○○549の4の2『自然と人間の歴史・日本篇』消費税増税(2019.10~)方針の問題点(派遣労働)

2019-03-21 18:41:09 | Weblog

549の4の2『自然と人間の歴史・日本篇』消費税増税(2019.10~)方針の問題点(派遣労働)

4.  2019年10月に向けた、政府の消費税増税方針の問題点(派遣労働)

 派遣など、「非正規労働」(本来、この用語は当該労働者に対し失礼な言葉だが、一般的に使われていることから用いている)を企業が増やす傾向を促進する。

 そこで、この派遣労働に対する消費税法上の取扱いだが、次の通達が出されている。

 「労働者の派遣(自己の雇用する労働者を当該雇用関係の下に、かつ、他の者の指揮命令を受けて、当該他の者のために労働に従事させるもので、当該他の者と当該労働者との間に雇用関係のない場合をいう。)を行った事業者が当該他の者から収受する派遣料等の金銭は、資産の譲渡等の対価に該当する。」(「基通5.5.11(労働者派遣に係る派遣料)」という関係条文解説より)

 それが理由で人材を受け入れた会社が人材派遣会社に派遣料を支払った場合は、当該の派遣社員が、たとえ他の従業員と同じような業務についたとしても、派遣社員とは直接の雇用関係は存在しない。したがって、派遣会社への支払いは、給料ではなく、人材派遣料となり、消費税の課税仕入として控除の対象となる。派遣会社の側としては、売上げには消費税がかかるため、派遣先の会社から消費税をプラスした金額を受け取った中から消費税を支払う。

 この消費税法の扱いについて、東京新聞は、「消費税増税で派遣誘発、企業の『仕入れ』扱い控除」と題する記事を載せたことがある。その中で、2014年「4月の消費税率8%への引き上げで、派遣社員がさらに増大する恐れがある」とする、次のように説明をしている。

 「企業は派遣社員を多く受け入れるほど、納める消費税の額が少なくできる仕組みになっている」「消費税率が3%から5%に引き上げられた後も派遣社員が増えた。消費税増税は国民の暮らしを苦しめるだけでなく、労働環境の悪化を招く可能性がある。(中略)
 企業が納める消費税は原則として、売り上げにかかった消費税から、仕入れの時などに支払った消費税を差し引いた分を納税する。同じ取引への二重課税を防ぐためで、支払い分の対象に派遣社員を受け入れた際の派遣料も含まれる。
 企業にとっては、正社員、派遣社員とも雇えば人件費がかかるが、派遣社員分は経理上『仕入れ』。割合を増やすことで、労働力を確保して消費税を減らせる。税率が上がればメリットは膨らむ。
 例えば、従業員200人の企業が年間で1人500万円の給料を払っているとする。このうち100人を同じ金額で派遣社員にすると『仕入れ』は年5億円。単純計算で消費税率5%で2500万円、税率8%では4000万円の消費税を納めずに済む。
 制度としては派遣社員を受け入れた会社は、消費税分を含めて派遣会社に派遣料を支払う形になっていて、派遣会社がその消費税を国に納める。しかし、一般的に派遣会社の方が立場が弱いため、上がった分の消費税を派遣料に上乗せしにくい。企業側は事実上、負担は増えずに消費税の控除額だけが増える。」(東京新聞、2013年10月24日付け)

 ここにも述べられているように、派遣会社と派遣先会社との力関係というのは、大方後者の方が強いようなのだ。例えば、派遣先との契約では、派遣社員1人当たり1時間2,000円で派遣するという契約をしていた。それに対して、派遣社員とは時給1,500円で賃金を支払う契約をしていたとしよう。

 消費税が8%の場合、派遣会社は派遣先の会社から、1人1時間当たり2,160円受け取ったうえで、うち500円を自社の収入とし、160円を消費税として支払い、さらに派遣社員に対し1,500円の賃金を支払う。

 こうして、派遣先の会社は労働提供の対価として派遣元の派遣会社に派遣社員が働いた分の料金を支払う訳だが、その際派遣会社に支払った160円については、課税仕入れとしての扱いができるのであろう。

(続く)

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○〇549の5『自然と人間の歴史・日本篇』 消費税増税の賛否(諸説の紹介・条件の付与論)

2019-03-20 20:21:03 | Weblog

549の5『自然と人間の歴史・日本篇』 消費税増税の賛否(諸説の紹介・条件の付与論)

5.  消費税増税の賛否(諸説の紹介・条件の付与)

 条件を付けての消費税容認説には、いくつかのパターンがあるのではないか。例えば、ケインズ派経済学者の伊東光晴氏は、こう述べておられる。

 「したがって、今日の財政欠陥を是正するためには、付加価値税ーつまり今日の消費税を西欧型の脱税を防ぐものにかえ、それを引き上げねばならない。」(伊東光晴「政権交代の政治経済学ー期待と現実」岩波書店、20)

 「私は、増税を受け身ではなく、将来を見すえた対抗軸として行うことを期待してやまない。それとも、食糧品、医療、教育費を別扱いにするかが議論されねばならないだろう。」(同)

 次いで、この主張の根拠となるのが、この下りではあるまいか。

 「所得税についで大きな税収を確保できるのは消費税である。何よりも税収確保が可能である。税率一%引上げで二・四兆円の増収といわれている。福祉社会を志向する西欧諸国は、すべて付加価値税に大きく依存している。消費税についての問題点はつぎの二点である。

 第一は、消費税をEU諸国の付加価値税並のインボイス(送り状)方式に改め、税の公正を期さねばならない。(中略)

 第二は、日本の消費税の税率の低さである。我が国の税率五%は国際的に見てあまりにも低い。福祉社会を志向する国は、高い付加価値税率によって確保した税収によって福祉水準を維持している。(中略)

 私も日本も、結局はEUなみの付加価値税率まで上がると思っている。それなしに少子高齢化社会にに対処できないからである。しかし、今すぐ一五%まで付加価値税率を上げるのには大きな社会的抵抗がある。当面一〇%であり、それを実現するためにも、サラリーマンの社会保険料の上昇を抑えなければならない。」(伊東光晴「日本経済を問うー誤った理論は誤った政策を導く」岩波書店、2006)

 また、消費税の痛税たることを国民皆で共有しながら、別の財源確保への道筋をつけようとする見解があり、例えばこういう。
 「それだけではない。所得制限をはずして受益者の幅を広げていけば、収入の審査に費やされる膨大な行政事務を大幅に削減できる。日本の改革論者は身を切る改革を求める。だが、いちいち身を切らなくとも、人間の幸福を考えることでコストの削減は可能なのだ。
 消費税をつうじて痛みの分かち合いが行われたとすれば、富裕層に応分の負担を求める理由も明確になる。人への投資を進めれば、労働者の質も中長期的には高まっていくから、その対価として企業に応分の負担を求めることができる。(中略)
 また、消費税の引きあげは物価に対しても影響を与える。そのことはデフレ経済のデメリットを思い出せばわかるように、企業の収益や労働者の賃金、そして税収にたいしても長期的にはよい影響を与えることとなる。
 もちろん、増税が一時的な消費の落ち込みをもたらすことは事実だ。どうしてもその一時的な景気停滞が心配ならば単年度で景気対策を行えばよい。景気がひとたび立ち直れば、豊かな税収が人びとの暮らしを支え続けることとなるだろう。」(井手英策「未来を再建せよーすべてを失う前に」、井手英策/今野晴貴/藤田孝典「未来の再建ー暮らし・仕事・社会保障のグランド・デザイン」ちくま新書、2018)

 三番目に紹介したいのは、消費税にゼロ税率導入を迫るものだ。税理士の中では、かなり流布している考えだと聞く。もっとも、これには色々な態様(バリエーション)があって、どちらかと言えばゼロ税率を幅広くとるのを条件にするものが多い。そうなると、条件付き容認論というよりは、むしろ事実上の反対論という方が合っているのかもしれない。

 その事例としてよく持ち出されるのが、イギリスである。彼の国においては、多くの食料品のほか、通勤交通費、新聞、雑誌、書籍、子供服、医薬品の税額がゼロとなっている。それに、映画や演劇コンサートは非課税であり、そもそも消費税の課税対象から外されているという。それにしても、後段の非課税については、さすが文化的生活を重要視する国ならではの、かなりの「行き届いた配慮」ではないか。

 さらに一つ、以前からかなり有力視されてきたものとして、厳しめの条件付与で、増税への壁を高くしようとする説があろう。例えば、植草一秀氏は、こう述べておられる。

 「どうしても外せない三つの前提条件を掲げておこう。

 第一は、「天下りの根絶」だ。いわゆるシロアリ退治である。

 第二は、「社会保障制度の根本改革」、100年安心の社会保障制度を確立すること。これが消費税を提案するための絶対不可欠な条件である。

 第三は、「経済活動を混乱させないこと」、つまり日本経済を不況に逆戻りさせないことである。この三つの前提条件が揃って初めて、消費増税の論議がされるべきなのである。」(植草一秀「消費増税亡国論ー三つの政治ペテンを糺(ただ)す」飛鳥新社、2012)

 併せて、この説では、2012年末時点の一般政府の資産と負債の状況を紹介し、前者が1073兆円なのに対し、後者は1037兆円であるから、差し引き36兆円の正味資産があることから、このような「日本政府資産超過の状況下で財政危機は発生しない」と指摘している。

 それからの日本経済の歩みの中では、2016時点での一般政府(中央と地方の合計)の同結果が出ているので、これを当てはめてみよう。すると、資産が1302兆2803億円なのに比べ、負債は1284兆5933億円となっており、差し引き17兆6870億円の資産超過となっている。したがって、この説による判断の方向性は変わらないことになろう。

(続く)

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♦️10の3『自然と人間の歴史・世界篇』水の惑星・地球

2019-03-20 10:05:04 | Weblog

10の3『自然と人間の歴史・世界篇』水の惑星・地球

 いったい、「地球にはなぜ海があるのか」という問いは、その「水はどこから来たのか」という問いでもあろう。2019年3月20付けの朝刊に、こんな記事が躍った。

 「宇宙航空研究開発機構(JAXA)などは、地球から約3億キロ離れた小惑星「リュウグウ」の地表から太古の水成分を発見した。探査機「はやぶさ2」による成果で、生命に欠かせない水の起源につながるという。論文は20日、米科学誌サイエンスに掲載される。

 JAXAによると、はやぶさ2が昨年6月以降、地表からの赤外線を観測し、酸素と原子が結びついた水酸基(OH)の存在を示す波長を捉えた。リュウグウの「親」にあたる46億年前に生まれた天体にあった液体の水の「名残」だ。(中略)

 こうした小惑星が地球に衝突し、水や有機物がもたらされたという説がある。研究チームに杉田精司・東京大教授(惑星科学)は「リュウグウの試料を持ち帰って分析すれば、小惑星がかつて地球にもたらした水の経緯や量、有機物の種類がわかるかもしれないと話している。(石倉徹也)」」(2019年3月20日付け朝日新聞)

 もし46億年ばかり前の、できたばかり、もしくはまだ日の浅い頃の地球に、それなりの量の水が存在していたのだとすれば、その水の供給されたルートの一つが地球の材料となった微惑星の内部に含まれていた氷や水に目が行くのは、当然なのであろう。

 二つ目のルートとしては、地球がある程度の大きさに成長したとき、「原始惑星系円盤から少し取り込んだ水素ガスが、地球の岩石(ただしマグマオーシャンの状態)の中に含まれていた酸素と化学反応し、水ができた」(雑誌「ニュートン」2014年7月号)といわれる。

 さらに三つめは、隕石(いんせき)が水を運んできたというものだ。すなわち、「小惑星付近や、あるいはもっと外側のエッジワース・カイパーベルト付近から、水を含んだ小天体が隕石として地球に降り注ぎ、水を供給した」(同)と考える。

 これらの単独のルートにより水がもたらされたというよりは、これらの組み合わせにより地球にミスがもたらされた可能性が高いと考えられているようだ。

 次の疑問は、そうやって地球にもたらされた水は、最初からすんなり窪地にたまって海をなしていたのかというと、多くは水蒸気となっていたらしい。それが、やがて雨となって地表に降り注ぎ、海を形成していったのだと考えられているようだ。

(続く)

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○〇549の1の2『自然と人間の歴史・日本篇』消費税の負担と申告・納付の流れから

2019-03-19 21:57:23 | Weblog

549の1の2『自然と人間の歴史・日本篇』消費税の負担と申告・納付の流れから

 さて、消費税の大まかな流れは、どうなっているのであろうか。ここで、国が受け取る消費税と地方消費税を合わせた仮の税率5%(現在は8%の税率だが、以下は計算を簡単にするため)にて、計算してみよう。

 まずはと地方、原材料製造業者であって、完成品製造業者への売上げが2万円であったことから、消費税①は20000×0.05=1000円(A)であり、これが納付税額①Aとなろう。

 次に、完成品製造業者は、卸売業者に自分の生産した製品を5万円で売ったのであるから、消費税②は50000×0.05=2500円である。一方、仕入れの2万円にかかる消費税相当額は①1000円であるから、2500円からこの①1000円を差し引いた(B)1500円が申告・納付額となろう。

 その次にくる卸売業者は、完成品製造業者から5万円で仕入れた製品の卸売り行為を行い、これを小売り業者に7万円で売る。これの消費税相当額は、70000×0.05=③3500円である。そこでこの額から、その前の仕入れにかかる消費税②の2500円を差し引いた1000円(C)が申告・納付額となろう。

 さらに、小売り業者に行く。こちらは、卸売業者から仕入れた品物を10万円で消費者に売ることにしよう。これの消費税相当額は、100000×0.05=④5000円である。そこでこの5000円から、仕入れにかかった消費税③の3500円を差し引いた1500円(D)が、彼が申告・納付する消費税額となろう。

 最後に消費者だが、買い物をした10万円に消費税の5%がかかるから、100000×0.05=④5000円となって、これが消費者が買い物をすることで負担した消費税額となろう。ひるがえって、この5000円という額は、その前の4人の事業者が個別に申告・納付した消費税(ABCD)の合計に等しい。

(続く)

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〇○549の4の1『自然と人間の歴史・日本篇』消費税増税(2019.10~)方針の問題点(あらまし)

2019-03-18 21:21:55 | Weblog
549の4の1『自然と人間の歴史・日本篇』消費税増税(2019.10~)方針の問題点(あらまし)
4.  消費税増税方針(2019.10~)の問題点(あらまし)
(1) 消費減退などから、景気回復中の景気を失速させる恐れがある。この増税の前に値上げをしようとの「便乗値上げ」が、2019年3月時点で始まっているように見受けられる。消費税が増税されると、その分は販売価格に転嫁されよう。消費者の懐具合は厳しくなるので、消費が減退する恐れが濃い。それは、この国の景気に水をさすことが懸念されている。
 そんなおり、国民のため物価の安定を優先すべき立場にあるはずの日本銀行の動きに、消費税増税の影響も物価上昇率に当て込んでいることが判明した。2019年1月の「経済・物価情勢の展望」において姑息な数字合わせをしていた。その目算の中身だが、「日銀の試算によると、消費者物価指数の上昇率は2019年度に0.2ポイント、20年度は0.1ポイント上振れする程度だ」(「納税通信」2019年3月4日付け)という。
① 2014年の8%への引き上げ後の景気減退の経験を踏まえていない。これを進める政治家、財政当局、財界などは、国民経済の行く末を見据えないままに、この増税策を進めている。
②最近の米中の貿易摩擦などを軸にした、世界経済の怪しい雲行きを踏まえていない。また、消費税を巡る海外の動向を踏まえていない。ちなみに、日本経済は、2018年後半からは世界経済の成長鈍化を受け減速傾向を強めており、2019年2月時点で一部上場企業の「3年ぶり減益」が予想されるなど、不透明さを強めつつある。
③これによる財政欠陥が埋まるわけではなく、再建の見通しは明らかでない。したがって、大衆増税のみが先走りしていく恐れがある。
また、消費税収が社会保障関係費に投入されることが明文化(消費税法第一条)されたとはいっても、持続して社会保障関係に十分な手当てがなされていく保証はない。
 ちなみに、2040年の人口予想は1億1091万9千人、2065年のそれは8807万7千人とされている。さしあたっては、2040年頃には65歳以上人口が約40%にもなっていくだろうから、その間はかなりの社会保障関係費が必要とされるだろう(国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」2019年版)。
 さらに、増え続ける公共事業費(「復興財源」を含める)や軍事費の負担が、財政に大きくのしかかっている。
④もって今後、一般大衆を苦しめる増税が、次なる消費税増税という形になっていく恐れが大きい。そんな思いを持ちながら今度の増税をみると、大衆増税という道をますます広げる役割を果たすことになりそうだ。
 (2)国民の間に、広く貧困、貧富の差を増大させる恐れがある。
① 所得に対する消費の割合の大きい勤労者層の生活を直撃する。貧困、貧富の差を縮小させるのが経済政策の主な役割であるはずなのに、逆に増大させている。
(3)派遣など、「非正規労働」(本来、この用語は当該労働者に対し失礼な言葉だが、一般的に使われていることから用いている)を企業が増やす傾向を促進する。(詳しくは、次の個別項目を参照されたい)
(4)新設予定の軽減税率に対しては、複雑で曖昧なものとなっている。しかも、低所得者の本当の利益が図られない。インボイスを含め、中小零細事業者の事務負担が増す恐れもある。ポイント還元の仕組みは、増税導入の地ならしにしようとの、政府のご都合主義によるものにほかならない。
①軽減税率はまた、境目を決めるのが難しい。線引きを巡って訴訟も起こりうる。むしろ、一定の所得以下の人や一定の資産保有以下の人に対し、定額の給付金を給付する方がよい。
➁軽減税率では、食料品や外食が中心となろうが、その中にも高級品志向とそうでないものとの区別がありうる。一人当たりにしてみると、前者の方が、より多く減税分の恩恵を受けるのではないか。外食と持ち帰りの区別するのは、外食に依存している人たちの税負担を増やすことになる。
③軽減でも食料品に税率を8%で据え置きというのなら、現下の食料品、生活必需品にかかる消費税率をせめて5%へ引き下げてはどうか、との声も出てこよう。
④ポイント還元とは、中小小売店などで現金を使わずに決裁した時に、購入額の最大5%を国が消費者にポイントで還元する仕組みなのだが、これのために「政府は19年度分の必要予算として2798億円を計上したが、国会では、備品を大量に購入する法人にも還元される」(エヌピー通信社「納税新聞」209年3月19日付け)のだと伝わる。
(5)のちに述べるインボイス制度が導入されていない現状では、前段階税額控除は、仕入額×消費税率が前段階で納税され、かかる額が仕入額にそのまま上乗せされているとの仮定して、計算を行っている。
 この流れだと、中小零細企業を中心に、商売上、価格転嫁が難しくなっているところもあろう。それというのも、彼らからの購入者は、仕入額が消費税分だけ高くなることを拒否しようとも、なおかつ消費税分を税額控除できるからだ。
 こうなると、消費税を滞納もしくは脱税したりしない中では、対応の一つとして値引きする場合があるだろう。例えば、消費税8%のときの税込み価格は(本体価格×1.08)円で表せる。いま税込み価格を1050円におくと、本体価格をX円として、X円×1.08=1050円だからX=約972円となろう。
 本来1000円のものを税込み1050円で売ったとするならば、帳簿上は本体価格を972円に値引きし、そこに消費税8%分の1050-972=78円を上乗せして販売したというという、そのような税負担の公平をゆがめるようなことを許すことになっているのかもしれない。
 このような面からも、今回の消費税増税に際して、4年の猶予をもってインボイスの完全導入が予定されているのであって、それなりに評価できようが、それまでの間は、現状とさして違わないところの消費税10%での税制の運営が続くとみられる。

(続く)
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〇549の3『自然と人間の歴史・日本篇』消費税増税(2019.10~)のあらまし

2019-03-18 21:17:29 | Weblog

549の3『自然と人間の歴史・日本篇』消費税増税(2019.10~)のあらまし

3.  2019年10月からの消費税増税のあらまし

(1)根拠となるのは、2012年8月に成立した税制抜本改革法によって、消費税率を2014年4月に5%から8%へ、さらに2015年10月には10%へと引き上げることになっている。それが後者については、同法に「経済状況等を総合的に勘案して」という景気判断条項がついているのを理由に、先伸ばしされていたに過ぎない。

 今回の内容としては、2019年10月1日からの実施。飲食料品および新聞については税率8%、それ以外は10%で課税する。前者の内訳は、国税が6.24%、地方消費税が1.76%。また後者は、国税が7.8%、地方消費税が2.2%の内訳となる。

(2)特定の品などについて、全体に大きな影響を与えない範囲内で、軽減税率をとる。対象とするのは、飲食料品が中心で、他に新聞も含まれる。どのような軽減かは、基本は8%に据え置くというのである(もう少し詳しくは、2018年7月の国税庁のちらし、などを参照されたい)。だからして、欧米でのような必需品につき非課税、もしくは税率を数%に低める話ではない。

(3)緩和措置は、多岐にわたる。代表的なものとしては、「ポイント還元」といって、消費税2%引き上げに伴い、電子マネーやクレジットカード、QRコードなどを使って中小店舗で買い物をした客に、買い物額(税込み)の5%分または2%分(コンビニなど大手チェーンの傘下の店舗)をポイントで還元する政策を抱き合わせる。期間は、2019年10月から2020年6月までの9か月間だという。これの手当てに、2019年度予算において、ポイントを付ける決済事業者への補助などを含む半年分の2798億円を計上している。

 これだと、それらの支払手段を使わない人は不利だし、それらに関わってカード会社などと契約できない事業者は話に乗れない。また、ポイント還元は低価格競争を引き起こすという懸念もくすぶる。

 また、プレミアム商品券を政府が全額補助して、低所得者や子育て世帯(0~2歳)あてに市町村を通じて配るというものもあり、これについても今年度予算に計上されている。

 (4)追って「インボイス」と呼ばれる税額を明示した書類・送り状の交付を義務化することを織り込む。これは、課税事業者が発行し、取引される品目ごとの税率や税額、その課税事業者の登録番号などを記さなければならない。軽減税率が幅広く浸透している欧州で支配的なやり方だ。これを「インボイス方式」(「適格請求書保存方式」ともいう、4年後の2023年10月からの実施)

 これの導入により、消費税の納税義務がない免税事業者は、「インボイス」の発行ができなくなる。取引先に対する付加価値税請求はできなくなり、売上(販売)に係る消費税から仕入(購買)に係る消費税を控除した金額である「益金」が免税事業者に留保されることは不可となると考えた。

 これに関連しては、インボイス導入後に課税事業者が免税事業者から仕入れを行う際、前者はその仕入れ分の消費税額の控除ができず、納税負担が増す可能性があろう。こうした事情が起こりうるのを前にして、(2)で述べた軽減税率に合わせて、追ってインボイスが導入されることで、課税事業者と取引する免税事業者の一部が生き残りのため課税事業者へ移るとみられており、一説には、財務省は、4年後にインボイスが導入されるまでの間の「軽減税率で減る分の穴埋め」に、「インボイス効果2千億円」の税収増を見込んでいるや、に伝わる。

 (4)増税の見返り支出(主に保育や教育関連)を行い、ショックを緩和する試みあり。ただし、法令事項での措置であるとはいえ、大きくは政治的な配慮によるものだ。ついては今後、消費税が社会保障にどれほど使われるかは未知数だ。

 振り返ってみれば、2016年11月18日、「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律等の一部を改正する法律」(平成28年法律第85号)及び「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律」(平成28年法律第86号)が成立した。
 その中で消費税率の8%から10%への引上げ及び軽減税率制度の実施時期が平成31年10月とされた。
 「第一条 この法律は、消費税について、課税の対象、納税義務者、税額の計算の方法、申告、納付及び還付の手続並びにその納税義務の適正な履行を確保するため必要な事項を定めるものとする。
2 消費税の収入については、地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする。」

 そこでは、消費税が8%から10%に上がると国の税収は約5.6兆円増えると試算。当初の予定では増税分の4分の3の約4.2兆円を借金(国債)の返済にかかる支出、残りの4分の1の約1.4兆円を社会保障の充実に使うと表明していた。2017年12月末総選挙の後は、その配分を、借金の返済に回す分を増税分の2分の1の約2.8兆円に減らし、残りの税収については1.7兆円を教育・子育ての充実に使うことに変更した。

 その使い道は、低所得世帯の0~2歳児の保育無償化、3~5歳の幼児教育や保育の無償化、2020年までに32万人分の保育の受け皿整備、待機児童をゼロに。また、連立与党の公明党は年収590万円未満の世帯の私立高校の授業料無料を公約に掲げたい。ほかにも、大学など高等教育に対する給付型奨学金の創設も考えるとした。

 その後に策定された2019年度予算では、おもに保育についての一部無償化などが盛り込んであり、この3月に可決成立した。これの評価については、2019年の参議院選挙を控えていることでの政治色が絡んでいることが指摘されている。

(続く)

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○〇549の2『自然と人間の歴史・日本篇』今、なぜ消費税増税なのか(2019.3)

2019-03-18 21:13:30 | Weblog
549の2『自然と人間の歴史・日本篇』今、なぜ消費税増税なのか(2019.3)

2. 今、なぜ消費税増税なのか
(1)まずは、財務省の見解には、こうある。
 「今後、少子高齢化により、現役世代が急なスピードで減っていく一方で、高齢者は増えていきます。社会保険料など、現役世代の負担が既に年々高まりつつある中で、社会保障財源のために所得税や法人税の引上げを行えば、一層現役世代に負担が集中することとなります。
 特定の者に負担が集中せず、高齢者を含めて国民全体で広く負担する消費税が、高齢化社会における社会保障の財源にふさわしいと考えられます。
 また、ここ10年くらいで見ると、所得税や法人税の税収は不景気のときに減少していますが、消費税は毎年10兆円程度(注)の税収が続いており、税収が経済動向に左右されにくく安定した税と言えます。」
(2)時の施政者並びに経済を握る者の視点に立ち、彼らの取りたいところから、概略でいうと、取りたい分だけ取りたい、それが政治経済的にかなりの程度可能なのが消費税だ、というのが本音ではないか。こういうのが正しいとするなら、「負担対象が広く中立的」というのは、当たらない。
 また、歴代の政府税調や財務省、官庁サイドの学者らが重んじてきた「安定財源」だからというのは、当たっている部分の意味合いは「好不況にかかわらず国民一般から搾り取れる」という意味あいを含んでおり、鵜呑みにはできまい。
(3)2018年度末の国の財政状況を、あたかも「財政危機」ということにしている。これは、のちに見るように、正味資産はなおプラスであるので、適当な表現ではない。ここで確認しておくべきは、今日の財政赤字につき、社会保障費の増大と、国債費の大きさが取りざたされていることだ。前者は2018年度に32兆9732億2千百万円(当初予算額)となった。また後者の元となる国債現在高(つまり残高)は、2018年度末見込み額で1238兆7690億2千万円(財務省「財政金融統計月報」2018年4月号)。
 ちなみに、2016年度の消費税の納入実績は、約12兆3897億円だ(現年分と既往年分の合計、加算分を除く。財務省「財政金融統計月報」2018年4月号)。滞納額は、かなりの多額になっている(なぜそうなのかにつき、詳しくは、例えば、湖東京至「消費税の何が問題なのか」、雑誌「世界」2018年2月号を参照されたい)。
 
(4)勤労国民や社会的弱者には増税をふり向け、かたや一部事業者の優遇などの措置を続けたいがため、消費税においては、輸出大企業への支援措置としての「輸出免税」、派遣労働への税額控除の継続などの措置あり。
 これらのうち輸出事業者への特例については、以後も続くことになっている。その事例として、現在の法制下において、輸出売上3億円の企業があるとしよう。この会社は、製品の全てを外国へ輸出しているとし、また、この輸出にかかる原価の合計を1億円、その全部を日本国内で仕入れているとしよう。それから、この会社はその他消費税のかかるものとして家賃など5000万円(ここまで、すべて税別)があるとしよう。
 この場合の税の算出式とは、製品の売上で顧客から受け取った消費税ー(引く、マイナス)経費で払った消費税=(は、イコール)納税する消費税なので、次のようになるだろう。まずは、輸出品に「内国税」であるところの消費税はかからないので、消費税はゼロとなろう。一方、この会社が経費として支払った消費税分は、原価の1億円+その他経費の5000万円との合計1億5000万円に、消費税率の税率8%を乗じて1200万円が導かれる。
 したがって、収めるべき消費税額は、ゼロから1200万円をひくことになるので、マイナスの1200万円ということになって、この額はこの会社が税務当局に支払うのではなく国庫から受け取ることになるだろう(ただし、実際の会社運営は国をまたがっての取引が入り混じっているだろうから、算出の過程は異なる。
 とはいえ、国内の売上げがあっても、輸出分が還付されるのは変わらない。いま年間売上高が5億円の会社があって、うち輸出によるものが2億5000万円、国内売り上げも同額と仮定。すると、前者には2億5000万円×0%=0、後者には2億5000万円×5%=1250万円がかかることから、合計で1250万円となるだろう。
 次に、年間の全事業にきる仕入れを見ると、これを4億円として4億円×5%=2000万円が仕入税額控除としよう。したがって、この会社として支払うべき消費税額は、1250万円-2000万円=-(マイナス)1250万円となって、1250万円の差引還付金が得られよう。
 ただし、現行法で「簡易課税」となっている事業者や「免税事業者」については、かかる税還付の恩恵を受けられる対象から外されていることに留意されたい。
(続く)
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○〇549の6『自然と人間の歴史・日本篇』 消費税増税の賛否(諸説の紹介・反対論)

2019-03-18 21:05:25 | Weblog

549の6『自然と人間の歴史・日本篇』 消費税増税への賛否(諸説の紹介・反対論)

5.  消費税増税への賛否(諸説の紹介・反対論)

(1)初めに消費税増税ありきではなく、他の方法で増収を図るべきなどの提言。今回の消費税増税への直接的な反対を表明しているものは多くないものの、論旨からは反対が読み取れるものが少なくない。

①法人税と所得税の累進化を強める。不公正な租税特別措置にメスを入れる。

②金融所得への税拡張すべし。資産の格差に鑑みても、これを縮減するため、富裕者の資産に対し課税を強化すべきである。過去には、「富裕税」の新設も盛り込まれ、1950年度に創設されてもいた。2019年度の税制改革大綱を取りまとめる際、議論があったものの、政府与党は株価への影響などを考慮して見送った経緯がある。

③外国税額控除の廃止などで多国籍資本への対応をすべきである。

④外貨準備や大企業の自由貯蓄など、投資に使われていない遊休資産への課税も検討すべきだ。

⑤さらに、「小さな政府」を主張する立場からのものがあろう。彼らの究極の本音とは、ひょっとしたら、その盟主であったフリードマンの考え(「負の所得税」)以上のところにあるのだろうか。(追記の予定)

(2)明確に、今回の消費税増税に反対するもの(追記の予定)

①積極財政で国民のための税収を賄う。

②歳出の削減を行う。もしくは、消費税に頼らずにやっていけるだけの歳入の確保を行う。

(続く)

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○〇549の1の1『自然と人間の歴史・日本篇』付加価値税(消費税を含む)導入の大まかな経緯(2019年3月時点)

2019-03-18 20:30:12 | Weblog

549の1の1『自然と人間の歴史・日本篇』付加価値税(消費税を含む)導入の大まかな経緯(2019年3月時点)

1.  付加価値税(消費税を含む)導入の大まかな経緯

(1)まずは、取引高税は、1948年9月からよく1949年12 月までの1年4か月だけ実施された。これは、製造から小売りに至る前段階の取引高に1%の税率で課税するものであり、現在の消費税と比べ、仕入れ控除の仕組みを覗いたものであった。

 続いての1950年には、「付加価値税法」が国会で成立する。これは、GHQシャウプ代表団が法人事業税(地方税)にかえて「付加価値税」(4%)を導入することを勧告したのに応えたもの。これは、施行されずに、1954年に廃案になる。なお、このシャウプ勧告には、付加価値税ばかりでなく、「富裕税」の新設も盛り込まれ、1950年度に創設されてもいた。こちらは、当時の所得税の最高税率引下げの代償措置として導入された。

 この年、世界で初めての「付加価値税」と銘打った税がフランスで導入される。その仕組みは、シャウプの「付加価値税」とかわらないものであったのだが、フランスは直接税とは言わず、「モノにかかる間接税」であるとした。

(2)1979年、大平内閣で、「一般消費税」構想がぶち上げる。1987年には、売上税が提案されたが、反対がつよく廃案となる。

(3)1989年4月、3%の税率にて「消費税」の名をかぶせ、竹下内閣で実施する。同年の参議院選挙で、これに反対した社会党が大幅に議席を伸ばす。

(4)1994年2月、非自民の細川内閣(1993~社会党な8会派で構成)が「国民福祉税」を提案するも、挫折。大蔵省は政権発足時から細川首相に消費税引上げの必要性を説明した。首相は、それなら福祉目的税にしろ、と言ったが、大蔵省は抵抗した。そこで妥協として、消費税は廃止して福祉のための税金にするということで国民福祉税になった模様。

 同年の細川政権の瓦解後、社会党が自民党、さきがけと連立政権を組み、村山内閣を構成する。1996年には、村山内閣が退場し、社会党は社会民主党に改称する(1998年に連立政権から離脱)。

(5)1997年4月、税率を5%に引き上げ、橋本内閣で実施。その前の村山内閣の下で税制改革関連法が成立していた。

(6)2012年6月、民主党・自民党・公明党の3党は、「社会保障と税の一体改革」を合意する。そして迎えた8月には、彼らは関連法を成立させ、その中で消費税を2段階で引き上げ、2014年4月に8%、2015年10月に10%にするとした。

 この法律の名称は、「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」(通称は「税制改革抜本法」、8月10日)という。

 なお、この「一体改革」なるものでは、5%の増収分(14兆円)のうち約1%分を「社会保障の充実」に、残りの4%分を「社会保障の安定化」に充てるとした。

(7)2013年、消費税の引き上げなどに際し、特定事業者による便乗値上げを防止する目的で、消費税転嫁対策措置法(~2021年3月)が制定される。

(8)2014年4月、税率を8%に引き上げ、安倍内閣で実施。その前の野田内閣の下での、前述のとおり2012年3月に始まり6月にまとまった三党合意(民主党・自民党・公明党)により、2014年に8%、2015年に10%に引き上げる法律が成立していた。

(9)その後、2016年度改正法において、消費税率10%への引き上げとあわせての軽減税率の導入が決まる。あわせて、2014年の消費減退を理由に2015年度税制改正において1回目、2016年度増税延期法において2回目の増税延期を各々決めていた。それを、2019年10月を期して、今回10%に引き上げようとしている。

(続く)

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♦️16の2『自然人間の歴史・世界篇』オゾン層の形成(25億年前?~6億年前?)

2019-03-18 10:28:15 | Weblog

16の2『自然人間の歴史・世界篇』オゾン層の形成(25億年前?~6億年前?)

 オゾンというのは、刺激臭があって、人間にとっては体に有害とされるのだが、別の観点から言うと、人体に有害な紫外線を防いでくれたり、地球の気象安定に役立っているともいわれる。

 このオゾンの発生は、一説には、約25億年前から6年前まで続いたといわれる。これだと、海中のシアノバクテリアなど藍藻植物による光合成が始まったのが約35億年前からであると想像されているのに比べ、10億年ばかり遅れている。光合成でつくられた酸素が海中から大気中に拡散し、大気に少しずつオゾンを作り出していった。

 そのオゾンというのは何か、それは生成(形成)と分解とのサイクルを考えるとよい。まずは、酸素分子がО2ということで、酸素原子が二つくっついたもので、これが安定した状態だ。次に行くと、О2→О+Оということで、酸素が強い紫外線(波長が175~240ナノメートル、ナノメートルという記号は、10のマイナス9乗メートル、つまり10億分の略)にさらされて分解される。

 反応はさらに続き、今度はО+О2→О3という反応が現れる。一つの酸素原子と酸素分子が結びついて、オゾン分子О3がここで誕生する訳だ。それらが集まってオゾン層を形成していく。

 もしこの化学反応だけが続くのであれば、大気の酸素はすべてオゾンとなって、酸素が欠乏してしまうのだが、そうはならない。というのは、オゾンは不安定なので、やがて追随して地球に到達してくる別の波長(240~320ナノメートル)の紫外線に分解され、酸素分子О2に戻っていく。

 やがて、いつの頃であったろうか、オゾン層が地球を覆うようになったのではないか。その頃になると、生物は海中から陸へと上陸するものが多くなっていく。陸上には、植物が繁茂し、生物たちは、オゾン層によって太陽からの紫外線に守られ、次々と種類や数を増やしていく。ざっと、こんな風に、生物の誕生と繁殖のドラマが、オゾン層とのかかわりの中で進んでいったと考えられている訳だ。

(続く)


♦️1の1『自然と人間の歴史・世界篇』宇宙の誕生はどのようであったのか

2019-03-17 22:01:20 | Weblog

1の1『自然と人間の歴史・世界篇』宇宙の誕生はどのようであったのか

 さてさて、宇宙は、一体どのようにして今日までたどりついたのか。そもそもの始まりは、今からおよそ138億年前(2013年に提出された新説)にまで遡る、といわれる。そのことが発表された時の新聞記事には、例えば、こうある。

  「宇宙は138億歳、従来説より1億年高齢。欧州機関が解析。宇宙の年齢はこれまで考えられていたより約1億年長く、138億歳とする最新の研究結果を欧州宇宙機関(ESA)が22日までに発表した。宇宙誕生のビッグバンから間もない時期に放たれた「最古の光」を詳しく解析した。


  宇宙は従来説より1億年高齢の138億歳。ほぼ完璧な宇宙図で判明。最古の光は、現在の地球にあらゆる方向からマイクロ波として届き「宇宙背景放射」と呼ばれる。

 ESAは2009年に打ち上げた宇宙望遠鏡プランクで15カ月間にわたりマイクロ波を調べ、観測可能な最も初期の宇宙図を作製した。宇宙図にはマイクロ波を温度で表したときに見られるごくわずかなむらがあり、むらの分布から理論的に宇宙の年齢などを算出した。
  1993年には米航空宇宙局(NASA)のWMAP探査機による宇宙背景放射の観測をもとに、宇宙は137億歳とされ定説となっている。(共同)」(2013年3月22日付け日本経済新聞)


  ここに「ビッグバン」とは、物理学者のガモフが唱えた、宇宙が火の玉のように限りない程に熱かった最初の瞬間を言い慣わす。現在では、かかる状態は、「インフレーション」という、極めて急な膨張現象によってつくられたと考えられている。

 それから、「宇宙図」の中に現れた色「むら」というのは、温度の「でこぼこ」を表わしている。しかして、その度合いを温度の見えるカメラで調べると、摂氏0.00003度位の僅かな差が検出できる。そして、この結果から私たちの宇宙の年齢が計算できるはずだという。

 その解析は、現在も続いているらしい。プランク衛星によるデータの解析結果のまとめとしては、次のようだという。


  「宇宙年齢:137.96億±(プラスマイナス)5800万歳、普通の物質の割合:4.81%、ダークマターの割合:25.7%、ダークエネルギーの割合:69.7%±1.9%、ハッブル定数:67.9±1.5(km/s)/Mpc:、宇宙の曲率:平坦、ニュートリノの種類:3種類」(「プランク衛星がみた最古の宇宙」:雑誌「ニュートン」2013年6月号)

 そこで、「インフレーション」に話を戻して、そこから始めよう。この仮定により、3次元の空間ができ、時間の刻みが発生した。そして「ビッグバン」へと繋がっていった、と考える訳だ。

 一般向けには、アメリカの宇宙物理学者グースととともに、この理論の提唱者の一人による説明に、こうある。

 「(前略)そのシナリオとは、「宇宙は生まれた直後、倍々ゲームのように急激に大きくなり、この急膨張が終わる時に大量の熱が発生して、火の玉宇宙となる」というものです。(中略)

 インフレーション理論は、従来のビッグバン理論の多くの問題点を解決します。その一つが、「なぜ宇宙背景放射はどこも同じ強さになっているのか」、つまりかつての小さな宇宙がなぜどこも密度や温度が均一だったのかという例の問題です。その解決方法は、次のようなものです。

 生まれたばかりの宇宙が、全体的にはデコボコだらけだったとしても、ごく狭い領域だけを見れば、その中はほぼ一様になっているといえます。

 そしてこの狭い領域が現在の宇宙の大きさよりも大きくなるような急膨張を遂げれば、その中に住んでいる者にとって「見える範囲」の宇宙はきわめて一様になります。それがつまり、わたしたちが住んでいる宇宙の領域なので、宇宙背景放射は宇宙のどこでも同じ強さで観測されるのです。

 したがって、観測可能な宇宙の「果て」を越えた、ものすごい大きなスケールで宇宙を見ることができれば、宇宙はけっして一様になっていないことでしょう。

 また私はインフレーション理論を提唱した直後、インフレーションが起こると元の宇宙(親宇宙)から子どもの宇宙がたくさん生まれるという「宇宙の多重発生(マルチプロダクション)」という論文を、協同研究者と発表しました。

 これはある条件の下ではデコボコの「デコ(凸)」の部分が子宇宙へと発展することを示すものです。」(佐藤勝彦「眠れなくなる宇宙のはなし」宝島社、2016)

  ついでに、この理論によると、この宇宙の始まりから10のマイナス36乗秒まではゆっくり(時間と大きさの両方とも)と膨脹した。すなわち、ゼロ時点は「虚数の時間」とでも呼ぶべきものであって、「無」であった。

 ところが、その時間が虚数から「実数の時間」に変化したという。さらに、その後の10のマイナス36乗秒になると、インフレーション的な急膨張が開始されたのだと。

 それからは、「強い力」という力が働く、すなわち、相転移(そうてんい)と呼ばれる力の枝別れ(ある時点で、物質の性質が急変すること)があったのだと考える。この相転移のまさにその時、10のマイナス34乗秒という極微の時間の過ぎる間に100億のまた100億倍といった途方もない大きさに急膨張し、俗にいうところの「火の玉宇宙」になったというのだ。

(続く)

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♦️1の2『自然と人間の歴史・世界篇』ビッグバン宇宙

2019-03-17 21:37:43 | Weblog

1の2『自然と人間の歴史・世界篇』ビッグバン宇宙

 さて、そもそも現在に至る宇宙の創成がおよそ100億年位であることの概略は、ハッブル定数からの演繹計算で導かれるものの、宇宙年齢推測の決め手としてはやはり観測データとの某かの照合に頼るしか「確かな推測」にはならないのであろう。何事も事の成り行きを遡るにつれて、そもそもの始まりはどうであったのか、そこからどう変化してきたのか、その詳細さは曖昧模糊になってゆくものだ。現代の、ありとあらゆる科学的アプローチをもってしても、これは避けがたい。

 インフレーションに続くビッグバンの後には、宇宙は膨張が続き、それに伴って冷えていく。しかし、まだ極めて高温状態だったことから、素粒子の一つである「電子」は陽子などと結びついて原子核を形成することなく、大量にかつ自由に宇宙空間を飛び交っていたことだろう。そこでの光は、これらの電子と繰り返し衝突を余儀なくされるために、真っ直ぐに進むことができなかった。観測者がいたとしても、深い霧の中でのように不透明で拡大しつつある宇宙を遠くまで見通すことは不可能であったに違いない。
 しかし、宇宙誕生からおよそ37万年が過ぎた頃、宇宙の温度が3000度(摂氏)位まで下がると、電子と陽子が結合して水素原子、さらにヘリウム原子となっていく。そのため、それまで自由に飛び交っていた電子はほとんどいなくなっていく。これを「宇宙の晴れ上がり」と呼ぶ。そうなると、それまで電子に遮られて真っ直ぐに進めなかった光が、宇宙空間を真っ直ぐに進めるようになっていくであろうと。

 さらに宇宙発生後にできてきた水素やヘリウムが集まって、銀河系が形成され始める。ここに水素のイメージは、太陽ー地球の系の大きさを10の21乗程度縮小したものが、水素原子を構成する陽子ー電子の系の大きさに対応するといわれる。その水素原子のイメージとして、水素原子内の電子はその陽子付近の半径1オングストローム(10のマイナス10乗メートル)程度の範囲内の空間のどこかに、もやもやした雲の如くに存在していると推定される。
 ビッグバンからどのくらいかの時間が過ぎていき、幾多の「銀河」が形成されていく。私たちが「銀河系」と呼んでいる巨大な渦状の天体も、そんな中で形成されていったと考えられている。

(続く)

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♦️69の2『自然と人間の歴史・世界篇』古代の天文学(古代ギリシアのヒッパルコス)

2019-03-17 19:23:48 | Weblog

69の2『自然と人間の歴史・世界篇』古代の天文学(古代ギリシアのヒッパルコス)

 さて、古代ギリシアの天文学者ヒッパルコスは、「視差」を使って、今日私たちが「地球の歳差運動(さいさうんどう)による春分点の移動」と呼んでいる現象を発見する。ここでまず歳差とは、地球が自転することとの関連だ。つまり、地球の自転の具合が、まるで回転の遅くなったコマが倒れる前に、軸を斜めにしながらグルーリ、グルーリと首を振るように、つまりコマの軸の先端は円を描くように、回っている。言い換えると、この時の地球の自転軸の方向はゆっくりと変化しているのであり、この首振り運動を「歳差運動」と呼ぶのだ。

 それでは、なぜこんな現象が起こるのかというと、地球が完全な球ではないことからくる。そのため、赤道部のやや横に膨らんだ部分に太陽や月の引力が余分に働くことになっている。この引力の方向だが、いま太陽が地球からの見掛け上地球の周りを回っていることによる太陽の軌道の面、言い換えると、地球の公転面の延長が天球(全ての星をのせた仮想上の球)と交わるラインを「黄道面」(こうどうめん)と呼ぶとしよう。

 すると、この力はその態様の黄道面に垂直になるように、地球を引き起こそうとする方向に働いている。このため、地球の自転軸は少しずつ向きを変えながら、自転が続いていく。この歳差運動の度合いを、「歳差」と呼ぶ。

 この歳差(運動)のあるために、地球から見た場合の太陽の通り道である「黄道」と、地球の赤道を見掛け上の天球(てんきゅう)に投影したものとしての「天の赤道」との交点である春分点(しゅんぶんてん)は、毎年わずかに移動する。そしてヒッバルコスは、粘り強い観察の結果、この春分点の移動を発見する。しかし、これが地球の自転軸が傾き、首振り運動をしていることにより引き起こされている現象だとは気づかなかったらしい。

 なお、古来私たち人類が航海や何やで生活の頼りにしてきた「天の北極」は、少しずつ変化している。そこのすぐ近くには「北極星」と呼ばれる星があって、その輝く星を、方位を知るための手掛かりとしてきたのだが、ヒッバルコスの生きた時代には、「天の北極」は現在の北極星とされている、こぐま座のアルファ星は「天の北極」からかなりずれた位置にあったであろう。ちなみに、「歳差」による「天の北極」は、約2万6千年の周期で変化するといわれているところだ。

(続く)

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○〇551の5『自然と人間の歴史・日本篇』ベーシック・インカム」の 財源を巡って(消費税との関連)

2019-03-16 10:17:37 | Weblog

551の5『自然と人間の歴史・日本篇』ベーシック・インカム」の財源巡って(消費税との関連)

 その財源を何に求めるかは、ベーシック・インカムを導入する場合の最大の課題と言って差し支えないであろう。その提唱者で知られるドイツのヴェルナーは、2005年に刊行の経済誌での対談に臨み、財源につきこんな考えを述べている。

 「私たちはとうに消費税を持っているのですから。(中略)つまり、私たちはこの税制をさらに発展させて、消費税にのみ課税して、貢献(価値創造たる生産)に対しては非課税にするのです。たくさん消費する者はたくさん税を払い、つつましく生活する者は少ない税を払う。なぜなら、後者は前者よりも道路や飛行場を利用することが少なく、エネルギー消費もゴミの排出量も少ないからです。つまり、共同体から要求するところが少ないからです。

ーしかし、消費税が唯一の財源だとすると、低所得層は現在よりも大きな打撃を受けるのではありませんか?

 そのためにベーシック・インカムを導入するのです。その額は、個々の市民に最低限度の生活を保障しうる額、人間的な生活を可能にする額でなければなりませんもちろん、付加価値税[消費税]も支払うことができる額です。」(ゲッツ・W・ヴェルナー著、渡辺一男「ベーシック・インカム」現代書館、2007)

 なるほど、消費税を20%を超えるくらいに税率を上げていけば、「とりっばぐれ」はないと仮定しての税収の見積もりはかなりの額になっていく。そのすべてを社会保障費に関係するベーシック・インカムの必要給付額に充てるならば、かなりの可能性が開けてくるのかもしれない。

 ちなみに、2018年度の我が国の社会保障費として計上されているのは、約32兆9732億円であって、そのうち年金給付費が約11兆6853億円、医療給付費が約11兆6079億円、介護給付費が約3兆953億円、少子化対策費が約2兆1437億円、生活扶助等社会福祉費として約4兆524億円、保健衛生対策費として約3兆5142億円、そして労災対策費として約373億円となっている。

(続く)

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□223『岡山の今昔』岡山人(20世紀、内田百けん)

2019-03-12 09:28:22 | Weblog

 223『岡山(備前、備中、美作)の今昔』岡山人(20世紀、内田百けん)

 内田百けん(1899~1971)は、小説家、随筆家、それにドイツ語教授など、多才でしられる。岡山市内の生まれ。後年は、東京で暮らし、その間に家庭では色々あったようだ。文学の修練においては、夏目漱石の弟子としてあった。

 やがての、戦時中の暮らしにさいしては、根っからの軍隊嫌いがあったようだ。そのため、日本文学報国会には最後まで入会せず、気骨のあるところを示した。いうなれば、これにて嫌われることになっても、自分に正直に生きようというのであったろうか。 

 文学上の立場としては、あまり鮮明ではなく、まずは、室生犀星(むろうさいせい)に「「鶴」と内田百けん先生」という評論があって、なかなか当を得た作品評だと考えるので、しばし紹介したい。

 「つまり内田百けんの面白みというものは悉く小説的な表はし方であるために、興趣があり哀愁があるのである。その証拠には大抵会話がおもに挿入されて行って、読みよく滑らかさを活字の面に具えている。単なる随筆の堅苦しさを持っていたら、内田百けんはあんなに有名にならないはずである。

 といっても純粋な身辺小説であるといふことは断言出来ない。つまり彼の随筆があんなに面白いということは、随筆と小説の雑種児あいのこ文章であったからであろう。雑種児というものは人間にあっても必ず美しいものであり、特色の烈しい眉目を持つてゐるものであるが、内田百けんのアイノコ文章も誰も何もいはないけれど、どこまでも小説と」云々。

 小説の中では、「冥土」という短編がその作風をよくあらわしているのではないか。ふとした機会に、死んだ父を垣間見たようなのだが、それに気がつくうちに、その姿は幻影と化していく。だれにでも、たまにはありうることなのかもしれない。しかし、それを文章にすることにこそ、彼の視点が宿る。なんとも不思議な感性の持ち主だといえよう。 

 

(続く)

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