こんばんわ。
梅雨入りしていきなり梅雨の晴れ間。予報では真夏並みの暑さというので、外歩きは止め、久しぶりに辻堂の映画館へ出掛けた。”オッペンハイマー”以来だから三か月振り。
三月のあの日は逆に寒い日で外歩きを止め、藤沢の図書館で佐藤愛子の”90歳、何がめでたい”を手にとった。愛子さんが90歳になって、執筆活動を止めていたとき、女性セブンから連載を頼まれ書き始めたのをまとめたものだ。これが映画化されるとは、そのとき露ほども思っていなかった。愛子さんの自叙伝、”戦いすんで日が暮れて”なら話しはわかるが、エッセイの映画化とは?筋立てに興味をもった。
脚本は大島里美で、なんと佐藤愛子に原稿を頼みに行った編集者をクローズアップし、さらに、お二人の家族を巻き込み、笑いとペーソスの物語に作り上げた。
監督は前田哲で、僕も見ている”老後の資金が足りません”、”こんな夜更けにバナナかよ”を制作している。重苦しい”オッペンハイマー”とは真逆のコメディーである。
主役の愛子さんには90歳の草笛光子、職場でパワハラだ、セクハラだと馬鹿にされている編集者の吉川には唐沢寿明。愛子は、もう仕事はしたくないと何度も突っぱねるも、吉川のお土産攻勢に負けてエッセイを書き始める。でも書き始めると、うつ病気味だった心も晴れやかになり、口には出さないが吉川に感謝している。
エッセイの中身もいくつか現れる。たとえば、”来るか?日本総アホ時代”。白髪混じりのタクシーの運ちゃんとのスマホ談義。そんなものが行き渡ると、人間はみなばかになる。調べたり考えたり記憶したり、努力をしなくてもすぐ答えが出てくるんだもの。おわりに、もう文明の進歩はこのへんでいい。進歩が必要だとしたら、それは人間の精神力であるとぴしゃり。
犬の鳴き声がうるさい、子供の騒ぐ声がうるさくて昼寝もできないと文句をいう輩にも愛子の強烈パンチが炸裂する。あやしい奴が来たら吠えるのが犬の職分。子供は騒ぐのが商売。吠える犬は吠えないように訓練したり、近所に保育園が新設されると反対運動を起こすアホども、と手厳しい。
編集者、吉川の人生も描かれる。奥さんから離婚届けに判を押すよう言われている。娘も母の味方だ。さて、愛子さんはどちらの味方だったでしょうか。ネタバレになるのでここでは言いません。
エンドロールの左半分を使って、実際の佐藤愛子さんの子供時代からのアルバムが流れる。そして最後に、”佐藤愛子さんは2023年11月、100歳を迎えました”、の一行が〆る。
とても楽しい映画でしたよ。
前田哲監督の次回作は”100歳/何がめでたい”でしょうか(笑)。もちろん、主役は草笛光子さん!
では、おやすみなさい。
いい夢を。
散歩道の白花のアガパンサスが咲きました。