石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(81)

2023-11-22 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第3章 アラーの恵みー石油ブームの到来(18)

 

081 第四次中東戦争ー智将サダトの登場 (2/4)

 このような中でエジプトのサダト大統領はイスラエルに対する報復の機会を虎視眈々と狙いつつ体制固めを図り、まずソ連軍事顧問団の追い出しにかかった。ナセルの時代にエジプトに深く食い込んだソ連はアラブ諸国への社会主義革命の輸出を画策し、それは南イエメン独立という形で実現した。しかしソ連型社会主義イデオロギーはアラブ諸国に定着しなかった。アラブ世界では生まれて物心が付く前に、すでに部族或いは民族という生まれながらの「血」の絆と幼心に刷り込まれたイスラームという「心(信)」の絆にからめとられている。成長してから学習によって習得する「智(主義思想、イデオロギー)」が入り込む余地はほとんどない。社会主義イデオロギーを「輸入」するなどとはアラブ人たちには及びもつかないことだったようである。

 

 サダトがソ連の影を薄めようとしたのはもう一つの理由があった。米国製兵器でエジプト軍の装備を近代化することであった。ソ連製の兵器ではイスラエルに到底太刀打ちできない。サダトはソ連の軍事顧問団を追い出すことで米国への接近を図った。戦争に勝つことが最大の使命である軍人は非軍人以上に合理的な思考をするものである。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com


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