968『自然と人間の歴史・世界篇』タイの反政府運動(~2021)
タイでは、2014年5月に軍事クーデターが起き、軍が実権をにぎった。
2019年7月には、民政への移管の流れに移ったものの、首相には軍政トップだったプラユット氏が就いた。
タイでは、2014年5月に軍事クーデターが起き、軍が実権をにぎった。
2019年7月には、民政への移管の流れに移ったものの、首相には軍政トップだったプラユット氏が就いた。
それを可能にしたのは軍政下の2017年3月に制定された新憲法なのだが、軍寄りの政党に有利な選挙制度や議会の仕組みが盛り込まれた。
名ばかりの民政の内実は、2020年2月にもあらわになった。軍政に反対する野党第二党の新未来党が、憲法裁判所のめ命令で解党させられたのだ。
そして迎えた2020年からの集会、デモは、政権の退陣や議会の解散・総選挙とともに、憲法の改正、それに王室への過度の優遇を改めることも打ち出している。
ちなみに、2020年8月10日に、市民側が政府に要求したのは、①憲法第6条が禁じる国王への訴訟権の容認、②刑法112条の不敬罪廃止、③2018年王室財産法において、公共財的な色彩のある王室財産が国王の私有財産へと変更された、この措置の廃止、④王室予算配分を経済情勢に適した規模に削減、⑤国王に使える官僚制の職務明確化,国王直属軍や枢密院の廃止、⑥王室への献金の廃止、⑦国王の政治への意見表明権を廃止すること、⑧教育制度における一方的で過度の王制抑揚・神格化広報の廃止、⑨王制批判関係事件の死者や行方不明者の調査、⑩クーデターを国王が承認することの禁止の10項目となっている。
例えば、2020年10月14日の市民デモは、普段はドイツにいることの多い国王が、王室関連行事でタイに戻っていることを意識して実施されたという。王室支持派も、これに合わせる形で大勢を動員して対抗して、これまた街頭へ出て、デモ隊とにらみ合う。
そもそも、タイでは農村と都市部が対立する構図の政争が長く続いていたが、今回はやや様相が違う。中高生を含むネット世代の若者らが運動を引っぱっている。
そんな中でも、目新しいとされるのは、タブーとされてきた王室批判にも踏み込んでいる。コロナ禍での経済悪化への不満に加え、4年前に即位したワチラロンコン国王が1年のほとんどを国外で過ごしていて、国民とかけ離れた生活をしていることが、特に若者に反感、批判を呼んでいる、
かたや、不敬罪の廃止や財産管理の透明化などを求めるデモに対し、王室と近い市民、軍との間で、見解の相違が大きいみであることご、問題の解決なり緩和なりを困難にしている。
そういうことだから、一度流血の事態になれば、タイの国際的信用は失墜し、政情は長期にわたり不安定化することになっていくのではないかと。
(続く)
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そういうことだから、一度流血の事態になれば、タイの国際的信用は失墜し、政情は長期にわたり不安定化することになっていくのではないかと。
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