【2016総括シリーズ その参】
16年度の総括、第3弾は小説・ノンフィクション・ルポルタージュ・漫画などの書物10傑。
今年はとくに偏りが見られ、それで「低俗がどうした」というタイトルを冠してみた。
「ハダカ」モノが多くなったのでね、
先週の話か、TBSのバラエティがBPOの審議入りの対象になったという報道があったが、こういう番組に対する否定派と肯定派のやりあいって、たぶん、これから先もずっとつづいていくのだろうな。
観ていないからなんともいえないが、否定派の主張は「ハダカで笑いを取るという発想が低俗」ということらしい。
いっていることは分かるが、これがゲージツと呼ばれるものの世界になると、途端に「ハダカは、ありがたい」みたいな傾向が出てくるのが、はっきりいって分からん。
加納典明は、「エレクトしなきゃ、ハダカの意味なんて、ない」といった。
ちがうかもしれんが、ニュアンス的にはこんな内容だった。
自分は「こっち派」であり、だから、ハダカはハダカ。
笑いやゲージツに関係なく、人間のありのままを映す最高の「さらしもの」だと思っていますよ。
以下が、今年の書物10傑。
あくまでも「自分が今年読んだもの」であるからして、今年発表されたものとはかぎりません。
(1)ルポルタージュ『性風俗のいびつな現場』(坂爪真吾・著、ちくま新書)
風俗産業を「福祉」という視点で捉え直した労作。
もっと多くのひとに手に取ってもらうため、タイトルに「福祉」を入れたほうがよかったかもしれないが。
鴬谷に「風俗の墓場」と称される店『デッドボール』があり、そのことについても書かれているということで、自分は手に取った・・・が、ここに勤務する女子たちの自虐性に感動するとともに、雇う側の覚悟の大きさも知ることが出来て、これは多くのひとに読んでもらいたいな、、、と。
(2)ルポルタージュ『震災風俗嬢』(小野一光・著、太田出版)
3.11発生の1週間後に、営業を再開させた風俗店の狙いとは。
そこで働く彼女たち、そこにやってくる男たちの濃密なドラマ。
風俗嬢「どうしていいかわからない。人肌に触れないと正気でいられない―って話してました」
(3)小説『沈黙』(遠藤周作・著、新潮社)
一体、何度読んでいるのかって話だが。
公開が迫った映画版の予習のために、再び頁をめくり、またまた感動してしまった。
(4)小説『ジニのパズル』(崔実・著、講談社)
群像新人文学賞受賞作。
98年、北朝鮮からテポドンが発射され・・・。
日本で育ち、中学時代は朝鮮学校に通うも、生徒のなかでひとりだけ朝鮮語を話せなかったジニ。
彼女の視点で描かれる、日本と朝鮮の物語。
映画でもそうだが、自分は新人の出現に最も注目しているので、発表された直後に読んでみた。
(5)漫画『ちはやふる』(末次由紀・著、講談社)
映画版公開前にと、既刊を一気に。
いやぁ、ふつうにハマってしまった。
(6)ノンフィクション『全裸監督 村西とおる伝』(本橋信宏・著、太田出版…トップ画像)
80~90年代のAVを牽引した、村西とおるの熱い・厚い半生。
「人生、死んでしまいたいときには下を見ろ! おれがいる。」
コピーどおりの内容で抱腹絶倒、ロジャー・コーマンの自伝に通ずる面白さがあって大満足。
(7)小説『海の見える理髪店』(荻原浩・著、集英社)
直木賞受賞作。
同時期の芥川賞受賞作『コンビニ人間』に比べて地味だが、個人的に、連作短編のような構造が大好きなので。
(8)漫画『甘々と稲妻』(雨隠ギド・著、講談社)
有吉ちゃんのラジオで取り上げられていたので、読んでみた。
絵のタッチは好みではないが、父子家庭のパパが頑張って料理を覚えていく過程に共感を覚える。
(9)小説『我々の恋愛』(いとうせいこう著、講談社)
多才のひと・いとうせいこうが紡ぐ、ときと場所を越境する恋愛小説。
95年と2001年。
東京と群馬、トルコと兵庫。
電話線とネット回線。
あぁせいこうさんは、近現代史を俯瞰しようとしているんだな、、、そう思った。
(10)小説『大きな鳥にさらわれないよう』(川上弘美・著、講談社)
久し振りに川上女史の著作を読んだが、その変わらぬタッチに安心しつつ、視野が宇宙規模へと進化しているところに驚いた。
SFというより、神話を目指した、スケールの大きい、それでいて繊細な描写が光る物語。
…………………………………………
明日のコラムは・・・
『かほり』
16年度の総括、第3弾は小説・ノンフィクション・ルポルタージュ・漫画などの書物10傑。
今年はとくに偏りが見られ、それで「低俗がどうした」というタイトルを冠してみた。
「ハダカ」モノが多くなったのでね、
先週の話か、TBSのバラエティがBPOの審議入りの対象になったという報道があったが、こういう番組に対する否定派と肯定派のやりあいって、たぶん、これから先もずっとつづいていくのだろうな。
観ていないからなんともいえないが、否定派の主張は「ハダカで笑いを取るという発想が低俗」ということらしい。
いっていることは分かるが、これがゲージツと呼ばれるものの世界になると、途端に「ハダカは、ありがたい」みたいな傾向が出てくるのが、はっきりいって分からん。
加納典明は、「エレクトしなきゃ、ハダカの意味なんて、ない」といった。
ちがうかもしれんが、ニュアンス的にはこんな内容だった。
自分は「こっち派」であり、だから、ハダカはハダカ。
笑いやゲージツに関係なく、人間のありのままを映す最高の「さらしもの」だと思っていますよ。
以下が、今年の書物10傑。
あくまでも「自分が今年読んだもの」であるからして、今年発表されたものとはかぎりません。
(1)ルポルタージュ『性風俗のいびつな現場』(坂爪真吾・著、ちくま新書)
風俗産業を「福祉」という視点で捉え直した労作。
もっと多くのひとに手に取ってもらうため、タイトルに「福祉」を入れたほうがよかったかもしれないが。
鴬谷に「風俗の墓場」と称される店『デッドボール』があり、そのことについても書かれているということで、自分は手に取った・・・が、ここに勤務する女子たちの自虐性に感動するとともに、雇う側の覚悟の大きさも知ることが出来て、これは多くのひとに読んでもらいたいな、、、と。
(2)ルポルタージュ『震災風俗嬢』(小野一光・著、太田出版)
3.11発生の1週間後に、営業を再開させた風俗店の狙いとは。
そこで働く彼女たち、そこにやってくる男たちの濃密なドラマ。
風俗嬢「どうしていいかわからない。人肌に触れないと正気でいられない―って話してました」
(3)小説『沈黙』(遠藤周作・著、新潮社)
一体、何度読んでいるのかって話だが。
公開が迫った映画版の予習のために、再び頁をめくり、またまた感動してしまった。
(4)小説『ジニのパズル』(崔実・著、講談社)
群像新人文学賞受賞作。
98年、北朝鮮からテポドンが発射され・・・。
日本で育ち、中学時代は朝鮮学校に通うも、生徒のなかでひとりだけ朝鮮語を話せなかったジニ。
彼女の視点で描かれる、日本と朝鮮の物語。
映画でもそうだが、自分は新人の出現に最も注目しているので、発表された直後に読んでみた。
(5)漫画『ちはやふる』(末次由紀・著、講談社)
映画版公開前にと、既刊を一気に。
いやぁ、ふつうにハマってしまった。
(6)ノンフィクション『全裸監督 村西とおる伝』(本橋信宏・著、太田出版…トップ画像)
80~90年代のAVを牽引した、村西とおるの熱い・厚い半生。
「人生、死んでしまいたいときには下を見ろ! おれがいる。」
コピーどおりの内容で抱腹絶倒、ロジャー・コーマンの自伝に通ずる面白さがあって大満足。
(7)小説『海の見える理髪店』(荻原浩・著、集英社)
直木賞受賞作。
同時期の芥川賞受賞作『コンビニ人間』に比べて地味だが、個人的に、連作短編のような構造が大好きなので。
(8)漫画『甘々と稲妻』(雨隠ギド・著、講談社)
有吉ちゃんのラジオで取り上げられていたので、読んでみた。
絵のタッチは好みではないが、父子家庭のパパが頑張って料理を覚えていく過程に共感を覚える。
(9)小説『我々の恋愛』(いとうせいこう著、講談社)
多才のひと・いとうせいこうが紡ぐ、ときと場所を越境する恋愛小説。
95年と2001年。
東京と群馬、トルコと兵庫。
電話線とネット回線。
あぁせいこうさんは、近現代史を俯瞰しようとしているんだな、、、そう思った。
(10)小説『大きな鳥にさらわれないよう』(川上弘美・著、講談社)
久し振りに川上女史の著作を読んだが、その変わらぬタッチに安心しつつ、視野が宇宙規模へと進化しているところに驚いた。
SFというより、神話を目指した、スケールの大きい、それでいて繊細な描写が光る物語。
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明日のコラムは・・・
『かほり』
それぞれの人生が見えるー描き方
好きな作家さんの一人です