156『岡山(備前、備中、美作)の今昔』岡山人(15世紀、たまかき)
「たまかき」(?~?)という名前の女性は、当時の新見荘、三職の一人である福本の姉妹で、代官としてやって来た祐清の身辺の世話をしていた。
その彼女が、おそらくは民への苛酷な取り立てが起因して殺害された祐清の弔いを済ませ、その遺品を整理した。そして、祐清の遺品の形見分けを所望する手紙を東寺へ送る。その手紙が、「東寺百合文書」の中の「ゆ函84号、たまかき書状并備中国新見荘代官祐清遺品注文」として、現代に伝わる。
彼女はこの手紙の中で、祐清が生前に所持していた品を目録として書き上げ、葬儀などの諸費用に充てたことを事細かに報告している。その上で、残った白小袖・紬の表(紬糸で織られた絹織物)・布子(綿入れ)の3品を、祐清の形見として貰い受けたいと願っているとのこと。
そこで二人の間柄だが、「ゆうせいの御事、かやうに御なり候事、御いたバしさ、なかなか申はかなく候」とあることから、かなりの親しさであったのではないか。祐清が新見荘にやって来てから、たった約1年間ながらというのに、亡き人を偲ぶ女性の想いが伝わってこよう。
(続く)
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