224『自然と人間の歴史・世界篇』アボカドロ数の発見(1811~1916)
かのアボカドロが提唱した分子説(1811)は、「気体状態の物質の基本構造単位は、複数の原子からなる分子である」というものだが、なかなか受け入れられなかった。同種の原子間で引力が働くというのは、あり得ないと考えられていたからだ。
その厚い壁が最終的に破られたのは、それから百年以上経過した1916年のことであって、それにいたる道筋は次のようであった。まず1827年、ロバートブラウンが、ブラウン運動を発見する。1905年には、アインシュタインが、水分子の運動がブラウン運動の原因だとし、分子の存在を証明する。
さらに、1909年、ジュンぺランが、ブラウン運動の観察から1モル当たりの原子や分子の数を明らかにする。アボガドロ定数と名づけられたその値は、ある物質 1 mol、つまり質量 0.012 kg(12 g)の炭素12の中に含まれている原子の総数で定義される。ここに1 mol(モル)というのは、6.022140857×10の23乗(10を23回掛けたもの)個の原子の数だ。
ついでに私たちにとって身近な水でいえば、水 H2Oは 水素原子2つと酸素原子1個で構成されている。それらの原子量の合計が水のモル質量になる。そこで水素の原子量は1で、それが2個で1×2=2、それから酸素の原子量は16で、それが1個で16となって、二つ合わせると18というのが水1モルの質量となる。
こうして水の1モル、つまり分子量が18だとわかると、それにグラムを付けたものが水の質量となる。気温が摂氏25度での水の密度、つまりは、1ミリリットル当たり0.998グラムであるから、水1リットルの質量はその千倍の998グラムだ。
したがって、998グラムを18ミリリットルでわった55.4モルが水1リットルが何モルかの答えとなろう。ついては、その水1リットル中の水の分子の数は、55に6.022140857×10の23(10を23回掛けたもの)乗個という数を掛けたものとなろう。逆にいうと、水の1モルは0.98掛ける18なので、18ミリリットルとなる。ところで、水のコップ1杯は180ミリリットルだから、10モルの水が入ることになるだろう。
そして迎えた1916年、アメリカのルイス(1875~1946)は、「原子と分子」と題する論文を発表した。その中で、同一原子の間に引力が働く共有結合の理論を確立した。アボカドロから105年後の提唱であった。
(続く)
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