恩恵をもたらした。

   利用する側もされる側も、グローバル化の恩恵に浴したのだ。

   ある企業が倒産したり、特定産業で数多くの倒産や失業者が出たりしたくらいで、行き過ぎたグローバル化をやめろとの主張に結びつけるべきではない。失業者は失業手当で保護すればよい。そして職業訓練により仕事の転換をはかるべきだ。ゾンビ企業の温存をしてはいけない。

   グローバル化のプレッシャーの中で、産業のダイナミックな転換を行うことこそが国の繁栄につながる。

   トランプに騙されたアメリカでも同様だ。ラストベルトの鉄鋼業は衰退したが、世界に冠たるIT産業が勃興し、世界を制覇している。


   グローバル化の抑制を要求する側に立つ人も、経済全体のパイを大きくすべきだという議論に反対はしないであろう。であれば、まずパイを大きくして、分配の工夫で格差の調整をすべきである。

   グローバル化をおおいに促進してパイを大きくし、所得格差は税制・社会保障制度などで補完すればよいのだ。経済発展を抑えることなど、絶対にしてはいけない。世界から取り残されるだけだ。

 「行き過ぎたグローバル化反対」とは、「経済のパイは大きくしなくてもいい」と言っているのと同じだ。


  アメリカの現在の失業率は4.9%と、日本の3%とならび世界でも最低レベルにある。もうほとんど完全雇用状態で、改善の余地は少ない。つまりアメリカ全体は失業者であふれてもいないし不幸でもない。不幸だと言っているのは、少なくなったがまだいる失業者だろう。さもなくば、トランプのプロパガンダをうのみにしている人たちだ。

  彼のターゲットであった州の失業率を見てみよう。ラストベルトの代表であるミシガン州の失業率は4.7%、オハイオ州は4.9%と全米の平均並みだ。ミシガン州のデトロイトはビッグスリーが本社を構えているし、オハイオにはホンダをはじめ日本の自動車メーカー・部品メーカーが数多く進出している。錆びついたラストベルトなんかではない。

   トランプが廃棄のターゲットにしているNAFTA、アメリカ、メキシコとカナダとの北米自由貿易協定の実績を見てみる。94年の発効以来、アメリカからメキシコへの輸出額は6倍に増加した。20年で6倍というのは、年率9.3%にも達するのだ。自動車産業向け部品がアメリカからメキシコに輸出されている分も大きいが、メキシコはそれをもとに付加価値を付け、アメリカへ輸出しているのだ。つまり技術移転もしっかりと行われ、自動車産業がメキシコ人の雇用を吸収しているのだ。


   一方、アメリカの一人当たりGDPは年56,000ドル、日本は32,000ドル。アメリカ人は平均で日本人より7割も多く収入を得ている。これでアメリカ人の大多数が不幸だと言えるだろうか。グローバル化によって所得を増加させているのは、アメリカではないだろうか。アメリカの選挙民も日本のマスコミも、「行き過ぎたグローバル化によって・・・」というプロパガンダにまんまと乗せられているのだ。

 

  それでも上を見るとトランプを始め、とてつもない金持ちが数多くいることは確かだ。アメリカ人の所得上位1%が全体の所得の18%の収入を占めている。だから、格差社会だという。

   格差解消への処方箋も、グローバル化の抑制による成長の抑制などではなく「所得の再配分」だ。グローバル化を大いに推進してパイを増やし、大きくなったパイを適切に再配分することだ。

   トランプの掲げている所得税減税は金持ちほど減税率が大きい。これまたまんまと有権者を騙している。やるべきことは全く逆だ。ひところよりだいぶフラット化した累進課税を、昔のように金持ちに厳しい累進課税に戻すべきだ。そしてパナマ文書が象徴している彼らの租税回避の抜け道をふさぐことだ。

 

  「格差解消のためのグローバル化抑制は、全くのお門違いだ」

 

以上

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アメリカ大統領選挙後のみなさんのコメントへのまとめ返信

2016年11月18日 | アメリカアップデート

  大統領選の開票のあった11月9日から10日にかけて多くのコメントをいただきました。また前回の記事にもいくつかのコメントをいただいています。やっと時間的余裕が出てきたので、これまで返事をできずに気になっていたみなさんからのコメントに、まとめて返事を書かせていただきます。


ぽんぬきさんへ

>林先生のご著書に沿った指南は今後も有効であるのか?長期スパンで見ればむしろ円高が外国株や米国債買いのチャンスとなり得るのか?

これは円安方向に行ってしまったので、瞬間風速で過ぎ去りましたね。果たしてチャンスをつかまえた方、いらっしゃるでしょうか。

>不透明度が増した今後の日本と世界経済の成り行きについて、林先生の想像される範囲でご意見を聞かせて下さい。

はい、今後しっかりとブログの本文でフォローしていきます。

おちょこちょいのななしさんへの返事でも申し上げましたが、アメリカ国債を資産運用の中心に据える超安全運用に、全くゆらぎはありません。

トランプが4年大統領をやろうが8年やろうが、米国債の本質的安全性に変化などありません。米国債の金利上昇については、今後さらに本文の中で私の見解をお示しします。


トサカさんへ

>米国と英国が音頭をとってすすめてきた、グローバリゼーション、超資本主義の巻き戻しであると理解します。両者はおよそ世界を席巻し、その恩恵を広くもたらすとともに、多くの後遺症を残しました。

多くの識者の見解もその点にあるようですね。私もそれを否定しません。ただ忘れてならないのは、どこの国も国民も、そのおかげでこれほどの繁栄を享受してきたことです。だからと言ってそのことで満足はしないでしょうが。

私はそうした不満を持つ側にも人間の貪欲さを感じます。強欲資本主義で直接メリットを受ける推進側ももちろんですが・・・

>今回の大統領選がなんらかのアクシデントではなく、いずれ訪れる潮目の変化であったと理解するべきであることは、先のイギリスのEU脱退も同様の理屈によって説明可能であることからも妥当でしょう。過去の延長、集積した知見からの演繹で未来を見通すほかに無いのですから、林さんの分析と見通しは至極まっとうであったと思います。そうした至極まっとうな理屈が裏切られるような事態(潮目の変化)が起きていることこそ、今回私達がまず確認すべきことではないでしょうか。

そのとおりでしょうね。

私はそれらの現象を一つの「地政学上のリスク」ととらえ、講演会の内容にあるように、「同時多発ポピュリズム現象」と表現しました。ただしトランプを除外していましたが(笑)


 シーサイド親父さんへ

小黒一正氏の新著 「預金封鎖に備えよ、マイナス金利の先にある危機」の紹介とレビュー、ありがとうございます。相変わらず新刊への即時対応はすごいですね!

ところで、レビューの文章をどこに投稿されたのですか?

審査するのは誰ですか?

もう一つ、「日本国債が暴落する日は来るのか?」の紹介もありがとうございます。

遂に榊原氏も現実に目覚めたのでしょうか。それとも本音を出したのでしょうか。

彼は財務省退官後も政府に近いところにいたり、様々な諮問委員会にお声がかかるあいだは、言いたいこともいえなかったのかもしれませんね。

諮問委員会は、ヨイショデない声こそ大事なのに、そうした方々は決して委員には選ばれません。いつも大政翼賛会によるアリバイ作りに終わります。去年の年末、増税先延ばしの時に、海外から権威と言われる先生方を大勢招いたのも、まさにアリバイ作りでした。

さらにもうひとつ

>萱野稔人さんが著書「成長なき時代のナショナリズム」のなかで、日本におけるナショナリズムの台頭の原因は外国人嫌いや排外主義でなく日本社会における「パイの縮小」に対する危機感であると核心を突いています。
今回のトランプショックの原因の一つにもなっているような気がします。

これまたそのとおりでしょうね。

日本の場合、それに加えて中国の進出がさらに迫ってくると、右旋回が強くなるかもしれません。

もっともそこまで果たして国民、それも特に若者に旋回させるだけの政治的エネルギーがあるかはかなり疑問ですが。

>女性が社会で台頭する時代は、みなは食糧を分かち合い平和が長く続く、それを”雌時”、逆にパイが少なくなると男が奪い合い戦争が増える、それを”雄時”と言うと聞いたことがあります。

面白い見方ですね。

平和主義者の私としては、雌時の時代に生きていたいですが、昨今の政権のやり口は自ら雄時を宣言して危険な道を歩んでいるように見えます。

  以上ですが、今回返事をつけることができなかった方々を含め、みなさん、コメントどうもありがとうございました。今後も活発に議論していきましょう。


  なお、「アメリカはトランプで大丈夫か」については、さらにシリーズでしっかりと書いていくようにします。


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