♦️814『自然と人間の歴史・世界篇』スペインでの分離独立運動(カタルーニャとバスク)

2020-11-30 09:29:56 | Weblog
814『自然と人間の歴史・世界篇』スペインでの分離独立運動(カタルーニャとバスク)


 歴史は繰り返す、というのだろうか。スペインには、17の自治州から成り立っていて、その中でも、2017年からは、自治意識が強いのが北東部のカタルーニャ州と北部のバスク州との二つが厳しい選択の話に晒されている。
 まずは、カタルーニャ州だが、この州では独立問題が持ち上がって久しい。流血騒ぎにまで発展したのは、2017年10月1日の住民投票以降、一向に収束する気配がないどころか、ますます混迷を深めてきていた。

 さて、2017年10月27日のスペイン上院は、この州の自治権停止を承認した。これを受け、中央政府は州首相らの解任などに踏み切る。中央政府に抵抗した州議会は同日、独立を宣言した。
 その訳だが、同日のカタルーニャ州議会は「独立宣言」を可決。一方、中央政府のラホイ首相は同日、カタルーニャ州の自治権停止に踏み切った。プチデモン・カタルーニャ州首相や州政府閣僚を解任する話にも説き及ぶ。

 10月29日には、同州の州都バルセロナで同日、同自治州の独立宣言に反対するデモ集会が開かれた。
 両者とも一歩も引かぬ構えをとって、成り行きを巡り、武力衝突などの事態にまで発展するのではないかと危ぶまれた。

 それでは、独立派は、なぜスペインから独立しようと思い至ったのだろうか。そこで、そもそもから始めよう。
 カタルーニャ州は、元はといえば、スペインとは異なる流れであった。紀元前3世紀、古代ローマとやり合ったカルタゴの将軍が、この地に植民都市をひらく開く。彼の名前の「バルシノ」をとって、「バルセロナ」と名づけられる。
 その後、古代ローマ帝国の支配下に入る。5世紀には、イスラム教徒が南から攻めてきて、この地の支配者となる。9世紀には、キリスト教徒が失地を回復する。
 それからの10~14世紀には、これを中心に「カタルーニャ・アラゴン」の連合王国として栄えたという。その最初の1137年には、バルセローナ伯のラモン・ベレンゲール4世とアラゴン王ラミーロ・エル・モンヘの娘ペロネーリャの結婚があり、二つの国が同じ君主(夫婦)ということなろうか。
 1479年には、カタルーニャ・アラゴンの王位継承者であるフェルナンド2世と、カスティーリャ王国の継承者であるイサベル1世王女の結婚により、カスティーリャとアラゴンの統一によるスペイン王国が成る 。


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 スペイン北部バスク地方の分離独立の動きについても、触れておきたい。こちらの歴史もかなり古いが、2018年4月に新たな動きがあった。現地の報道によると、テロを繰り返してきた過激派組織「バスク祖国と自由(ETA)」が、5月上旬に解散する方針を示した。
 このような運びになったのには、820人以上の犠牲者を出したことがある。この事件により、バスクの分離独立運動は、大きな節目を迎えることになる。
 ここにETAは、フランコ独裁政権下の武力弾圧に対する抵抗運動として1959年に発足した。バスク民族主義を掲げ、スペインからの独立を目指し、爆弾テロなどを繰り返してきた。当局による摘発が進むなかで路線転換を行う。2011年には、「恒久的な武装闘争の停止」を宣言する。2017年には、銃や爆発物を隠した仏側バスクの武器庫の情報をスペイン当局に伝えていた。



(続く)

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♦️10の1『世界と人間の歴史・世界篇』太陽系(木星、土星など)

2020-11-28 18:37:18 | Weblog
10の1『自然と人間の歴史・世界篇』太陽系(木星、土星など)

 晴れた日の夜、そらを見上げると、何が見えるだろうか。私たちの肉眼で見える惑星としては、水星、金星、火星、木星及び土星の五つがある。それらのうち、水星を除く4つが、宵の空で順次視野に入れることが可能だという。
 おさらいとして、それぞれの位置は、火星の外側に小惑星帯、その次の太陽から77,784万キロメートルの軌道を木星が、さらに143,200万キロメートルの軌道を土星が回っている。つまり、木星から土星までは、かなりの隔たりがある。
 5月頃からは、木星が見える。8月になると、土星、火星が順次見え始める。
そして迎える11月下旬(2020年11月20~25日)ともなれば、晴れた日の夕方の空に、日本の本州でいうと、月があるその右に、土星と木星が並んで現れるのだと。そんな中でも、22日から23日にかけての南から南西の空を見上げると、上限の月(「月齢7」)が2つの惑星にかなり接近して見えるという。
 もう少しいうと、23日(金)の夕方から宵にかけて、南から南西の空で月齢7の上弦の半月と土星が接近して見える。 月と土星の右下には木星もあり、明るい3天体が集まっている。 20時から21時ごろにはかなり低くなってしまう。
 特に、22日は、東側から土星、木星、月がほぼ等間隔に並んで見えるということで、早速その気持ちになり、あたりが漆黒に染まってくるのを見計らって、見晴らしの効く外にでると、「嗚呼、あれが遥かなる距離の向こうにあるという、我々と同じ太陽系の惑星仲間なのだ」という感慨ひとしおも加勢してなのだろうか、夜空に映える美しい眺めに違いあるまい。
 
 肉眼でも、木星には、なんとなく衛星のようなものが絡んでいるのてはないかと。一方、土星はというと、こじんまりした固まりに、ぼんやりながら「わっか」がはまっている感じを当てはめて頭で理解しようとするのだが、木星より遠いことから、やはり光の点かシミの域を出ないのかもしれない。
 そこでまずは木星だが、太陽系惑星の中では直径が142,746キロメートルと大きい。太陽から見て、内側から5番目の公転軌道を周回している。衛星は12個が確認されている。太陽系の第二の「要」だというのがふさわしいのではないか。その実体は巨大なガスの塊だという。
 顧みるに、1989年10月に、アメリカは木星探査機「ガリレオ」を打ち上げた。しばらく金星や地球の付近を航行した後、それらの引力を使うことで加速(「スイング・バイ」という)して木星に向かったという。その旅の途中、1994年には、彗星(すいせい)が木星に衝突する様子をとらえた写真を送ってきた。
 木星の軌道に入ったのは、1995年末であった。積載していた子機を木星の大気に突入させたという。積載されているカメラで、衛星イオで火山が活動している様子や、氷に包まれている衛星エウロパの姿などを伝えてきた。
 その後、この探査機ガリレオは2003年9月に木星大気圏に制御落下させられるまで、木星とその衛星の写真を地球に送り続けた。
 土星については、直径ざ120,798キロメートルと、木星よりやや小さい。こちらの衛星は、10個が確認されている。

  こちらは、2013年7月22日(アメリカ時間)に米航空宇宙局(NASA)が、2基の惑星探査機が7月19日に撮影した地球の白黒画像とカラー画像とを発表したのが、インターネットで拝見できる。
 まずは、地球の内側の軌道を回る水星軌道に乗った初めての探査機「メッセンジャー」が、水星の衛星を探査する計画の一環として約9,800万km離れた距離から白黒画像で撮影したものだという。
 そして、ここでの本命、土星探査機「カッシーニ」が、地球から約15億キロメートル近く離れた土星系から撮影したという、地球と月のカラー画像たるや、土星の鮮やかな輪の間に見える薄く緑色がかった点が地球であり、目を凝らすと、その近くにもう一つ点が見えてくるのが、地球の兄弟星たる月なのだという。ただし、以上は高感度カメラで撮影されたとの解説が付いていることから、果たして肉眼でどれだけ見えるのかはわからない。
 
 
☆☆☆☆☆
 
 日本の、12月21日から22日にかけての日没後の南西の空に、木星と土星が、大接近したのが見えた。
 土星は、その輪のイメージとともに太陽の周りを回っているというから、わかりやすい。それから、木星は他の惑星を集めたよりも質量が大きいため、その共通重心は1.07太陽半径、太陽の表面から約3万マイル(約4万8000キロメートル)離れたポイントにあると聞いており、そこを中心に揺れながらの軌跡を描いて回っているようだ。
 20日夜、京都市内で望遠鏡を向けると、一つの視野の中に木星と土星をとらえることができたという。木星の周りにガリレオ衛星と呼ばれる四つの衛星イオ、エウロパ、ガニメデ、カリストが、土星については環(わ)も見えたというのだから、ありがたい話だ。蛇足ながら、筆者の肉眼でその時刻、方向で仰いで見れば、月の右下方向ゆ開いたところに、ホワイト・ハットのような、帽子状に重なっての二つの星が見えるではないか、「嗚呼、あれがそうなのか」と勝手に解釈した。
 国立天文台(東京)によると、木星と土星は約20年ごとに接近するのだと、それでいて、今回は二つの惑星が、地球から見たときの軌道の交点近くで接近する珍しい現象で、約0.1度まで近づくという。同程度まで接近するのは1624年7月17日以来、実に3973ぶりの出来事なのだというから、驚きだ。
 
(続く)
 
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○167『自然と人間の歴史・日本篇』比叡山の焼討ち(1571)

2020-11-26 19:03:25 | Weblog
167『自然と人間の歴史・日本篇』比叡山の焼討ち(1571)
 
 それは、1571年(元亀2年)の旧暦9月12日のことだった。織田信長の号令で、比叡山の寺社勢力に対する攻撃を行う。この比叡山とは、滋賀県大津市西部と京都府京都市北東部にまたがる山にして、当時のこの山院は僧兵を擁し、「信長包囲網」の一角を成していた。
 
 さても、全軍の軍は、坂本、堅田周辺を放火し、それを合図に攻撃が始まる。    
 「信長公記」には、この時の様子が、生々しく記してある。
 
 「九月十二日、叡山を取詰め、根本中堂、山王二十一社を初め奉り、零仏、零社、僧坊、経巻一宇も残さず、一時に雲霞のごとく焼き払い、灰燼の地と為社哀れなれ、山下の男女老若、右往、左往に廃忘を致し、取物も取敢へず、悉くかちはだしにして八王子山に逃上り、社内ほ逃籠、諸卒四方より鬨声を上げて攻め上る、僧俗、児童、智者、上人一々に首をきり、信長公の御目に懸け、是は山頭において其隠れなき高僧、貴僧、有智の僧と申し、其他美女、小童其員を知れず召捕り」(「信長公記」)
 
 信長側近の回想にも、「叡山を取詰め、根本中堂、山王廿一社(さんのうにじゅういっしゃ)を初め奉り、霊仏、霊社、僧坊、経巻、一宇ニ残さず、時に雲霞の如く焼き払い、灰燼(かいじん)の地トなるコソ哀なれ」(太田牛『信長公記』、1600年頃の作か)とある。
 
 ここからは、「聖域」を攻撃することに怯む家来を駆り立てて殺戮に向かわせていた、信長のこわもての厳しい姿が浮かび上がってくる。
 さりとて、信長側は、当時の状況では、姉川の戦いの後も、浅井長政が近江から京都にかけての一帯になお勢力を保っており、比叡山や石山本願寺、六角氏残党などとも連携のおりから、「このままでは危ない」と思っていたのだろう。
 
 それでは、この焼討ち攻撃で一番得をしたのは誰だったのか。信長は、もちろんのことだろう。だが、そうとばかりは言えまい、その中には、彼の部下の明智光秀がいた。
 
 なぜなら彼は、この事件後、「一番手柄はその方」ということであったのだろうか。ちなみに、2020年12月5日再放映のNHK大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」(第34回)では、勝どきの後、主従二人で信長が光秀の労をねぎらう形をとっていた。その筋通り、近江国志賀郡に5万石を与えられる。そして、居城として琵琶湖(ぴわこ)に面した地に坂本城(現在の滋賀県大津市)を築く。
 
 その完成の時には、城内に琵琶湖の水を引き入れた水城で、大天守と小天守を持つという造りであった。当時、信長に取り入っていた宣教師のルイス・フロイスは、「坂本城は信長の安土城に次ぐ第二の名城だ」(「日本史」)と讃えたと伝わる。

 ところで、光秀には、長らく比叡山焼討ちに反対したイメージが脚色されてきた。それが今日では、実際は光秀がこの事件に積極的に関与していたのではないかというのが、有力説となっている。
  ちなみに、前述のテレビドラマの標記焼討ち後の一シーンでは、光秀が信長に批判的な筋からの詰問に対して、あのやり方は自分の流儀ではない旨の返答をしていた、しかしながら、はたして彼が戦(いくさ)に臨んだ心情は本当ににそのようであったのかと、疑問なしとしない。
 
 それというのも、彼は、焼き討ちの前年、比叡山に近い宇佐山城(同市)に入って、地侍や周辺勢力の懐柔を行っていた。そしての、焼討ち10日前の書状の中において、こういう。
 
 「御折紙拝閲せしめ候、当城(宇佐山城)へ入らるゝの由尤に候、
誠に今度城内の働き、古今有間敷あるまじき儀に候、八木方にあひ(逢い)候てかんるい(感涙)をなかし(流し)候、
 両人覚悟を以って大慶面目を施す迄に候、加勢の儀是れまた両人好き次第に入れ置くべく候、鉄炮の筒幷ならびに玉薬のこと、勿論入れ置くべく候。
 今度の様躰、皆々両人をうたか(疑)い候て、後巻なとも遅々の由候、是非なき次第に候、人質を出だし候上にて物うたか(疑)いを仕り候へは、報果次第に候、石監・恩上は罷り上り候時も、うたかいの事をはやめられ候への由、再三申し旧ふり候つる、
 案のごとく別儀なく候て、我等申し候通りあ(逢)い候て、一入(ひとしお)満足し候、次でをさな(幼)きものゝ事、各おのおの登城の次に同道候て上せらるべく候、其の間八木は此の方に逗留たるべく候。
 弓矢八幡日本国大小神祇我々うたかい申すにあらす候、皆々くちくちに何歟と申し候間、其のくちをふさ(塞)きたく候、是非とも両人へは恩掌(賞)の地を遣わすべく候、望みの事きかれ候て越さるべく候、仰木の事は是非ともなてきりに仕りべく候、頓やがて本意たるべく候。
 又只今朽木左兵衛尉殿、向より越さら候、昨日志村の城ひしころし(干殺)にさせられ候由に候、雨やみ次第、長光寺へ御越し候て(以下、略)。
恐々謹言、九月二日
明十兵(明智十兵衛)
光秀(花押)
和源(和田秀純)殿」(明智光秀の和田秀純宛書状」
 
 この下りの部分において、「仰木(場所柄、比叡山を指す)の事は是非ともなてきりに仕りべく候、頓やがて本意たるべく候、又只今朽木左兵衛尉殿、向より越さら候、昨日志村の城ひしころし(干殺)にさせられ候由に候」とあるのには、驚かされる。
 
 参考までに、山崎の戦いで破れた光秀は、坂本へと落ち延びる途上で落ち武者狩りの手にかかり、もはやこれまでと自刃して果てる。その後、重臣の秀満らが坂本城に籠もるも、秀吉の追手に包囲され、自ら城に火を放ち、光秀の妻子を刺し殺し自害し、坂本城は落城する。
 
 これに関連して、この事件の背景並びに評価については、後代の人がそれなりに触れていることから、その中から幾つか紹介しておこう。
 
 「(比叡山の僧は)修学を怠り、一山相果てるような有様であった。」(1570年(元亀元年)の「多聞院日記」)
 
 
  「山本山下の僧衆、王城の鎮守たりといえども、行躰、行法、出家の作法にもかかわらず、天下の嘲弄をも恥じず、天道のおそれをも顧みず、淫乱、魚鳥を食し、金銀まいないにふけり、浅井・朝倉をひきい、ほしいままに相働く。」(「信長公記」)
 
 
 「その事は残忍なりといえども、永く叡僧(比叡山の僧)の兇悪を除けり、是亦天下に功有事の一つ成べし。」(新井白石「読史余論」
 
 
 概ねこのような肯定的評価になっているのには、信長の側での生き残るための方策とみているのであろうか。
 大手寺院は、平安時代から畿内を中心に荘園領主として、また権力と結びつくなどして、巨大な勢力となっていた。信長としてはこれが邪魔であり、キリスト教の保護・仏教の軽視や関所の廃止などの施策を進めることにより、その力の基礎を破壊しようとしていた。
 
 
 かたや、物心両面で脅威にさらされ、このままで既得権益が奪われる危機感を募らせる延暦寺は、足利幕府の将軍足利義昭と結び、朝倉義景や浅井長政を支援するという具合にて、一歩も引かない。
 
 そこで、業を煮やしたというか、仕方なくというか、信長が、先手を打って本拠地を攻撃し、比叡山の数多くの伽藍をはじめ、日吉(ひえ)神社から麓の坂本、堅田(かただ)などを焼き払い、数千人の僧侶や信徒、老若男女を無差別に殺害した、というのであろう。
 
 
(続く)
 
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♦️943『自然と人間の歴史・世界篇』新型コロナウイルスとインド(モディ首相の演説、2020.3.19)  

2020-11-22 23:01:09 | Weblog
943『自然と人間の歴史・世界篇』新型コロナウイルスとインド(モディ首相の演説、2020.3.19)  


 インドにおける新型コロナウイルスの感染拡大が続く2020年3月19日、モディ首相は、次のような国民向け演説を行った。はじめに、その英訳から紹介しよう。

 「My dear fellow citizens, The whole world is currently passing through a period of very serious crisis. Normally, when a natural crisis strikes, it is limited to a few countries or states. However, this time the calamity is such that it has it has put all of mankind in crisis. World Wars 1 and 2 did not impact as many countries, as have been affected by Corona today. 

Over the last two months, we are continuously observing and hearing of grave Corona virus related news. In these two months, the 130 crore(クローもしくはカロール、1000万の接頭語) citizens of India have ably dealt with the global Corona pandemic and have exercised due caution.

However, in the past few days, it is appearing as if we have averted the crisis, and everything is okay. Complacency in respect of a global pandemic like Corona is not appropriate.

Therefore, it is essential that each and every Indian remains alert and cautious.

「それゆえ、お互い皆が緊張と注意をもって臨んでもらうことが大事です。」

Friends,

Whenever I asked you for something, you have never let me down. Our efforts succeed, only on the strength of your blessings. Today, I am here to ask you, all my fellow citizens, for something. I want your coming few weeks from you, your time in the near future.

Friends,

Till now, science has not been able to find a definite solution to save us from the Corona pandemic, neither has a vaccine been developed. In such a situation, it is very natural to get worried. Study of the countries most affected by Corona virus has revealed another aspect. In these countries, the spread of the disease has witnessed almost an explosion after the initial few days. The number of people infected by Corona has grown at a rapid pace.


Government of India is constantly keeping a close watch on this situation, and this track record of the spread of Corona.

 要するに、政府は、怠りなく、しっかりと、この国における新型コロナウイルスの感染拡大の様子を逐一見ているというのだろう。

 Although there are a few countries which have controlled the situation by taking swift decisions and isolating its people as much as possible.

 This burgeoning crisis of Corona, is not an ordinary occurrence for a nation like India with a population of 130 crore, striving for development.


Therefore, as we witness the wide-spread impact of the Corona pandemic even in major, developed countries today, it is wrong to assume that India will not be impacted by it. Hence, it is imperative to keep two key factors in mind in order to combat this global pandemic – Determination and Patience.


Today, all 130 crore fellow citizens of Indians will have to further strengthen our resolve to overcome this global crisis, fulfilling all our duties as citizens, and abiding by the directions given by the Central and State governments. Today, we must all resolve to not get infected ourselves, and prevent others as well from getting infected.



Friends,

During such a pandemic, only one mantra can take us through – ‘Hum Swasth, toh Jag Swasth’, that is the world will be healthy, if we stay healthy. In a situation like this, where there is no known cure for the disease, it is imperative that we stay healthy. Patience is an essential virtue to avoid this disease, and keep oneself healthy.

 ここに「‘Hum Swasth, toh Jag Swasth’, that isthe world will be healthy, if we stay healthy.」とあるのは、「我々がうまくやれば、世界にもそれが通じていく」ことを、スローガン風に取り上げたのではないだろうか。


And how does one practice patience? By staying away from crowds and gatherings, avoiding leaving your homes. This is called ‘Social Distancing’ nowadays, and is critical in these times of the global corona pandemic. Our determination and patience will play a crucial role in containing the impact of this global pandemic.


It is wrong if you believe that you are okay and nothing can happen to you, and you can continue roaming around in markets and streets as usual and remain unaffected.


By doing this, you will not only be unjust to yourself but also to your family. Keeping this is mind, I appeal to you all that for the next few weeks, step-out of your homes only when absolutely necessary.

 「こうすることで、あなた方は正しいというばかりでなく、あなた方の家族を守ることにもつながります。これから数週間、どうしても必要な時以外は家にとどまってくださるよう強く願います。」


As far as possible, try and do your work, whether related to business or job, from home. While it is essential that those who are in government services, healthcare services, people’s representatives, media personnel remain active. Everybody else must however, isolate themselves from the rest of society.


I also appeal that the elderly, senior citizens and those above 65 years of age in our families, not leave homes for the next few weeks.

 「65歳以上の人におかれては、次の数週間は、家にいてください。」


Today’s generation may not be very familiar with this, but in the olden times, blackout was observed at night during wartime. This would at times go on for prolonged periods. Several times, there would also be blackout drills.



Friends,
Today, I request my fellow citizens for support on one more issue, that of people’s curfew. People’s curfew means a curfew imposed for the people, by the people, on the people themselves.
This Sunday, that is on 22nd March, all citizen must abide by this people’s curfew from 7 AM until 9 PM.

「この日曜日、3月22日ですが、全ての市民の皆さんは午前7時から午後9時までを門限に従ってもらわなければなりません。」

During this curfew, we shall neither leave our homes, nor get onto the streets or roam about our localities.

 「その門限の間は、あなた方の家を離れてはならないし、むやみに通りに出たり、あなた方の住んでいる地域を歩き回ってはなりません。」

Only those associated with emergency and essential services will leave their homes.

 「緊急、そしてエッセンシャルなサービスに関係する場合のみ、外出することになります。」

Friends,
22nd March will be a symbol of our effort, of our self-restraint, and our resolve to fulfil our duty in service of the nation. The success of a people’s curfew on 22nd March, and the experience gained from it, will also prepare us for our upcoming challenges.

 ここでは、かかる政府の号令によるロックダウンを挑戦と位置付ける。

I urge all state governments to take leadership in ensuring compliance of this people’s curfew.
I also request the youth of our nation, organizations like NCC, NSS, civil society, as well as other organizations of all types to spread awareness about this people’s curfew over the next 2 days.
I would appeal to every individual to if possible, call at least 10 people on the phone every day, explaining to them how to protect themselves from the virus as well as the idea of people’s curfew.
This people’s curfew will in a way be a litmus test for us, for our nation. This is also the time to see and test how prepared India is for fighting off a Corona like global pandemic.
 
 ここでは、この取り組みが意欲的なものであることを、国民に強調してやまない。

Friends,
In the midst of all these efforts of the people’s curfew on 22nd March, I would also like to seek your support on one more matter on that day.


For the past 2 months, lakhs(ラクもしくはラークとよばれる接頭語で、意味は10万) of our people have been working day and night in our Hospitals and Airports. From doctors to nurses, hospital staff, sanitation workers, airlines employees, government staff, police personnel, media people, people associated with train-bus-auto rickshaw services, and home delivery agents; all have been selflessly serving others, without caring about themselves.

 こちらでは、いわゆるエッセンシャル・ワーカーの仕事に触れている。

In the current circumstances, these services cannot be considered to be ordinary. Today, these people run the risk of getting infected themselves. Yet, they continue to fulfil their duties, serving others. As defenders of the nation, they stand firmly between us and the Corona pandemic. The nation is grateful to them all.


I wish that on Sunday, 22nd March, we express our gratitude to all such people. On Sunday at exactly 5 pm, we all stand at the doors, balconies, windows of our homes, and give them all a 5-minute standing ovation. We clap our hands, beat our plates, ring our bells to boost their morale, salute their service.

To inform people about this, I request local authorities across the country to ring a siren at 5 pm on 22nd March.
We must with full sincerity, express our feelings towards all such fellow citizens who have lived by our value-system of ‘Seva Parmo Dharma’, that is Service being the highest Duty.

 ここに「Dharma」、すなわちダルマ(ダルマー)というのは、ヒンドゥー教や仏教、ジャイナ教、シク教といったインド発祥の宗教において、多種多様な意味を持つ主要な概念にして、宇宙の悠久の時の流れに着目すると、これらの宗教の各々はこの流れに属するという、そしてこのような考えが現代のインドの主要な宗教であるヒンドゥー教の教義や儀式などにも反映されている。


Friends,
In such times of crisis, we also need to be aware that the burden on our essential services, our hospitals, is continuously increasing.
I thus, urge you to as much as possible, avoid going to the hospital for routine check-ups. When necessary, you could get the required guidance over phone from your known local doctor, family doctor, or some relative who is a doctor. In case you have a non-essential, elective surgery scheduled, I would urge you to postpone it by a month.

 続けて、感染拡大の経済への影響に説き及ぶ、それは甚大なものだという。

Friends,
This global pandemic is also going to have a wide-ranging impact on the economy. Keeping in mind the economic challenges arising from the Corona virus, the government has decided to set up a COVID-19 Economic Response Task Force under the leadership of the Finance Minister.


This Task Force will take decisions in the near future, based on regular interactions and feedback from all stakeholders, and analysis of all situations and dimensions. This Task Force will also ensure that all steps taken to reduce the economic difficulties are effectively implemented.
It is clear that this pandemic is deeply hurting the economic interests and well-being of our nation’s middle class, lower-middle class, and poor segments. In such a time of crisis, I request the business world and high income segments of society to as much as possible, look after the economic interests of all the people who provide them services. In the coming few days it is possible these people may not be able to come to office or your homes. In such a case, do treat them with empathy and humanity and not deduct their salaries. Always keep in mind that they too need to run their homes, protect their families from illness.

 「今回の世界的流行により、中間層、下位の中間層それに貧困層の経済的利益と幸福は明らかに大きく傷ついています。このような危機的状況で、経済界や高所得層の皆さんには、あなた方のために日々働いてくれているすべての人々の経済的利益にできうる限り配慮してもらいたいのです。
 これからの数日間は、こうした人々は(身近なところでの大変さから、引用者)職場やあなた方のお宅に出向くことができないかもしれません。
 ですから、そのような場合においても、同情と慈悲の心をもってかれらに接し、給料を減らすことはしないでほしいのです。
 かれらにも家庭があり、病気から家族を守らなければならない立場であることを、いつもあなた方の心に留めておいてください。」

I would like to reassure all Indians that all steps necessary are being taken to ensure there is no shortage of essential items like milk, groceries and medicines.

I thus urge all my fellow citizens to make purchases as normal, and not hoard essential items in Panic Buying.

「みなさん、どうか生活必需品の購入はいつも通りに、「パニック買い」はしないでいただきたいのです。」

Friends,
Over the past 2 months, 130 crore Indians, each and every citizen, has taken on this national crisis as one’s own and done whatever possible for society and the nation.


I have full faith that you will in a similar manner, continue to carry out your responsibilities and duties in the time to come.

「あなた方がこれまで同様のマナーと、これからの責任と義務をもち続けていただくことを、全面的に信頼しております。

Yes, I acknowledge that many difficulties arise in such times, and there is an environment of apprehensions and rumours. Many a times, our expectations as citizens is also not fulfilled. However, this crisis is so grave, that all fellow citizens must face these challenges with firm resolve and determination, amidst all these difficulties.


Friends,
We need to put in all our capacity and capability in protecting ourselves from the Corona virus. Whether it be the Central government, State governments, local authorities, panchayats, people’s representatives or civil societies; everyone is contributing in their own way in the fight against this global pandemic. You too, must give your full contribution!
It is critical that in this environment of a global pandemic, humanity emerges victorious, India emerges victorious!

 最終的には、「この大いなるパンデミックの最中にあって、人間性が勝ち、インドが勝つと。」

The festival of Navratri is coming up in a few days. This is a festival of worshipping ‘Shakti’. That India moves ahead with full Shakti, full Strength and Energy, is my heartfelt wish to one and all.

 ここにナヴラトリというのは、古代インドで使われていたサンスクリット語で「九つの夜」という意味で、9日間にわたってヒンドゥー教の女神達に祈りを捧げるお祭りであるという。

Many, many Thanks!」


 ちなみに、この演説がなされた後の3月25日午前0時(インド時間)を期して、国家災害管理法に基づき、全土にロックダウン(いわゆる都市封鎖)の命令が出されており、違反者にはそれなりの罰則が適用される。
 続いては、新型コロナウイルス感染拡大に対しての経済対策が発動されていく。大まかなくくりでいうと、2020年11月下旬にして、3回の措置が発表なり、発動がなされているところだ。



(続く)


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♦️942『自然と人間の歴史・世界篇』インドの経済(2020~2022、予想を含む)

2020-11-12 08:27:41 | Weblog
942『自然と人間の歴史・世界篇』インドの経済(2020~2022、予想を含む)

 果たして、インドにとってのこの度の新型コロナウイルスの感染拡大は、どのようなインパクトを与えているのだろうか、またこれからのこれら二つの事象の関係はどのようになっていくのだろうか。

 まずは、2020年4~6月期の実質GDP成長率が、前年同期比でマイナス23.9%と、過去の統計を遡れる1997年以降で、四半期としては、過去最悪の結果となった。
 こうなったのには、新型コロナウイルス感染拡大によって、3月下旬から5月末までインド全土でロックダウンであったのが大きい。それによって国内の必需品の製造や、広範囲でのサービスの生産活動が制限された。さらに外出の自粛も重なることで、消費活動も停滞した結果だという。

 それでは、7~9月期、さらに、それから後にはどうなっていくのだろうか。

 (追って、記載予定)

 さらに、その後にはどうなっていくのだろうか。例えば、こうある。


 「India’s GDP Forecast 2020- 2022
According to the Trading Economics, “GDP Annual Growth Rate in India is expected to be -10.00 percent by the end of this quarter, according to Trading Economics global macro models and analysts’ expectations.

Looking forward, we estimate GDP Annual Growth Rate in India to stand at 15.00 in 12 months’ time.

In the long-term, the India GDP Annual Growth Rate is projected to trend around 5.50 percent in 2021 and 4.00 percent in 2022, according to our econometric models.”」(OPINION: India’s GDP 2020 Q2: The Misplaced Sound And Fury、By Dr. Sat Parashar、4 September, 2020、theindianexpross.com)


(続く)

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新◻️268の1『岡山の今昔』岡山人(20~21世紀、高塚省吾)

2020-11-10 21:16:37 | Weblog
268の1『岡山の今昔』岡山人(20~21世紀、高塚省吾)

 振り返れば、高塚省吾(たかつかせいご、1930~2007)は、洋画家。岡山市の生まれ。東京芸術大学に入る。梅原龍三郎や林武にも教えを受ける。1953年に卒業する。新東宝撮影所美術課にはいる。その勤務のかたわら「8人の会」を結成する。そして、個展を開く。

 1955年(昭和30年)からは、映画美術やバレエの舞台美術、衣装のデザイン、台本の他、挿絵などの仕事。その頃の作では、「6つの意志」が有名だ。

 とはいえ、1970年(昭和45年始)頃までは、大概、裏方として働く。1970年代としては、春陽堂版江戸川乱歩全集の表紙絵を担当する。あれこれの生活上の苦心で、孤高をしのいだとのと思われよう。

 やがての 1976年(昭和51年賀状)には、「海」、その後の「薔薇」や「白と黒」などの作品を発表する。その頃には、風景も肉体も写実的な表現に移行していたという。新しい表現を獲得したらしい。

 1980年(昭和55年)には、「高塚省吾素描集、おんな」を出版する、それには、リアルで繊細な裸婦が数多く並んでいる。例を挙げれば、「白昼夢」「ガウンを羽織る女」「月の光」などを観賞ありたい。

 それらは、生々しいリアリティーに満ちているにもかかわらず、「しどけなさ」やありきたりの「エロス」とも違う、女性の美に体現された、何か「崇高なもの」さえ感じさせる。ちなみに、本人の弁には、こう記される。

 「りんごを描くのと同じだよ」と答えていますが、正直に言いますと同じではありません。生身の女性の裸はやはりエロチックです。でもそれを意識の下に押し隠しながらりんごのように対処している矛盾が、描く方にも見る方にも面白いのだと思います。」(高塚省吾「絵の話」芸術新潮社、1996)
 このようにして、彼の描いた裸婦は、以来、カレンダーやポストカードともなり、世の中に広く親しまれていく。そういえば、大衆雑誌でも度々あったようなのだ。
 変わったところでは、1979年(昭和54年)に曹洞宗で受戒したという。これは実に大したもので、なかなかにできることではあるまい。道元禅の修行には、命の「覚悟」が要るように、聞いたことがあるからだ(たとえば、ビデオ「永平寺」)。

 それからも「まぶしい季節」(1996)など、そのひたすらな画業は、晩年まで衰えなかった。

(続く)

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♦️941『自然と人間の歴史・世界篇』インドの雇用・労働の状況(2020)

2020-11-09 22:00:49 | Weblog
941『自然と人間の歴史・世界篇』インドの雇用・労働の状況(2020)


 インドの2020年5~8月時点での生産年齢人口(15~64歳)は、約9億8213万人であり、このうち、約4億1362万人が労働力人口とされる。しかも、後者のうち39歳までの若者人口が1億8545万人もいる。

 これに対し、65歳以上は約685万人に過ぎない。文字通りの人口ピラミッド構造であり、同じような人口規模であるとはいえ、人口高齢化が進む中国とは、大いに異なる。

 出生率も高く、総人口は2030年までに15億人を超え、中国を上回り世界一となる見込みだ。その中で、毎年2000万人超の若者が労働市場に参入してくる見通しになっている。

 次に、同期間における失業率については、一般的には11.5%、それに潜在失業率と呼ばれる広義の失業率が16.61%だと報告されている。後者の概念には、働きたくても職がない人、調査時点で積極的に働く意思を持っていない人の双方が含まれる。

 年齢、性別による失業率の差についても、大まかに述べておこう。
 まずは、上記と同じ期間での15~19歳の一般的な失業率は53.54%、潜在的な意味での失業を含めた広義の72.90%だという。20~24歳の一般的な失業率は40.15%、潜在的な意味での失業を含めた広義の失業率は47.31%だという。25~29歳の一般的な失業率は17.27%、潜在的な意味での失業を含めた広義の失業率は22.22%だという。30~34歳の一般的な失業率は7.51%、潜在的な意味での失業を含めた広義の失業率は11.80%だという。さらに、35~39歳の一般的な失業率は7.39%、潜在的な意味での失業を含めた広義の失業率は11.91%だという。

 では、地域による失業率の差についてはどうなっているのだろうか、大まかに述べておこう。
 15歳以上の人口は10億4559万6千人、そのうち都市部では3億5268万2千人、地方については6億9291万4千人である。


 その並びで、雇用についての都市部と地方の差を述べておこう。都市部の一般失業率は12.7%、潜在的な労働者を入れた広義の失業率は19.17%なのに対し、地方の一般失業率は11.02%、潜在的な労働者を入れた広義の失業率は15.39%だという。


(続く)


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♦️940『自然と人間の歴史・世界篇』インドの不平等(その現在の姿、全体像)

2020-11-09 10:02:39 | Weblog
940『自然と人間の歴史・世界篇』インドの不平等(その現在の姿、全体像)


 インドの不平等はどうして出来たのか、またいまどのような状況になっているのだろうか。後者については、まずは、こうある。

 「インド、1%の富裕層が総資産58%保有 格差縮小へ賃金・税制改革必要
 インドの資産格差が深刻化している。貧困問題などに取り組む国際非政府組織(NGO)のオックスファムが今月発表した調査報告書によると、インドでは上位1%の富裕層が同国の総資産の58%を保有しているもようだ。この富裕層の保有比率は世界平均を上回る。

 オックスファム(非営利の調査団体・引用者)は、格差縮小に向けて男女間の賃金格差の是正や税制改革などが必要との見方を示した。現地紙ビジネス・スタンダードなどが報じた。


 インドは、富裕層上位57人の総資産が下位70%の総資産である2160億ドル(約24兆5246億円)に匹敵し、富の集中が進んでいるとされる。
 個人の資産額で首位は、石油元売りから小売業まで幅広い事業を展開する複合企業大手リライアンス・インダストリーズ(RIL)のムケシュ・アンバニ会長の193億ドル、次いで製薬大手サン・ファーマシューティカル・インダストリーズのディリップ・サングビ会長の167億ドルとなっている。


 同報告書は、ここ数年で貧富の差が拡大しているとし、その要因の一つとして、男女間の賃金格差を挙げた。国連労働機関(ILO)が昨年12月に発表した「世界賃金リポート」最新版によると、インドは女性の賃金が男性よりも30%以上低いとされ、世界各国と比較して格差が大きい。」(2017.1.26付けのサンケイ新聞電子版から抜粋)


 引き続き、二つ目の記事(2020年1月時点を評す)をお目にかけよう。

 「India's richest 1 per cent hold more than four-times the wealth held by 953 million people who constitute the bottom 70 per cent of the country's population, a study released by Oxfam said on Monday, urging the country to switch to "inequality-busting policies.

 要は、「インドのトップ1%の富裕層が、インドの人口のボトム70%を占める
9億5300万人の人々の4倍以上の総資産を保有している。」

" The study said that the combined wealth of 63 Indian billionaires is higher than the total Union Budget for the fiscal year 2018-19, which stood at Rs 24,42,200 crore.」

 こちらは、インドの「インドの63人の十億万長者」の保有資産が、「インドの2018-19年度予算の24兆4220億ルピー」に見合うとの対比を述べる。
 参考までに、インド数字の表記と数え方(命数方法数字)としては、10万が1 lakh(ラク、ラーク)、100万は10 lakhs、1000万は1 crore(クロア、クロール)、1億は10 crores、10億は1 arawb(アラブ)。

(https://thelogicalindian.com/news/oxfam-income-inequality-report-19361の、「ザ・ロジカル・インディア」サイトから2020.11.7に再録し、その一部をここに引用)

 みられるように、こちらもイギリスの非営利団体にして調査会社のオックスホームが仕出した調査報告の紹介であって、記事の信憑性はそれなりに高いのではないかと思われよう。


(続く)


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♦️939『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカ大統領選挙(その結果、2020.11.30時点)

2020-11-08 15:21:36 | Weblog
随時改訂939『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカ大統領選挙(その結果、2021.1.8時点)

『選挙結果確定前』
 
 2020年アメリカ大統領選挙において、日本時間でいうと11月8日午前早くに、バイデン候補が過半数270人をクリアする選挙人の数を取るという意味で「当選確実」の形で出たという、アメリカの主要メディアが伝えた。
 また、今回は、郵便投票が極めて多かったという。そのため、終盤の開票作業が遅れていた。全体の確定には、もう少し時間がかかるとしていた。(注1)
 
(注1)として、今回注目の郵送投票、それに軍人や在外有権者の投票受け付けについては、こうある。

○アリゾナ州は、選挙人11名にして、郵送での投票は11月3日必着とする。
○ベンシルバニア州は、選挙人20名にして、郵送分は11月6日まで受け付ける。ただし、軍人や在外有権者は10日まで受け付ける。
○ジョージア州は、選挙人16名にして、郵送での投票は11月6日まで受け付ける。
○ノースカロライナ州は、選挙人15名にして、郵送での投票は11月12日まで受け付ける。
○ネバダ州は、選挙人6名にして、郵送での投票は11月3日必着とする。
 
 
 驚くべきは、まだメディアによる「当選確実」が出る前の時点でトランプ氏が「率直に言って、私は選挙に勝った」と述べたことだ。これでは、「自作自演」と批判されても仕方あるまい。
 これに対し、バイデン氏は「勝利を確信している」とはいえ、「開票が終わるまで辛抱強く待とう」と述べ、勝利宣言を行わなかったのは、候補者として当然なことだ。

 当選確実となった民主党のバイデン氏は、副大統領候補のハリス氏とともに、日本時間10時過ぎから演説を行ったという。その中でバイデン氏は、国民に融和を促すとともに、国民みんなの大統領になると明言し、賛同を求めた。

 なお、選挙の相手方のトランプ大統領は、これを認めず、今後は法廷闘争で挽回するという。どうやら、彼は、始めから、自分が一般投票で旗色が悪ければどうするかを決めていた節があるように見受けられる。
 
☆☆☆☆☆
 
 ちなみに、合衆国憲法修正第12条には、次の記述がある。

 「大統領として最多数の投票を得た者の票数が選挙人総数の過半数に達しているときは、その者が大統領となる。過半数に達した者がいないときは、下院は直ちに無記名投票により、大統領としての得票者一覧表の中の3 名を超えない上位得票者の中から、大統領を選出しなければならない。
 但し、この方法により大統領を選出する場合には、投票は州を単位として行い、各州の議員団は1票を投じるものとする。この目的のための定足数は、全州の3分の2の州から1名または2名以上の議員が出席することを要し、大統領は全州の過半数をもって選出されるものとする。」
 
 また、合衆国憲法第二章第1条第3項は、次のように規定している。
 「各々の州は、その立法部が定める方法により、その州から連邦議会に選出することのできる上院議員および下院議員の総数と同数の選挙人を任命する。(後略)」

  加えて、1887年に制定された「選挙人算定法」には、その運用について、次の「セーフハーバー(承認領域)条項」が設けられている。
 「選挙人集会の少なくとも6日前までに、開票作業等の懸案が解決し、当選者を決定できるならば、その州議会の決定は当該州の勝者決定の最終決定とみなす」
 
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 そこで少し込み入ってくる話の方をいうと、仮に激戦州の結果が1月6日の時点でも決着せず、両者の候補者とも選挙人が過半数の270人に届かなかったとする。この場合、憲法修正12条の規定で、連邦議会の下院が直ちに「決選投票」を行うことになる。
 この場合の下院におけるこの決選投票では「各州で1票」ずつを投じ、52州の過半数の26票を争うことになっている。

 
 今後の予定としては、今回の2020大統領選挙の場合、12月8日が各州においての選挙結果確定の期限、12月14日には選挙人による投票が行われる。ちなみに、選挙法は、選挙人投票日を「12月の第2水曜日の後の最初の月曜日」と定められている。
 そして、明けての2021年1月6日には連邦議会、すなわち上下両院合同会議で投票結果を集計し、次期大統領が最終確定する。さらに、1月20日が新大統領就任式となっている。
 
 要するに、アメリカの大統領選挙の仕組みは、投票が済んでからも、誠にややこしい。2つの州を除き、有権者による一般投票で1票でも多く得票した候補者が、州ごとに割りふられた選挙人のすべてを獲得し、その選挙人による投票で、正式な勝者が決まる仕組みになっている。
 面倒なことには、各州で開票作業が行れた後、各州が選挙結果を認定して初めてその州でどちらの候補者が勝利したかが認定される。今回は、州による認定の締切りは12月8日なので、それまでに今勝敗が認定されることになる。認定されると、その後はそれを覆すことが困難になる。
 そういう流れから、トランプ陣営は激戦州での認定を遅延させる作戦に出ていると見られている。選挙結果が不当との訴訟を起こして12月8日までに認定ができない事態となれば、州議会が選挙結果を左右することのできる場合が出てくるからだ。
 
 
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州による『選挙結果確定後』
 
○バイデン候補は、51.1%、80,117,578(11/28の当該サイトで閲覧)
○トランプ候補は、47.2%、73,923,495(11/28の当該サイトで閲覧)
 
 11月半ばには、主要メディアが、選挙結果が確定されたとの報道を行った。それによると、双方が獲得した選挙人の数は、バイデン氏が306人、トランプ氏が232人となり、相当の開きがある。
 ちなみに、総得票数は高い投票率に支えられる形でともに7千万人を超え、その意味でも歴史的な選挙となった。
 
 しかしながら、この時点で、トランプ陣営はなお敗北を認めず、全米で数十件もの訴訟を次から次へと立ち上げるのをやめていない。

 例えば、ペンシルバニア州では、共和党員2人と民主党員2人の委員からなる同州選挙管理委員会は11月23日に会合し、共和党の1人が棄権、残る1人が選挙結果を認めたことから、州として認定が成立した。
 それからは、同委員会の判断は同州の州務長官と州知事による承認が必要であって、敗れた側は、ここで最後の抵抗を試みることもなくはないという、「そうなると、選挙で示された民意はどうなるのか」ということにもなりかねないものの、建国当時からの妥協の産物としての仕組みが現在も生き続けている訳なのだ。
 
 また、同州での訴訟のその後については、CNNニュースが伝えるところによると、トランプ米大統領の選挙陣営がペンシルベニア州の選挙結果に異議を申し立てた訴訟に関連し、連邦第3巡回区控訴裁(ペンシバニア州の連邦高裁)は11月27日、訴訟の復活を求めた陣営の請求を「根拠がない」として退けた。
 同州の選挙結果を巡っては、同州の連邦地裁が先週末、トランプ陣営の訴えを棄却している。これを受け、同陣営は第3巡回区控訴裁に訴訟内容の修正を申し立てていた。
 同裁判所の判事の弁として、「トランプ陣営は投票用紙に不正があったり、違法な有権者によって投票がなされたりしたとの主張を展開できていない」「ある事象を差別と呼んだからといって、実際に差別になるわけではない。第2修正訴状もこうした重大な瑕疵(かし)を抱えており、修正を認めることに利益がない」と伝わる。
 第3巡回区控訴裁の判事はまた、ペンシルベニア州による投票結果の認定の無効化を求めたトランプ大統領の申し立ても退けたという。同州としては、11月24日、選挙結果を認定し、バイデン次期大統領が同州に割り当てられた選挙人20人を獲得したことを正式に認めている。
 
 さらに、CNNニュースによると、11月28日夜の同州最高裁は、米大統領選をめぐって同州選出の共和党議員らが郵便投票の無効などを主張した訴えを退ける判断を下したという。共和党のマイク・ケリー下院議員らはペンシルベニア州の郵便投票を無効と主張し、結果認定の差し止めを求めていたものに対してであり、州最高裁の判事7人は全員一致でこれを退けた(却下した)という。
 大まかには、判事5人の多数意見として、ケリー氏らが郵便投票の手続き確定から1年、投票日からも数週間が経過した時になって訴えを起こしたのはあまりにも遅すぎると指摘した上、同氏らがこの線を残して訴状を書き直して再度訴えることもできないとの判断を示したという。
 
 
 それに、憲法修正第12条にある、「過半数に達した者がいないときは、下院は直ちに無記名投票により、大統領としての得票者一覧表の中の3 名を超えない上位得票者の中から、大統領を選出しなければならない」との規定との関連も、取り沙汰されている。
 しかも、そのような仮定の下では、人口が多い州も少ない州も同じレベルで扱われる建前となっている。そこで「もしそこで選挙人が決められなかったら、下院で投票」というのでは、なんのために選挙を行ったのか、わからなくなってしまうのではないか。この場合は、時代錯誤も甚だしいのと考えられよう。
 ちなみに、人口が最小なのは、ワイオミング州で578,759人、最大なのはカリフォルニア州の39,512,223人とされ(202011.8に当該サイトにアクセス)となっている。
 
 
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『連邦議会での選挙結果確定(2021年1月6日)』 
 
 そして迎えた、年が改まっての1月6日には、連邦議会において、ルール(注)に則り、同選挙結果を確定する手続きが進行していた。
 その途中、群衆が大挙して議事堂に乱入した。トランプ大統領の「議事堂に行こう」との呼び掛けに応じた同大統領の支持者が踏み込み、一時的とはいえ、議場その他を選挙するに至る。
 前代未聞の出来事に違いない、議員らは避難し、難をまぬがれたが、議事は中断、再開されたのは、警察や州兵が群衆を排除してからである。
 議員らは、もはやほとんどが憲法の側に立ち、それが定める手続きを進めることとし、バイデン氏を次期大統領に選出した。
 
(続く)
 
 
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♦️937『自然と人間の歴史・世界篇』インドの出稼ぎ労働者(2020)

2020-11-06 08:33:34 | Weblog
937『自然と人間の歴史・世界篇』インドの出稼ぎ労働者(2020)

 まずは、あるショッキングな出来事を紹介しよう。インドでは、4月29日、12歳の少女、ジャムロ・マクダムさんの死が大きく報じられた。彼女は、故郷を目指し路上150キロメートル歩いたところで倒れ、命尽きたというのだ。この報道は全土を駆けめぐった。
 こうなったのは、彼女は、今回の経済活動停止により出稼ぎ先から解雇されたのに始まると。働いていたのは、南部テランガナ州のトウガラシ農園で、15日、そこから故郷のチャッティスガル州に向け歩きだしたという。
 彼女は、職を失い、生きていくには帰郷せざるを得なくなったとみられるる。その理由としては、3月25日から新型コロナ感染拡大防止のため全土で徹底した外出禁止措置を取っていることが、背景にある。

 一説では、外出が警察に見つかり捕まれば、棒でたたかれるなどの罰が待っており、帰郷もできなくなると考えたらしい。
 マクダムさんは検問を避けるため、あえて一緒に出稼ぎに来ていた親族らと森を切り開きながら、より厳しい路程を選んだものとみられる。
 当地においては、日中の気温はこの時期においても30度を超えるものの、公共交通機関も止まる中、徒歩しか選択肢はなかった。
 この悲劇に対し、モディ首相は貧困層対策で謝罪した。それまでの政府の緊急対策において、外出禁止措置を受け、ニューデリーなどでは、当局が食料を配布し、滞在場所となる「シェルター(当座の避難場所)」を用意するなどの対策を取っているものの、十分には周知されていない。しかして、当該のテランガナ州でも出稼ぎ労働者に対して米、小麦を配給しているが、マクダムさんには届かなかった可能性がある。


 これらを聞いてであろうか、モディ首相は3月29日の演説で、貧困層対策が不十分と認め、「私を許してほしい」と謝罪。対策を急ぐ考えを示した。ついでに、後日のことに少し触れると、政府は徒歩で帰省する人を減らすため、5月3日から都市と地方を結ぶ列車やバスを再開させた。

 おりしも、同月28日までの国内では、2万9000人余りの感染者が発覚し、930人余りが死亡している。かくて、早めのロックダウンで感染拡大を防止しようとの政策が、直接・間接の様々な形で貧困層にしわ寄せを強いているの姿が彷彿(ほうふつ)としてくる。

 参考までに、インドで3~6月に徒歩で帰郷した出稼ぎ労働者が1,060万人以上に達していたことを、シン閣外相(道路交通・高速道路担当)が9月22日、下院に提出した答弁書の中で、労働・雇用省がまとめた統計の中で示した。

 加えるに、かかる出稼ぎ労働者の帰郷が及ぼしている感染拡大との関係につき、例えば6月4日付けのロイター通信による、一部の現状報告には、こうある(一部抜粋)。

 「東部ビハール州では、6月1日までに感染が確認された人は3872人で、そのうち2743人は5月3日以降に都市部から帰省した労働者だった(中略)。
 ビハール州の感染者の多くは首都ニューデリーや経済都市ムンバイがある西部マハーラーシュトラ州やラジャスタン州から帰省した労働者だという。
 ビハール州に隣接するジャールカンド州では、5月2日以降に確認された感染者の90%近くは出稼ぎ労働者だという。5月1日時点で111人だった州内の感染者は752人に増えた。」


 ともあれ、このような痛ましい出来事が、かえって歴史的な格差を浮き彫りにしたことになろう。


☆☆☆

 それでは、このような痛ましい出来事が相次いで起きているという、さらなる背景には、何があるのだろうか。人口の6割が住む農村部では、なかなか職が見つからない。ついては、貧困層が短期労働者として都市や海外などで出稼ぎに赴き、そこでの稼ぎを故郷に送金し、家族の生活を支えている現実がある。  
 ちなみに、インド貧困層は政府調査では国民の2割強ながら、実際にはもっと多く、一説には6割近くに上るという見方もあるところだ。

(続く)

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♦️936『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカ大統領選挙の争点(2020)

2020-11-02 22:13:55 | Weblog
936『自然と人間の歴史・世界篇』アメリカ大統領選挙の争点(2020)


 はじめに、アメリカの大統領選挙は、南北戦争後からこれまでには見られないような展開となっている。

 まずは、新型コロナウイルスの感染拡大が続くアメリカの状況を、ブラジル、インドと比べながら、しばし眺めてみよう。
 2020年11月2日時点(日本時間、午前10時での閲覧)での「COVID 19 Incidence」としては、こうなっている。
 以下、P、C、Dの順で、Population 、Cases 、Death を、ついでC/P、D/C、D/Pの値を記す。
Indiaは、1,380,000,000、8,184,082、230,934、0.59%、1.49%、0.009%。
USAは、331,000,000、9,198,700、230,934、2.78%、 2.513%、0.070%。
Brazilは、212,000,000、5,545,705、160,074、2.62%、2.89%、0.076%。

Source: COVID 19 cases, John Hopkins University Dashboard, Nov 2, 2020(ジョンホプキンス大学のホームページと、Source: Population, Wordometers.infoでの原数字から、計算した。
 それから人口については、大方に採用されている現時点での推定を用いた。


 みられるように、アメリカの数字は、インドに比べかやり深刻で、ブラジルとかなり似ているようにも感じられよう。


 二つ目の争点としては、やはり経済の成り行きだろう。こちらは、29日、7~9月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値が発表された。前期比年率換算で33.1%増加した。
 項目別でみると、GDP(国内総生産)の約7割を占める個人消費が前期比年率換算で40.7%増え、前期の落ち込み(33.2%減)から回復したのが、大きい。
 自動車など耐久消費財は同82.2%の増加を見せた。製造業の操業再開を後押しした。住宅投資も、前期(35.6%減)から反転回復しての59.3%増と大幅に伸びたという。
 ついては、これをもってトランプ陣営は、胸をはる。現政権としては、最大限、これを宣伝して先行き楽観論を振り回しているようだが、これらの措置実現に最も奔走したのは、民主党の方であった。
 それにしても、中身を見ると、それほど浮かれてよいものか。それというのも、前期から持ち直したものの、コロナ危機前の2019年10~12月期比で3.5%小さい水準にとどまる。しかもその後は、コロナ感染の再拡大で足元の回復力にもブレーキがかかっている。早期の経済再開には、感染拡大という負の効果が伴っている。
 加えて、3兆ドルの財政出動、そしてジャブジャブの金融措置で、3四半期ぶりのプラス向き成長となっているのを、夢ゆめ忘れるべきでなかろう。


 三つ目の影響因子としては、国際社会におけるアメリカの国力の相対的低下から来るものだろう。
 それはもう「兆し」などではなくて、現在の共和党トランプ政権の前の民主党オバマ政権の時、オバマ氏がいうに「アメリカは世界の警察ではない」と述べて、世界を驚かせたのは、私たちの記憶にまた新しいところだろう。
 とはいえ、そうした事柄はかなりの割合で安全保障の話であって、次には経済面ではどうか、との話にもなっていくだろう。
 こちらのことからは、例えば、「ラスト・ベルト(錆びついたベルト地帯)」などという、かかる状況は、アメリカ自身が先導し、招いたものではないだろうか。また、1970年代くらいから、この国の貧富の圧倒的な差ができ、いうなれば暮らし向きの両極化が進んできている。
 それらの他にも、特に中国との関係において、相手の経済力が自分と拮抗してきていることから、対抗意識というか、警戒心というか、あるいはそれらの混ざりあった感情も入ってのことだろうか、とにかく中国の動きに敏感になっているようだ。
 そこで中国とアメリカとの経済関係について少しだけ触れると、この二つの国の経済力はいまやほぼ並んでおり、しかも、これからはアメリカを中国が名実ともに上回る展開になっていく可能性が高いだろう。
 既に、国内での人々の購買力(PPPでの評価)にかぎると、2014年に中国が上回り、その後差は拡大中だ。そうはいっても、国民一人当たりの富の集積からいうと、発展途上にある中国はまだ当分アメリカの水準に遠く及びそうにないのは、衆目のほぼ一致するところだろう。


 四つ目には、「Black  lives  Matter」に象徴されるような人種間の差別やそれにまつわる軋轢をめぐっての話なのだろう。これに先立つ1960年代の公民権運動の後も、アメリカでは人々の日常普段にこの問題が隣り合わせにあり、これにまつわる事象は時として社会を覆う雲のような存在として振る舞い続けている。


 五つ目には、各人が信奉もしくは某か頼りにしている宗教なり宗教観からもたらされる判断なのだろう。アメリカの宗教で現在多数なのは、キリスト教であって、ブロテスタントとカトリック、前者の中では「福音派」がとりわけ多いという。
 果たして、この場合での選択というのは、そういった宗派による価値観の区別から来るものがある一方、それから派生しての人口妊娠中絶の問題とか、はたまた今度の選挙ではキリスト教者の間で社会の中での少数派に陥る、もしくは陥りかねないことへの反対表明の機会ともなり得るとの論評も見受けられるようで、全体像を見極めるのはかなり難しい。



(続く)


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