549の4の2『自然と人間の歴史・日本篇』消費税増税(2019.10~)方針の問題点(派遣労働)
4. 2019年10月に向けた、政府の消費税増税方針の問題点(派遣労働)
派遣など、「非正規労働」(本来、この用語は当該労働者に対し失礼な言葉だが、一般的に使われていることから用いている)を企業が増やす傾向を促進する。
そこで、この派遣労働に対する消費税法上の取扱いだが、次の通達が出されている。
「労働者の派遣(自己の雇用する労働者を当該雇用関係の下に、かつ、他の者の指揮命令を受けて、当該他の者のために労働に従事させるもので、当該他の者と当該労働者との間に雇用関係のない場合をいう。)を行った事業者が当該他の者から収受する派遣料等の金銭は、資産の譲渡等の対価に該当する。」(「基通5.5.11(労働者派遣に係る派遣料)」という関係条文解説より)
それが理由で人材を受け入れた会社が人材派遣会社に派遣料を支払った場合は、当該の派遣社員が、たとえ他の従業員と同じような業務についたとしても、派遣社員とは直接の雇用関係は存在しない。したがって、派遣会社への支払いは、給料ではなく、人材派遣料となり、消費税の課税仕入として控除の対象となる。派遣会社の側としては、売上げには消費税がかかるため、派遣先の会社から消費税をプラスした金額を受け取った中から消費税を支払う。
「企業は派遣社員を多く受け入れるほど、納める消費税の額が少なくできる仕組みになっている」「消費税率が3%から5%に引き上げられた後も派遣社員が増えた。消費税増税は国民の暮らしを苦しめるだけでなく、労働環境の悪化を招く可能性がある。(中略)
企業が納める消費税は原則として、売り上げにかかった消費税から、仕入れの時などに支払った消費税を差し引いた分を納税する。同じ取引への二重課税を防ぐためで、支払い分の対象に派遣社員を受け入れた際の派遣料も含まれる。
企業にとっては、正社員、派遣社員とも雇えば人件費がかかるが、派遣社員分は経理上『仕入れ』。割合を増やすことで、労働力を確保して消費税を減らせる。税率が上がればメリットは膨らむ。
例えば、従業員200人の企業が年間で1人500万円の給料を払っているとする。このうち100人を同じ金額で派遣社員にすると『仕入れ』は年5億円。単純計算で消費税率5%で2500万円、税率8%では4000万円の消費税を納めずに済む。
制度としては派遣社員を受け入れた会社は、消費税分を含めて派遣会社に派遣料を支払う形になっていて、派遣会社がその消費税を国に納める。しかし、一般的に派遣会社の方が立場が弱いため、上がった分の消費税を派遣料に上乗せしにくい。企業側は事実上、負担は増えずに消費税の控除額だけが増える。」(東京新聞、2013年10月24日付け)
ここにも述べられているように、派遣会社と派遣先会社との力関係というのは、大方後者の方が強いようなのだ。例えば、派遣先との契約では、派遣社員1人当たり1時間2,000円で派遣するという契約をしていた。それに対して、派遣社員とは時給1,500円で賃金を支払う契約をしていたとしよう。
消費税が8%の場合、派遣会社は派遣先の会社から、1人1時間当たり2,160円受け取ったうえで、うち500円を自社の収入とし、160円を消費税として支払い、さらに派遣社員に対し1,500円の賃金を支払う。
こうして、派遣先の会社は労働提供の対価として派遣元の派遣会社に派遣社員が働いた分の料金を支払う訳だが、その際派遣会社に支払った160円については、課税仕入れとしての扱いができるのであろう。
(続く)
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