石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

ウクライナ紛争で激変したロシアと西欧のエネルギー貿易(1)

2024-07-31 | EIエネルギー統計

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0609RussiaEuEnergyTrade2019vs2023.pdf

 

(西欧はガス・石油をどこから調達し、ロシアはどこへ転売したのか?)

 

2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、EUは対ロシア制裁を強化し、同年12月には海上輸送による原油輸入を停止、2023年2月には石油製品の輸入も禁止した。その後、G7とEUは追加制裁としてロシア産原油の輸出価格を1バレル60ドルに設定した。さらにロシア産ガスの輸入抑制を目的として2027年までに全てのロシア産エネルギーを禁輸する計画をたてている。この結果、ロシア・ヨーロッパ間の石油・天然ガスの輸出入は激減した。

 

2022年は新型コロナ禍が終息し世界経済が再発展するタイミングであっただけに、ヨーロッパは石油・天然ガスの新たな輸入先確保に追われ、またロシアは戦費調達のため石油・天然ガスの歳入を増やさねばならず新たな販売ルートを求めている。経済制裁はヨーロッパとロシア双方に多大な影響を及ぼしたのである。

 

本稿ではEI(Energy Institute)が発表した世界エネルギー統計2024年版(Statistical Review of World Energy 2024)のデータをもとに、2019年(新型コロナ禍以前)と2023年(ウクライナ侵攻後)のロシアと西欧双方の天然ガスと石油の輸出入関係を比較し、どのような変化が生じているかを検証したものである。

 

*世界エネルギー統計2024年版については本ブログの解説シリーズ(全11回)を参照ください。

 

(ロシアからの輸入量が激減、不足分を穴埋めできず!)

  1. パイプラインによるヨーロッパの天然ガス輸入量の変化

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/5-G10a.pdf参照)

2019年にヨーロッパがロシアからパイプラインで輸入した天然ガスは1,880億㎥であった。同年の輸入総量は4,713億㎥であったため、ロシア産は40%を占めていたことになる。そして2023年の輸入総量は3,408億㎥であり、うちロシアからの輸入は498億㎥であった。

 

2019年に比較するとロシアからの輸入量は▲1,382億㎥、率にして▲74%減少したことになる。ロシアからの輸入を補填したのはアルジェリア(214億㎥, 2019年→306億㎥, 2023年)、アゼルバイジャン(同112億㎥→236億㎥)などであり、地中海海底パイプライン或いはロシア領土を経由しない中央アジア旧CIS国家からのパイプラインによってヨーロッパの不足分が補充されたと考えられる。但し全体の輸入量も▲1,305億㎥(▲28%)減少していることから、パイプラインでの補充は不足分を穴埋めできなかったようである。

 

(続く)

 

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 見果てぬ平和 ― 中東の戦後... | トップ | 中東とエネルギーのニュース(... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

EIエネルギー統計」カテゴリの最新記事