Mike Elliott / Atrio ( 米 ASI 5003 )
シカゴ生まれのジャズ・ギタリストで、ミネアポリスのローカル・レーベルに数枚のリーダー作を残していることしかわからない、
無数の無名ミュージシャンの中の一人で、これは彼のファースト・リーダー作のようだ。
1974年リリースということで、古い4ビートに縛られることのない、この時代の空気に沿った音楽が展開されるが、ギター、ベース、ドラムス
という好ましいフォーマットで、しっかりとジャズの雰囲気が感じられる。70年代のジャズがそれまでのジャズと違う雰囲気になるのは
ひとえにドラムスの演奏の仕方が変わることに拠るところが大きい。ここでもいわゆる4ビートは登場しない。
エリオットのギターはびっくりするほど上手いというわけではないが技術的にはしっかりとしていて、聴き応えがある。
数曲のスタンダードで聴かせるヴォイシングも上手く、音楽的にも不満はない。
ガッツリとギターを堪能したい時にはうってつけのアルバムだ。高名なギタリストのアルバムにはこういう弾きまくっている演奏が
あまりないので、そういう時のカタルシスになる。ギターという楽器はボディーが小さいので元々音が小さいし、構造的にも音の表情付けが
難しいので、延々と弾いていると単調になりがち。だから巨匠たち抑制されたプレイで陰影感が出すが、若い演奏家のデビュー作らしく
そんなことはお構いなしでガンガン弾いている。このアルバムはそこが気持ち良くて、とてもいい。