○〇549の7『自然と人間の歴史・日本篇』非正規労働者など低所得者の消費税負担

2019-03-21 21:19:42 | Weblog

549の7『自然と人間の歴史・日本篇』非正規労働者など低所得者の消費税負担

 今、くるべくしてやってきているのであろうか、「非正規労働者」とされる人たちの、総体としての貧困が。そしていったい、この日本で「非正規労働者」という場合には、就業者のどこからどこまでを指すのであろうか。まずは現に行われている政府統計2017年分で、その概略を示そう。ただし、昨今の統計不正の問題(厚生労働省の毎月勤労統計など)があるので、今はその発覚以前の値でのべさせていただくしかあるまい。

 以下では、とりあえず総務省の統計で話を進めよう。これ(全部を数えているのではなく、ある数を調べて、あとは統計的手法を用いることにより推計して出した数字)においては、全産業で6530万人の就業者が数えられている。まずは、自営業主の全体528万人の内訳からいうと、雇入れのある人が129万人、雇い入れのない人が400万人だ。二番目は、家族従事者であって、151万人だという。

 3番目は、ありとあらゆる雇用者というくくり方になっているのだろうか、かかる総数が5819万人となっている。その内訳としては、常雇、臨時雇、日雇い、それに「雇用者のうち役員を除く雇用者」に区切られる。

 そこで常雇から始めたい。こちらは、役員の349万人と一般常雇の5057万人の合計で5406万人だ。次なるは、臨時雇であって、343万人だという。そして次の次は、日雇いであって、70万人だとされる。

 ここからは、少しばかり分類の発想を転換しよう。雇用者分類の振り出し近くに戻って、その総数は5469万人だ。ここからが、重要だ。正規の職員・従業員に分類される人が3432万人に対し、非正規の職員・従業員が全部で2036万人もいる。その比率は、37.3%だ。

 その内訳としては、パート・アルバイトが1414万人であって、パートについては997万人、アルバイトが417万人がその内訳だ。次なる分類としては、労働者派遣事業所の派遣社員が134万人、契約社員が291万人、さらに嘱託(しょくたく)としての120万人とその他の78万人となっている(総務省統計局「労働力調査年報」2017年版)。

 それでは、ここに含まれる非正規労働者らの得ている賃金は、どのくらいであろうか。国税庁の説明には、「1年を通じて勤務した給与所得者に支払われた給与の総額」の2017年分の平均は、男性が531万5千円、女性が287万円だという。
 その内訳としては、「正規」の男性が547万5千円、同じく女性が376万6千円なのに対し、「非正規」の男性は229万4千円、同じく女性が150万8千円だという(以上は、「平成29年分民間給与実態調査結果について」(2018年9月、国税庁企画課)から引用)。
 

 今回の増税の負担は、だれの負担に向かうのであろうか。それは、第一に庶民にであって、これまでの状況を見ればわかろう。その一つの例として、非正規労働者を含む日本の低所得者層の消費行動への影響を考えたい。ここでは、京都大学研究チームの家計消費に関する論文を紹介したい。

 「・・・前節では、『家計調査』の集計データを用いて、食料価格上昇局面におけるエンゲル係数の変化についてみてきたが、本節では、5年毎に調査される大規模な政府基幹統計である『全国消費実態調査』(総務省)の個票データを用いて、長期的なエンゲル係数関係指標の変化をみてみよう。

 比較対象とする年次は、消費支出全体や食料消費支出がピークであった1990年代半ばに当たる1994年と、直近の調査時期である2014年をとる。また、対象世帯は-集計データでは所得階層別に把握できない-現役世帯(世帯主年齢が65歳未満の勤労者世帯)を取り出す)。(中略)

 すべての所得階層で、可処分所得が減少しており、これに対応して消費支出全体も減少している。所得階層別の増減額(中欄)をみると、高所得層中所得層低所得層の順に、可処分所得が、154.9万円→▲78.6万円→▲58.6万円、消費支出全体が、99.8万円→▲51.9万円→▲33.1万円と、両者はほぼパラレルに減少している。
 他方,食料消費支出については、12.4万円→▲16.8万円→▲15.2万円と、高所得層の方が減少幅を抑制している。変化率(右欄)をみると、食料消費支出と消費支出全体の対照的な傾向が顕著にみてとれ、所得階層が高くなるほど、消費支出全体の減少率が高まる反面、食料消費支出の減少率は抑えられる。

 他方,所得階層が低くなるほど、消費支出全体の減少率より食料消費支出の減少率が大きくなる。貯蓄率をみると、低所得層では低下(以下、略)。」(小嶋大造、大澤秀暁、村上太郎、福島宏祐、小池孝英「食料価格上昇局面における家計消費とエンゲル係数ー所得階層別の変化要因の分析」)

 これにうかがえるのは、この間の低所得者層は一方的に所得の減少をしいられてきた。そんな中、なんとか生活水準を維持すべく、食生活でいうと、低価格帯へのシフトで食料調達量を確保するとともに、その購買のために貯蓄を取り崩している姿なのである。

 

 (続く)

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○○549の4の2『自然と人間の歴史・日本篇』消費税増税(2019.10~)方針の問題点(派遣労働)

2019-03-21 18:41:09 | Weblog

549の4の2『自然と人間の歴史・日本篇』消費税増税(2019.10~)方針の問題点(派遣労働)

4.  2019年10月に向けた、政府の消費税増税方針の問題点(派遣労働)

 派遣など、「非正規労働」(本来、この用語は当該労働者に対し失礼な言葉だが、一般的に使われていることから用いている)を企業が増やす傾向を促進する。

 そこで、この派遣労働に対する消費税法上の取扱いだが、次の通達が出されている。

 「労働者の派遣(自己の雇用する労働者を当該雇用関係の下に、かつ、他の者の指揮命令を受けて、当該他の者のために労働に従事させるもので、当該他の者と当該労働者との間に雇用関係のない場合をいう。)を行った事業者が当該他の者から収受する派遣料等の金銭は、資産の譲渡等の対価に該当する。」(「基通5.5.11(労働者派遣に係る派遣料)」という関係条文解説より)

 それが理由で人材を受け入れた会社が人材派遣会社に派遣料を支払った場合は、当該の派遣社員が、たとえ他の従業員と同じような業務についたとしても、派遣社員とは直接の雇用関係は存在しない。したがって、派遣会社への支払いは、給料ではなく、人材派遣料となり、消費税の課税仕入として控除の対象となる。派遣会社の側としては、売上げには消費税がかかるため、派遣先の会社から消費税をプラスした金額を受け取った中から消費税を支払う。

 この消費税法の扱いについて、東京新聞は、「消費税増税で派遣誘発、企業の『仕入れ』扱い控除」と題する記事を載せたことがある。その中で、2014年「4月の消費税率8%への引き上げで、派遣社員がさらに増大する恐れがある」とする、次のように説明をしている。

 「企業は派遣社員を多く受け入れるほど、納める消費税の額が少なくできる仕組みになっている」「消費税率が3%から5%に引き上げられた後も派遣社員が増えた。消費税増税は国民の暮らしを苦しめるだけでなく、労働環境の悪化を招く可能性がある。(中略)
 企業が納める消費税は原則として、売り上げにかかった消費税から、仕入れの時などに支払った消費税を差し引いた分を納税する。同じ取引への二重課税を防ぐためで、支払い分の対象に派遣社員を受け入れた際の派遣料も含まれる。
 企業にとっては、正社員、派遣社員とも雇えば人件費がかかるが、派遣社員分は経理上『仕入れ』。割合を増やすことで、労働力を確保して消費税を減らせる。税率が上がればメリットは膨らむ。
 例えば、従業員200人の企業が年間で1人500万円の給料を払っているとする。このうち100人を同じ金額で派遣社員にすると『仕入れ』は年5億円。単純計算で消費税率5%で2500万円、税率8%では4000万円の消費税を納めずに済む。
 制度としては派遣社員を受け入れた会社は、消費税分を含めて派遣会社に派遣料を支払う形になっていて、派遣会社がその消費税を国に納める。しかし、一般的に派遣会社の方が立場が弱いため、上がった分の消費税を派遣料に上乗せしにくい。企業側は事実上、負担は増えずに消費税の控除額だけが増える。」(東京新聞、2013年10月24日付け)

 ここにも述べられているように、派遣会社と派遣先会社との力関係というのは、大方後者の方が強いようなのだ。例えば、派遣先との契約では、派遣社員1人当たり1時間2,000円で派遣するという契約をしていた。それに対して、派遣社員とは時給1,500円で賃金を支払う契約をしていたとしよう。

 消費税が8%の場合、派遣会社は派遣先の会社から、1人1時間当たり2,160円受け取ったうえで、うち500円を自社の収入とし、160円を消費税として支払い、さらに派遣社員に対し1,500円の賃金を支払う。

 こうして、派遣先の会社は労働提供の対価として派遣元の派遣会社に派遣社員が働いた分の料金を支払う訳だが、その際派遣会社に支払った160円については、課税仕入れとしての扱いができるのであろう。

(続く)

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