〇山本博文(やまもとひろふみ)氏の著作に学ぶ(とりあえずの覚書・2020.5.31草稿)

2020-05-31 11:09:17 | Weblog

〇山本博文(やまもとひろふみ)氏の著作に学ぶ(とりあえずの覚書・2020.5.31草稿)

 歴史家というのは、今の日本の世の中では、どちらかというと、地味な部類に入るのだろうか。ここでの念頭にある山本氏といえば、テレビでの「知恵泉」(NHK教育)などにコメンテーター、解説者などでよく出演されていた。

 日本の近世史の重鎮としての話を聞けることから、ありがたかった。その割には、淡々とした口調にして、しかも丁寧、含蓄のある内容で、「流石だなあ」との思いを抱くことしきりであった。

 古今の言葉にあやかると、柔らかさを備えている前提での「剛毅朴訥(ごうきぼくとつ)仁にちかし」という辺りだろうか。お会いしたことはないので、その限りでの印象を記すと、広大な底辺をうかがわせる知識とそれにまつわる風格、あえて言うと、「古武士」の感さえもが漂う。まるで偉ぶるところがない、今時、めずらしい人物ではないかと。

 たまに津山の町中の出身の妻と、ふたりして新聞のテレビ案内で氏にまつわる記事を見つけると、昼間から夜での視聴をと、期待に胸を膨らませていた。これには、同郷にして今は埼玉の居住ということでも、親近感が湧いてきていたようだ。ちなみに、同氏の監修本の中には、埼玉の歴史散歩のような風変わりなものもあるところだ。

 そして昨日は、地元のショッピングセンターの一角にある書店で、二冊の新書本を購入した。一つは、「「忠臣蔵」の決算書」(2012年11月発行)であって、映像化もなされていると聞くのだが、だとすれば、皆さんは鑑賞されたであろうか。いま一つは、「「関ケ原」の決算書」(2020年4月20日発行)であって、こちらは氏の最新作にして、病床にて完成への手を入れられたとのことであり、渾身の力をふるわれたのではないだろうか。

それから、故郷の岡山との関わりについては、私の手もとの郷土資料(ちらしなども含めて、ささやかながら)の中にも、時折、登場されていることから、その折の催しに参加され、講演会などを体験された方も少なくないのではないだろうか。以上の二つは、いま拾い読みさせてもらっているところなのだが、これから、ありがたく熟読させていただこうと思っている。(つづく)

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♦️922『自然と人間の歴史・世界篇』新型コロナウイルスとその起源そして免疫(議論の紹介)

2020-05-28 21:59:57 | Weblog

922『自然と人間の歴史・世界篇』新型コロナウイルスとその起源そして免疫(議論の紹介)


○1月9日、中国の専門家チームが、新型コロナウイルスの検出を公表した。


○3月6日、ポンペイオ米国務長官が、インタビューで、「武漢ウイルス」との呼称を使用した。



○3月12日、中国外務省報道官が、ネット上で、「感染症は米軍が持ち込んだ可能性」とツイートした。




○3月31日、中国国家健康委員会は、新型コロナウイルスに感染しながら症状のない「無症状者」の数を、4月1日から新たに計上すると発表した。この措置は、無症状者を介した感染拡大が言われる中で、方針転換したものだという。

 それというのも、このウイルスとは初めての遭遇であり、まだわかっていないことの方が多いと伝わる。
 そんな中でも、症状なのに感染する(逆にいうと、感染者の少なからずが無症状のため、市中での区別が難しいのだという。)のが、このウイルスの特徴の一つだと追々わかってきた。
 上咽頭、上気道の浅いところでの感染が指摘されており、その影響もあるというのならややわかるものの、感染の詳しいメカニズムはまだ十分には説明されていないのではないか。

 それまでの中国政府は、「無感染者が感染を広げる確率は低い」として、数字の公表からはずしていたというのだ。

 それでも問題は多々あるようで、続けてこう報道されている。「国家衛生健康委員会は31日、当局が把握している無症状者が「30日までに1541人を数え、うち205人が外国からの入国者だ」と明らかにした。一方、香港紙サウスチャイナ・モーニングポストは、中国の政府統計に入らない無症状者が2月末で4万3千人以上いたと報じている」(4月1日付け朝日新聞)という。



○4月14日、ワシントン・ポストの紙面にて、武漢ウイルス研究所を視察した米当局者が、「安全対策が不十分」と指摘したという。
 要するに、武漢の初期症例は市内の海鮮市場に関連するというのが、米科学担当の外交官が指摘したことらしい。だが、その場合の「安全上の懸念」とは何だろうか。

 こちらは、ウイルスなど生物由来物資を取り扱う研究所は、様々な形で安全対策に違反する可能性があるというのであろう。

 具体的には、研究所に誰が入れるのか、要員としての科学者や技術者がどういう訓練を受けているのか。それに、内部監査にも通じる記録の取り方、標識の付け方、病原体の在庫リスト、事故対応の訓練、緊急対応」などが、安全基準違反の原因になり得る。ということなので、概ね、ISOの環境規格でのような試験所要求事項があるのは、容易に想像できよう。

 これらの論点整理から、BBC放送は、「端的に言えば、ワシントン・ポスト記事からは、分からない」(2020年4月18日付けBBCニュースジャパン)という。同感だ。この段階で、いちいち管理運営がおかしいというのなら、多くの試験所が「ダメ出し」になりかねない。

 一方武漢の初期症例は市内の海鮮市場に関連するのでは、と言われていた。ここでも、BBCは、「しかし、外交公電にかかれた懸念点は、特筆すべき異例のものだったのだろうか。」と、逆に問いかけ、次いで、こう述べている。

 「これまでも事故は起きている。2014年にはワシントン近郊の研究センターで、天然痘ウイルス入りの小びんの入った段ボール箱が放置されていたのが見つかった。2015年にはアメリカ軍が誤って、死んだ炭疽菌サンプルの代わりに生きたものを、国内の9カ所の研究所と韓国の軍事基地に送りつけていた。

 また、BSLレベルの低い多くの研究所では、安全基準がまちまちだという。小規模の安全違反は特にニュースにもならない。」(同ニュース)

 

 



○4月22日、パスツール研究所がレポートをウェブ上で公開した。その解説によると、フランスの人口の 5.7% (レンジ: 2.3 - 6.7)が新型コロナウイルスに感染と推定されるとのことだ。入院のリスクは 2.6% (80歳以上の男性は 31%)、致死率は 0.5% (80歳以上の男性は 13%)ということで、入院率と致死率は年齢と正の相関関係が認められるとのこと。

 他者に感染させるのがどれ位かという意味でのR0 (実効再生産数)は、 3.3 からロックダウン後は 0.5 に低下しているとされ、かなり改善したことになっている。
 それから、「集団免疫には 70% が必要だから、第二波を懸念」ということになっているようだが、これだと、これからは長い時間をこのウイルスと付き合うことになりそうだ。

 それに、同研究所としては、免疫があったとしてもどのくらいそれが持続するのか、どのくらいの免疫ができたらそのことがいえるのかなどについては、どのような見解なのだろうか。



○3月末から4月3日にかけての報道の中には、次のような「集団免疫」を巡るものがある。

 それというのは、オランダでは、欧州全体に感染者が拡大しだした3月半ばに、緩い規制を続ける中で、なんとか国内に集団免疫を目指した態勢を敷いて、この危機を乗り切りたい。
 そこでの旗降りを演じたルッテ首相は、こう説明したという。
 「これからしばらくの間で、大半のオランダ人がこのウイルスに感染する。感染した人はその後ほとんど免疫を持ち、集団免疫が大きいほど、リスクの高い高齢者や健康状態のよくない弱者にウイルスが広がる確率が減る。」
 これに対しては、国内で批判が殺到した。例えば、自由党のウィルダース党首は、こう追及したという。
 「国民の健康でロシアンルーレットをするようなものだ。」
 これは「まずい」と思ったのか、ルッテ首相はこう言い換えたという。
 「集団免疫は目的ではなく、今の対策の結果、付いてくるもの」と。
 さらに3月31日には、それまでと真逆のことを言い出した。

「国民の皆さんができる最良のことは、自宅にとどまっていることだ」と。



○集団免疫を目指せ、という、国レベルでの話は、イギリスでもあったらしい。 

 ジョンソン首相が国民に言っていたというのだ。これについては、3月12日の段階では、確認された死者が8人にとどまっていたこともあってか、集会自粛などの要請を見送った、と勘ぐられている。
 では、そのときの政府の首席科学顧問はどうしていたのだろうか。その人は、「大多数の人は感染しても軽症だから感染を完全に抑えず、集団免疫を築くことが狙い」だとしていたという。

 これに対してメディアなどは、「政府は多くの犠牲が出るのを許容した」と受け取り、この戦略に対する批判を展開した。
 国内では、疫学者らによる「規制を強めなけれはピーク時に集中治療の病床の8倍の患者が押し寄せ、死者は25万人」に上りかねない、との試算の発表があった。
 このような展開並びにその後の思わぬ感染拡大に驚いたのではないか、イギリス政府は、集団免疫という言葉を封印し、学校の一斉休校や罰則付きの外出制限など対策を強化する。




○4月30日、トランプ大統領が、武漢ウイルス研究所を発生源と証拠を見たと発言した。



○5月25日、中国の武漢ウイルス研究所の石正麗研究員が、今回の未知のウイルスとの遭遇について、専門家の立場からこう述べたと伝わる。「遺伝子配列を調べ、我々が知っているとのウイルスとも違う未知のものだとわかった。」「伝染病の研究は透明性を持ち、国際的に協力してあけねばならない。」「政治と科学が混ざり、科学が政治化されている。全世界の科学者が望んでいないことだ。」

 そして、こう紹介している。

 「新型ウイルスの起源について、海外で「武漢の研究所から流出した」との説が流布され始めた2月、石氏は自らのSNSで新型ウイルスは自然由来のものだと主張。」(朝日新聞、2020年5月28日付け)




(続く)

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新◻️171の4『岡山の今昔』岡山人(18世紀、新四郎と利兵衛)

2020-05-24 14:13:34 | Weblog
171の4『岡山の今昔』岡山人(18世紀、新四郎と利兵衛)

 ここに長尾(当時は、ながお村、戦後の浅口郡長尾町を経て現在は倉敷市玉島長尾)という土地柄は、宝歴年間、丹波国の亀山藩(現在の京都府)約5万石の領地のうち、約1万2000石は飛び地の一つとしてあった、備中にては、他に玉島村、上成村、東勇崎村などであったという。
 そういうことがあってか、亀山藩としては、奉行などの上方級の役人は、丹波亀山より派遣したものの、その他の役人は、現地領内の各村の富裕者を藩の「御用達」として任命し、藩の仕事の数々を請け負わせていたという。
 そのような仕組みの下、長尾の農民たちの多くは小作に追いやられ、大いなる搾取や収奪に苦しんでいた。そして迎えた1752年(宝歴2年)、農民たちは飢饉からの活路を求めて、村内の大地主2家に御用達を命じられていた地主の二つに対し、小作料の減免を哀願するも断られる。これに、憤慨した農民たちは、その2軒の地主の家に押し入り、家を破壊したという。
 しかして同藩が、これを咎め立てし、農民たちを捕縛し、村の存続を危うくするほどの取り調べと責任追及を行っていたところ、新四郎と利兵衛の二人が名乗りを上げ、本騒動の責任を引き受けたというから、驚きだ。それにも増して、この二人はこの時、それぞれ24歳と19歳の若さであったのに、なぜ主謀格として断罪されなけねばならなかったのであろうか、その辺りの詳しいいきさつはわからない。
 さらに、この事件には、村人が二人をなんとか助けようと、隣村の宝満寺住職に命乞いを藩にしてもらうよう掛け合ったのだが、その住職は寺が同藩とかねてよりよしみを通じていたのが判明した。果たして、村人たちが刑場に駆けつけてみると、時はすでに遅しで、彼ら二人は絶命していたという、なんという悲しい話であろうか。あわせるに、かかる新四郎と利兵衛の「我が身を捨て仲間を助ける」の勇気こそは、その温かな人間性とともに偉大だと言えよう。

 参考までに、当時の日本において、どのような「百姓一揆」観が支配的であったかは、つまびらかでないものの、次に一端を紹介する国文学者、本居宣長(もとおりのりなが)の言は、我が国の近世を通じての、穏健なる保守層の、しかも当時としては相当に視野の広い学者の意見として、大いなる手がかりを現代に伝えているのではないだろうか。

 「百姓町人、大勢徒党して、強訴濫放する事は、昔は治平の世には、おさおさ承り及ばぬ事也。近世に成りても、先年はいと稀なる事なりしに、近年は所々にこれ有て、めずらしからぬ事になれり。これ武士にあづからず、畢竟百姓町人の事なれば、何程の事にもあらず。 
 小事なるには、似たれども、小事にあらず、甚大切の事也。いづれも困窮に迫りて、せんかたなきより起るとはいへ共、詮ずる所、上を恐れざるより起れり。下民の上を恐れざるは、乱の本にて、甚容易ならざる事にて、先づ第一、その領主の耻辱、是に過らるはなし。
 されば、仮令聊の事にもせよ、此筋あらば、其のおこる所の本を、委細に能々吟味して、是非を糺し、下の非あらば、其の張本の僕を、重く刑し給ふべきは、勿論の事、又上の非あらば、其の非を行へる役人を、おもく罰し給ふべき也。抑々此事の起るを考るに、いづれ下の非はなくして、皆上の非なるより起れり。今の世、百姓町人の心もあしく成りたりとはいへども、能々堪へがたきに至らざれば此事はおこる物にあらず。(中略)
 然るに近年此事の所々に多きは、他国は例を聞て、いよいよ百姓の心も動き、又役人の取りはからひもいよいよ非な ることも多く、困窮も甚だしきが故に、一致しやすきなるべし。(中略)
 近年たやすく一致し、固まりて此事の起りやすきは、畢竟これ人為にはあらず、上たる人、深く遠慮をめぐらさるべき也。然りとて、いか程おこらぬようのかねての防ぎ、工夫をなすとも、末をふせぐ計ひては止みがたかるべし。
 兎角その因て起る本を直さずばあるべからず。基本を直すといふは、非理の計ひをやめて、民をいたはる是也。仮令いか程困窮はしても、上の計ひだによろしければ、この事は起るものにあらず」」(「玉くしげ別本」、なお、「玉くしげ」とは和歌山藩主の徳川治貞に提出した政治道徳に関する意見であり、「秘本玉くしげ」とはより具体的な指南書というべきか、さらに「ここにある「玉くしげ別本」というのは、おそらく後者の原本だともされる)


(続く)

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♦️922『自然と人間の歴史・世界篇』新型コロナウイルスとその起源そして免疫(議論の紹介)

2020-05-23 10:41:13 | Weblog

922『自然と人間の歴史・世界篇』新型コロナウイルスとその起源そして免疫(議論の紹介)

○3月31日、中国国家健康委員会は、新型コロナウイルスに感染しながら症状のない「無症状者」の数を、4月1日から新たに計上すると発表した。この措置は、無症状者を介した感染拡大が言われる中で、方針転換したものだという。

 それというのも、このウイルスとは初めての遭遇であり、まだわかっていないことの方が多いと伝わる。
無そんな中でも、症状なのに感染する(逆にいうと、感染者の少なからずが無症状のため、市中での区別が難しいのだという。)のが、このウイルスの特徴の一つだと追々わかってきた。上気道の浅いところでの濃い感染が指摘されており、その影響もあるというのならややわかるものの、感染の詳しいメカニズムはまだ十分には説明されていないのではないか。

 それまでの中国政府は、「無感染者が感染を広げる確率は低い」として、数字の公表からはずしていたというのだ。

 それでも問題は多々あるようで、続けてこう報道されている。「国家衛生健康委員会は31日、当局が把握している無症状者が「30日までに1541人を数え、うち205人が外国からの入国者だ」と明らかにした。一方、香港紙サウスチャイナ・モーニングポストは、中国の政府統計に入らない無症状者が2月末で4万3千人以上いたと報じている」(4月1日付け朝日新聞)という。(続く)

 

○4月22日、パスツール研究所がレポートをウェブ上で公開した。その解説によると、フランスの人口の 5.7% (レンジ: 2.3 - 6.7)が新型コロナウイルスに感染と推定されるとのことだ。入院のリスクは 2.6% (80歳以上の男性は 31%)、致死率は 0.5% (80歳以上の男性は 13%)ということで、入院率と致死率は年齢と正の相関関係が認められるとのこと。

 他者に感染させるのがどれ位かという意味でのR0 (実効再生産数)は、 3.3 からロックダウン後は 0.5 に低下しているとされ、かなり改善したことになっている。
 それから、「集団免疫には 70% が必要だから、第二波を懸念」ということになっているようだが、これだと、これからは長い時間をこのウイルスと付き合うことになりそうだ。

 それに、同研究所としては、免疫があったとしてもどのくらいそれが持続するのか、どのくらいの免疫ができたらそのことがいえるのかなどについては、どのような見解なのだろうか。



○3月末から4月3日にかけての報道の中には、次のような「集団免疫」を巡るものがある。

 それというのは、オランダでは、欧州全体に感染者が拡大しだした3月半ばに、緩い規制を続ける中で、なんとか国内に集団免疫を目指した態勢を敷いて、この危機を乗り切りたい。
 そこでの旗降りを演じたルッテ首相は、こう説明したという。
 「これからしばらくの間で、大半のオランダ人がこのウイルスに感染する。感染した人はその後ほとんど免疫を持ち、集団免疫が大きいほど、リスクの高い高齢者や健康状態のよくない弱者にウイルスが広がる確率が減る。」
 これに対しては、国内で批判が殺到した。例えば、自由党のウィルダース党首は、こう追及したという。
 「国民の健康でロシアンルーレットをするようなものだ。」
 これは「まずい」と思ったのか、ルッテ首相はこう言い換えたという。
 「集団免疫は目的ではなく、今の対策の結果、付いてくるもの」と。
 さらに3月31日には、それまでと真逆のことを言い出した。

「国民の皆さんができる最良のことは、自宅にとどまっていることだ」と。


○集団免疫を目指せ、という、国レベルでの話は、イギリスでもあったらしい。 

 ジョンソン首相が国民に言っていたというのだ。これについては、3月12日の段階では、確認された死者が8人にとどまっていたこともあってか、集会自粛などの要請を見送った、と勘ぐられている。
 では、そのときの政府の首席科学顧問はどうしていたのだろうか。その人は、「大多数の人は感染しても軽症だから感染を完全に抑えず、集団免疫を築くことが狙い」だとしていたという。

 これに対してメディアなどは、「政府は多くの犠牲が出るのを許容した」と受け取り、この戦略に対する批判を展開した。
 国内では、疫学者らによる「規制を強めなけれはピーク時に集中治療の病床の8倍の患者が押し寄せ、死者は25万人」に上りかねない、との試算の発表があった。
 このような展開並びにその後の思わぬ感染拡大に驚いたのではないか、イギリス政府は、集団免疫という言葉を封印し、学校の一斉休校や罰則付きの外出制限など対策を強化する。


○5月25日、中国の武漢ウイルス研究所の石正麗研究員が、今回の未知のウイルスとの遭遇について、専門家の立場からこう述べたと伝わる。「遺伝子配列を調べ、我々が知っているとのウイルスとも違う未知のものだとわかった。」「伝染病の研究は透明性を持ち、国際的に協力してあけねばならない。」「政治と科学が混ざり、科学が政治化されている。全世界の科学者が望んでいないことだ。」
 そして、こう紹介している。
 「新型ウイルスの起源について、海外で「武漢の研究所から流出した」との説が流布され始めた2月、石氏は自らのSNSで新型ウイルスは自然由来のものだと主張。」(朝日新聞、2020年5月28日付け)

 

○北欧諸国においては、6月1日までに、ノルウェーとデンマークが、入国制限の一部解除を発表したという。15日から旅行者の相互の行き来を認め、フィンランドやアイスランドとも足並みをそろえたいとする。

 一方、スウェーデンでは、集団免疫の考えで感染を自然に広めて抗体保有者を増やす戦略を継続しているという。そのうちに、死者は4千人を超え、人口100万人当たりではデンマークの約4倍、ノルウェーの約10倍と突出している。


(続く)

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♦️924『自然と人間の歴史・世界篇』新型コロナとの闘い(スペイン、オランダ、ベルギー)(5.23改訂)

2020-05-19 20:36:08 | Weblog

924『自然と人間の歴史・世界篇』新型コロナとの闘い(スペイン、オランダ、ベルギー)(5.23改訂)

【スペイン】

 

○スペインの新型コロナでの死者数は、3月25日までの数字で3434人で、中国を上回りイタリアに次いで世界で2番目となったという。
 この国で初めての死者が判明したのは、3月3日だった。しかも、「死者数が50人から2千人に増えるまでの日数は12日で、イタリアより2日少ない。この10日間で10倍に増えている」(3月26日付け朝日新聞)とのこと。


○3月14日、政府は、警戒事態を宣言した。これに伴い外出禁止令を出した。違反者には、最大で60万ユーロの罰金を課すことができる。この時の死者は、すでに200人に迫っていた。

 

○3月26日、サンチェス首相は、中国の習近平国家主席と電話会談をして、医療物資の援助を要請したという。ちなみに、「AFP通信によると、中国のIT大手アリババ集団は同日、200万枚のマスクをスペインに送ると表明した」(3月26日付け朝日新聞)という。

 


○米ジョンズ・ポプキンス大学の4月20日のデータによると、スペインの確認感染者数は19万8674人、死者数は2万453人。


○4月28日、スペインのペドロ・サンチェス首相は、新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)を緩め、6月末までに「新たな平常」に戻ることを目指す4段階の計画を発表した。
 業種では、製造や建設を優先していくとのこと。製造や国内各地は感染流行の深刻度に応じて、異なるペースで制限措置を緩めていくとしており、まず4つの島部が来月4日から制限を緩和する。1週間後、残りの地域で緩和が実施される。
 なお、この時点でのスペインの死者は2万4000人近くに上っている。


○5月14日、スペイン保健省は、新型コロナウイルス感染症による死者が217人増加し、2万7321人になったと発表した。1日の死者数は前日の184人から増加し、8日以来初めて2000人を上回った。同国の人口は約4700万人。


○5月18日午後5時現在。米ジョンズ・ポプキンス大学の集計によると、スペインの確認感染者数は23万698人、死者数は2万7563人。



(続く)


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【オランダ】

○3月末から4月3日にかけての報道の中には、次のような「集団免疫」を巡るものがある。それというのは、オランダでは、欧州善玉に観戦者が拡大しだした3月半ばに、緩い規制を続ける中で、なんとか国内に集団免疫を目指した態勢を敷いて、この危機を乗り切りたいとの戦略が言われだした。
 そこでの旗降りを演じたルッテ首相は、こう説明したという。
「これからしばらくの間で、大半のオランダ人がこのウイルスに感染する。感染した人はその後ほとんど免疫を持ち、集団免疫が大きいほど、リスクの高い高齢者や健康状態のよくない弱者にウイルスが広がる確率が減る。」
 これに対しては、批判が殺到したとのことで、例えば、自由党のウィルダース党首は、こう批判したという。
 「国民の健康でロシアンルーレットをするようなものだ。」
 これは「まずい」と思ったのか、ルッテ首相はこう言い換えたという。
 「集団免疫は目的ではなく、今の対策の結果、付いてくるもの」と。
 さらに3月31日には、「国民の皆さんができる最良のことは、自宅にとどまっていることだ」と。

 

○米ジョンズ・ポプキンス大学の4月20日のデータによると、オランダの確認感染者数は3万2838人、死者数は3697人。


○4月27日の AFP通信から、オランダ当局は26日、ミンクが新型コロナウイルスに感染したことが確認されたとして、南部のミンク農場2か所を封鎖したと伝えた。
 封鎖された農場はいずれも、国内でも感染者が多く出ている北ブラバント州のアイントホーフェン東方にあるという。
 驚いたことに、「人間から感染したとみられている」という。それというのは、農場の従業員数人が新型コロナウイルス感染の症状を示しており、従業員からミンクに感染したとみられるという。
症状としては、農業・自然・食品品質省によると「ミンクには呼吸困難など、さまざまな症状が確認され」、検査で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にかかっていることが分かったのだと。
 もっとも、同省によれば、ミンクなどイタチ科の動物は「新型コロナウイルスに感染しやすい」ことが過去の事例で確認されているということから、さしたる驚きには当たらないらしい。


○5月18日午後5時現在。米ジョンズ・ポプキンス大学の集計によると、オランダの確認感染者数は4万4195人、死者数は5699人。

(続く)


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【ベルギー】

○4月18日に米ホワイトハウスより「死亡率が世界一高い国」と名指しされたベルギーは、こういわれるのに不満たという。介護施設での原因不明の死亡なども件数に含めるなど他国とは異なるアプローチをとっているため、このような比較は公平ではないと抗議している。
 
○5月16日、ベルギーでは新型コロナウイルスの感染者を治療している、ある病院を首相が訪れ、医療従事者を激励しようとしたところ、出迎えた医療従事者が首相が乗った車に背を向ける異例の態度をとったという。
 これについて公共放送RTBFは「ブリュッセル・タイムズ」は給与面の待遇改善や人手不足の解消などを求めたと伝えているとのこと。
 ちなみに、人口およそ1150万のベルギーでは、この時点での政府の発表で、新型コロナウイルスの感染者が5万5000人を超えているからして、大きな負担が彼らにかかっているものと推察されよう。
 
 
 

○5月16日、ベルギーの首都ブリュッセルで、珍事が起こった。サンピエール病院を公式訪問したソフィー・ウィルメス首相の車が到着したおりに、医師や看護師など病院スタッフが背中を向けて抗議したのだ。
 医療従事者は献身的に仕事をしているものの、感染リスクは高まるばかりだ。加えて、ベルギーではさらに、医療従事者の報酬や超過勤務についても、不満が高まっているという。

 人口約1200万人弱のベルギーでは、新型コロナウイルスに5万5000人以上が感染したと確認され、9000人以上が死亡するという。これは、世界でも特に高い死亡率(人口当たりの死者数)たと言える。
 ところが、ウィルメス首相はこれについて今月初め、ベルギーの死者数が高いのは、「新型コロナウイルス関連が疑われる死者も几帳面に報告し、集計しているからかもしれない」と発言し、国民からの非難が殺到した模様だ。本人は、他国との単純比較は難しく、実態はもっと少ない可能性があると言いたかったようだが、まともな回答にはなっていないと受け取られている。



○5月18日午後5時現在。米ジョンズ・ポプキンス大学の集計によると、ベルギーの確認感染者数は5万5280人、死者数は9052人。



(続く)


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♦️923『自然と人間の歴史・世界篇』新型コロナとの闘い(韓国、フィリピン、インド)

2020-05-18 19:15:59 | Weblog

923『自然と人間の歴史・世界篇』新型コロナとの闘い(韓国、フィリピン、インド)

【韓国】

○2020年4月までに、韓国では、新型コロナウイルスの第一波を封じ込めた。しかし、5月、その韓国で感染がぶり返している。これを封じ込めるため、当局は約2週間で約4万6千件という徹底した検査とIT(情報技術)を駆使した防疫を行っている。
 難しいのは、気の緩みの一方、感染の舞台が性的少数者(LGBT)が集うクラブだったことで、人権への配慮という課題も浮き彫りになった。ITを駆使した韓国の対策は、プライバシー保護という面では、中国や台湾などの取組みに似て、人権への配慮が課題だとされる。


○5月15には、新型コロナウイルスに感染したソウル拘置所の刑務官が、同僚や被告などおよそ280人と接触していたことが判明した。このため、ソウルの裁判所の一部が消毒作業のため閉鎖され、公判が中止される事態となった。

 

○5月22日での話として、インドの農村部では、流通が滞り、農産物を廃棄する事態が起きている。

 

○5月22日での話として、故郷を目指せす出稼ぎ労働者がムンバイなどの駅に押し寄せ、混乱がおきている。若者が多い。

 



(続く)


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【フィリピン】

○4月1日のフィリピンのドゥテルテ大統領の発言として、こうある。
 「警察と軍への指示は、もし彼らが反撃してきて命の危険があるなら、射殺しても構わないということだ。」
 この日には、マニラ首都圏で生活困窮者らが食料援助を求めて抗議集会を開催していたことから、21人が逮捕された模様だ。


○5月12日、国営テレビで放送された新型コロナ対策会議で、ロックダウン措置の延長に言及したが、具体的にどの地域が対象になるかや延長の期間については触れなかった。

 その後、ローク報道官が、延長期間と地域を確認した。そのなかでは、低リスクと認定された国内の大半の地域では規制が緩和される。



(続く)


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【インド】

○5月15日午後4時時点での米ジョンズ・ポプキンズ大学のデータによると、インドの確認感染者数は8万2103人、死者数は2649人だという。


○5月17日、インドについての世界保健機関(WHO)の集計が発表された。それによると、同国の確認感染者数は都市封鎖を始めた3月25日に562人だったが、17日には9万人を超えたという。感染者数で中国を超え、中東を除くアジアで最多となった。最近の新規確認の感染者数は1日あたり4千人前後に増えており、感染拡大の勢いは止まっていない。



続く)


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○553『自然と人間の歴史・日本篇』検察庁法改正で揺らぐ検察の公平性

2020-05-15 21:38:57 | Weblog
553『自然と人間の歴史・日本篇』検察庁法改正で揺らぐ検察の公平性


 日本中が新型コロナウイルスの感染拡大に揺れているなか、国会である事案を巡っての与野党の攻防が山場を迎えている。それには、大方こうある。

 まずは国家公務員法改正案で、2030年度を目とに定年を60歳から65歳に段階的に引き上げる。これには、野党も賛成という。
 ついで検察庁法改正案が出ていて、こちらはまず検察官の定年を段階的に63歳から65歳に引き上げる。これにも、野党は賛成だという。
 問題だとされるのは次にある、検事長らは63歳で退く「役職定年」を設けるというのだが、野党は反対、削除をもとめているという。それというのは、内閣の判断で、かかる「役職定年」を最長3年延ばせるという内容となっており、2020年4月1日に施行するというのであって、今国会で揉めているのだ。

 おりしも、2020年5月15日には、松尾・元検事総長(松尾氏は1968年に検事任官。他の仲間とともに、ロッキード事件では贈賄側を取り調べた経験があるとのこと。法務事務次官を経て2004年から2年間に当職)らの元検察14人が意見書を提出したという。
 しかしてこの中では、黒川弘務・東京高検検事長(63)の定年延長の閣議決定を「違法だ」と指摘しているという。その文面は、なかなかに勇ましい。
 現状について、「(検察庁法上の)定年を超えての留任という異常な状態が続いている」としたのは、自然体での発言ではないか。念のため、世の中の流れとしての「定年延長自体」に反対しているのではない。
 その上で、同意見書は、今回の検察庁法改正案の当該部分は「違法な決議を後追いで容認するものだ」という。「安倍総理は、「朕は国家なり」といったルイ14世」を思い出させる旨、引用もしているとか。
 彼らがこうまでいうのは、これについての閣議決定の前後から改正案提出の一連の動きにいたるまでが、国民のかなりは「安倍内閣になってからは、なんでもかんでも、まずは閣議決定でやっていく」のが慣わしとなってきたことに対し、大いなる違和感を覚えてきたのではないか。
 そういうことだから、安倍首相は国会などで「黒川氏については、まだ何も決めておりません」と答弁しているのだが、これまでの彼のあれこれ(さしあたって、森友学園での官民の癒着、加計学園獣医学部への疑惑で安倍夫妻が果たした役割を巡る問題、税金を投入しての桜を見る会に絡む問題など)の問題での国民への杜撰(ずさん)な説明の記憶もあって、信用できない。

 今回の騒ぎも、安倍氏らがまずは黒川氏が「余人をもって代えがたい」と評価付けした上で、自分たちのいいように運びたい、それも含めて今回、政権が、これからは自分たちの都合のいいように検察首脳を操りたい、ということではないか。
 およそこのような話に今回なっていったのには、文化人の大いなる役割があった。それというのも、「今回の政府のやり方は、どう考えても国民をないがしろにするものであって、決して許してはならない」という声は、ツイッターとなって、国民の間に拡散していく。そのスピードは、これまでの最高であったのではないか。誠に、勇気ある、そして頼もしい呼び掛けである、

 

 それゆえ、この度の検察庁OBの皆さんによる同意見書が、続けて、このような政府のやり方は、「検察の組織を弱体化して時の政権の意のままに動く組織に改変させようとするものであり、看過できない」と批判しているのは、全く同感だ。また、「検察官というのは、(安倍首相の言うような」行政官に留まるのではなくて、準司法官としての性格ももつ」というのも、妥当な考えだと思われる。
 
 はたして、自民党議員の一部からも、このごり押しをするのは良くないといい、連立の公明党はだんまりを決め込んでいるのだろうか、両党とも一体どこを向いて国政を担当しているのだろうか。国民のかなり多くからこういう嫌疑がかかっているところへ、なぜいま強硬採決への道を歩むのをやめないのだろう。(5月15日夜)
 
 
 話は、その後も続くのであって、安倍氏がやり直しをほのめかして、今回はごり押しで決めるのをやめたのであった。
 ところが、そんな折、今度は黒川氏が新聞記者(朝日新聞が1人、産経新聞が2人という)とかねてから月に1度以上のペースでかけ麻雀をしていたという。しかも、国内が新型コロナでの非常事態宣言下にある5月になっても、その会をやめずに「三密状態」で楽しんでいたというのであるから、驚きだ。
 そして、これをマスコミに批判され、さすがに少しは反省したのだろうか、黒川氏が辞職をしたいと「辞職」申し出ると、政府はこれを受理、法務省は彼を訓告処分とした。これだと、法務省止まりの軽い処分であるからして、退職金は全額払われる話らしい。
 
 しかる後、国会で責任を追及された法務大臣は、安倍総理に「進退伺い」をだしたが、慰留され、黒川氏の後任の人事をしたいという。法務大臣の上司にあたる安倍氏は、「黒川氏の定年を延長したこと自体は問題なかった」とか、この「責任は私にあります」と一応は答弁するのだが、元々は彼が肝いりで同氏を定年後も現職に留まらせていたのであって、今になってまるで他人事のようにいうのはおかしい。
 なお、現内閣は、ここに至っても同法案を廃案もしくは練り直すというような妥協をしておらず、この問題の落ち着き先は見えていない。
 
 
(続く)


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♦️920『自然と人間の歴史・世界篇』新型コロナウイルスとの闘い(ロシア、ブラジル、南アフリカ)(5.19改訂)

2020-05-15 07:16:06 | Weblog

920『自然と人間の歴史・世界篇』新型コロナウイルスとの闘い(ロシア、ブラジル、南アフリカ)(5.19改訂)

 

【ロシア】


〇新型コロナウイルス感染拡大の中、ロシアでははじめは大方大丈夫ではないかと思っていた節があるものの、5月に入って世界第二位の感染者数になり、死者は2千人台で推移ながらも、モスクワなどの市中には緊迫感が漂うようになっているとのこと。

 といっても、ロシア政府の5月12日午前(日本時間夕)の発表によると、国内の確認された感染者数の累計は23万2243人ということで、1か月前のほぼ15倍に上る。政府は「検査数を大幅に増やしたことも一因だ」としている。


〇5月11日、プーチン大統領が、民間企業の休業措置を12日から解除し、建設業や資源採掘などの基幹産業を同日から解禁すると発表した。「これらの業種は雇用が非常に多い」「消費者と接触する必要がなく、リスクが低い」という理由を挙げている。

 

〇12日からは、既にかなりの数が行われているPCR検査に続いて、大規模な抗体検査が行われるとのこと。モスクワ市では、一日最大20万の検査キットを用意するという。 感染後に血液中に抗体ができているかどうかを調べるもので、感染状況を全体的に把握するのに効果があるといわれる。

 
〇プーチン氏の大統領の地位を延長するためと大方に受け取られているの憲法改正論議は、この感染拡大で凍結されているようだ。今後の対コロナ対策がうまく行われないことで感染拡大が収まらないようなら、政権への不満がそれだけ増す流れではないだろうか。

 

(続く)

 

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【ブラジル】


〇5月13日のブラジルでは、新型コロナウイルスの確認された感染者が18万9千人を超え、死者も1万3千人を超えたと発表した。ここでの現下の特徴は、大統領が経済活動の制限緩和、外出制限解除に積極的であり、これに慎重な州政府や市民との間で争いが起きていることだ。

 

〇5月17日午後5時時点のジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、ブラジルでの確認された感染者数は23万3511人で世界で4番目に、死者は世界で6番目に多い1万5662人となり、中南米ではいずれも最も多い。

 

518日のBBCニュースによると、ブラジル最大の都市・サンパウロのブルーの・コヴァス市長は、同市の公立病院の病床利用率が90%に達し、今後2週間以内に満床になるとの見通しを述べたという。

 

○5月18日、サンパウロのファベーラと呼ばれる貧困地区の人々が、生活を保障せよとの要求を掲げ、デモを行う。

 

〇このところ、通貨レアルの低落も続いており、これがひどくなると、財政からの援助にも影響を与える。

 

○6月5日のブラジル政府と保健省は、新型ウイルスの感染者数、累計死者数の発表を停止したという。これまでは、保健省のホームページで公表していた。これに対し、新型コロナをめぐる路線対立で4月に解任されたマンデッタ元保健相は6日、「我々は情報の破壊という悲劇を見ている」と非難した。
 ボルソナロ大統領は、目先の経済を優先し、国境封鎖や外出自粛令に反対してきた。このやり方は、州知事との対立で、新型コロナのまん延を許したと国内外から批判されている。それでも同氏は5日、米国に追随する形で世界保健機関(WHO)からの脱退も示唆しているという。
 ジョンズ・ホプキンス大のホームページでは同6日、ブラジル政府の情報公開が止まったことを受け、ブラジルのデータを一時外した。その後、データを更新し、日本時間7日午前8時時点でブラジルは累計感染者数で世界2位、死者数で3位となっているという。

 

(続く)

 

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【南アフリカ】


〇5月10日時点での南アフリカの新型コロナウイルスでの確認済み感染者数は、1万2739人、死者は238
人というが、どこまで信じていいかわからないという。5月に入っても拡大が続く。5月10日時点では、3月27日から都市ではロックダウンが実施されている。それを5月1日から段階的に緩和する動きになっている。

 また、政府の救済策が遅れていて、貧困層の生活が圧迫されていることから、各地で暴動が起き、軍隊が出動しているとのことだ。

 

(続く)

 

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♦️921『自然と人間の歴史・世界篇』新型コロナウイルスとの闘い(インドネシア、イラン、トルコ)

2020-05-15 07:16:06 | Weblog

921『自然と人間の歴史・世界篇』新型コロナウイルスとの闘い(インドネシア、イラン、トルコ)

 

【インドネシア】

 

○3月31日のインドネシアでは、政府が、感染症のうち30日までの首都ジャカルタ特別州での新型コロナでの死者が76人であったと発表した。これに対し、同州のアニス知事は、州独自で亡くなった患者の埋葬を追跡してきた結果を公表した。それによると、同6~29日の間に「死後4時間以内に埋葬する」などという手順で計283人の患者が埋葬されていたという。
 けれども、「首都では感染を確認する検査の普及が遅れたこともあり、これら283人の大半が政府統計に含まれていない」(4月1日付け朝日新聞)と指摘する。


〇新型コロナウイルス感染拡大の中、インドネシアでは、はじめこそ大方大丈夫ではないかと思っていた節があるものの、4月8日時点でいうと、2738人の確認感染者数があり、221人が死亡していたという。

 それというのも、3月2日までは確認された「感染者ゼロ」が続き、その後に感染がみつかり、急拡大したことになっている。

 このあたりの事情については、例えば、次のように言われている。

 「だが、首都ジャカルタ特別州の墓地では3月の埋葬数が前年同月比で千件以上増加しており、アニス知事は「新型コロナ以外の理由を探すことは困難だ」とはっぴょうされている患者数に疑問を呈している。」(産経新聞、2020年4月9日付け)

 「感染拡大の当初から水面下で蔓延していた恐れもある。同国のカラ赤十字総裁は検査能力の不足のため、感染者が「普通の発熱か、テング熱と診断されるのではないか」と懸念する。」(同)

 

○5月15日付けで、エリック・トヒル国営企業相は、在宅勤務が定められているジャカルタ首都圏などで、国営の会社や工場で25日から経済活動を順次再開させ、45歳以下の職場復帰を促すとの通知を出した。

 

 

(続く)

 

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【イラン】

 

○3月に入ってのイラン政府は、IMF(国際通貨基金)に、新型コロナウイルス対策の名目で50億ドルの融資を要請した。

 

○4月5日のイランでは、ロハニ大統領が「健康管理と経済活動の両立は可能だ」といい、そう事を荒立てないで対応することは可能だと言いたいのかもしれない。


〇4月8日夜時点でのイランでの新型コロナイルスの確認された感染者は6万7286人、死者数は4003人だという。それが、日本時間で5月16日午後5時時点でのイランでの新型コロナイルスの確認された感染者は11万6635人、死者数は6902人だという。

 

○4月11日には、首都テヘランを除いた各地で制限的の緩和があった。具体的には、政府が「感染リスクが低い」と認め、営業再開を許可した企業や商店・店舗の活動が再開してよいことになった。

 

○そして迎えた4月18日には、テヘランでも制限の緩和が始まり、多くの市民が街頭に出ていく。

 

○4月18日には、確認された感染者数か8万人を超え、死者数も5千人を超えた。3月18日に、中国、イタリアに続いて1千人を超えていたことから、1か月の間に約5倍になったわけだ。

 

○4月19日午後5時での米ジョンズ・ポプキンス大学の集計をみると、イランの確認感染者数は8万868人、死者数は5031人。

 

 

(続く)

 

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【トルコ】

 

〇4月20日、トルコのエルドアン大統領は、新型コロナウイルスの感染拡大を抑制しようと、23日から4日間、全国の31都市でロックダウンを行うと発表した。これまでには、11~12日、18~19日に、同様の措置を行っていたのが、感染拡大が収まらないことに対応したもの。5月24日からイスラム教の「ラマダン」に入ることからの措置を延長したものと見られる。

 

〇5月16日午後5時時点でのトルコの新型コロナウイルスでの確認済み感染者数は14万6457人、死者は4055人。イランを除く中東地域で最大の感染状況だ。

 

〇そんなトルコで特徴的な動きの一つに、通貨リラの下落が止まらず、外貨準備の減少があるという。この国の通貨リラは2018年の通貨危機以来の最安値圏で推移し、外貨準備は1か月で約3割方下落しているというのであるから、大変だ。

 

 

(続く)

 

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新○○226の1『自然と人間の歴史・日本篇』19世紀での諸藩の改革(長州藩、薩摩藩)

2020-05-14 21:59:27 | Weblog

226の1『自然と人間の歴史・日本篇』19世紀での諸藩の改革(長州藩、薩摩藩)

 この時期には、全国の三百諸藩の藩政改革が盛んに行われた。長州藩では、天保期の初年、1830年(天保元年)に大規模な農民一揆が起こる。それは、翌年まで続き、防長二国の全域に広がった。
    この一揆が掲げたスローガンに「藩営専売の廃止」があり、藩が藍や櫨などの主要な産物の流通を独占したことに反対したのであった。これだと、農民としては、強制的に買い上げられるのであるから、利益は見込めなくなってしまう。
    こうした一揆はその後も藩内のそこかしこで頻発した。また、藩としての商業資本への借財も、「両に換算しておよそ二百万両、藩の年収の二十二倍」(松浦玲「藩政改革」:「幕藩体制の動揺」:日本歴史シリーズ16、世界文化社、1970に所収)の厳しい財政状況であった、とされる。
 長州藩においては、1831年(天保2年)、藩を揺るがす大一揆が勃発する。襲撃されたのは、村役人と特産物の買い占めで暴利をむさぼっていた商人達だった。長州藩は、財政再建策の一つとして産物会所を作り、彼らに特産物の売買を独占的に許したが、その改革案に民衆が抗議の一揆を起こしたのだ。
    藩から特権を与えられた商人と農民との間で利権を巡る争いが起き、これが領内全土に広がったのだ。この一揆は、一説には十万人を超える農民が参加した。一揆の鎮圧とその後の復興に莫大な資金を投入せざるをえない状況となった長州藩は再び財政難に陥る。
 このようなとき、毛利敬親(もうりたかちか)は家督を継ぎ、十三代藩主となる。彼は、よいと思われる話があると、「そうせい」というのが口癖であったとか。たしかに「凡庸」な性格であったかもしれないが、それでいて、先取の気風があったのではないか。

 長州藩は、この時大いなる決断をした。1838年(天保9年)、中級武士だった村田清風(むらたせいふう、1783~1855)を抜擢し、藩政改革を命じた。村田はこの時、56歳を数えていた。この頃の長州藩は多くの負債があり、就任した村田はこれを「8万貫の大敵」と呼んで、解消を目論む。その手段として、驚くことになんと村田清風を中心に、商人達に向かって借金の棒引きと要求したのであるが、それがなんとかうまくいったようだ。
 1842年(天保14年)、村田は「三七ヵ年賦皆済仕法」を出した。これは、藩債については、元金の3%を37年にわたって返済すれば、皆済とする一方的な返済案だった。また、藩士の借財についても、藩がいったん全部肩代わりすることとし、同様の条件での返済をすることにした。

 村田ら改革派は、下関という場所の重要性にも着目した。この頃、下関海峡は西国諸大名にとって商業・交通の要衝であった。1840年(天保11年)には、流幣改正令を発布があり、下関越荷方を拡張する。

 そこで白石正一郎ら地元の豪商を登用して、越荷方を設置した。越荷方の「越荷」とは、他国から入ってきた荷物のことである。これを扱うべく、藩が下関で商人などを束ね、運営する金融兼倉庫業を営む。具体的には、他国船の越荷を担保に資金を貸し付けたり、越荷を買っては委託販売を行う。

 しかし、この仕法は、藩士が多額の借金をしていた萩の商人らに反発を受ける。また越荷方を成功させたことで、大坂への商品流通が減少したため、幕府当局からの横槍が入り退陣に追い込まれる。そこで、藩が専売していた特産物の売買を商人に認めるかわりに税を課すことで、藩としても収益を上げていく。
 村田らはこれらの政策実行で、紙、蝋、米、塩の生産強化を行い、専売制の手直しを始めた。それに、藍の統制廃止や木綿の流通自由化に踏み出した。さらに藩内の豪商に対しては、責任を持たせて他藩の貨物や船舶相手の運賃稼ぎや資金の融通するという施策を行った。これらが効を奏する形で、藩の財政はしだいに好転を始めていく。

 これらのうち蝋、米、塩は「三白」(さんぱく)と呼ばれた。「三白」のうち蝋は、櫨(はぜ)の実を原料とする。紙に劣らぬ産業にと育成策が取り組まれる。不毛の山野や畑の畦(あぜ)などの閑地を選んで櫨の植林を増やすようにと、農民を激励するとともに、「鯖山製蝋局」による統括体制が整えられていく。
 そして迎えた1841年(天保13年)には、長州藩の積年の3万貫の負債を減らすことに成功した。また、清風の改革は財政再建だけでなく人材登用や教育の面でも効果をあげるが、逆風も吹き荒れていたらしい。中級以上の藩士を中心に改革に反対する勢力の台頭があった。
    それに持病の中風の悪化により、63歳の村田は、坪井九右衛門(つぼいくえもん)にその座を譲る。村田は、生家である三隅山荘に帰り、隠居した。それからも、人材の育成には熱心であったようで、三隅山荘に開いた私塾、尊聖堂は多くの子弟達で満ち溢れていたという。


 薩摩藩においては、琉球国(りゅうきゅうこく)との関係があって、これがなかなかに複雑であった。1609年(慶長14年)、琉球王国は島津氏から攻略された。

 17世紀の中頃には、その琉球では、砂糖の貢納制度が始まる。政府が自らの差配にて砂糖を取引することになったのだ。それというのも、薩摩藩に多額の借金を背負った琉球政府が生きていくためである。
 1647年から、国内の農民に対して税収の一部を砂糖で支払わせて、その利益を借金の返済にあてていく。1662年(寛文6年)には琉球政府は「砂糖奉行」を置いて砂糖を増産に励む。その翌年には白砂糖・氷砂糖の製法を学ばせるため、中国福建省に担当者を派遣するのであった。

 このような二重の仕組みにて、琉球の砂糖は薩摩藩にとって貴重な収入源となっていたのだが、中国からの輸入が増加し砂糖の値崩れする。

 そこで仕方なくというか、1697年(元禄10年)には、琉球における砂糖生産の制限を行うと同時に、直轄地である奄美大島(あまみおおしま)での砂糖生産にその少なからずを切り替え、薩摩が直接に砂糖の生産に乗り出す。

 稲作には向かない土地柄である奄美大島にとって、サトウキビはサツマイモとの間作が可能で、畑地で収穫も見込める。

 それから時は、ながれてのことである。おりしも、18世紀後半の薩摩藩は財政危機を迎えていた。上方の商人からの借金や、幕府命令での木曽川改修工事の請け負いなどが重なり、経済運営は苦しかった。

 ついては、財政赤字の穴埋めを狙って、1831年(天保2年)、薩摩藩は琉球に年貢米2800石分を砂糖で支払うことを命じる。また、奄美大島・徳之島・喜界島にいいて、砂糖の増産と砂糖の専売制度を始める。

 その中では、農民に一定額の砂糖生産を割り当てて、強制的に買い上げる「定式買入糖」を採用する。それに臨時に増額される「買重糖」の、あわせて2種類の方式で生産を拡大する。

 かくて、増産を成し遂げた農民には郷士格などの格式が与えられた。頑張った者には、それなりの褒美を遣わすというという、巧みさで農民たちを支配する。

 幕末になると、薩摩の財政は支出の増大がひどくなっていく。頼みとしたのは、ここでも砂糖であった。島津斉彬(しまづなりあきら)によって西洋式の製糖技術を導入し、1865年(慶応元年)イには、ギリス人技術者を雇用しての白砂糖の製造が、奄美大島に導入される。これについては、3年後、台風の影響で設備が崩れて目論見は崩れてしまうのだが、積極的な増産への取り組みが続く。。

 それから、できた砂糖の販売だが、薩摩藩の砂糖は大坂の薬種問屋を通さなかった。薩摩藩の大坂蔵屋敷に運び、そこでで入札が行われ、仲買に販売されたという。要するに、中間に入る業者を減らし直売することによって、利益を拡大しようとしたわけだ。

 翻って、琉球という国は、その後も日本とは異なる独立国には違いなく、中国の清(しん)との関係は続けていた。薩摩の経済支配に組み込まれてからの琉球王国には、「在番奉行所」(御仮屋(うかりや))と呼ばれる薩摩藩からの出先が設けられていた。

 そんな中にも、時代はだんだんに風雲急にを告げていく。なんと、その琉球の那覇の湊に、1853年(嘉永6年)旧暦5月、ペリー艦隊がやってきた。首里城に入ったペリーは、石炭貯蔵庫の設置などを要求した。その翌年の1854年(嘉永7年)、琉球国はアメリカとの修好条約を結んだ。

 そればかりでなく、やり手の島津斉彬は、「奄美大島と沖縄の運天港を開港させ、フランスから軍艦と最新鋭の銃を、琉球を介して購入する計画を立て、両者間でこの取引は成立」(喜納大作・上里隆史「琉球王朝のすべて」河出書房新社、2015年に改訂新版)したという。しかし、斉彬の急死で計画が中止になったという。

 ちなみに、この頃の薩摩のやり方と財政のやりくりについては、例えば、こうある。
 「しかし斉彬にしても、まだ西欧近代化政策は緒(ちょ)についたばかりであった。しかもこれらの西欧近代化の実験を斉彬に可能にしたのは、調所(ずしょ、フルネームは調所広郷(ずしょひろさと)、引用者)と斉彬が営営二十年にわたって積み立てた財力だった。

 そして薩摩財政の基本線はまだ当分のあいだ調所財政に頼るしかなかった。農業生産や砂糖専売制における過酷な収奪ぶりはそのみ引き継がれた。また、密貿易を利用して幕府に内部告発し、調所を自殺に追い込んだ斉彬自身が、密貿易をやめるどころか、調所の路線を踏襲し、一層これを強化しているのである。」(綱淵謙錠(つなぶちけんじょう)「島津斉彬」文春文庫、1995)

 これらの意味合いから、薩摩が大きく貢献しての明治維新には、薩摩の砂糖交易によるところの富が大いなる支えとなったであろうことは、疑いあるまい。

 そのあたり、明治になっての産業政策の立案においても、薩摩時代の人民動員は、政府に多くの示唆を与えたのであって、例えば、こう言われる。

 「試に旧鹿児島藩制を考えるに、砂糖を製糖する最も巨額なる大島(奄美大島、引用者)、徳の島、沖の永良部島、喜界島等には重く注意を加え、代官及付役見聞役等を平常在勤せしめ、島民の保護監督を為し其需用品は米穀、諸器具に至るまで之を貸与し、産出する所の製糖を以て弁納せしむるを例とし、・・・(中略)・・・、島民は衣食器具に欠乏せず、販跡(販路、引用者)に彷徨(ほうこう)せず、一途力をかんしょの栽培に尽くし、従って其収穫も頗(すこぶ)る巨額なりき。」(1884年(明治17年)に編纂された農工務省「興業意見」巻25による、この書は、日本の産業計画の礎となったという)
 この文中に、「島民は衣食器具に欠乏せず、販跡(販路、引用者)に彷徨(ほうこう)せず、」とあるのは、徳川とはことなる形での、新たな人民支配を築こうとしていた明治政府の志をいみじくも示しているようで、興味深い。

 

(続く)


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♦918『自然と人間の歴史・世界篇』新型コロナとの闘い(イギリスとフランスそしてドイツ)(5.19改訂)

2020-05-14 13:54:10 | Weblog

918『自然と人間の歴史・世界篇』新型コロナとの闘い(イギリスとフランスそしてドイツ)(5.19改訂)

【イギリス】

〇イギリスは、感染拡大の原因について、こう評価されている。それというのは、初期対応がおそかったこと、検査が十分でないこと、医療現場の感染防護がよくないこと、5月を迎えての最近では、介護施設での集団感染(クラスター)が多いとのこと。

 

〇はじめに、5月に入ってのイギリスの財務大臣の声明には、こうある。

“Employers will be able to contact HMRC (revenue and customs) for a grant to cover most of the wages of people who are not working that are furloughed and kept on payroll rather than being laid off.”

 この措置は、先進国の中でも、働く人々のことを考えての措置として今回の新型ウイルスに対する措置として大いに注目を浴びている。

 

○米ジョンズ・ポプキンス大学の4月20日のデータによると、イギリスの確認感染者数は12万1173人、死者数は1万6095人。

 

520日、イギリス政府は新型コロナ対策で多くの議論になってきていた、これにより放置しておけば休業を余儀なくされるだろう企業に勤める労働者のため、一人月額2500ポンドを上限に賃金の8割を支給すると発表した。この措置では、企業規模や営利・非営利の別を問わない。51日に遡って企業からの申請を受け付ける。当面の期間は3か月。予算枠は設けず、政府の責任で必要なだけ肩代わりをするのだと伝わる。

 スナック財務相は、「国民の雇用と賃金はできる限り守る」「歴史上初めて、政府が賃金支援に踏み込む」といい、「労働者の賃金に対する直接的な支援が必要」とする経済界の意見も取り入れての措置となった。

 イギリスでは、この他、納税の一部繰り延べや、飲食店などへの助成金、さらに企業の資金繰りを援助するための約3300億ポンド規模の政府保証付き融資枠を設けるなどの支援策を実施しているところだ。

 

〇「パリAFP=時事通信」による報道として、およそこうある。それによると、今回の第一波による感染でのイギリスでの死者数が、このままいくと欧州で最多の6万6000人になる可能性があると伝えた。この見解の出元は、米ワシントン大学の研究チームによるものであり、同大学の医学部の保健指標評価研究所(IHME)が行ったモデリングにより、欧州全体での新型コロナウイルスによる死者数は15万1680人になることが予測される。また、その中でのイギリスにおいては、今のところ「スペインやイタリアそしてフランスを下回っているが、イギリスの流行は他の欧州全体より数日遅れており、死者の増加ペースは現時点で既に他国を上回っている」ことから、このような話となっているとのことだ。

 

(続く)

 

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【フランス】

○米ジョンズ・ポプキンス大学の4月20日のデータによると、フランスの確認感染者数は15万4098人、死者数は1万9744人。

 

○4月22日、パスツール研究所がレポートをウェブ上で公開した。その解説によると、フランスの人口の 5.7% (レンジ: 2.3 - 6.7)が新型コロナウイルスに感染と推定されるとのことだ。入院のリスクは 2.6% (80歳以上の男性は 31%)、致死率は 0.5% (80歳以上の男性は 13%)ということで、入院率と致死率は年齢と正の相関関係が認められるとのこと。

 他者に感染させるのがどれ位かという意味でのR0 (実効再生産数)は、 3.3 からロックダウン後は 0.5 に低下しているとされ、かなり改善したことになっている。
 それから、「集団免疫には 70% が必要だから、第二波を懸念」ということになっているようだが、これだと、これからは長い時間をこのウイルスと付き合うことになりそうだ。

 それに、同研究所としては、免疫があったとしてもどのくらいそれが持続するのか、どのくらいの免疫ができたらそのことがいえるのかなどについては、どのような見解なのだろうか。

 

〇5月に入って、ようやくというべきか、感染拡大のペースが鈍ってきたのだという。とはいえ、5月10日時点での確認済みの感染者数が14.1万人に対し、回復者数は5万8673人、死亡者は2万7074人ということで、直りがおそい。

 

511日、フランスでは、これまでの制限の緩和が発表された。これまでスーパーや薬局などは認められていた。この緩和というのは、全面的なものではなくて、ソーシャルディスタンシングをとっての行動が求められる。それに、100キロメートルを越える移動は認められないし、地下鉄やバスなどの公共機関を利用する時はマスクを着用しなければならないという。

 

○米ジョンズ・ポプキンス大学の4月20日のデータによると、ドイツの確認感染者数は14万5742人、死者数は4642人。

(続く)

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【ドイツ】

56日、ドイツ政府は、ロックダウンに集約される一連の感染拡大防止措置を段階的に緩和していくことを発表し、手始めに商業施設や学校の再開を認めた。しかし同時に、感染拡大がぶりかえした時は再び制限を強める緊急ブレーキを踏むという。

510日には、政府の公衆衛生機関であるロベルト・コッホ研究所の発表として、「有効再生産数」が1を超えて1.1になったとした。

 この日の新たな感染者は667人、累計で16万9218人、死者数は26人増えて累計で7395人ということであり、感染対策の「優等生」という程ではあるまい。

 

(続く)

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♦917『自然と人間の歴史・世界篇』新型コロナと中国(~2020.12.08)

2020-05-10 12:00:00 | Weblog

♦917『自然と人間の歴史・世界篇』新型コロナと中国(~2020.12.8)

 

 中国での感染及び対策などの状況ですが、主な流れを以下に記していきたいと考えます。

 

〇2019年12月30日午後5時43分、湖北省武漢市で医院を営む李文亮医師がネット配信にて「貨南水果海鮮市場確診7例SARS」の表題にて、人々に注意を喚起した。

 なお、以下では、現代中国語の漢字が日本漢字と大きく合わない場合があることから、そのときは適当な日本漢字なりを探して充てたい。蛇足ながら、戦後のある時、周恩来・当時の首相が日本側と漢字をできるものは一致させてはどうかと提案があったものの、当時の日本政府は断った経緯がある。

 なお、文中に紹介の中国の一般市民からの情報については、これまでのところ、主にテレビで放映された番組からの引用が欠かせません。その1としては、郭晶「武漢封城日記」、5月27日NHKのBS1で放映の「武漢封鎖76日記録、日記とラジオ市民の声」、5月25日NHKのBS1で放映の中国国営放送「武漢の24時間、ロックダウン・中国の記録」

 

〇それにもかかわらず、武漢市衛生健康委員会初の市民向け知らせには、こうある。「人から感染する証拠はない。状況はコントロールできる。」(「未発現明確的伝人証拠」)というのだ。

 

○2019年12月31日、武漢市政府が、原因不明の肺炎患者を確認したことを発表する。

 

○2019年12月31日に、中国はWHO(国連の世界保健機関)に、その事を報告している。

 ここにいうWHO(世界保健機関、1948年に設立)の本部は、2020年5月現在はスイスのジュネーブに、その事務所は世界150か所以上あるという。2020年5月現在で194かヵ国が加盟していて、職員は7000人以上に上るという。運営については、年に1回の総会で予算や政策などを決め、その執行は年2回の執行理事会で行われている。

 

 

○2020年1月1日、武漢市の公安当局が、ネット上にて事実と異なる情報を流したとして、8人を拘束、処分したことを発表する。

 

○武漢市肺科医院の杜栄輝(DU  RONGHUI)医師は、1月3日、CT画像にかつてない異常を見つけた。
 いわく、「大勢の肺炎患者を診ます。アデノウイルス、パラインフルエンザ、H1N1型インフルエンザもあります。」「一度に5~6人の初診の患者が来て、見たこともない肺炎の症状が、どの患者のも似ていて、ほぼ同じでした。胸膜に沿った部分も気管支に沿った部分も真っ白でした。」

 

○1月3日、米国の疾病対策センター(CDC)長官が、中国側から直接「武漢で原因不明の肺炎患者」の発生連絡を受ける。

 

○1月6日、アメリカが、中国にCDC専門家の派遣を申し出るも、中国は認めず。

 

〇1月6日、武漢市政府は、「原因不明の肺炎が発生している」ことを再び発表する。最初の症例は、2019年12月12日とあって、それから2020年1月5日までの間に、合わせて59人が感染したとのこと。

 

○1月9日、新型コロナウイルスが病原体であるとの専門家の判断を、国営テレビが報道する。

○1月14日、WHOが中国当局による予備調査では「人から人に感染するという明白な証拠は見つかっていない」とツイッターに投稿した。
 ちなみに、WHOの専門家は同日、(人から人への)限定的な感染が起きている可能性があると述べている。

 

○1月14日から、武漢の空港、駅、バスの発着所などで、体温を検査するサーモグラフィーを335台以上配備した。


○1月15日、武漢市政府が、人から人への感染について「明確な証拠は見つかっていない」「感染の可能性の排除はできない」との見解を発表した。


○1月15日、習近平国家主席が、感染対策に全力を挙げるよう指示したと、新華社が報道した。

 

 

〇1月19日、武漢市で「万家宴」と称し、大勢の市民が市当局に招待されるなど、盛会であったという。

 

〇1月20日~、中国国家衛生健康委員会が、今回のウイルスは「人から人へ感染する」と先の見解を改めた。国営テレビ報道によると、「中国共産党の最高指導部は会議を開き、新型コロナ対策チームから報告を受け、今後の取り組みを話し合いました」とある。

   その画面にて、「中共中央政治局常務委員会召開会議」、研究加強新型冠状病毒感染的肺炎工作疫情控工作」とのタイトル、および「我能力的一時大考、我門一定要総結経験、吸取教訓。要針対今次疫情〇対中暴露出来適短板和不足、健全国家〇急管理体系、・・・」云々とある。要は、「我々は、今回の対応のまずさを、次の教訓に生かさなければならない、・・・」というのである。

 

○1月21日、アメリカ西海岸のワシントン州で、武漢から帰国した男性が感染していることを確認した。それが、アメリカでの感染第1号。

 

○1月31日、アメリカが、中国全土からの入国を制限する。

 

○2月7日、トランプ大統領と習近平主席が電話会談を行い、習近平氏はアメリカの入国制限の再考を求める。

 

○2月16日、WHOが、中国へアメリカ人2人を含む専門家を派遣した。
3月27日、、トランプ大統領と習近平主席が電話会談を行い、トランプ氏は「緊密に取り組む」と表明する。


🌕二月下旬、中国政府は、ウイルス感染が心配される野生動物の取引と消費を全面的に禁止した、と言われるものの、詳細は明らかでない。

 

○4月9日、国連安全保障理事会が、新型コロナの対応にちいて初会合を行うも、決議は採択できず。

 

〇1月22日、中国保健当局の記者会見が国営テレビで放映された。

 国家衛生健康委員会の李・副主任いわく、「医療従事者間や集合住宅で人から人への感染が拡大された。・・・武漢へは行かないでほしい。武漢の人は特別な事情がない限り市外に出ないでほしい。」

 「全力」で事に当たろうという見出しの当局の公告には、「2020年1月23日10時」を期して、「全市全城」を封鎖状態におき、市民の理解を「総請産人市民、旅客理解支持」との表現でねがう形であり、大上段からの、こわもてのものではないことに留意したい。


○1月22日、WHOの調査団が訪中し、武漢において人から人に感染したという証拠はあるが、完全に解明するにはさらなる調査が必要との見解を示した。



○1月23日、WHOが緊急委員会の結果として、この時点での緊急事態宣言を見送る。

 

〇1月23日、武漢市にロックダウン(都市封鎖)が発動される。鉄道は、武漢漢口駅などに堰が設けられ、入れなくしている写真が放映された。同市にある天河国際空港では、全便が欠航した。この日のことを、「武漢封鎖76日記録」(台湾において発行)の著者(武漢市在住)は、こう振り返っている。

 「目が覚めたら、武漢のニュースを知って、頭が真っ白になった。封鎖って何?いつまで続くの?私はどうすればいいの?全てがわからない。」 

 

〇1月28日付けの「ネットメディアにおける新型コロナウイルスによる肺炎の報道方針」(国家ラジオテレビ総局発)によると、「医療関係者の感動的な物語(「感人故事」)を宣伝しプラス面を描くこと」などと、利用者に指示があった。

 

○1月27日には、WHOのテドロス事務局長と幹部3人が北京に飛んだ。「公式の招待を受けたのは午前7時半。その日の午後8時には飛行機に乗っていた」という話が伝わっている。

 

○テドロス氏は、1月28日に習国家主席と会談を行う。そして、データと生物学的資料を共有することを特に協議したという。テドロス氏は習氏と握手する写真をツイッターに投稿し、「率直に協議した」、「(習氏は)歴史に残る国家的対応を担った」と書き込んだ。


○1月30日には、WHOが緊急事態を宣言した。また、アメリカが中国全土への渡航禁止をWHOに勧告する。

○2月、WHOは、この感染症を、英語のコロナウイルス(coronavirus)と病気(disease)とを組み合わせ、「COVIDー19」と命名した。


○2月3日には、テドロス氏がWHOの執行理事会で、「不必要な渡航・貿易制限」は勧めないと発言した。

〇2月7日、最初に感染を注意喚起した李文亮医師が、新型コロナの為死去した、と伝わる。彼は、前に市当局・警察から「デマを流した」と非難され、「自分の違法行為を反省しなさい、さもなくば法律により処罰する。わかったか?」(警察)と訊問された。その「訓戒書」(1月3日付け)には、「社会秩序を乱した」とか「法律違反だ」などとある。死後しばらくになって、一転、彼は「英雄」を意味する「烈士」とされるも、当局の責任は地方幹部の更迭にとどまった模様だ。

 ちなみに、彼の最後のネットへの投稿画面が残っていて、病院のベッドの上で呼吸器をつけた状態のものであって、「健全な社会の声は一つであるべきではない。治ったらすぐに現場に戻りたい」とのことである。この言葉は、たぐいまれな教訓そして真の勇者の偉大な発言として、世界の人々の間に永く語り継がれることだろう。

〇2月11日の武漢市(人口は約1100万人)では、累計で2万人の感染者を確認した。2月12日には、3万人を超える。この一日で1万3436人増とのこと。中国国家衛生健康委員会調べ。なお、この時点では、集計に漏れている人が多いのではないか、との指摘が多く寄せられていた。もっとも、この類いのことは中国ばかりではなく、4月のイギリスやアメリカの統計にも向けられている。

 

🌕ここに最前線でコロナ対策に当たったのが、日本の自治会に相当程度類似の役割を担う「社区」に他ならない。この組織が新型コロナに対して行うことは、並大抵のことではあるまい。
 まずは、地区の出入り口での体温検査や感染者の隔離、健康QRコードの確認といったことを徹底しておこなう。ただ一人の住民も、管理の枠外に追いやることはないという。
 そうして世界でも、まれに見るほどの注目を集めているその社区を、一説には、行政の末端組織としてコントロールしているのが中国共産党並びに政府だというのだが、実はそのルーツは、大方近代中国以前から自主的住民組織として受け継がれてきているものだという見方もあり、後者の立場からは一方向だけの捉え方では不十分なのではないかと考えられる。

○2月10日には、上海、北京など主要都市で、企業の操業が再開される。

 

○2月14日からのこととして、武漢の空港、駅、バスの発着所などで体温を検査するサーモグラフィを335台以上配備した。

 

〇2月17日付けの「中国共産党新聞」によると、「第一線で戦いにあたっている医療従事者に「致尊」」と表題にて、その中には「医療従事者は党の呼びかけに応じ人民を守る責務を全うして崇高な精神を見せてくれた」とある。

 

○2月20日、習近平国家主席が、対策に全力をあけるよう指示したことを、新華社が報道する。また、中国チームの専門家トップが、「人から人への感染が認められる」と指摘した。

 

○3月1日、中国政府は、「ネット情報コンテンツ環境管理規定」を施行した。「デマ」はもちろん、政治や経済、社会の秩序を乱す情報をネットを使用して流すのを禁じる内容だという。

 とはいえ、具体的に何がそれに当たるのかを巡り、論点は尽きない。例えば、「ネットコンテンツの制作者は国益を損なってはならないとし、献身的な仕事で「英雄」と称される党員の功績を否定する内容や、宗教政策の批判なども禁じる。自然災害や重大な事故に際し、「不当」な評論をさせないことも求めている」(2020年3月3日付け朝日人新聞)という。




○3月11日、WHOが、世界的な大流行を意味する「パンデミック」の状態だと認定する。



○3月12日時点での国内では、200以上の都市が採用しているというシステムに、「健康証明」がある。これを利用する段階には、自分のスマートホンを手にして、当該掲示板なりにしつらえてあるQRコードにアクセスしたりで、当該アプリを手に入れる。そしてこれの画面にて身分証番号、家族関係や移動履歴などの個人情報を登録すると、その人が感染しているかどうかのリスクが、緑、黄、赤の3段階で示されるという。
 個人情報を向こうに明かす見返りに、自己に関わる安全情報を入手できるという触れ込みであって、今のところ強制ではないものの、一部では登録しないと職場に復帰できなかったり、店舗に入れなかったたりすることがあるという。ちなみに、この時点での北京市政府ホームページには、当該「健康コード」のデモ画面が掲載されており、顔写真の下に「異常なし」とかの表示があるという。

 

○3月12日には、国家衛生委員会が、「感染のピークは過ぎた」と発言した。
○武漢市でとられた主な対策として伝わっているのは、次の通り。まずは、移動の制限が行われていく。1月下旬からは、市外との交通を遮断、市内交通機関の停止、それに市街地での自家用車の通行禁止。2月中旬からは、外出の原則禁止を打ち出す。次には、感染者の発見と隔離、そして治療。こちらは、2月上旬から重症者用の臨時病院2棟を建設した。新型コロナ専門の「火神山医院」は、工期10日で、2月3日に開院にこぎつけたという。同じく2月上旬、軽症患者のための臨時病院の14棟を開院した。2月中旬からは、全市民に対し1日2回の体温測定を義務付けした。

 

 

3月25日先進7か国外相会議にアメリカのポンペイオ国務長官がでかけて会議終了後に会見し、「武漢ウイルス」の呼称を用いるとともに、「中国共産党は我々の健康と生活のあり方に対する重大な脅威となっている」と批判したという。これに対しての外務省報道官は、「ウイルスの起源は複雑な科学的問題、米国の最優先課題は、自国の感染を食い止めて国際的にも役割を果たすことであり、中国の信用を傷つけて責任を転換することではない」と述べたという。
 これは一体どういう類いの話なのだろうか。そう考えるうちに思いだされるのが、かの「スペイン風邪」との命名に当時のスペインは反対したという。だが、そのかいなく、汚名を着せられてしまったという。今では、当時のアメリカから当該ウイルスが世界に広がったとされているものの、当時のこの方面の科学的知見は今日よりかなり低かったから、その分スペインの反論が劣勢に流されていったのは、あながち見当違いではあるまい。
 今回、日本の保守系メディアの中にも、アメリカのかかる主張を「グロテスク」とさえ形容していることから、憎しみしか生み出さないようなこのアメリカ政府の態度に同意できないというのが正論ではなかろうか。ちなみに、武漢のウイルス研究所から漏れだしたのではないかとか、そのウイルスを武器として実験中であったのではなどと、色々な説が日本でも飛び回っていたようなのだが、ようやく沈静化してきたようだ。

 

 

○3月31日、中国国家健康委員会は、新型コロナウイルスに感染しながら症状のない「無症状者」の数を、4月1日から新たに計上すると発表した。この措置は、無症状者を介した感染拡大が言われる中で、方針転換したものだという。
 それというのも、無症状なのに感染するのが、このウイルスの特徴だと追々わかってきた。それまでの中国政府は、「無感染者が感染を広げる確率は低い」として、数字の公表からはずしていたというのだ。
 それでも問題は多々あるようで、続けてこう報道されている。「国家衛生健康委員会は31日、当局が把握している無症状者が「30日までに1541人を数え、うち205人が外国からの入国者だ」と明らかにした。一方、香港紙サウスチャイナ・モーニングポストは、中国の政府統計に入らない無症状者が2月末で4万3千人以上いたと報じている」(4月1日付け朝日新聞)という。

 

○3月1日、ニューヨーク市ではじめての感染者が確認された。デブラシオ市長は、「市民には日常生活を続けてほしい」と語っていたという。これを報道した新聞は、同市を含むニューヨーク州とカリフォルニア州との差がどうしてできたのかを、現地の話としてこう伝えている。
 「当時。NY州(約1950万人)の感染者は約200人。人口が2倍超のカリフォルニア(CA)州と同程度であったが、いまNY州では10万人を超え、CA州の10倍近くに上る。
 国内では、外出規制令を出した時期が明暗を分けたとの指摘が上がる。NY州は22日、CA州の主要都市より5日遅れた。この5日間でNY州内の感染確認者は10倍超の1万7千人に急増。さらなる感染拡大を招く要因となった。」(朝日新聞、2020年4月5日付け)

 

〇4月2日、最初に感染を注意喚起した李文亮医師が、新型コロナへの注意喚起をしたことで人民に貢献したとして、「烈士」の称号を与えられる。

 

 

○4月15日、アメリカが、WHOへの拠出金の支払い停止を表明した。

 

○4月17日、武漢市政府は、これまでの累計確認死者数を訂正した。この訂正により、17日午前0時での武漢市の累計確認死者数は3869人となり、これは、これまで公表していた数より1290人多かったという。同市内の累計確認感染者数も、これまでより325人増えての5万333人と訂正した。市政府は、今回「調査を尽くし、自発的に訂正した」としており、情報開示に向けてやや前進したのではないかと、各国メディアからも見られている。
 おりしも4月15日の中国国家衛生健康委員会は、新型コロナウイルスに感染しながらこれといった症状のない「無症状者」の累計人数が6764人だったと、初めての公表に踏み切った。

 

○3月26日、サンチェス首相は、中国の習近平国家主席と電話会談をして、医療物資の援助を要請したという。ちなみに、「AFP通信によると、中国のIT大手アリババ集団は同日、200万枚のマスクをスペインに送ると表明した」(3月26日付け朝日新聞)という。


○4月19日までに明らかになった話として、「新型コロナウイルスは中国・武漢ウイルス研究所から始まった」というアメリカ・サイドからだされている話について、「その可能性は絶対にない」とする同研究所職員の反論を中国国営メディアが伝えたという。同研究所の所長と、同様に話したという。

 また、19日までに放送されたテレビ放送から、同研究所の袁志明(えんしめい)研究員は「われわれには厳格な(ウイルス)の管理制度がある」「退職者であれ学生であれ、職員は1人も感染していない」と述べたという。

 もっとも、アメリカ大統領と国務長官のこれまでの一連の発言は、証拠を示しての話ではなく、中国に政治的な圧力をかけ、また中国を国際的な孤立に追い込もうとする政治的立場からのものである可能性が強いのではないか。

 

○4月24日、「「Immuniry  passports(感染パスポート)  in  the  context  of  Copid19」(「Scientific  Brief  24  April  2020」)において、WTO(世界保健機関)は、「抗体ができたとしても、2度目の感染を防げるかは不明」との見解を示した。

 

〇4月26日、武漢市の新型コロナの感染患者の、残っていた全員が退院したと発表した。中国政府の統計によると、武漢市で入院した患者は累計で5万333人、3869人が亡くなり、4万6464人が治癒して退院した。同市での入院患者数は同月24日に47人であったが、そのうち約30人は症状が治まってもPCR検査で陽性が出続けていたという(朝日新聞、4月27日付け)。

 

〇5月2日から、武漢市を含む湖北省で公衆衛生に関する警戒レベルを最高1級から2級に引き下げた。湖北省政府が1日に発表した。中国は、感染症など公衆衛生上の警戒レベルを4段階で定めているとのこと。


 

〇米国東部時間の5月6日、米軍制服組のトップのミリー統合参謀本部議長が、新型コロナの発生源についての見解を記者会見で述べた。結論は、「われわれにはわからない」というものであった。また、元の軍幹部は自身のブログであろうか、このウイルスは自然から発生し、その由来も人為的なものではないのではないかとの見解を発表しているとのことであり、大統領や国務長官のこれまでの見解と一致していない。後者は、これを受けてであろうか、「確かだが、証拠はない」などとこれまでの強硬な主張から後退しているとのこと。

 そもそもWHOは、政治ではなく科学でもって、この問題を明らかにすることを訴えており、アメリカ首脳が根拠が示せない段階で中国を「悪呼ばわり」するのは、自らの意図が政治的なものであることをひけらかしているような印象も与えかねず、世界で今苦しんでいる中建設的な話にならず、いかがなものかと思う。




○5月13日、上海協力機構の外相会議でロシアのラブロフ外相はアメリカのコロナに関する対中攻撃を非難したと、環球時報が伝えた。14日の中国国営の中央テレビ局「CCTV」も、このラブロフ外相の発言を報道した。


○5月24日、北京で開催中の全国政治協商会議(全国政協)に出席している医師の孫鉄英・政協委員が、朝日新聞の取材に応じたという(同紙、2020年5月27日付け)。
 新型コロナウイルスへの対応で湖北省武漢市にも支援に入った孫氏は「(異常を察知し))医師に、中央政府に直接報告する権利を与えるべきだ」と指摘した。各界有力者が集うこの会議で、現場の医師が察知したら、国家衛生健康委員会に直接報告しなければならないとする制度の創設を提案する予定だという。
 これまでも、SARSの蔓延を受け病院が深刻な症例を中央機関に通報するシステムが設けてあったのだが、手続きの煩雑さもあり、役に立たなかったことが背景にあるという。今回の中国での初期対応の不備を反省し、感染症の初期情報が滞らないようにしたいとのこと。

 

 

(続く)

 

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〇○552『自然と人間の歴史日本篇』新型コロナ、日本での経緯(5.6まで)

2020-05-06 22:00:11 | Weblog
552『自然と人間の歴史日本篇』新型コロナ、日本での経緯(5.6まで)

✳️大型連休を控えた全国での外出自粛の要請の中、これから約2週間が分かれ道と心得ます。
   そこで、 今からでも遅すぎることはない、という思いで、これまでの新型コロナについての報道などから、今後の私たちの参考になりそうなもの、議論になっているものを選んで紹介、それに対する自分なりの感想や意見を述べます。

 
〇5月6日現在での、日本での新型コロナ対策で多くの議論になっているものに、重症患者の人をどう支えるか、院内感染の防止をどうやっていくか、それに検査についてのものであろうか。

 これらのうち、どのくらいの人が感染しているかどうか、またその履歴を調べるための検査が、この国ではどうして進まないのかということだという。それというのも、政府はこの間、事実上、PCR検査をたくさんやると医療崩壊するとも受け止められるような対応を進めてきた。その関連では、クラスターを見つけて一つ一つを調べ上げ、その都度大きくなる前にそれを潰していくことを中心に行ってきてきた。ところが、感染拡大は止まらず、感染経路不明の患者が多くなってきた。

 それからは、「PCR検査を増やさないと、無症状の感染者の数、分布を明らかにできない」「院内感染・医療崩壊への対策からPCR検査を医療従事者に短いスパンで実施しなければならない」ことにもなっていく。ついては、かかる検査をなんとか大幅に増やそうということになってきているものの、いままでの日本のやり方を具体的にどうやって改めたらよいのだろうか。

 ちなみに、検査の種類としては現在、PCR検査(RT―PCR法、LAMP法、唾液をとってのもの)、抗原検査(血液など)、抗体検査(血液など)の3種類があるという。これらでの検査の自動化の話も幾つか伝わる。こと精度ということに限ると、現状ではPCR検査が一番頼りとなろう。

 これらの中心になるのは現在、PCR検査がよかろうということらしいのだが、試薬が足りないともいう。その中ではRT―PCR法が一日に7000~9000件が可能になっている筈だという。LAMP法というのは、最短35分で結果が出るといい、3月下旬から行政検査で使用可能となっているのとのこと。

さらに唾液をとってのPCR検査ということでは、日本では北海道大学で研究段階ながら始められていて、これだと容易にかつ採取者にとって安全な案配にて検体を採取でき(感染リスクが低い)、検査の所要時間も4~6時間で済むのだというが、まだ未承認とのことだ。

 二つ目のグループとしての抗原検査というのは、そもそもその人の体に当該ウイルスがすみ着いているかどうかが判明する。そのやり方としては、検査キットに血液なりをスポイトし、さらに試薬を継ぎ足すことで、感染後時間を追って2種類の抗体ができているかどうかを10~15分かけて割り出すのだという。これだと、糖尿病の血糖値の簡易検査のような「針プッシュ」で一滴の血液を採取するだけで検体が出来上がることから、5月中に保険適用が可能とも話される。

 三つ目には抗体検査というものがあって、感染で何かしらの抗体ができているかどうかが判明する。これだと10~20分で結果を引き出すことが可能であり、最新のものではロシュという海外の会社が5月中に承認申請をしてくる予定になっているという。

 かたや、全自動のPCR検査機(ロッシュ社製などか)も国内にかなりが導入されているとあり、フル稼働すると一日7万件くらいはできるのだという。そうであるならば、これを増やして使うことで検査者の負担が減らすことができるのではないかと話されている。

 

○埼玉県の入院などの状況(4月29日提供)
 
 
○埼玉県の入院などの状況(4月29日提供)
 
入院者数は279人。自宅待機(入院調整、療養を含む)は252人。ホテル入室者は60人/450室。医師は1人が夜間電話対応。看護師は2人。(4月29日放映のBS ーTBSの番組 「報道1730」にテレビ参加の大野・埼玉県知事が提供 )
 
 
○「新型コロナウイルス」関連倒産状況【4月28日17:00 現在の数で、東京商工リサーチのホームページから抜粋しての引用】


 「新型コロナ」関連の経営破たんが新たに5件発生、経営破たんは全国で累計105件(倒産73件、弁護士一任・準備中32件)だという。
 業種別では、インバウンド消失と外出自粛の浸透で宿泊業が22件(同16件、同6件)と突出。 次いで、外出自粛で売上が落ち込んだ飲食業が15件(同11件、同4件)、アパレル関連が10件(同4件、同6件)。
 また、イベント自粛や休校の煽りで学校給食用食材を扱っていた食品製造業が9件、結婚式場やパチンコホールなどのサービス業、娯楽業も8件発生。この他、食料品卸、機械製造卸、出版などでも、経営破たんが相次いでいるという
 これを読んでは、「イベント自粛や休校の煽り」とか「インバウンド消失と外出自粛」とか、今回の倒産のかなりが需要の急減速によって起こっている。

 
○4月27時点での日米の感染者数の比較は、できるのだろうか。ちなみに、ニューヨーク州の人口は約1950万人で、感染者は4月27日までで約29万人。東京都は人口が約1395万人で、感染者は28日時点で4000人を超えたところだ。
 これを窺うに、人口の差異や、東京の実際の感染者数を仮に10倍強の5万人として両者を考慮しても、ニューヨーク州の数字は東京の6倍近くとなり、大きすぎるのではないか。
 
 
○テレビ報道によると、4月27日の17時30分時点での日本国内の感染確認数は、次の通りだという。
 「感染者は1万3333人で、今日はプラス66人。死者は380人で、今日は8人のプラス。それから厚生労働省HPによると、人工呼吸器または集中治療室に入院している人は296人で、今日はプラス9人。」
 なお、ここに「感染者数」というのは、「感染者確認数」とでも表現を改めるべきだろう。
 
 
○4月25日、台湾では、年明けから、サーズの教訓から、体制を築いていた。警察がGPSを使って携帯で監視しているので、外出禁止のところを外出していると直ぐ見つかってしまい、罰金を課される。(「台湾では「封じ込め」に成功」との見出しで、TBSテレビ、4月25日の報道特集)

 
○4月25日、韓国では、カードの利用履歴やGPSで感染者がいつからいつまでどこにいたかを割り出す、つまり移動履歴がわかる民間のアプリを政府が採用。個人情報をここまで開示できるのは、マーズのときの経験で法改正がなされていたから。個人情報を当局が個人番号で把握しており、その情報を必要な限りで公開しているという(TBSテレビ、4月25日の報道特集)

 
○4月25日、和歌山県では、院内感染が発生した。その時、国の「37.5度の熱で4日」の方針を無視して、早めに行う地域の検査体制を当初から確立し、感染拡大を未然に防いだという。(TBSテレビ、4月25日の報道特集)
 
 
○4月23日、政府は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って東京都などが休業を求めているパチンコ店の一部が営業を続けているとの都道府県からの連絡と要請を受け、都道府県が新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)に基づいて、より強く休業を求める「要請」「指示」を行う際のガイドラインをまとめ、都道府県に通知した。

 また、これとは別に、商店街やスーパー、公園での混雑回避を図ることを事業者などに要請するよう都道府県に通知した。
 このガイドラインでは、都道府県が現在出している特措法24条9項に基づく休業の「協力要請」を行う。これに対し、事業者が「正当な理由がないにもかかわらず応じない場合」の手順を示した。
 その「第2段階」としては、特措法45条2項に基づく「要請」、次いで同条3項に基づく「指示」を行うと述べる。かかる要請・指示を行う際には、対象となる施設名と所在地、それに要請・指示の内容と理由を各都道府県のホームページなどで公表するとした。
 これにつき一歩踏み込んだ説明もなされていて、同方法45条2項の「要請」は、実地調査で協力要請に従っていないことを確認し、対象施設に要請や公表予定の内容、期限などを事前通知した上で、「翌日」も従っていない場合に行うと規定。私権制限につながるため、条件も付した。単に協力要請に応じないだけでなく、対象施設の稼働がウイルスの「まん延につながる恐れがあると認められる必要がある」と記す



○4月23日、埼玉県在住の男性が、感染の後自宅で休養していたのであったが、死亡したという。
 大野県知事は、その夕方の外見で、「軽症者は自宅でという方針は間違っていないし、これからも続ける」という。しかし、国はこの変事を重く受け止めたようで、夜のニユースで方針を変えるという。
 ちなみに、埼玉県では、六百人台で感染者が増えているが、三百数十人が軽症者ということで自宅療養を余儀なくされているとされ、県民の一人としては、「知事はどうしてこのように情けない対応なのか」と、怒りを覚える。
 しかしての翌朝の彼は、公用車を県庁玄関先で降りて執務に向かう際、前言を翻し、「我々は重大な責任を感じる」と言い直したのだが、謝罪はしなかったのではないか。
 海の向こうのアメリカでは、トランプ大統領が「患者に消毒液を注射してみてはどうか」の暴言を吐き、物議をかもした。その後の会見で記者からこれを質問されると、そんな話を真面目に受けとるYouの方がけしからんということか、居直った。
 
○4月20日、今の東京大都市圏において、新型コロナの感染者の数はどの位になっているのだろうか。それを推定する試みは、まだない。
 それでも、以下に紹介する慶応大学病院で行われた調査の結果(4月下旬に入っての公表か)は、新型コロナ以外での入院患者(期間は今月13~19日)67人に行ったPCR検査についてのものだ。
 これによると、約6%にあたる4人が陽性であったという。検査を行った時の患者は全員が無症状とのことだ。
 この病院では、先月下旬に院内感染が発覚し、対策を強化していて、今月6日以降は、新型コロナ以外で入院する全ての患者について検査を実施しているという。
 この結果の受け止め方は、調査の母数が少ない上、診察により入院の必要があるとされた人についてのものであって、今回のコロナによる市中感染の状況を推測するには遠く及ばないとの見方がある一方、当該患者は病院の外の市中で感染したとの考えがほぼ成り立つことで、地域での感染状況反映の可能性があるとの見方もある。
 
(続く)
 
 
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♦️916『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカの労働市場、労働者などの置かれた状況と対策

2020-05-03 17:54:42 | Weblog

916『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカの労働市場、労働者などの置かれた状況と対策

 

 アメリカでは、失業保険申請件数は労働市場の現状を映し出す指標とされている。米労働省が3月26日に発表した21日終了週の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は前週比300万1000件増の328万3000件と、過去最多となった。

 

○もう少し詳しくみると、この間の推移は、こうだ。
 3月8日~4月11日をみると、労働省が発表する失業保険の新規申請件数(季節調整値)の動向は、急を告げるものとなってきている。

  具体的には、3月8日から3月14日までの3月第2週が28万1000件、3月15日から3月21日までの3月第3週が330万7000件、3月22日から28日までの3月第4週が686万7000件、3月29日から4月4日までの4月第1週が660万6000件、4月5日から4月11日までの4月第2週が524万5000件。

 

 新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるための厳しい対策によって経済活動が急停止し、一時帰休やレイオフが急増した。雇用の伸びは、かかる前までは米史上最長期間続いていたのが、ここにきてマイナスへ転じたとみられている。

 アメリカのエコノミストのかなり多くは、この時点にて、米経済が既に景気後退入りしているとみるのだが、景気後退はすでに昨年後半に始まっているのではないか。失業保険申請件数は労働市場の現状を映し出す指標とされている。
 労働省は当該週の申請件数の急増要因として新型ウイルスの感染拡大を挙げ、こういう。
 「3月21日終了週の失業保険申請件数の増加は新型ウイルスの影響によるもの」と指摘。「各州は引き続き、宿泊と食品サービスを中心に広範なサービス産業への影響を指摘した。そのほかに失業が大幅に増えた産業はヘルスケアや社会扶助、芸術、娯楽、輸送・倉庫、製造業だった。」

 

 4月の第二週になると、新規の申請者数は、やや減速してくる。米労働省が4月16日発表した先週の新規失業保険申請件数は、525万件に減少した。とはいえ、ここ1カ月での申請件数は合計2200万件となる。今回の新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済活動停止でにより、過去10年間に創出された雇用が事実上全て消失した。

 繰り返しになるが、新規業険申請件数(11日終了週)は525万件。前週は662万件(速報値661万件)に修正。過去4週間の失業保険申請件数は合計2200万件ということで、その分失業が増えていく構図だ。

 あわせて、事業閉鎖の影響がレストランやホテル以外にも広がっているという。ほかにもあって、システムの技術的問題などで未処理となっていた申請分が処理されたことも、高水準の数字が続いているのに寄与しているのではないか、とも言われている。それでも、大半の州では季節調整前ベースで新規申請件数が前週から減っている。

 今回の統計は、一説には、失業率がこの時点(5月11日)において少なくとも17%前後となっていることを示唆しているのではないか、と話されている。あわせて、失業保険の継続受給者数は、4月4日までの1週間に453万人増加し、過去最多の1200万人となった。

 

(続く)

 

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♦️915『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカの新型コロナ、中小企業対策の歩み(3.19~)

2020-05-03 17:29:17 | Weblog

915『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカの新型コロナ、中小企業対策の歩み(3.19~)

 

 今回の新型コロナによる危機では、中小企業対策にかなりの工夫がみられるので、まずその立ち上げから紹介しよう。

 約220兆円のCARES Act(経済支援法)が2020年3月19日に調印されたが、そのうちの約3950億ドルを投入するのが、「Paycheck protection Program」(以下PPP)と呼ばれる。

 

1.対象

 これの対象としては、従業員規模が 500 人以下の企業であれば、非営利法人・個人事業主・自営業者・請負契約者等もその対象に該当するとのこと。ただし、特定業界については 500 人以上の企業も対象になる可能性がある、。

 こちらの内容だが、大まかに、前述のような従業員が500人以下の中小企業や個人事業主を対象とし、ビジネス継続と雇用の保護のために使途を限定して融資される。

 より詳しくは、中小規模事業者の 8 週間分の人件費(給与および社会福利費含)を中心とする事業経費を補填するための資金を提供するもので、その中には人件費の他、借入金利・賃料・水道光熱費等を含めることができるとのこと。

 

2.申請窓口

 その申請窓口としては、米国財務省からの支援を受けた連邦政府の一機関「 Small Business Administration (SBA)」がその担当となり、SBAローンを受付ける金融機関が申し込み窓口となる。

 

3.主な内容


 このPPP の主な内容は、これまでの平常時の時の雇用確保策とは大いに異なる。それというのは、中小規模事業者の 8 週間分の人件費(給与および社会福利費含)を中心とする事業経費を補填するための資金を提供するもので、その中には人件費の他、借入金利・賃料・水道光熱費等を含めることが出来るからだ。 

 しかも、融資の形を取るものの、指定された用途にそのお金を使う限りにおいては返済義務が免除されるのだ。とはいえ、審査というものがあり、申請すれば必ず融資がおりるということではない。

 かかる返済の免除措置についてより詳しくは、まず、本プログラムの資金は融資形式で提供される、その資金の使途の最低 75%以上が人件費(給与・社会福利費含)に充当される場合、その部分については返済免除措置を受けることができるとのこと。

 また、当該融資の返済は 6 か月間は猶予され、担保や個人保証は求められず、米国政府も受付け金融機関も、如何なるフィーも徴取することはないとのことだ。

 さらに、まだ細かい話があって、従業員の雇用継続または早急なる再雇用が前提ということなのだが、当該融資の返済免除措置を受けるための前提として、従前と同様レベルの給与水準を維持した上での雇用継続および一時解雇の場合は早急なる再雇用が求められているとのこと。他にも、正規雇用者の人数が減少した場合や給与水準が減額された場合には、返済免除額も減額される。

 

4. 申請開始日について


 上記の中小規模事業者と個人事業主は 2020 年 4 月 3 日からその申請が始まり、自営業者と請負契約者は 2020 年 4 月 10 日からその申請が開始される。

 

5.実施に入っての状況、問題点など

 この制度が始まってからは、申請が相次いでおり、窓口は「パンク」状態に陥っていく。

 

(続く)

 

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