♦️69の2『自然と人間の歴史・世界篇』古代の天文学(古代ギリシアのヒッパルコス)

2019-03-17 19:23:48 | Weblog

69の2『自然と人間の歴史・世界篇』古代の天文学(古代ギリシアのヒッパルコス)

 さて、古代ギリシアの天文学者ヒッパルコスは、「視差」を使って、今日私たちが「地球の歳差運動(さいさうんどう)による春分点の移動」と呼んでいる現象を発見する。ここでまず歳差とは、地球が自転することとの関連だ。つまり、地球の自転の具合が、まるで回転の遅くなったコマが倒れる前に、軸を斜めにしながらグルーリ、グルーリと首を振るように、つまりコマの軸の先端は円を描くように、回っている。言い換えると、この時の地球の自転軸の方向はゆっくりと変化しているのであり、この首振り運動を「歳差運動」と呼ぶのだ。

 それでは、なぜこんな現象が起こるのかというと、地球が完全な球ではないことからくる。そのため、赤道部のやや横に膨らんだ部分に太陽や月の引力が余分に働くことになっている。この引力の方向だが、いま太陽が地球からの見掛け上地球の周りを回っていることによる太陽の軌道の面、言い換えると、地球の公転面の延長が天球(全ての星をのせた仮想上の球)と交わるラインを「黄道面」(こうどうめん)と呼ぶとしよう。

 すると、この力はその態様の黄道面に垂直になるように、地球を引き起こそうとする方向に働いている。このため、地球の自転軸は少しずつ向きを変えながら、自転が続いていく。この歳差運動の度合いを、「歳差」と呼ぶ。

 この歳差(運動)のあるために、地球から見た場合の太陽の通り道である「黄道」と、地球の赤道を見掛け上の天球(てんきゅう)に投影したものとしての「天の赤道」との交点である春分点(しゅんぶんてん)は、毎年わずかに移動する。そしてヒッバルコスは、粘り強い観察の結果、この春分点の移動を発見する。しかし、これが地球の自転軸が傾き、首振り運動をしていることにより引き起こされている現象だとは気づかなかったらしい。

 なお、古来私たち人類が航海や何やで生活の頼りにしてきた「天の北極」は、少しずつ変化している。そこのすぐ近くには「北極星」と呼ばれる星があって、その輝く星を、方位を知るための手掛かりとしてきたのだが、ヒッバルコスの生きた時代には、「天の北極」は現在の北極星とされている、こぐま座のアルファ星は「天の北極」からかなりずれた位置にあったであろう。ちなみに、「歳差」による「天の北極」は、約2万6千年の周期で変化するといわれているところだ。

(続く)

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