気ままに

大船での気ままな生活日誌

井上ひさし追悼公演 ファイナル/ファイナル

2011-03-30 10:04:38 | Weblog

井上ひさしさんが亡くなられてから、早いもので、もうすぐ1年になる。こまつ座の井上ひさし追悼公演が、7月から始まり、第六作目がファイナルで、渋谷のBUNKAMURAシアターコクーンで上演されていた。ぼくらも、一度は足を運ぼうと、予約をとっておいた。3月12日であった。それが、前日、あの東北関東大地震に見舞われ、当然、12日は休演となった。そのままずっと休演かと思ったが、すぐ立ち直り、2日後からつづけているという。ぼくらも、こういう時に喜劇はどうかなと思ったが、いや、こういうときこそ”井上ひさし喜劇”と思いなおし、再予約をした。開いてる席は、ファイナル公演”日本人のへそ”の最終日(ファイナル)、3月27日の席だけだった。ファイナルのファイナル、井上ひさしさんを最高のかたちで追悼できた。もちろん、笑いの向こうに涙がある、涙の向こうに笑いがある、のが井上ひさしだから、ぼくは主人公、ヘレンさんの出身地、今、大変なことになっている東北地方のことにも、もちろん思いを馳せたのだ。

”日本人のへそ”は井上ひさしの戯曲デビューの作だそうだ。よく知られているように、彼は浅草のストリップ劇場フランス座で踊り子さんの合間に演じられるコントの台本を書いていた。だから、そのときの経験が色濃く出ている作品である。実際、主人公のヘレン(笹本玲奈)は浅草のストリッパーである。

これは、劇中劇で、吃音症の治療にはミュージカルが一番という説を唱える、うさんくさい大学教授が、浅草ストリップの華、ヘレン天津の一代記を劇化するというストーリーである。第一幕は、ヘレンが集団就職で岩手から上京したものの、色っぽい娘だったので、いろいろな男に追い回され、職業も変遷し、結局、浅草のストリッパーになる。井上戯曲らしい、言葉遊び、飾らない言葉、ちょっと不謹慎な言葉(笑)に溢れ、爆笑を誘う。そして、第二幕では、劇中劇であることを忘れさせてしまう、殺人未遂事件の推理劇。ヘレンは、上品そうな、政治家の愛人になっている。遅筆堂といわれただけあって、最後まで、練りに練ったという印象の、幾重もの入れ子構造になっている戯曲だった。

ファイナル公演の、まさにファイナル公演だったので、終演してからもアンコールの拍手が鳴りやまず、5回ほど、役者さんたちは舞台に呼び戻された。最後は演出家、栗山民也も舞台に上がった。こんなすごいアンコールははじめて観た。きっと観客は、井上ひさしさんを舞台に呼びださせたかったかもしれない。

井上ひさしさんがご健在であれば、故郷、東北の目を覆いたくなるような惨状に、悲しみ、なんらかの活動をはじめていただろう。そして、原爆に向けていた厳しい目を(さらに強くし)この原発事故に向けていたに違いない。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする