(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行)論稿集」で一括してご覧いただけます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0377OilMajor2016-1stQtr.pdf
1. 五社の1-3月期業績比較(続き)
(2)利益 (図:http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-52.pdf参照)
ExxonMobilの期間利益は18億ドル、前年同期(49億ドル)の6割減である。ExxonMobilに次いで利益が多いのはTotalの16億ドルであり、同社の場合は前年同期比で4割減である。Shellは2社よりもさらに利益が低く一桁の4.8億ドルで前年同期の10分の1近くにとどまっている。BPとChevronはともに2期連続の欠損である。今期の欠損額はChevronが7億ドルとBPの6億ドルを上回っている。
利益を上流部門(石油・天然ガスの開発生産分野)と下流部門(石油精製および製品販売分野)で比較すると、Shellは上流・下流部門の利益がそれぞれ14億ドル、17億ドルであり下流部門の利益が上流部門を若干上回っている。(なお冒頭の各社の利益には石油化学品部門あるいはその他の損益を含んでいるため上・下流部門の利益の合計額とは一致しない。以下の各社も同様)
ExxonMobilは上流部門が0.8億ドルの欠損であったのに対して下流部門は9.1億ドルの利益を計上している。Totalも下流部門の利益(11億ドル)が上流部門の利益(5億ドル)の2倍以上である。さらにBPとChevronは上流部門がそれぞれマイナス12億ドル、15億ドルの損失を計上しており、逆に下流部門は19億ドルおよび7億ドルの黒字である。
このように5社はすべて下流部門の利益が上流部門のそれを上回っており、Shell以外の4社は下流部門が上流部門を支えている状況である。国際石油企業の利益構造はこれまで利益の大半を原油・天然ガスの生産(上流部門)で稼ぎ、精製、石油化学など(下流部門)の低収益を補うという構図であったが、1昨年以降の原油価格の大幅な下落により収益構造が様変わりしている。即ち上流部門の利益が急減する一方、精製、石油化学部門は原料の原油・天然ガス価格が急落したため利益の出る体質に変化したのである。
(3)売上高利益率 (図:http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-4-53.pdf参照)
売上高利益率はTotalが4.9%と最も高く、ExxonMobilが3.7%で続いている。Shellの利益率は1%にとどまりBP及びChevronはマイナス(それぞれー1.5%、-3.1%)である。これに対して前年同期の各社の利益率はChevron7.4%、ExxonMobil7.3%、Shell6.4%、Total6.3%、BP4.7%であり、BP以外は5%以上の利益率を出していた。これら5社は好調時には10%台と言う高い利益率を誇っていたこともあるが、近年各社の利益率は急速に悪化している。
(続く)
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