539の13『自然と人間の歴史日本篇』消費税増税と国民負担率
それは、2019年2月28日のことであった。財務省は、2019年度の国民負担率の見通しを発表した。
それによると、日本の値は、2年度続きの42.8%になる見通しだという。ここに国民負担率とは、国民所得に占める租税負担(国税・地方税)と社会保障負担(年金・医療・介護・健康保険など)の合計額の割合を示したものだ。
同省が算出した国民負担率は、2016年度に42.1%を記録した。以降は、42%台で推移している。この傾向を映して、2019年度も景気回復が続くことにより、前年度並みとの結果を得たらしい。ちなみに、その通りにならなくても責任を問われない、それでいて「日本での国民負担が少ない」のをアピールできよう。
また、財務省は言わない、国民負担率に財政赤字対国民所得比を加算したのが「潜在的な国民負担率」であって、こちらの2019年度の値は幾分高まろう。
国民負担率を国際比較(2016年実績)すると、どうだろう。財務省によると、、フランスが67.2%、スウェーデンが58.8%などが、日本よりもかなり高い。
さらには、そもそもの国民負担率というのは、国民所得ではなく国内総生産(GDP)が分母にくるべきだ、との意見もあろう。
なお、参考として、一国の経済状況を知るための、GDP、GNP関連指標のあらましを次に記載しておきたい。
まずは、①国内所得を見よう。一国の経済活動を分配面からみたものに、国内所得(DI:Domestic Income)があり、それには2つの種類がある。一つは国内純所得(DNI:Domestic Net Income)であり、もう一つは国内所得(狭義)だ。
②として、国民所得として、一国の経済活動を分配面からみたものに、国民所得(NI:National Income)がある。これには2つの種類がある。一つは国民純所得(NNI:National Net Income)であり、もう一つは国民所得(狭義)だけど。
その③として、三面等価の原則(国内総生産、国内総所得、国内総支出)を伝えよう。こちらは、一国の生産活動を生産面からみた国内総生産(GDP:Gross National Product)と、これを分配面からみた国内総所得(GNI:Gross National Income)、そして支出面からみた国内総支出(GDE:Gross Domestic Expenditure)がある。いずれも、は同じ大きさとなっていることから、この関係を三面等価の原則という。
その④としては、国内純所得、国内所得がある。こちらでは、国内での生産には機械や建物といった設備を用いる。これらの価値はその使用によって時々刻々減少していて、その価値が尽きる時には新しいものと取り替える(更新)しないといけない。そこで、企業会計上は毎年更新の時のための資金を貯めておく。
この毎年の積み立て分を減価償却(引当金)といい、一国の一年間の減価償却の合計を固定資本減耗と呼ぶ。国内総生産から固定資本減耗を差し引いたものが国内純生産であり、また、国民総所得から固定資本減耗を差し引いたのが国内純所得だ。
こちらは市場価格表示になっていてる。国内総生産、国内総所得でいう総(グロス)と国内純生産、国内純所得でいう純(ネット)との区別は、その統計値が固定資本減耗を含むか含まないかの違いに他ならない。
こうして得られた国内純所得は(間接税ー補助金)が控除されていないことから「市場価格表示の国内所得」ともいわれよう。さらに実体を把握するには、ここから間接税を差し引き、補助金を加算する必要があろう。言い換えると、純間接税(間接税ー補助金)を控除しなければならない。
というのは、この場合の価格は、間接税の分だけ高くなり、補助金の分だけ低くなっている、換言すると、純間接税の分だけ高くなっている。こうして得られたものが国内所得(Domestic Income)であって、要素費用表示となっていることから、「要素費用表示の国内所得」ともいわれる。
つまり、国内純所得は市場価格表示となっているものを指し、国内所得は要素費用表示となっていて、その区別は統計値が(間接税ー補助金)を含むか含まないかの違いだ。
その⑤として、国民総生産、国民総所得がある。こちらは、一国の生産活動を生産面からみたものとして、国内総生産=国内総所得に海外からの要素所得を加え、海外への要素所得を差し引いたのものが国民総生産(GNP:Gross National Product)=国民総所得(GNI:Gross National Income)である。
その⑥として、国民純所得と国民所得とがある。国民総所得から固定資本減耗を差し引くと、市場価格表示の国民純所得となる。また、そこから純間接税を差し引くと要素費用表示の国民所得となろう。
後者の要素費用表示の国民所得は雇用者報酬、営業余剰・混合所得から成っていて、後者の営業余剰・混合所得は財産所得と企業所得から成り立つ。ここに財産所得とは、土地や資本設備及び資金などの生産要素の提供者に分配される要素としての地代や利子、配当などをいう、。
それから、企業が雇用者に雇用者報酬を支払ったあとの企業の受取り分を企業所得といい、こちらは法人貯蓄や法人税の支払い、役員報酬などの支払いにあてられよう。
なお、(参考例)として、1998年の国内総所得(=国内総生産)の構成(単位は10億円)は、以下の通りであった。
1.雇用者所得:282,541
2.営業余剰:90,612
3.固定資本減耗:83,194
4.間接税:43,801
5.補助金:3,048
よって純間接税=(間接税ー補助金)は40,753
6.統計上の不突合:1,398
7.海外からの要素所得の純受取:7,215
8.国内総生産=国内総所得:(1+2+3+4-5+6):498,499
9.国内純生産=国内純所得(DI:Domestic Income,市場価格表示の国内所得):(8-3):415,305
10.国内所得(DI:Domestic Income,要素費用表示の国内所得)
:(9-4+5):374,552
11.国民総生産=国民総所得:(8+7):505,714
12.国民純生産=国民純所得((NNI:National Net Income,市場価格表示の国民所得)
):(8+7ー3ー6):498,499+7,215ー83,194ー1,398=421,122
13.国民所得(NI:National Income,要素費用表示の国民所得):(10+7-6):380,369
14.(=13):国民所得(NI:National Income,要素費用表示の国民所得):(1+2+7):380,368
出所:経済企画庁「国民経済計算」より。
(続く)
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