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気ままに

大船での気ままな生活日誌

蔦屋重三郎 ブーム 

2025-02-18 11:21:56 | Weblog

おはようございます。

NHKの大河ドラマ、”べらぼう”が始まってから、主人公の蔦屋重三郎について見聞きすることが多い。”蔦重ブーム”といっても良いかもしれない。

先日も、鎌倉生涯学習センターで”蔦屋重三郎の仕事”というテーマの講演会があった。講師は、”べらぼう”の時代考証を担当されている中央大学の鈴木俊幸教授。ユーモアのある先生で満席の大ホールを沸かせた。いきなり、”私は蔦重研究の第一人者です”とぬけぬけと言う。そのあと、”蔦重を学問的に研究している学者は私一人だけなんです”と笑わせる。なるほど、第一人者ですね。このドラマがはじまってからNHKから問い合わせがしょっちゅう来たり、このような講演会もたびたびで、先生も”べらぼう”な日々が続いているようだ。

はじめに、同時代人の蔦重の評価ということで、曲亭馬琴の”近世物之本江戸作者部類”の紹介があった。これはぼくも初めて聞く。その内容は、一九,三馬,春水,京伝ほか、無名作者から馬琴自身まで,江戸の出版事情満載の歯に衣着せぬ戯作者評伝なのだが、出版業界からただ一人、蔦重を採りあげている。”件の蔦重は風流もなく、文字もなけれど(とけなすが)、当時の諸才人に愛顧され、その資質により刊行業をはじめ、十余年の間に、一、ニを争う地本問屋になりぬ。世に吉原に遊びて財を散ずるものは多いが、吉原より出でて大尽になりたるはいと得難し”と。当時から蔦重の評価は非常に高かったと鈴木先生は言う。

さて、蔦重の仕事は、大きく分けると、1)新吉原時代、2)日本橋時代、3)全国展開時代に分けられる。先生はいつも私の講演は日本橋前で終わってしまうと最初に言われたが、今回は、何とか日本橋は渡れた(笑)。レジメは最終章まであるので、ここではそれも含めている。

新吉原時代の蔦重の仕事は大河ドラマで進行中だが、先の7回目は、鱗形屋(片岡愛之助)が海賊版の罪で捕まる。この機を逃すまいと、蔦重(横浜流星)は今の倍売れる吉原細見を作ることを条件に、地本問屋の仲間に加えてもらう約束を取り付ける。ここで、大きなお店だけではなく、小さなお店の遊女の情報まで組み込み、かつ、サイズを小さくした吉原細見”籬の花”を出版。これが大当たりとなった。それ以前にも蔦重初の単独出版となった”一目千本”。これは遊女の性格を面白おかしく花々に例えたもので、評判を呼び、吉原に客が押し寄せた。このように常に”吉原のため””女郎たちのため”、と吉原生まれの蔦重は尽力する。

異色の遊女紹介本である『一目千本』

吉原のガイドブック、吉原細見(籬の花)

この細見を手に吉原を歩く人のことを念頭に、通りを挟んで店を対向の形にした。

先生の話の中にも”一目千本”や”籬の花”が出てくるが、蔦重はとにかくアイデアがいい、商売上手、そして何よりもプロデューサーとしての才が秀でている、とのこと。たとえば、当時、流行っていた狂歌のグループに、自身も蔦唐丸の狂名で入り込み、狂歌師、戯作者らと仲間になる。そして戯作・狂歌集を出版する。それに一流の腕をもつ浮世絵師の挿絵を添えて、豪華本にしてしまう。

画本虫選(版元蔦屋重三郎(耕書堂)歌麿の出世作とされる作品。蔦重のプロデュースにより宿屋飯盛ら当時の狂歌壇の主要なメンバーが寄せた狂歌が15図に二首ずつ配されている。彫と刷りの技術も高度で、蔦重は歌麿を全面的に売り出そうとしていた。

日本橋時代に入ると、蔦重は浮世絵出版にシフトし、”浮世絵の黄金期”と呼ばれる天明・寛政期に、歌麿と写楽の二大スターを売り出した。歌麿の美人大首絵が大量に売り出された。この上半身あるいは頭部をクローズアップした美人画は絶大な人気を博した。

喜多川歌麿 「歌撰恋之部 物思恋」(左)と「婦女人相十品 ビードロを吹く娘」(右)いずれもアダチ版復刻浮世絵から。

寛政3(1791)年に、蔦屋が刊行した山東京伝の洒落本3冊が取り締まりの対象となり、蔦重も財産半分を没収された。蔦重は、へこたれない。寛政6年5月、当時無名の東洲斎写楽と組んで起死回生の勝負へ出た。写楽という謎の絵師が、蔦屋から28枚の役者絵を一挙にリリースする。しかもそのすべてが、背景が豪かな黒雲母摺りの大首絵という特別仕様だった。写楽は10か月ほどのあいだに140点余の作品を蔦屋から発表し、忽然と姿を消した。写楽の正体は分からない。写楽は誰か、いつまでも議論されている。

写楽「三代目大谷鬼次の江戸兵衛」と「市川鰕蔵の竹村定之進」いずれもアダチ版復刻浮世絵から

蔦重は歌麿、写楽を育てたばかりでなく、あの北斎の売り出しにも一役買っている。ぼくも見たが、映画HOKUSAIでも蔦重(阿部寛)が北斎(柳楽優弥)の才能を認め、売り出すきっかけをつくっている。北斎の波を見て、目を凝らす蔦重。

映画『HOKUSAI』<本編映像>北斎(柳楽優弥)才能開花に蔦屋重三郎(阿部寛)が絶賛!(2021年5月28日公開)

寛政3年、江戸書物問屋加入。全国展開を考える。名古屋の永楽屋東四郎との提携。松坂の本居宣長に会い、随筆集『玉勝間』の江戸版を出版した。

しかし、全国制覇の夢は果たすことなく、寛政9年、48歳、江戸わずらいと言われた脚気でこの世を去る。

。。。。。

ブログタイトルを”蔦屋重三郎ブーム”としたが、ブームは今に始まったわけではなく、ぼくが60歳の定年後、浮世絵を見るようになってくらいから蔦重はすでに有名で、2010年、サントリー美術館で”歌麿・写楽の仕掛け人/その名は蔦屋重三郎”展も開催された。その後も、写楽、歌麿展が開かれるたびに蔦重の顔が見え隠れした。

〆は、蔦重が生まれ、育った華やかな吉原で。2024年、芸大美術館の”大吉原展”の歌麿の大作、”吉原の花”で。

歌麿 吉原の花 毎年三月に仲通りに桜が植えられ、お花見会が催される。その華やぎが巨大画面に描かれている。

それでは、みなさん、今日も一日、お元気で!

コメント (8)
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