熊本市議会議員なすまどか~まどかレポート

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熊本市議会議員 那須円(なす まどか)の活動日記

芸能人の親の生活保護に関する報道について

2012年05月29日 | 県の政治や国の政治

有名芸能人の母親が生活保護を利用していたとして、先週末、息子である芸能人の謝罪会見が大々的に報道されました。

ある国会議員は今回のケースについて「不正受給」との言葉を使い、つるしあげの一翼を担いました。

今回の事例は数ヶ月前から一部週刊誌などで報道されていましたが、福祉事務所は「不正受給」と認定しませんでした。
それは当然で、「法律上、親族による扶養は保護利用の要件ではない」からです。

また、今回のケースは「高額所得者による親の扶養の在り方」が問われたわけですが、その場合でも、扶養の程度・内容は福祉事務所との話し合いによって決められることが大原則で、もし著しく少ない場合は、福祉事務所が家庭裁判所に申し立てを行うという手順をとればいいわけです。

わざわざ一私人を全国メディアで取り上げて、見せしめのように報道する必要性は全くありません。

特殊なケースをとらえて、私人をつるしあげ、生活保護制度そのものに問題があるかのような報道や国会議員の言動に、違和感を覚えますし怒りすら感じます。

騒ぎ立てた国会議員の方々は、生活保護水準の10%の切り下げ、医療扶助の抑制など保護抑制政策をすすめる「生活保護に関するプロジェクトチーム」のメンバーです。

計ったかのように、謝罪記者会見の翌日の新聞1面には…

「生活保護引き下げ検討」の文字が紙面を飾ります。

これほどのあからさまな世論誘導に呆れてしまいましたが、逆に多くの国民が流されてしまう怖さも感じました。

たしかに、保護受給世帯は増加していますし、それにともない保護費も増えています。


しかし、こうした原因は生活保護の「不正受給」にあるのではなく、非正規労働の広がりなどによる貧困拡大に改善策が講じられてこなかったこと低年金制度が放置されてきたことにあります

つまり、処方箋は「保護の切り下げ」ではなく、保護を受けなくて済むように「貧困対策」をすすめることです

あるテレビ番組では、「正直者がバカを見る?!」との見出しで、保護受給者がまるで不正直者」であるかのようにこの問題を取り上げました。

真面目に生き、保護を受けている方はこの報道を見てどう思うのか?


私も生活保護の申請などに何度も立ち会ってきましたが、全ての方が真面目に人生を考え、歯を食いしばって生活をされてます。それでも、最低限度の生活を送ることができず、保護を受給されているというのが現実です。

申請時には、扶養義務のある親族に扶養意思の確認を行います。「親族に保護を受けることを知られたくない」「親族も生活が大変なのに迷惑をかけてしまうのではないか…」などの思いで、保護申請をためらう方もいらっしゃいます。

生活保護を「うしろめたい制度」であるかのような間違った認識を政治や社会が作り上げてきた結果、日本では、生活保護を受ける資格のある生活水準の人のうち、実際に保護を受給している人の割合は1割~2割となっています。

ちなみに、ヨーロッパ諸国では7~9割

↓詳しくはこちらをクリックください。


必要な人が誰でも保護を受けることができる制度へと改善を図っていく必要があります。

今回の一連の報道によって、政府・与党や自民党の思惑に流されることなく、冷静に生活保護制度や生存権を見つめなおす必要性を改めて感じました。