○〇549の18『自然と人間の歴史・日本篇』社会保障給付(2018年度~)

2019-03-30 10:05:02 | Weblog
549の18『自然と人間の歴史・日本篇』社会保障給付の状況(2018年度~)

 社会保障給付は、大きく分けて社会保険と社会保障費の二本立てとなっている。まずは、全体像をつかんでもらいたい。2018年度の社会保険給付の総額は、121.3兆円だ。これをGDP(国内総生産)の564.3兆円との比較でいうと、21.5%と、かなりの比率に違いない。
 そのうちの年金が占める割合がトップの56.7兆円であって、10.1%を占める。次いで、医療が39.2兆円で、7.0%。三番目の介護は、10.7兆円で1.9%を占める。さらに、子育て関係が7.9兆円で1.4%。それから「その他」が6.7兆円で1.2だとされる。

 次には、この給付がどのように負担されているか、つまり財源がどこにあるかが問題となろう。こちらは、大まかな姿としては、保険料によるものが70.2兆円である。たとえば、国民基礎年金においては保険料と半分ずつを、厚生年金では労使で保険料を折半している。
 一方、公費によるものが46.9兆円だという。その合計の給付額と比べての差は、これらのほかに年金制度の積立金を利用していることによる。
 後者の公費の内訳としては、「地方税負担等」が13.8兆円に33.1兆円の国庫負担が加わる。この国庫負担の出どころは、国債発行による収入と税によるものとで成り立たつことになっている(財務省主計局「社会保障について」2019.10)。財源調達手段が国債(内国債)であっても税の徴収であっても、現世代が背負わなければならない(前者ては主に投資が、後者では主に消費が犠牲にされるだろう)。
 この社会保障給付のうち医療費と介護の先行きについては、これに影響を与える、75歳以上の「後期高齢者数」(適切な呼び名とは言えないが)は2030年まで大幅に増加していく、その後ほぼ横ばいのあとの2040年頃から再び増加していく見通しだという。
 その一方で、保険制度の担い手(支え手)としての現役世代(財務省の説明中では、20~74歳)の人口は、今後中長期的に大幅な減少が続く。ましてや、15~64歳のいわゆる生産年齢人口の見通しとなると、さらに大きな減少幅となっていくだろう。たとえ、高齢者や女性などの労働参加が引き続きあったとしても、2030年頃からはそんな努力も虚しく、労働力人口は大幅な減少になっていくのであろう。もちろん、これには海外からの移民を大勢迎えたりすることで、ある程度緩和できるのかもしれない。
 少子高齢化で担い手がますます少なくなると、社会保障財源のうち保険料に関わるところでの財政破綻が取り沙汰されるようになっていく。加えるに、これまでのような大企業や大金持ちの利益を大事にする政府は、その分のしわ寄せを国民にもっていく。年金加入者の減少と受給者の増加への対策として「マクロ経済スライド」をしたのも、その一つだ。そして今回の消費税増税の後、参議院選挙が予定されていることから、その後になるだろうか、年金のさらなる改悪などによる国民負担の増加の企てが幾つも、虎視眈々と準備されている。

 改めていうならば、実は日本は、先進国の中では社会保障に財源をかけていないことで知られている。具体的には、例えば2013年での国際比較(先進5か国、社会保障財源の対GDP比)でいうと、日本は22%(公費負担が8.9%、被保険者本人負担が6.9%、事業主負担が6.2%)、イギリスは26.3%(公費負担が14.5%、被保険者本人負担が3.6%、事業主負担が8.2%)、ドイツは30.2%(公費負担が10.3%、被保険者本人負担が9.3%、事業主負担が10.6%)、フランスは32.4%(公費負担が11.7%、被保険者本人負担が6.8%、事業主負担が13.9%)、スウェーデンは30.6%(公費負担が16.2%、被保険者本人負担が3.0%、事業主負担が11.4%)となっている(資料は、日本が社会保障・人口問題研究所「社会保障費用統計」、他はEurostat「European  Social  Statistics」)。

(続く)

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