○〇549の9『自然と人間の歴史・日本篇』財政赤字の現状と見通し

2019-03-23 20:35:05 | Weblog

549の9『自然と人間の歴史・日本篇』財政赤字の現代と見通し

 今回の消費税増税がなぜ必要なのかの理由付けに最も高い頻度で使われるのが、フローとしての毎年の予算で取りざたされる基礎的収支そして財政赤字と、ストックとしての財政赤字であろう。

 前者においては、国債の発行に頼らなくても持続可能な財政が目指されるものの、近い将来そうはならないみたいだ。それというのも、さる3月27日に成立した2019年度予算では、歳入として国債発行による収入を32兆6605億円(前年度に比べ3.1%減少)あて込んでいる。一方、歳出では、借金の利払いなどでの国債費を23兆5082億円(同0.9%)も見込んでおり、どちらの面でも予算膨張に大いに寄与している。

 もう一つのストックの財政赤字については、もっと重大だ。日本は、先進国中で群を抜いて膨大な額が積み上がっているのだ。まずは、IMF(国際通貨基金)による2019年の見通し(2018年10月時点)で、財政状況の国際比較を行っている。

 これによると、各国のGDP(国内総生産)に対する債務残高の比率、債務は地方債を含む)は、日本が236.6で最大、次のイタリアが128.7、アメリカが107.8と、ここまでが百以上だ。それからは、フランスが96.5、イギリスが87.2、カナダが84.7、ドイツの56.0と続く。

 そこで、一般政府の部門別資産・負債残高を、2016年の実績で見よう。ここで「一般政府」というのは、政府部門を「公企業」とに二分したときのもう一方の呼び名で、国と地方の一般会計や、社会保障特別会計などが含まれる。また、公企業は事業特別会計に属し、「法人企業部門」に含まれる。

 まずは、一般政府の総資産は1302兆2803億円なのに対し、総負債は1284兆5933億円であって、差し引き17兆6870億円が正味の資産だという。そして負債の中では、債務証券の分が1056兆8907億円とほとんどを占めている(内閣府「2018年版国民経済計算年報」)。そういうことなので、2016年時点では「財政危機」が現実化しているとは言い難いのだが、これから先も負債がボンボン積み上げられていくようだと、危うくなっていきそうな感じがしている。

 こうまで肥大化してしまった日本の財政なのだが、この先どのような姿になっていくのかについては、現時点で半ばはわかりそうで、あとの半ばはわかりそうでない。かなりの確率でわかっているのは、今後しばらくの我が国の財政赤字の積み上がりが、人口の高齢化とそれに伴う社会保障費の支出拡大によるものであろう、ということだ。

 ここに「しばらく」とは、そのことで財政のやりくりの難しさ、つまり「綱渡り」を、少なくともあと20年くらいは味わっていかなくてはならないらしいのだ。やがては、おしなべての人口構造そのものがやせ細っていく。それに応じて、ネットでの日本の経済力も徐々に衰えていくであろう。

 なぜそんな予想が成り立つのかというと、経済がこの先しぼんでいくようだと、国の財政も小さくなっていかざるを得ないであろうからだ。そして、このことは、我が国の人口の行く末と大いに関係してくるのである。

 2042年までの推計にて、65歳以上の高齢者は3921万人まで増えよう。一方、15~64歳の年齢層は5978万人に減る見込みだという。その後は、高齢者も減りながら、若い世代を含めた生産年齢人口も、グーッと減っていくのではないかという。

 昨今の経済学者の中の一説には、我が国の人口は減り続けても生産革命を遂行すれば大丈夫だという向きもあるみたいだ。現時点では、その一途さは評価しつつも、そううまくは運びにくいのではないかという印象を禁じ得ない。

 そして、今からおよそ80年後の2100年にさしかかる頃には、我が国の人口は5千万人台に縮減してしまだろうと(厚生労働省傘下の国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集2019」による中位の推定)。

(続く)

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