まりっぺの平凡日記

毎日平凡に生きれるって幸せなんだ。でもその平凡っていうのは意外と難しい。

母の遺産(水村美苗著)

2013-01-10 08:38:07 | My Book Review

普通の風邪なら1~2日ゆっくりして治り切る前に動き回っていただろう…でも今回は完治をしなければ周囲にウィルスをばらまいてしまう…今までは自分の体が大丈夫なら多少治りきってなくても動こうと思ったのですが、祖母や母を抱えてからは考えがすっかり変わったし、インフルエンザは論外。

だから今回は観念して治っても二日(発症から1週間)はあまり人と接触しないと決めているため、思いもしない時間の余裕ができました。

そこで、普段の忙しい中で500ページを超える本など読む時間がなかった私。今回は以前から母や甘栗さんが言っていて、私自身も読みたかった「母の遺産」を読んでしまおうと思ったのです。まだ全部読めておらず、後四分の一程で終わりそうですが…読み終える前に、

本の前半、作者のお母様の晩年が書かれている部分で、私は祖母の状況とそのお母様がオーバーラップします。肺炎で入院。回復しつつも、嚥下がうまくいかず、死へと向かうお母様。

祖母も食べたいという意欲はあるが今では全く嚥下ができない状態。そして何よりも普通に会話などが成り立つ…人間としてちゃんと機能しているのに、生きるのに必要な食事という作業が困難なため、これからどうしたらいいのか頭を抱えている私、このお母様の状況を読んでは胸が締め付けられる思いだった。病院もそろそろなんとなく祖母の退院についての肩たたきを始めている。それを必死に食い止めてくれているO先生とN先生。言葉にはしないが、一生懸命、祖母や私たちのことを考えてくれ、病院側との間に挟まれ苦しい立場にいることが手に取るようにわかるから私としても心苦しいのですが、この疲れがたまり、インフルエンザで弱りきった体では何もできない自分が腹立たしい

そして主人公は介護や家のことなど、自分の生活に疲れ果て、色々な薬の助けを借りられずにはいられずに、眠剤とお酒を飲んで毎晩寝ている…私は基本的に自分で運転して動き回るのであまりお酒を飲むことはありませんが、安定剤や睡眠導入剤がないと不安で、寝られないのも同じ…

ウチの母はこの新聞に連載されていた小説を読んで「お母さんが早く死ねばいいというような言い回しで書いている」と言っていました。

確かにそういうくだりが何度も出てくるけれど、読み進める内に、私としては「お母さんを幾ら嫌っていると書いていても、これだけお母さんのことを文章にすること、そして、彼女の介護の仕方からしたら根っからお母さんを憎んでいないことがわかる。

5年生の頃、私がアイスを作って食べようとしていたら、祖母が突然ウチにやってきたので、一緒に食べよう!と言って、祖母に手作りアイスを出したら、「う~ん100円アイスの方がうまいねぇ」と一言、祖母に言われ、物凄く傷ついた私。

当時働いていた母が帰宅するのを待って、母が玄関から入ってくるなり「斯く斯く然然、ママタンにこんなこと言われたぁ~」と泣きながら母に訴えた。勿論「そりゃぁ、かわいそうに」と母は一言言ってくれるものと思っていたら

「そのくらいのことで泣く貴方が悪い。年寄りの言うことが一番です。なんでもはい、はいと言って聞かなければならない。だって年寄りはもう明日死ぬのかもしれないし、いつ死ぬのかわからないんだからとにかく、ウチは年寄りが一番。それが嫌なら、あなたが家を出ていきなさい」と言われた。幼い乙女はこの世の終わりかと思う程傷ついた。

普通祖父母からしたら孫が自分の子供より可愛いものではないのか?親も自分の親よりも孫の見方をしてくれるのではないか?と思ったけど、その後も幾度となく、ウチは祖母と母の関係は祖母・孫や母娘の関係が入り込めないほどの絆で結ばれていることを悟りました。

そして母に「明日死ぬか…いつ死ぬかわからない年寄りを大切にしろ」と言われて云十年、私は母の言うとおり、自分なりに祖母を大切にしてきたつもり…子供の頃は反発もあり、ずぅっと一緒に過ごす中で祖母のわがままに困り果て、ムカつくことが何度もあったけれど、でもユーモアたっぷりの祖母と過ごすのがとても楽しかった。そんな祖母の命を今後どうやってまっとうさせるかという決断をインフルエンザから回復して直ぐに決断しなければならない…

QOL(Quality of Life 生の質)という言葉はよく聞くが、最近、ふとQOD(Quality of Death死の質)という言葉もあっていいのではないかと思う

日常の忙しさで体が動く時は目先のことを一つ一つ片付け、頭の片隅ではわかっちゃいるけど、なるべくその決断を先延ばしにしていたけれど、今、こうやって、動けない体で、この本を読み始めたことで、もうこれ以上、祖母の問題を先延ばしにできないことを実感。直視しなくてはいけない…と思いながら本を読み進めポロポロと涙が目からこぼれ落ちる。

あぁ~今、この状況でこの本を読むとはなんというタイミング…と何とも言えない気持ちでいたら、急に電話が入る。

先方、私の声を聞いて「あらぁ~大変。お大事に。でもまりっぺは具合が悪くても家でできる仕事だからいいわね。」と言って仕事をよろしく頼まれる。

朦朧とする頭で、チャッチャッと片付けて、また「母の遺産」に戻ろうとするとヘルパーのHさんが祖母と母の今後のことを心配し、電話をくれ、あれこれ1時間以上、色んなアドバイスをしてくれます。この電話を切った頃には、もう本を読む元気すらなくなり、また具合が悪くなり、昨日はそのまま就寝。昨夜は何度も「見ず知らずの人のお葬式に参列する」夢を見ては目が覚め、またうつらうつらすると同じような夢を見ての繰り返しで、今日は朝からぐったりです…これは正しくタミフルの副作用か!?

でもまだ4日程私には休暇がある。今日は「母の遺産」を読み終えてからまた別の本を読んで、残る休暇で心身共に整えよう…


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