549の3『自然と人間の歴史・日本篇』消費税増税(2019.10~)のあらまし
3. 2019年10月からの消費税増税のあらまし
(1)根拠となるのは、2012年8月に成立した税制抜本改革法によって、消費税率を2014年4月に5%から8%へ、さらに2015年10月には10%へと引き上げることになっている。それが後者については、同法に「経済状況等を総合的に勘案して」という景気判断条項がついているのを理由に、先伸ばしされていたに過ぎない。
今回の内容としては、2019年10月1日からの実施。飲食料品および新聞については税率8%、それ以外は10%で課税する。前者の内訳は、国税が6.24%、地方消費税が1.76%。また後者は、国税が7.8%、地方消費税が2.2%の内訳となる。
(2)特定の品などについて、全体に大きな影響を与えない範囲内で、軽減税率をとる。対象とするのは、飲食料品が中心で、他に新聞も含まれる。どのような軽減かは、基本は8%に据え置くというのである(もう少し詳しくは、2018年7月の国税庁のちらし、などを参照されたい)。だからして、欧米でのような必需品につき非課税、もしくは税率を数%に低める話ではない。
(3)緩和措置は、多岐にわたる。代表的なものとしては、「ポイント還元」といって、消費税2%引き上げに伴い、電子マネーやクレジットカード、QRコードなどを使って中小店舗で買い物をした客に、買い物額(税込み)の5%分または2%分(コンビニなど大手チェーンの傘下の店舗)をポイントで還元する政策を抱き合わせる。期間は、2019年10月から2020年6月までの9か月間だという。これの手当てに、2019年度予算において、ポイントを付ける決済事業者への補助などを含む半年分の2798億円を計上している。
これだと、それらの支払手段を使わない人は不利だし、それらに関わってカード会社などと契約できない事業者は話に乗れない。また、ポイント還元は低価格競争を引き起こすという懸念もくすぶる。
(4)追って「インボイス」と呼ばれる税額を明示した書類・送り状の交付を義務化することを織り込む。これは、課税事業者が発行し、取引される品目ごとの税率や税額、その課税事業者の登録番号などを記さなければならない。軽減税率が幅広く浸透している欧州で支配的なやり方だ。これを「インボイス方式」(「適格請求書保存方式」ともいう、4年後の2023年10月からの実施)
これの導入により、消費税の納税義務がない免税事業者は、「インボイス」の発行ができなくなる。取引先に対する付加価値税請求はできなくなり、売上(販売)に係る消費税から仕入(購買)に係る消費税を控除した金額である「益金」が免税事業者に留保されることは不可となると考えた。
これに関連しては、インボイス導入後に課税事業者が免税事業者から仕入れを行う際、前者はその仕入れ分の消費税額の控除ができず、納税負担が増す可能性があろう。こうした事情が起こりうるのを前にして、(2)で述べた軽減税率に合わせて、追ってインボイスが導入されることで、課税事業者と取引する免税事業者の一部が生き残りのため課税事業者へ移るとみられており、一説には、財務省は、4年後にインボイスが導入されるまでの間の「軽減税率で減る分の穴埋め」に、「インボイス効果2千億円」の税収増を見込んでいるや、に伝わる。
(4)増税の見返り支出(主に保育や教育関連)を行い、ショックを緩和する試みあり。ただし、法令事項での措置であるとはいえ、大きくは政治的な配慮によるものだ。ついては今後、消費税が社会保障にどれほど使われるかは未知数だ。
2 消費税の収入については、地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てるものとする。」
そこでは、消費税が8%から10%に上がると国の税収は約5.6兆円増えると試算。当初の予定では増税分の4分の3の約4.2兆円を借金(国債)の返済にかかる支出、残りの4分の1の約1.4兆円を社会保障の充実に使うと表明していた。2017年12月末総選挙の後は、その配分を、借金の返済に回す分を増税分の2分の1の約2.8兆円に減らし、残りの税収については1.7兆円を教育・子育ての充実に使うことに変更した。
その使い道は、低所得世帯の0~2歳児の保育無償化、3~5歳の幼児教育や保育の無償化、2020年までに32万人分の保育の受け皿整備、待機児童をゼロに。また、連立与党の公明党は年収590万円未満の世帯の私立高校の授業料無料を公約に掲げたい。ほかにも、大学など高等教育に対する給付型奨学金の創設も考えるとした。
その後に策定された2019年度予算では、おもに保育についての一部無償化などが盛り込んであり、この3月に可決成立した。これの評価については、2019年の参議院選挙を控えていることでの政治色が絡んでいることが指摘されている。
(続く)
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