石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

これからが正念場のBP(4)

2010-10-13 | 海外・国内石油企業の業績

(注)本シリーズは「マイ・ライブラリー」に一括掲載されています。

4.最悪の中間決算
 事故真っ只中の7月27日、BPは2010年第2四半期の決算を公表した 。前年同期の黒字44億ドルから一転、172億ドルという巨額の赤字決算であった。深海底の暴墳箇所を抑え込み原油流出を食い止める作業及び救助井(Relief well)により永久的に封じ込める作業による直接的な費用は言うまでもない。流出した原油の回収作業や地域住民への補償の負担など今後見込まれる321億ドルの費用を計上したためである。邦貨換算で約1.4兆円と言う巨額の赤字であり、英国企業の歴史上でも最も大きいものであった。

 「米国民の税金は1セントたりとも使わない」と述べるオバマ大統領の強い姿勢に対して反論の余地もないBPは6月中旬に200億ドルの補償基金の設立に追い込まれた。これを含めた当座の見込み費用が321億ドルと言う訳である。しかし最終的な費用がどうなるかはBP自身にも予測がつかない。

 BPはExxonMobil、Shellと並びスーパーメジャーと称される世界の三大石油会社の一つである。3社の売上高及び利益はこれまで常に世界のトップクラスを占め、近年石油価格が高水準に推移する中でその地位は不動のものであった。

 昨年度の3社の業績とその中におけるBPの地位を比較すると 、売上高はExxonMobil 3,106億ドル、Shell 2,782億ドル、BP 2,393億ドルと、3社の中ではBPが最も小さい。しかしBPの利益はExxonMobilの193億ドルに次いで2番目に多い166億ドルでありShellの125億ドルを上回っている。売上高利益率で見た場合、BP 6.9%、ExxonMobil 6.2%、Shell 4.5%となりBPの利益率が最も高い。

 生産量ではBPの石油生産量は2,535千B/Dであるが、これはExxonMobil(2,387千B/D)及びShell(1,678千B/D)を上回っている。3社の天然ガス生産量に差は無いので、結局石油と天然ガスを合わせた生産量ではBPがトップであった。

 また2006年から2009年までの4年間の売上高利益率の推移をみるとBPは8.3%(06年)→7.3%(07年)→5.9%(08年)→6.9%(09年)である。これに対してExxonMobilは10.5%→10.0%→9.5%→6.2%、Shellは8.0%→8.8%→5.7%→4.5%と利益率の低下傾向が見られ、特にShellは落ち込みが激しい。3社の中ではBPが最も安定していることがわかる。

 さらに同じ4年間の石油と天然ガスの合計生産量を見ると、BPの場合、2006年の生産量393万B/D(石油換算、以下同じ)が2007年は382万B/D、2008年384万B/D、2009年400万B/Dとほぼ一定の水準で推移している。一方ExxonMobilは2006年の424万B/D以降漸減して2009年には393万B/Dとなりトップの座をBPに明け渡している。Shellも4年間で生産量が32万B/D減少するなど両社とも生産量の減退に歯止めがかからない状況である。生産の面でもBPの安定度が光っている。
 
(続く)

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