○〇549の14『自然と人間の歴史・日本篇』消費税とインボイス

2019-03-27 08:46:38 | Weblog
549の14『自然と人間の歴史・日本篇』消費税とインボイス
 
 政府が今回の消費税導入から数えて4年後に導入しようとしているインボイス制度なるものは、これに関心を持っている税の専門家などが長らく待ち望んできたものであるようだ。例えば、こうある。
 「(前略)しかし、現在の帳簿方式では、税額の転嫁は不透明である。なぜならば、帳簿方式では、各事業者が独立して自らの帳簿に基づき仕入に係る税額を計算するため、売り手から買い手への税額の転嫁という意識は希薄であり、税の転嫁が曖昧になるからである。
 また、前述のように現行の制度では、消費者や免税事業者から仕入れについても仕入税額を認めている。裏を返せば、帳簿方式の場合には、仕入先が課税事業者か、免税事業者か、をインボイスの有無で確認できないため、これらの者からの仕入であっても、課税事業者からの仕入と同様に、仕入税額控除を認めざるをえないと考えられる。
 したがって、免税点制度と帳簿方式の二つの制度により、「前段階で税負担をしていないにもかかわらず、これからの仕入について税額控除を認めることによって付加価値税の持つ前段階控除方式を非理論的なものにしているだけでなく、税負担の公平性を阻害している」といえる。
 また、現行の帳簿方式で税の転嫁が不明確であれば、小規模事業者が次段階への売上先に対して経済的力関係(価格支配力)から適正に消費税を上乗せ転嫁できないという問題が考えられる。」(依田文人「消費税制度におけるインボイス方式導入の提言」)

 要するに、インボイスを導入することで、本来納められるべき消費税が事業者の手元に残る「益税」がなくなっていくであろうし、なによりも流通する中での「多段階課税」のプロセスが今より明確化されることで、ある段階で課税され、のちの段階で再び課税されるという「累積課税」を解消するとともに、脱税を自動的に防ぐ機能も果たすことになるだろうと。
 ついてはは、かかるインボイスの強制は、当該の財やサービスの購入事業者にとっては世の中に通用していく手形のようなものだから、中小零細事業者であっても、税額分だけ価格を引き上げるための道具になりうる訳なのだ。

 そんな欧州並みにして、「胸を張れそうな」制度らしいのだが、直ぐには実施できない。そこでまずは、食料品の譲渡を中心とした軽減税率の導入に合わせて、この10月から2023年9月までの間は、この仕入税額控除につき、現行の「請求書等保存方式」を維持しつつ、軽減税率の適用対象となる商品の仕入れかそれ以外の仕入れかの区分を明確にするための、記載事項を追加した帳簿及び請求書等の保存が要件とされるとのこと。これを、「区分記載請求書等保存方式」という。

 具体的に言うと、現行の請求書等保存方式において記載が必要な事項に、次のものが追加されるという。その1としては、帳簿に課税仕入れが他の者から受けた軽減対象資産の譲渡等に係るものである場合にはその旨を記す。
 その2として、区分記載請求書等においては、課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等である場合にはその旨を書く。
 さらに、 軽減税率と標準税率との税率の異なるごとに合計した課税資産の譲渡等の対価の額(税込み)を入れる。但し、入手した請求書等に上記の記載が無い場合でも、買い手側で追記してもよいとのこと。

(続く)

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