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気ままに

大船での気ままな生活日誌

名匠成瀬巳喜男の撮る、原節子

2012-06-22 15:16:37 | Weblog
名匠、成瀬巳喜男監督の映画は、庶民階級のつつましい生活ものが中心で、貧乏くさいもの、やるせないものばかりで、監督には、”やるせなきお”のあだ名までついている。その監督が原節子を撮るとどうなるか。どきどきしながら、二本の映画を観た。”驟雨(しゅうう)”と”山の音”。結果から先に言おう。原節子は、小津安二郎映画のイメージをぶちこわされ、原せつなき子になっていた。

”驟雨”では、戦後のおんぼろ長屋に住む、結婚4年目の倦怠期を迎えたサラリーマン夫妻の日常をコミカルに描く。夫婦喧嘩はしょっちゅう。そこに新婚旅行中だったはずの、姪の香川京子が現れ、もうあんな人いやだ、と愚痴る。佐野は香川の夫の弁護をする、男というものはそういうもんだ、と。原節子も同意しながらも、怒りの矛先は次第に、佐野に向かってゆく。

野良犬のめんどうみたり、その犬がつかまえた近所の鶏を料理して、不景気な会社を辞めて早期退職してみんなで串かつ屋を共同経営しようと相談している夫の仲間にふるまう。また、ああ、おなかがすいたと台所でお茶漬けを掻き込む。こんなシーン、小津作品には絶対ありません。

でも、庭で紙風船をふたりで突いて遊ぶラストシーンよかったな。突くたんびに、原節子が(弱っている夫に対し)”がんばれ”と元気な声をあげる。曇り空に薄日が差し込んできたようだ。

”山の音”は川端康成の原作。とはいっても未完のうちに水木洋子が脚本にした。はじめのシーンが、鎌倉駅。今に比べると、ずっと寂しげな駅前広場。そこから浄明寺行のバスが。今度の原節子が住む家は、古いお屋敷だ。ほっ、小津作品と同じ、と喜ぶのはまだ早い。優しい義父、山村聰と義母(長岡輝子)と一緒に住んでいる。ところが、夫の上原謙がとんでもない浮気男。やはりここでも、原節子は原せつない子になっていた。義父が気づき、息子の愛人に会いにいったりする。子供までできている状況。それでも、何とか終息への道筋をつける。

しかし、時は遅かった。実は原節子はせっかくできた子供を自分の意思で堕胎していた。そして離婚を決意していたのだった。冬の新宿御苑のプラタナスの並木で義父に打ちあける原節子。いつも彼女に愛情をそそいでいた山村聰は、やさしくうなづく。せつないラストシーンだった。これから、がんばって生きてね、菊子さん(原節子)と、映画館の中の誰もが、声をかけていただろう。

成瀬巳喜男作品のせつない原節子も、小津作品とは違ったいい味が出ていて、とてもよかった。

銀座シネパトスで2か月半に渡って、名匠・成瀬巳喜男シリーズが上映されている。もう一度くらい、行ってみようと思っている。二本立ての映画も久しぶりのことだった。

驟雨


山の音


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浮世絵猫百景

2012-06-21 19:22:06 | Weblog
今日はもう夏至。月日がたつのは早いものだ。この冬に、国芳の没後150年記念の回顧展を六本木で観たのが、つい最近のような気がする。国芳は、天保の改革によって、役者や遊女が描けなくなったが、なあにオレが変わればいいのさ、と子供絵や、人を猫や犬や金魚の顔にして新たな道を開いた。今回の展覧会は、そのうち、猫に特化した、国芳一門らの猫浮世絵展だ。

日曜日に出掛けたこともあるかも知れないが、浮世絵太田記念美術館はいつになく賑わっていた。浮世絵フアンだけではなく、ただの猫好きもついふらふらと入ってきてしまったのではないか(笑)。ちらしからして、いつもと違い、おどけている。国芳一門、ネコづくし/総勢2千3百匹、のコピーを添え、こんな漫画も載せている。人間界だけではなく、どうも猫界でも話題らしいのだ。お宅の猫も原宿に向け、旅支度してるかもしれませんよ。気を付けてくださいね。


国芳自身もネコ好きで、自宅で猫を十数匹飼っていて、猫の姿態を常に観察していた。ついでながら、若冲も庭にたくさんの鶏を飼い、いつも観察していた。ある生き物をずっと見て、見つくすと、その生き物のもつ”神気”がみえてくる、そうなれば、その生き物はどのようにも描ける、と若冲は考えていた(とんぼの本;狩野・森村ら、異能の作家/伊藤若冲)。国芳もきっとそうだろう。さまざまな猫の姿態が縦横無尽に描かれる。もうひとつのちらしにそれらがみられる。


第一章は”猫百変化”。国芳作がずらりと並ぶ。猫の当て字の”かつお”、”たこ”から始まり、子猫を集めて大猫にする、猫の百面相忠臣蔵、三段目、双蝶々曲輪日記/相撲場など、わっはわっはの連続。

国芳 三段目


第二章は”猫の一日/遊んで眠ってしかられて” 誰かと似てるな
ここでは、美人に抱かれてうっとりしたり、ときには叱れたり、のんきに遊んだりと、でも、まともな猫が多い(笑)。弟子の月岡芳年や、弟子筋ではないと思うが、小林清親や高橋弘明の作品も。

月岡芳年 風俗三十二相 うるささう


小林清親 猫と提灯


高橋弘明 猫


第三章が”猫のお化け”、第四章”猫は千両役者”、とつづき、第五章は、”猫の仕事・猫の遊び”。現代の猫は仕事がないが、江戸時代にはネズミ取りとい大事な仕事があった。

化け猫の目(笑)


歌川芳藤 新板猫の戯画


そして、第六景 ”猫の事件簿”、第七景”猫のまち”、第八景”猫の絵本”と楽しいタイトルの章が地下会場の方までつづく。タイトルだけではなく、絵もおもろい。

どの章にあったか、こんな楽しい浮世絵猫も。





ついでに、ぼくの写真猫三景 本当に猫は可愛い。







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今日もまた若冲ワールド

2012-06-20 18:45:50 | Weblog
今日もまた、若冲ワールドになってしまった。

その予感は、川喜多映画記念館の午後1時からのチケットを買って、お蕎麦屋さんで鴨せいろを注文したときからあった。めったに頼まない鴨せいろを、おまけに生ビールまでつけて、とてもおいしく頂いてしまったのだ。鳥好きな若冲さんを怒らしてしまったかもしれない。

食後、八幡さまの源平池に行ったとき、あっと驚いた。なななんと、いつもは見かけないカルガモの親子がいるではないか。昨日、柏尾川でみたカルガモの子供よりは大きく、いたずら盛りだった。そこから、若冲ワールドが開幕してしまったのだ。



















さあ、そろそろ映画館に行かねばと立ち上がると、カルガモ親子と蓮の葉っぱが見送ってくれた。


八幡さまの入口で和服の女性が。女嫌いの若冲さんとは関係ありません。


映画は、1967年作”夜の大捜査線”。ノーマン・ジュイソン監督。黒人刑事、シドニー・ポワチェと地元の警察署長のロッド・スタイガーが反目しながら、殺人事件を追う。スリルとサスペンス。これも若冲さんとはなんの関わりもございません。


旧川喜多邸別邸(和辻哲郎旧居)前の紫陽花。これは若冲さんも描きました。


そこから、歩いて歩いて、扇川沿いで見つけた山百合。今年の初見。フラワーセンターでもまだ咲いていない。若冲さんももちろん大好き。ぼくも大好き。


そして、もっと歩いて、海蔵寺へ。なななんと、ここでも山百合が。昨日の強風でお辞儀をしてましたが。いっぱい咲かせて、待ってくれていました。若冲ワールドの大トリをとってくれました。




ああ、いい思いをした。また鴨せいろでいこう。
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琳派・若冲と雅の世界

2012-06-20 09:48:19 | Weblog
横浜のそごう美術館で細見美術館展PartIIが開催されている。PartIが終わったあと、”宮沢賢治・詩と絵の宇宙展”があり、(ああ、しまった記事にしていなかった、いい展覧会だったのに、・・こういうのがいくつもある)、忘れたころにPartII”琳派・若冲と雅の世界”が始まった。うっかりすると、見逃してしまうのでいそいそ出掛けた。

今回のお目当ては、若冲。蕭白と並び称される”奇想の絵師”。蕭白は並外れた表現をとる拡散型だったのに対し、若冲は、ものをじっとみつめて描く収斂型と山下祐二氏(別冊太陽/水墨画発見)。6点の作品が展示されている。色のついているのは1点だけで、ちらしの表を飾る”雪中雄鶏図”。写実的な華麗なる雄鶏。酉年生まれとしてはうれしい(笑)。しかし、よく観ると、背景がおかしい。竹が節ごときゅきゅと曲がっている。野外では多少、曲がっている竹はみるが、こんなのはない。念のため、フラワーセンターの竹の品種園で調べてみたが、そういう品種はなかった(笑)。そういえば、積もっている雪もぎざぎざしている。こういう描き方は、それ以降の画風の進化のきざしだと、説明にあった。

さて、水墨画。”風竹図”。強風に揺れている。カメラで撮ろうとすれば、ぼけてしまうだろうな、と思っていたら、ぼけた様子も一部描いている(これはぼくの勝手な想像)。長谷川等伯の風情もちょっと感じた。でも、若冲作品で一番、良かったのは”その向かいの”鶏図押絵貼屏風”。6曲1双の屏風。それぞれに雄鶏が長い尾羽をびゅーんと輪っかにして天に上げ、まるで(カーボーイが)投げ縄を投げる直前みたい。あるいは鞭みたい。また、それぞれの面の12羽の雄鶏の尾羽の位置やら輪の恰好が微妙に違うので、遠くからみると、とてもリズミカルだ。近くでみると、そこには雌鶏がいて、またひよこまでいて、それぞれの鶏家族の雰囲気も感じることもできる。墨一色のほとんど一筆書きのような素早さで描いたに違いないが、墨の濃淡で色まで感じることができる。”雪中雄鶏図”の、カラーの雄鶏が目にやきついていたということもあるかもしれない。若冲紹介本などに出てくる”鶏図押絵貼屏風”はそっくりだが、これとは微妙に違う。きっと、当時は、もっと多くの鶏図押絵貼屏風が若冲フアンの町屋などにあったのではないだろうか。




(後日、追加;テレビ画面から)




そのほか、”瓢箪・牡丹図””仔犬に箒図””菊花図押絵貼屏風”が。動植物たちが、気持ちよさそうに、若冲に描かれていた。

≪祈りの美≫では、”六観音像のうち如意輪観音”のくつろいだ観音さまににっこり。≪王朝の雅と源氏絵≫では、住吉如慶の”きりぎりす絵巻”にうふふ。きりぎりすの玉虫の君が蝉の右衛門守に嫁ぐという話。馬ではなくてカエルに乗り、牛車でなくナメクジ車(爆)。≪華麗なる琳派≫では、光悦、宗達のお馴染みコラボ作品。渡辺始興の”簾に秋月図”、鈴木基一の”朴に尾長図”、”紫陽花四季草花図”、酒井抱一の”槇に秋草図屏風”など。

当時の画壇の主流派、狩野派にはつかず、独自路線を歩んだ若冲。若冲回顧展、どこかでやってくれないかな、なんて思いながら、そごうデパートのレストラン階の鶏料理店はやめて(笑)、天ぷらやさんで生ビールをおいしく飲んだのでした。ついでに日本酒も300CCのを一本。





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若冲の動植綵絵をみるような一日

2012-06-19 18:49:00 | Weblog
少し大げさかもしれないが、今日は若冲の”動植綵絵”をみるような一日だった。2009年10月、東博で開催された”皇室の名宝展”での、若冲の部屋の”動植綵絵”三十幅の掛け軸、勢ぞろいにはどぎもを抜かされたものだった。それぞれに、様々な鳥類を中心にした動物、そして樹木、草花などの植物があでやかに描かれていた。今日も、そんな動植物たちに巡り会えた。

まず、フラワーセンターに行く途中の柏尾川でカルガモの親子発見。あれ、お父さんがいないな。


しばらく、川縁を歩くと、橋のたもとで。お父さんとはぐれ子供一羽、発見。どうも疲れて置いてきぼりにされたらしい。お父さんがイライラしたように羽ばたいていた。


漣(さざなみ)が起こった。これは若冲というより福田平八郎の”漣”かな。


フラワーセンターでは、花菖蒲が迎えてくれた。


そしてスカシユリがすかしていた。


その手前にはペチュニアが。


薔薇園もまだまだ


原節子の麦秋も


若冲が好きそうな竹。きっこう竹という。


半夏生もお好きかな


ヒマラヤヤマボウシ


松葉牡丹


紫陽花ももちろん。紫陽花を愛でているのは倒木大島桜。きついはずのに、楽しむ心を失わない、えらいと思う。


そのあと鎌倉中央図書館に行った。近くの小学校に艶っぽい楠の大木が(汗)。これは若冲というより蕭白だろうか。


若冲の動植綵絵をみるような一日だった。

(花の日時計)





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石は芸術家

2012-06-18 21:09:08 | Weblog
明治神宮御苑の中で可愛い狸に出会い、ほんわかした気分で社殿の方に歩いて行ったら、また、ほんわかさせてくれるものに出会った。今度は動物ではなくて、石どす。狸は人を化かしたり、腹つつみを打つくらいの芸しかもたないが(狸の怒り)、ここの石はみんな、すごい芸をもっている。狸だけではなく、人間国宝も顔負けどす。ご紹介したいと思います。

まず自分の身体に、きれいな菊の花を咲かすことができます。ほらね。








タイガースフアンを喜ばすために虎にもなります。ほらね。




ドラゴンズフアンを喜ばすために龍にもなります。ほらね。


ジャイアンツフアンを喜ばすものは・・・何もありません。


雪舟の秋冬山水図にもなります


雪舟の山水長巻(冬の山)にもなります


北斎の滝図にもなります 幕府お墨付きです


蕭白ショックにもなります。多少エロいということで




森進一の襟裳岬にもなります


中村晃子の虹色の湖にもなります


天文学者にもなります。銘”月の輪”(これは本当の銘です)


気象学者にもなります。銘”雲洞”(これも本当の銘です)


観音様になって、トリとさせていただきます。


。。。。。

ぼくも少年時代、小石のコレクターでした(汗)。だから今も、石は好きです。すばらしい展覧会でした。それぞれ銘がついていましたが、ボク流の銘をつけて紹介しました。
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狸日和

2012-06-18 08:07:58 | Weblog
明治神宮御苑の狸をみてきました。見頃になりました。えっ?

ほらね。池の傍です。ワイフが1週間ほど前、ここで観たというので、来てみたわけです。大勢の人がたかっていましたので、たぶん、狸だと、喜び勇んで、駆け付けると、なんと、2匹も。運がよかったです。いつもいるわけではないはず。実際、今回のタヌキショーも20分ほどで終わりました。狸道を二匹、仲よく帰っていきました。







じゃれあって。親子かな。それとも夫婦?


さようならと狸道を


せっかくだから、花菖蒲園にでも(笑)。こちらも見頃。






清正の井戸は長い行列だったので止めて、御苑の出口に。途中ではっ! なななんと、また狸が。切り株の上から餌になりそうなものを探している。遠くにもう一匹が、落葉の下をまさぐっている。池の傍からはだいぶ離れているから、別の狸だろう。何という幸運、一日で4匹の狸をみた。ありがとう狸さん。


お礼に神宮内で冷やしたぬきを頂きました。


たぬきの嫁入りにも出会いました。二組も お幸せに。




原宿では狸が人に化けていました。


ここでは狸が猫に化けてました。




そのあと根津美術館にも行ってきました。ここでは二匹の狸が二匹の羊に化けていました


狸日和の、とてもいい日曜日だった。
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ミッドナイト・イン・パリ

2012-06-17 09:13:33 | Weblog
最近、巴里に行った人で、おまけに美術フアンなら(ぼくもそう)、こんな面白い映画はないかもしれない。その映画の名は、”ミッドナイト・イン・パリ”。

映画が始まると、いきなりパリの名所が次々と現れてくる。エッフェル塔、凱旋門、オペラ座、セーヌ川等など、そうそう、ぼくも遊んだムーランルージュまでも。そして、導入部だけではなく、映画が終わるまでパリ漬けになる。オランジュリー美術館のモネの睡蓮の部屋も出てくるし、ロダン美術館の庭園も。そのときには学芸員さんの説明として、ロダンの愛人で彫刻家のカミュークローデルの話まで出てくる。

現代のパリだけではない。米国から旅行にきた小説家志望のギルが、ミッドナイトのパリの街角で誘われて乗った旧式の黄色い車(ブジョー)の行先は、”黄金時代”といわれた1920年代のパリだった。そして、そこには彼が尊敬するヘミングウエイがいて、自分に話しかけてくる。スコット&ゼルダ・フィッツジェラルド作家夫婦もいる。(そして、現代のホテルに戻り)、次の夜も、その街角からタイムスリップする。ヘミングウエイが連れてきたガートルード・スタイン女史の部屋には美術論を戦わせているピカソがいる。ピカソの愛人、アドリアナもいる。モディリアーニも愛したうつくしいアドリアナにギルも憧れてしまう。(美しい婚約者とパリにきているのにけしからんノダ;笑)

第三夜にはセーヌ川沿いで、アドリアナとの夢のデートが実現する。しかし夫婦喧嘩してセーヌに身投げしようとしていたゼルダに出会い、いい雰囲気がぶちこわされる(笑)。バーに入ると、そこにはサルバドール・ダリが、ルイス・ブニュエルやマン・レイとシュールな話をしていた(笑)。

そしてその後、また、とんでもないタイムスリップが起こるのだ(爆)。ある夜、アドリアナと馬車に乗った行先は、伝統のレストラン”マキシム”だった。そこには、小柄なロートレックが一人でテーブルに座っていた。アドリアナはピカソが尊敬している画家なのでよく知っている。そこへ、ドガとゴーギャンが連れ立って現れる。なななんと、時代はもうひとつの黄金時代、ベル・エポック。1890年代なのだ。

アドリアナは現代(1920年代)は嫌や、ベル・エポックがいい、と帰ろうとしない。一方、ドガたちは現代(ベル・エポック)はつまらない時代だ、ルネサンス期に戻りたいという。今という時代はいつもどうしようもない時代かもしれない、といいたいらしい。そうかもしれない。

現実に戻るギル。米国に帰らず、ここに住もうと決心する。雨のパリを傘もささずにセーヌ河沿いを歩くギル。その隣りに、こちらで知り合った清楚な女性がいた。レア・セドウーの優しい微笑みが、印象に残るラストシーンだった。

監督:ウディ・アレン 出演:オーウエン・ウイルソン(ギル役)、マリオン・コティヤール(アドリアナ役)、コリーストール(ヘミングウエイ役)エイドリアン・ブロディ(サルバドールダリ役)、アリソン・ビル(セルダ役)。そうそう結局、別れることになる婚約者イネズの役を演じた女優さんは、レイチェル・マクアダムスでした。


オーウエン・ウイルソンとマリオン・コティヤール(エディト・ピアフ役をした女優さん)




ロダン美術館で


オランジュリー美術館で


最後はこの人と


(以上の写真はプログラムより)





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高橋由一展 芸大美術館

2012-06-16 07:13:15 | Weblog
高橋由一の回顧展は、はじめて観るが、それもそのはず、20年振り、東京では初めての開催だそうである。ちょんまげの自画像が迎えてくれたように、文政11年(1828)、江戸 の生まれで、北斎や広重の活躍も目にしているのだ。そんな時代に青年期を迎え、近代洋画の開拓者になったのだから、すごい人である。それも、のちの著名な洋画家たちのように、”海外研修”をしていない。たまたま日本にいたワーグマンに教えを乞うたくらいである。まさにオリジナルジャパンニーズ洋画といえるだろう。

知名度の高い、重要文化財にもなっている”鮭”。以前、ここでも観たこともあるし、何度か目にして、いつも新たな驚きがある。今回は、これに加えて2匹の鮭が並んで吊るされているのだから壮観だ。由一の鮭が何匹かいることを知ったのは、わりと最近のことである。3年ほど前に茅ヶ崎美術館で(ヤンマーの)山岡コレクション(笠間日動美術館)展が開かれ、そこにそれが展示されていた。よく似ていたので、当時のブログに、ふたつ並べて展示されるところを観てみたいな、と書いている。それが実現してとても嬉しい、それも、”山形産”のを含めて三匹も一緒に。

つい、どれがうまそうかなと思ってしまう。お刺身好きなぼくは、買うときにはいつも色で判断するが、その基準でいくと、上野産、山形産、笠間産の順ですね(笑)。制作年代順では、上野、山形、笠間の順。やっぱり、はじめの作品が重要文化財、それにおいしそうだし、納得でごわす。

名作、”花魁”。新吉原の稲本楼の花魁、小稲(こいな)がモデル。鼈甲の簪をありったけつけて座った。出来上がった絵を観て、わちきはこんな顔ではありんす(笑)、と怒ったとか。あまりに、克明に描き、内面まで映し出されてしまったのだろう。

肖像画といえば、入口で迎えてくれた”丁髷姿の自画像”。これも山岡コレクションで観ている。よし、次の時代は俺がつくる、そんな気概が感じられる。司馬江漢像もある。彼は鈴木晴信の弟子(春重)だが、由一より前に、油彩画をものし、洋画の開拓者とも評されている。小村雪岱の挿絵入り、邦枝完二作の”おせん”にも登場するが、おせんの行水をのぞき見したり、おせんの切った爪を集めるなど奇人として書かれている(爆)。

歴史画では”日本武尊”。焼津の火責めの場面。袋の中の火打ち石で新たな火を起こし防ごうとする。それにしても、ごっついヤマトタケルだな。新猿之助のタケルを観てきたばかりだから、よけいそう思うのかも。

甲冑図もすごい。前述の、鮭の皮のように精密に描かれている。冑やら鎧やら弓矢やら太刀など武具全体が、ひとつの生命体のように、今にも、むくむくと起き上がりそうな感じ。由一は武家の出だというから、描いているうちに、自分の魂が乗り移ったのだろう。ふたつの桜の枝の絵があったが、どちらも生き生きしたいい花だった。

風景画にも、馴染みのものがいくつかあった。ひとつは”山形市街図”。これは葉山の、”画家の眼差し、レンズの眼”展で、菊地新学という写真家の”山形県庁前”と並べて展示されていたもの。絵画的にじゃまなものを外す程度で写真とそっくりだった。当時は写実派の画家にとっては、カメラレンズの襲来は黒船のように思ったことだろう。そして、”わが地元”、江の島図が三つ。

やっぱり回顧展は面白い。

鮭が三匹


花魁


甲冑、自画像、日本武尊


桜花図


山形市街図



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明月院の姫紫陽花は、ひょうきんものばかりだった

2012-06-15 18:14:09 | Weblog
一週間前に訪ねたときは、明月院の紫陽花は色づき始めたところでしたが、今日は最高の見頃となっていました。人出も最高、満員御礼の垂れ幕が出てもよさそう。ほらね。






境内の紫陽花の95%が日本古来の姫紫陽花。雨上がりの雲間の青空のようなスカイブルー。これが、さらに濃いブルーになって花の命はおわる。
姫紫陽花というから、おしとやかな、さびしい姫君ばかりかと思ったら大間違い。コロッケさんやきみまろさんに負けない、ひょうきんな姫君ばかりだった。ほらね。

ドーナツ姫君


ドーナツなりそこない姫君 穴の部分が残っている


クロワッサン姫君 ねじれているところをみてください


おむすび姫君


ひょうたん姫君 呑み助姫君ともいう


ハート型姫君 聖子ちゃん姫君ともいう


ハートブレーク姫君 ハートの真ん中に穴が開いている


雪だるま姫君


ぬいぐるみ姫君


アルキメデス姫君 腕組みをしてアジサイ原理を黙考している


ユークリッド姫君 幾何学を研究している


お疲れ姫君 茶色のベッドでお昼寝している


裏表のない姫君 いつも裏をみせてくれる


今日だけはまともに見られなかった すみません、花想い地蔵さま


大部分は、真面目な、うつくしい姫君でごぜえましただ、お地蔵さま。お許しくださいましぇ。
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