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気ままに

大船での気ままな生活日誌

椿

2011-03-21 11:46:18 | Weblog

大震災から10日がたった。暗澹たる日々が続いているが、昨日、80歳の祖母と16歳の孫が奇跡的に救出されたニュースは、ひとすじの光だった。

仕事をもっている人は、その間、震災のことは忘れることができるだろうが、ぼくのように遊びが仕事の人間には、”計画停電”等のため、遊びも不自由になって、気を晴らす時間が少ない。電気のきている図書館を巡るのが唯一の楽しみだが、ここで読む本もつい、原発関係になってしまう。ある図書館では、特設の原発コーナーまでつくってあった。”原発列島を行く”、”原発事故は何故繰り返されるのか”等など、5冊ほど読んだ。腹のたつことばかりだが、こうゆう時期だから、言わない。

いつも、こうゆう暗い景色ばかりみていると、身体までおかしくなってくるようだ。おまけに花粉症がひどい。たまには息抜きをしなければいけない、と思っていたところ、昨日、”計画停電”実施しません、との東電からのお知らせがあった。ワイフが茅ヶ崎の、美術館と氷室椿庭園に行かない?という。ぼくは震災前に行っているが、そのとき椿庭園がもうひとつだったし、美術館の企画展”椿咲く/絵画と工芸”も、もう一度観たいと思っていたので、一諸に行くことにした。

椿庭園は、10日前に比べて、明らかに花の数が増え、見頃になっていた。ひとつ、ふたつしか咲いていなかった、ここの名華、氷室雪月花もたくさんの花をつけていた。肥後椿も、前回ほとんど咲いていなかったが、見事な雄蕊を中心に華やかに開いていた。近所にお住まいの人が、今年は大分、遅れて見頃になりました、と言っていた。いいときに来られてよかった、とワイフも満足していた。ぼくも満足したが、うっかりカメラをわすれてきたのが残念だった。

そこから、駅に戻るように歩き、美術館を訪ねた。やっているかどうか心配だったが、開催していた。”あいおいニッセイ・コレクション”から選ばれた60点の椿の絵と工芸品だから、なかなかのものだ。光琳、抱一の椿がある。それぞれ、団扇画と扇子画と小品だが、琳派の趣がある。乾山、基一の山茶花、椿もある。乾山の賛が面白い。”梅は冷淡で嫌われやすいから、ここでは艶のある濃彩で山茶花を描いた”とある。乾山が梅をそんな目でみていたのかと思うとおかしかった。

左室には大正昭和期の画家の作品。小林古径、村上華岳、高山辰雄などの日本画家、熊谷守一、満谷国四朗などの油彩画家の作品が並んでいる。いくつかの作品に学芸員による解説文がついている。高山辰雄の椿には、”ふるえるような筆使いで、生物のひそやかな息づかいを一つひとつ拾い上げるように描こうとしている”と。なるほどと思った。これから、そんな目で高山辰雄の作品を観てみよう。

第二展示室には、真鶴ゆかりの中川一政、大磯の安田靫彦、堀文子、藤沢の岸田劉生、平塚の鳥海青児、鎌倉の前田青邨、小倉遊亀、中島千波、魯山人、葉山の山口蓬春など、錚々たる画家の椿が、それぞれの特徴ある顔をみせて並んでいる。あふれるような色彩や、淡い色彩、写実もあれば、文様的のもある。堀文子の四つほどの作品のひとつは、花瓶の外に落ちた花びらまで描かれている。”自然の摂理を語りかける、常に生と死は隣り合わせ”との彼女の言葉が添えられていた。浄智寺の裏にお住まいだった、遊亀さんの作品もいくつもあった。”椿の絵は何十年も描いていますが、いつも新しい気持ちで描いています。今の花は昨日の花とは違います”

大震災10日後の、少しばかりほっとした一日だった。

 

 

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