549の20『自然と人間の歴史・日本篇』消費税の特例としての輸出免税
これらのうち輸出事業者への特例については、以後も続くことになっている。消費税法の規定には、こうある。
まず、ここで(4)式はどのようにして導かれるのでしょうか。
1
―――― △G (4)
1-a
ここでは閉鎖経済(外国との関係を捨象)を想定し、貯蓄が国民所得に平均貯蓄性向(s)を乗じたものだといたしましょう。そうなると、
S=sY=I
Y=(1/s)I
1
(参考)Y= ―――― ×I(一般の教科書ではこちらの表現)
1-α
つまり新投資が決まると、需給が均衡に向かうように働き、Y=(1/s)Iが先ず決まります。そして、生産技術がいま短期分析で一定の場合でいうと、その生産技術に体化した雇用量が決まると考えるのです。
ところで、この式のなかのsは、平均消費性向をaとすると(1-a)と置き換えられます。
Y=(1/s)I=(1/1-a)I
そこでいま新投資需要Iが政府によって投入されると、その需要を満たすためにY=Iだけの産出高が生まれる。そうなると、aIだけの消費需要が派生し、それを満たすように同額の派生所得が生まれます。aIの所得からはaの2乗×Iだけの派生需要、そしてそれを満たすための新たな産出高が見込まれます。結局、Iだけの投資需要の追加は、
I+aI+aの2乗I+・・・・だけの需要と所得を生み出す理屈になります。
一般に、初項がa、公比がr(rの絶対値<1)の無限等比級数の合計Aは
A=a + ar + ar^2 + ar^3 + ar^4 +...+ ar^n-1 + ar^n + ..①
ここで①式の左辺と右辺に r をかけます.
rA=ar + ar^2 + ar^3 + ar^4 +....+ ar^n + ar^n+1 + ...②
その上で、①の両辺から②の両辺を差し引きます。②の方が最初の項aが多いだけなので次のように整理できます。
A - rA = a ③
従って、次のとおりになります。
a
A = --------- ④
1 - r
これから、初項が1、公比がa(aの絶対値<1)の無限等比級数の合計Sは次の通りになります。
S=1+a+a二乗+・・・・・+aのn-1乗=(1/1-a)⑤
投資の持つ乗数効果の数学的説明には、つぎのようなアプローチもあります。
Y=C+I+G ⑥
ここでYとはGDP(国内総生産)、Cとは民間消費、Iとは民間投資、Gとは政府投資といたしましょう。
C=α+βY ⑦
ここでCというのは一国の消費関数、α(アルファ)は基本消費、β(ベータ)は限界消費性向と呼ばれるもので、たとえていうとGDPが1万円増えれば消費支出はβ万円増えることになります。
0<β<1のことを限界消費性向といいます。
この2つの式からCを消去すると
Y=α+βY+I+G
この式を変形すると
Y-βY=α+I+G
(1-β)Y=α+I+G
したがって、Y=α/(1-β)+{【1/(1-β)】(I+G)} ⑧
この式で第2項に目を向けましょう。そこで1/(1-β)のことを乗数(m)といいます。この式で投資Iが10兆円増えるとGDPは10兆円×m万円だけ増えることになるでしょう。
そこでいま、民間可処分所得が税金によって10兆円減ったといたしましょう。そのとき国民の貯蓄率(国民所得のうち貯蓄にまわす割合)が20%とすると、人々の消費需要は10兆円まるごとは減らず、10兆円×0.8=8兆円だけが減ることになるでしょう。
したがって、その国の限界消費性向が0.8(80%)であるなら、政府が増税による収入増10兆円を財政支出に投じれば、それと同額である10兆円分の総需要の増加が見込まれることになり(上記の(7)式)、その場合には10兆円から8兆円を差し引いた2兆円分の総需要の増加が見込まれることになるでしょう。
以上のことは、ケインズが(一般人の消費ではなく)投資こそが社会全体の所得向上の主要な手段であると考えていたことと一致しています。
○考えられる意見の検討、1番目
関連して、仮に、政府支出の増大によって景気対策を行おうとしても、現在の国の財政状況をみると、その財源を消費税増税などで賄うしかなくなっているのではないか、という意見がありますが、どのように考えればいいのでしょうか。
そこで、所得分配の階級的性格について考えてみましょう。
所得が増加(減少)するにつれ人々の消費の割合が減って(増えて)いくのは改めて証明を必要としない自明の事柄だと言われますが、それは心理法則でしょうか。そうではありません。理由は、同じ「所得」でも労働者の所得と資本家の所得ではそのあり方が異なるからです。
いま貯蓄をS、労働者の所得をW、資本家の所得をP、労働者と資本家の所得に占める貯蓄の割合をそれぞれsw、spとすると、Sは両方の所得の合計したものですから、次式が導かれます。
S=swW+spP ①
さて国民所得はY=W+Pなので、①式をこのYで割ると、
S/Y=sw+P/Y(spーsw) ②
この式においてS/Yは国民経済全体に占める貯蓄の割合(貯蓄率)、
P/Yは資本分配率。
ここで資本家の貯蓄率(sp)は労働者の貯蓄率(sw)より大きいと考えられることから、国民所得の分配問題とは優れて階級的な問題であることが分かります。
spーsw>0 ③
もちろん、これには「資本家の貯蓄率(sp)は労働者の貯蓄率(sw)より大きいとは思わない」との反論が出されるかもしれません。
○考えられる意見の検討、2番目
(4)では、どのようにすれば国民経済を発展させるに足るだけの財源を確保できるのでしょうか。
Y=α/(1-β)+{【1/(1-β)】(I+G)} ⑧
この式で第2項に目を向け、そこで1/(1-β)のことを乗数(m)といい、この式で投資Iが10兆円増えるとGDPは10兆円×m万円だけ増えることになる計算でした。
そこでいま資本家階級の消費性向を0.5とし、労働者階級のそれを0.8と仮定してみましょう。
なぜこんなに限界消費性向に開きがあるモデルを採用するのかといぶかる方もいるかもしれません。とりあえず、ここではそれは私たちの経験から言えることではないかと申し上げておきましょう。マルクスの再生産表式によれば、資本家階級は剰余価値Mのうち自らが消費支出したMKを除いた残余をつねに次期の蓄積需要に振り向けるとは限りません。
いまある国に資本家階級が100万世帯、労働者階級が1000万世帯あるとしましょう。資本家階級の自由になる所得が各世帯で年当たり3000万円とすると、消費性向は0.5(50%)なので、3000万円×100万世帯×0.5=150兆円だけ消費することになるでしょう。一方、労働者世帯の消費支出は年当たり500万円として、消費性向は0.8(80%)とより高く、したがって500万円×1000万世帯×0.8=400兆円になると仮定しましょう。
いま政府の需要追加策により、これらモデル世帯に各々10万円の臨時収入があったなら、両階級の消費行動はどうなるでしょうか。このとき、年収が3000万円の資本家階級ではその10万円の48%(βK)=4万8000円を消費にまわし、他方の労働者階級は10万円の79%(βL)=7万9000円を消費するといたしましょう。
すると社会全体で測った追加所得の中から消費にまわった総額としては、次のとおりになるでしょう。
資本家階級:
10万円×100万世帯×0.48=4800億円
労働者階級:
10万円×1000万世帯×0.79=7兆9000億円
両者の合計は8兆3800万円となります。
今度は、労働者階級世帯の追加所得を10万円から2倍の20万円に増やし、資本家階級に対しては高所得を理由に政府による追加所得の支給対象からはずしたといたしましょう。すると、増加分の消費総額はつぎのようになるでしょう。なお、そのときの労働者階級の限界消費性向(βL)を0.75としておきます。
労働者階級:
20万円×1000万世帯×0.75=15兆円
したがって、この例では、両階級に対し等しく財政支援を行ったときに比べ、高額所得世帯としての資本家階級(自営業者のことではありません。)に対する財政支援を基本的に行わず、代わりに労働者階級をはじめとする勤労者にその分の財政支出を振り向けた方が、社会全体で見た消費需要の増加はより大きくなることがわかります。
〇1987年12月改正、1988年1月~1988年12月まで(14段階)
課税価格(法定相続分に応ずる取得金額)、税率、控除額
200万円以下 10%
200万円超~500万円以下 15%
500万円超~900万円以下 20%
900万円超~1500万円以下 25%
1500万円超~2300万円以下 30%
2300万円超~3300万円以下 35%
3300万円超~4800万円以下 40%
4800万円超~7000万円以下 45%
7000万円超~1億円以下 50%
1億円超~1億4000万円以下 55%
1億4000万円超~1億8000万円以下 60%
1億8000万円超~2億5000万円以下 65%
2億5000万円超~5億円以下 70%
5億円超~ 75%
課税最低限2000万円+(400万円+法定相続人)
〇1988年12月改正、1989年1月~1992年12月(13段階)
課税価格(法定相続分に応ずる取得金額)、税率、控除額
400万円以下 10%
400万円超~800万円以下 15%
800万円超~1400万円以下 20%
1400万円超~2300万円以下 25%
2300万円超~3500万円以下 30%
3500万円超~5000万円以下 35%
5000万円超~7000万円以下 40%
7000万円超~1億円以下 45%
1億円超~1億5000万円以下 50%
1億5000万円超~2億円以下 55%
2億円超~2億5000万円以下 60%
2億5000万円超~5億円以下 65%
5億円超~ 70%
課税最低限4000万円+(800万円+法定相続人)
〇1992年12月改正、1993年1月~1994年12月まで(13段階)
700万円以下 10%
700万円超~800万円以下 15%
800万円超~1400万円以下 20%
1400万円超~2300万円以下 25%
2300万円超~3500万円以下 30%
3500万円超~5000万円以下 35%
5000万円超~7000万円以下 40%
7000万円超~1億円以下 45%
1億円超~1億5000万円以下 50%
1億5000万円超~2億円以下 55%
2億円超~2億5000万円以下 60%
2億5000万円超~10億円以下 65%
10億円超~ 70%
課税最低限4800万円+(950万円+法定相続人)
〇1994年12月改正、1995年1月~2002年12月まで(9段階)
課税価格(法定相続分に応ずる取得金額)、税率、控除額
800万円以下 10% なし
800万円超~1,600万円以下 15% 40万円
1,600万円超~3,000万円以下 20% 120万円
3,000万円超~5,000万円以下 25% 270万円
5,000万円超~1億円以下 30% 520万円
1億円超~2億円以下 40% 1,520万円
2億円超~4億円以下 50% 3,520万円
4億円超~20億円以下 60% 7,520万円
20億円超~ 70% 2億7,520万円
〇2002年12月改正、2003年1月~〇〇まで(5段階)
課税価格(法定相続分に応ずる取得金額)、税率、控除額
1,000万円以下 10% -
1,000万円超~3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超~5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超~1億円以下 30% 700万円
1億円超~3億円以下 40% 1,700万円
3億円超~ 50% 4,700万円
(使用方法)法定相続分に応じる取得金額×税率=相続税の総額の基となる税額
課税価格(各法定相続人の法定相続分に応ずる取得金額)、税率
1,000万円以下 10% -
1,000万円超~3,000万円以下 15%
3,000万円超~5,000万円以下 20%
5,000万円超~1億円以下 30%
1億円超~2億円以下 40%
(使用方法)法定相続分に応じる取得金額×税率=相続税の総額の基となる税額
〇法人税の税率表(1981年4月1日以後開始の事業年度)
普通法人・人格のない社団法人
期末資本金1億円以下企業
年800万円以下の課税所得の場合には 30%
年800万円超の課税所得の場合には 42.0%
期末資本金1億円超企業 42.0%
協同組合・公益法人・特定医療法人 25%
〇法人税の税率表(1984年4月1日以後開始の事業年度)
普通法人・人格のない社団法人
期末資本金1億円以下企業
年800万円以下の課税所得の場合には 31%
年800万円超の課税所得の場合には 43.3%
期末資本金1億円超企業 43.3%
協同組合・公益法人・特定医療法人 26%
〇法人税の税率表(1985年4月1日以後開始の事業年度)
普通法人・人格のない社団法人
期末資本金1億円以下企業
年800万円以下の課税所得の場合には 31%
年800万円超の課税所得の場合には 43.3%
期末資本金1億円超企業 43.3%
協同組合・公益法人・特定医療法人 28%
〇法人税の税率表(1989年4月1日以後開始の事業年度)
普通法人・人格のない社団法人
期末資本金1億円以下企業
年800万円以下の課税所得の場合には 29%
年800万円超の課税所得の場合には 40.0%
期末資本金1億円超企業 40.0%
協同組合・公益法人・特定医療法人 27%
〇法人税の税率表(1990年4月1日以後開始の事業年度)
普通法人・人格のない社団法人
期末資本金1億円以下企業
年800万円以下の課税所得の場合には 28%
年800万円超の課税所得の場合には 37.5%
期末資本金1億円超企業 37.5%
協同組合・公益法人・特定医療法人 27%
〇法人税の税率表(1998年4月1日以後開始の事業年度)
普通法人・人格のない社団法人
期末資本金1億円以下企業
年800万円以下の課税所得の場合には 25%
年800万円超の課税所得の場合には 34.5%
期末資本金1億円超企業 25%
協同組合・公益法人・特定医療法人 27%
この法人税については1999年4月1日から開始する事業年度から、それまで34.5%であった基本税率が30%へ引き下げられた。また、法人事業税9.6%へ引き下げに加えて、株式交換などの課税の特例が設けられた。
そのときの新法人税の税率の法的根拠は、法人税法本法の税率(本則税率)の規定にかかわらず、負担軽減法に定める税率(特例税率)とされている。その法人税の税率で、特定の共同組合等で、年10億円超の所得に対しては26%(本則税率30%)の税率が適用されている。
〇法人税の税率表(1999年4月1日以後開始の事業年度)
普通法人・人格のない社団法人
期末資本金1億円以下企業
年800万円以下の課税所得の場合には 18%
年800万円超の課税所得の場合には 30%
期末資本金1億円超企業 30%
協同組合・公益法人・特定医療法人 22%(26%)
2.協同組合等の()書きの税率は、特定の共同組合等の所得のうち10億円を超える分のものである。
普通法人・人格のない社団法人
期末資本金1億円以下企業
年800万円以下の課税所得の場合には 15%
年800万円超の課税所得の場合には 25.5%
期末資本金1億円超企業は30%
協同組合等
年800万円超の課税所得の場合には22%
年800万円超の課税所得の場合には19%または25.5%
普通法人・人格のない社団法人
期末資本金1億円以下企業
年800万円以下の課税所得の場合には15%
年800万円超の課税所得の場合には 25.5%
期末資本金1億円超企業は25.5%
協同組合等
年800万円超の課税所得の場合には 19%
年800万円超の課税所得の場合には19%または25.5%
普通法人・人格のない社団法人
期末資本金1億円以下企業
年800万円以下の課税所得の場合には15%
年800万円超の課税所得の場合には 23.9%
期末資本金1億円超企業は23.9%
協同組合等
年800万円超の課税所得の場合には 19%
年800万円超の課税所得の場合には19%または23.9%
具体的に言うと、現行の請求書等保存方式において記載が必要な事項に、次のものが追加されるという。その1としては、帳簿に課税仕入れが他の者から受けた軽減対象資産の譲渡等に係るものである場合にはその旨を記す。
539の13『自然と人間の歴史日本篇』消費税増税と国民負担率
それは、2019年2月28日のことであった。財務省は、2019年度の国民負担率の見通しを発表した。
それによると、日本の値は、2年度続きの42.8%になる見通しだという。ここに国民負担率とは、国民所得に占める租税負担(国税・地方税)と社会保障負担(年金・医療・介護・健康保険など)の合計額の割合を示したものだ。
同省が算出した国民負担率は、2016年度に42.1%を記録した。以降は、42%台で推移している。この傾向を映して、2019年度も景気回復が続くことにより、前年度並みとの結果を得たらしい。ちなみに、その通りにならなくても責任を問われない、それでいて「日本での国民負担が少ない」のをアピールできよう。
また、財務省は言わない、国民負担率に財政赤字対国民所得比を加算したのが「潜在的な国民負担率」であって、こちらの2019年度の値は幾分高まろう。
国民負担率を国際比較(2016年実績)すると、どうだろう。財務省によると、、フランスが67.2%、スウェーデンが58.8%などが、日本よりもかなり高い。
さらには、そもそもの国民負担率というのは、国民所得ではなく国内総生産(GDP)が分母にくるべきだ、との意見もあろう。
なお、参考として、一国の経済状況を知るための、GDP、GNP関連指標のあらましを次に記載しておきたい。
まずは、①国内所得を見よう。一国の経済活動を分配面からみたものに、国内所得(DI:Domestic Income)があり、それには2つの種類がある。一つは国内純所得(DNI:Domestic Net Income)であり、もう一つは国内所得(狭義)だ。
②として、国民所得として、一国の経済活動を分配面からみたものに、国民所得(NI:National Income)がある。これには2つの種類がある。一つは国民純所得(NNI:National Net Income)であり、もう一つは国民所得(狭義)だけど。
その③として、三面等価の原則(国内総生産、国内総所得、国内総支出)を伝えよう。こちらは、一国の生産活動を生産面からみた国内総生産(GDP:Gross National Product)と、これを分配面からみた国内総所得(GNI:Gross National Income)、そして支出面からみた国内総支出(GDE:Gross Domestic Expenditure)がある。いずれも、は同じ大きさとなっていることから、この関係を三面等価の原則という。
その④としては、国内純所得、国内所得がある。こちらでは、国内での生産には機械や建物といった設備を用いる。これらの価値はその使用によって時々刻々減少していて、その価値が尽きる時には新しいものと取り替える(更新)しないといけない。そこで、企業会計上は毎年更新の時のための資金を貯めておく。
この毎年の積み立て分を減価償却(引当金)といい、一国の一年間の減価償却の合計を固定資本減耗と呼ぶ。国内総生産から固定資本減耗を差し引いたものが国内純生産であり、また、国民総所得から固定資本減耗を差し引いたのが国内純所得だ。
こちらは市場価格表示になっていてる。国内総生産、国内総所得でいう総(グロス)と国内純生産、国内純所得でいう純(ネット)との区別は、その統計値が固定資本減耗を含むか含まないかの違いに他ならない。
こうして得られた国内純所得は(間接税ー補助金)が控除されていないことから「市場価格表示の国内所得」ともいわれよう。さらに実体を把握するには、ここから間接税を差し引き、補助金を加算する必要があろう。言い換えると、純間接税(間接税ー補助金)を控除しなければならない。
というのは、この場合の価格は、間接税の分だけ高くなり、補助金の分だけ低くなっている、換言すると、純間接税の分だけ高くなっている。こうして得られたものが国内所得(Domestic Income)であって、要素費用表示となっていることから、「要素費用表示の国内所得」ともいわれる。
つまり、国内純所得は市場価格表示となっているものを指し、国内所得は要素費用表示となっていて、その区別は統計値が(間接税ー補助金)を含むか含まないかの違いだ。
その⑤として、国民総生産、国民総所得がある。こちらは、一国の生産活動を生産面からみたものとして、国内総生産=国内総所得に海外からの要素所得を加え、海外への要素所得を差し引いたのものが国民総生産(GNP:Gross National Product)=国民総所得(GNI:Gross National Income)である。
その⑥として、国民純所得と国民所得とがある。国民総所得から固定資本減耗を差し引くと、市場価格表示の国民純所得となる。また、そこから純間接税を差し引くと要素費用表示の国民所得となろう。
後者の要素費用表示の国民所得は雇用者報酬、営業余剰・混合所得から成っていて、後者の営業余剰・混合所得は財産所得と企業所得から成り立つ。ここに財産所得とは、土地や資本設備及び資金などの生産要素の提供者に分配される要素としての地代や利子、配当などをいう、。
それから、企業が雇用者に雇用者報酬を支払ったあとの企業の受取り分を企業所得といい、こちらは法人貯蓄や法人税の支払い、役員報酬などの支払いにあてられよう。
なお、(参考例)として、1998年の国内総所得(=国内総生産)の構成(単位は10億円)は、以下の通りであった。
1.雇用者所得:282,541
2.営業余剰:90,612
3.固定資本減耗:83,194
4.間接税:43,801
5.補助金:3,048
よって純間接税=(間接税ー補助金)は40,753
6.統計上の不突合:1,398
7.海外からの要素所得の純受取:7,215
8.国内総生産=国内総所得:(1+2+3+4-5+6):498,499
9.国内純生産=国内純所得(DI:Domestic Income,市場価格表示の国内所得):(8-3):415,305
10.国内所得(DI:Domestic Income,要素費用表示の国内所得)
:(9-4+5):374,552
11.国民総生産=国民総所得:(8+7):505,714
12.国民純生産=国民純所得((NNI:National Net Income,市場価格表示の国民所得)
):(8+7ー3ー6):498,499+7,215ー83,194ー1,398=421,122
13.国民所得(NI:National Income,要素費用表示の国民所得):(10+7-6):380,369
14.(=13):国民所得(NI:National Income,要素費用表示の国民所得):(1+2+7):380,368
出所:経済企画庁「国民経済計算」より。
(続く)
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549の12『自然と人間の歴史、日本篇』消費税増税への各界の動き
2019年3月現在、あと半年余りで消費税が上げられようとしている中、この政府方針の脇に追いやられつつある主権者たる国民は、どのように相対していくのだろうか。まずは、消費税に関わりの深い筋の動向に目を向けたい。
「消費税率10%への引き上げに反対する税理士らが2月4日、東京千代田区の衆議院会館で会見を開き、全国の税理士400人が賛同する「消費増税と複数税率の導入に反対します」とするアピールを発表した。
アピールでは、「10%への増税は物価を引き上げ、購買力を低下させ、貧困と格差を拡大する」として、国民生活と日本経済に大きな打撃を与えることを強調。さらに複数税率の導入は、「複雑な税制に加え、新しいポスレジの購入など負担は甚大」と、中小企業の経営に大きな困難をもたらすことを指摘している。」(「税理士新聞」2019年2月25)
続いては、世論の動向をどう見たらよいのだろうか。まずは、読売新聞が2018年10月に実施した「電話全国世論調査」において、「消費税率は、来年10月に、8%から10%への引き上げが予定されています。予定通り、10%に引き上げることに、賛成ですか、反対ですか。」の問いに対し、賛成が43%、反対が51%、答えないが6%であったという。
もう一つ、朝日新聞が2019年2月に実施した「全国世論調査(電話)」において、「消費税を予定通り、今年10月に、10%に引き上げることに賛成です。」の問いに対し、賛成が38%、反対が55%、答えないが6%であったという。
(追記の予定)
(続く)
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549の11『自然と人間の歴史・日本篇』消費税増税と対外資産
海外からは、日本は一体いくら溜め込めば止まるのだろうかと、びっくりされているのではないだろうか。そのことを顧みてか、消費税増税に反対する意見の中には、我が国の対外資産の一部を取り崩せばいいではないか、というものがありえよう。
まずは、2016年末での資産の合計だが、対外資産が1017兆6766億円もある。そのうちには、外貨準備高が142億円、直接投資が159兆1940億円、さらに対外証券投資の454兆7682億円が含まれる。
一方、同年末での対外負債の方は、668兆5646億円に上る。そのうち、債務証券として142兆9447億円の債務があり、日本の国債などによるものだ。また、直接投資の受け入れによるものが、11兆7480億円を数える。そういうことで、正味の対外資産、つまり「対外純資産」と呼ばれるものは、349兆1120億円ということであって、資本主義国では最大規模に膨らんでいる。
関連していうと、我が国のストックとしての直接投資の額は、2017年末で174兆6990億円にもなっている。これに引き換え同負債については、28兆5550億円となっており、外国へ出て行っている投資の方が断然多い。
さらに、アメリカの政府サイドの統計(インターネットのサイトで情報を入手)を見ると、アメリカで発行される国債などの保有者ランキングが載っている。これによると、2018年12月時点での保有トップは中国(本国)であって、1兆1235億ドルだ。そして第二位の保有主は日本であり、1兆423億ドル分を保有しているという。人口が中国の約十分の一の我が国が、中国と競り合いを演じる程に米国債を購入しているのは、驚きだ。
それからもう一つ、民間が保有している資産と負債の残高を取り上げよう。2016年末での状況は、こうである。まず、非金融資産としての2116兆5781億円と、金融資産としての5695兆670億円であって、その合計としての総資産は7811兆6451億円に上る。大変な額だといえよう。その一方、負債は4584兆9731億円であるので、正味の資産としては3226兆6720億円が導かれる(内閣府「2018年版国民経済計算年報」)。
(続く)
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549の9『自然と人間の歴史・日本篇』財政赤字の現代と見通し
今回の消費税増税がなぜ必要なのかの理由付けに最も高い頻度で使われるのが、フローとしての毎年の予算で取りざたされる基礎的収支そして財政赤字と、ストックとしての財政赤字であろう。
前者においては、国債の発行に頼らなくても持続可能な財政が目指されるものの、近い将来そうはならないみたいだ。それというのも、さる3月27日に成立した2019年度予算では、歳入として国債発行による収入を32兆6605億円(前年度に比べ3.1%減少)あて込んでいる。一方、歳出では、借金の利払いなどでの国債費を23兆5082億円(同0.9%)も見込んでおり、どちらの面でも予算膨張に大いに寄与している。
もう一つのストックの財政赤字については、もっと重大だ。日本は、先進国中で群を抜いて膨大な額が積み上がっているのだ。まずは、IMF(国際通貨基金)による2019年の見通し(2018年10月時点)で、財政状況の国際比較を行っている。
これによると、各国のGDP(国内総生産)に対する債務残高の比率、債務は地方債を含む)は、日本が236.6で最大、次のイタリアが128.7、アメリカが107.8と、ここまでが百以上だ。それからは、フランスが96.5、イギリスが87.2、カナダが84.7、ドイツの56.0と続く。
そこで、一般政府の部門別資産・負債残高を、2016年の実績で見よう。ここで「一般政府」というのは、政府部門を「公企業」とに二分したときのもう一方の呼び名で、国と地方の一般会計や、社会保障特別会計などが含まれる。また、公企業は事業特別会計に属し、「法人企業部門」に含まれる。
まずは、一般政府の総資産は1302兆2803億円なのに対し、総負債は1284兆5933億円であって、差し引き17兆6870億円が正味の資産だという。そして負債の中では、債務証券の分が1056兆8907億円とほとんどを占めている(内閣府「2018年版国民経済計算年報」)。そういうことなので、2016年時点では「財政危機」が現実化しているとは言い難いのだが、これから先も負債がボンボン積み上げられていくようだと、危うくなっていきそうな感じがしている。
こうまで肥大化してしまった日本の財政なのだが、この先どのような姿になっていくのかについては、現時点で半ばはわかりそうで、あとの半ばはわかりそうでない。かなりの確率でわかっているのは、今後しばらくの我が国の財政赤字の積み上がりが、人口の高齢化とそれに伴う社会保障費の支出拡大によるものであろう、ということだ。
ここに「しばらく」とは、そのことで財政のやりくりの難しさ、つまり「綱渡り」を、少なくともあと20年くらいは味わっていかなくてはならないらしいのだ。やがては、おしなべての人口構造そのものがやせ細っていく。それに応じて、ネットでの日本の経済力も徐々に衰えていくであろう。
なぜそんな予想が成り立つのかというと、経済がこの先しぼんでいくようだと、国の財政も小さくなっていかざるを得ないであろうからだ。そして、このことは、我が国の人口の行く末と大いに関係してくるのである。
2042年までの推計にて、65歳以上の高齢者は3921万人まで増えよう。一方、15~64歳の年齢層は5978万人に減る見込みだという。その後は、高齢者も減りながら、若い世代を含めた生産年齢人口も、グーッと減っていくのではないかという。
昨今の経済学者の中の一説には、我が国の人口は減り続けても生産革命を遂行すれば大丈夫だという向きもあるみたいだ。現時点では、その一途さは評価しつつも、そううまくは運びにくいのではないかという印象を禁じ得ない。
そして、今からおよそ80年後の2100年にさしかかる頃には、我が国の人口は5千万人台に縮減してしまだろうと(厚生労働省傘下の国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集2019」による中位の推定)。
(続く)
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549の8『自然と人間の歴史・日本篇』消費税増税の根拠が崩壊か(実質賃金のマイナス幅拡大)
統計上の実質賃金というのは、厚生労働省の「毎月勤労統計」などに基づき、物価統計も取り合わせて算出されている。ところが、その信頼性に疑いが発生し、いまだに解決の目途が立っていない。とりあえずの議論には、例えばこうある。
「厚生労働省が公表する「毎月勤労統計」の不正調査問題について、根本匠厚労相は2月5日の衆院予算委員会で、「2018年の実質賃金の伸び率が1~11月のうち9か月で前年同月比マイナスになる」との野党の独自試算について「名目賃金を機械的に消費者物価で割り戻すという前提の限りではおっしゃるとおりだ」と述べ、事実上認めた。(中略)
安倍政権が各種増減税にあたって社会状況を示す根拠もこの統計にあり、今後の焦点となるのが、10月に予定されている消費税増税が予定通り実施されるかどうかだ。政府は「回復は続いている。だから消費税を上げる準備が整った」と説明した際の根拠もこの統計がベースになっている。
統計の不正発覚によって、安倍政権が21年5カ月ぶりの高い水準だと盛んに自慢してきた18年6月の現金給与総額は、公表してきた「3.3%の伸び」は「2.8%の伸び」であったことが分かった。さらに毎月勤労統計調査の賃金変動は、前年と同じ事業所で比較する「参考値」で見るのが正しいことが、総務省の指摘で確認された。参考値ならさらに伸び率が縮み、計算すると1.4%になることが分かった。
厚労省が下方修正した数値では、名目賃金の伸び率も18年1月から同年11月までの全ての月で、これまでの公表値を下回った。物価の伸びを差し引いた実質賃金でも、18年1月から同年11月まで、9月を除く全ての月で低下したのだから、増税の根拠は根底から崩れ去ったと言うしかない。」(「納税通信」2019年2月11日付け)
(続く)
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549の7『自然と人間の歴史・日本篇』非正規労働者など低所得者の消費税負担
今、くるべくしてやってきているのであろうか、「非正規労働者」とされる人たちの、総体としての貧困が。そしていったい、この日本で「非正規労働者」という場合には、就業者のどこからどこまでを指すのであろうか。まずは現に行われている政府統計2017年分で、その概略を示そう。ただし、昨今の統計不正の問題(厚生労働省の毎月勤労統計など)があるので、今はその発覚以前の値でのべさせていただくしかあるまい。
以下では、とりあえず総務省の統計で話を進めよう。これ(全部を数えているのではなく、ある数を調べて、あとは統計的手法を用いることにより推計して出した数字)においては、全産業で6530万人の就業者が数えられている。まずは、自営業主の全体528万人の内訳からいうと、雇入れのある人が129万人、雇い入れのない人が400万人だ。二番目は、家族従事者であって、151万人だという。
3番目は、ありとあらゆる雇用者というくくり方になっているのだろうか、かかる総数が5819万人となっている。その内訳としては、常雇、臨時雇、日雇い、それに「雇用者のうち役員を除く雇用者」に区切られる。
そこで常雇から始めたい。こちらは、役員の349万人と一般常雇の5057万人の合計で5406万人だ。次なるは、臨時雇であって、343万人だという。そして次の次は、日雇いであって、70万人だとされる。
ここからは、少しばかり分類の発想を転換しよう。雇用者分類の振り出し近くに戻って、その総数は5469万人だ。ここからが、重要だ。正規の職員・従業員に分類される人が3432万人に対し、非正規の職員・従業員が全部で2036万人もいる。その比率は、37.3%だ。
その内訳としては、パート・アルバイトが1414万人であって、パートについては997万人、アルバイトが417万人がその内訳だ。次なる分類としては、労働者派遣事業所の派遣社員が134万人、契約社員が291万人、さらに嘱託(しょくたく)としての120万人とその他の78万人となっている(総務省統計局「労働力調査年報」2017年版)。
今回の増税の負担は、だれの負担に向かうのであろうか。それは、第一に庶民にであって、これまでの状況を見ればわかろう。その一つの例として、非正規労働者を含む日本の低所得者層の消費行動への影響を考えたい。ここでは、京都大学研究チームの家計消費に関する論文を紹介したい。
「・・・前節では、『家計調査』の集計データを用いて、食料価格上昇局面におけるエンゲル係数の変化についてみてきたが、本節では、5年毎に調査される大規模な政府基幹統計である『全国消費実態調査』(総務省)の個票データを用いて、長期的なエンゲル係数関係指標の変化をみてみよう。
比較対象とする年次は、消費支出全体や食料消費支出がピークであった1990年代半ばに当たる1994年と、直近の調査時期である2014年をとる。また、対象世帯は-集計データでは所得階層別に把握できない-現役世帯(世帯主年齢が65歳未満の勤労者世帯)を取り出す)。(中略)
すべての所得階層で、可処分所得が減少しており、これに対応して消費支出全体も減少している。所得階層別の増減額(中欄)をみると、高所得層→中所得層→低所得層の順に、可処分所得が、▲154.9万円→▲78.6万円→▲58.6万円、消費支出全体が、▲99.8万円→▲51.9万円→▲33.1万円と、両者はほぼパラレルに減少している。
他方,食料消費支出については、▲12.4万円→▲16.8万円→▲15.2万円と、高所得層の方が減少幅を抑制している。変化率(右欄)をみると、食料消費支出と消費支出全体の対照的な傾向が顕著にみてとれ、所得階層が高くなるほど、消費支出全体の減少率が高まる反面、食料消費支出の減少率は抑えられる。
他方,所得階層が低くなるほど、消費支出全体の減少率より食料消費支出の減少率が大きくなる。貯蓄率をみると、低所得層では低下(以下、略)。」(小嶋大造、大澤秀暁、村上太郎、福島宏祐、小池孝英「食料価格上昇局面における家計消費とエンゲル係数ー所得階層別の変化要因の分析」)
これにうかがえるのは、この間の低所得者層は一方的に所得の減少をしいられてきた。そんな中、なんとか生活水準を維持すべく、食生活でいうと、低価格帯へのシフトで食料調達量を確保するとともに、その購買のために貯蓄を取り崩している姿なのである。
(続く)
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