廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

最後の残り火

2023年10月08日 | Jazz LP

New York Jazz Sextet / Group Therapy   ( Scepter Records SLP 526 )


トロンボーン奏者のトム・マッキントッシュがプロデューサーとなり、アート・ファーマー、ジェームス・ムーディー、トミー・フラナガンらと
1965年に録音したアルバムで、グループ名を名乗っているが単発のセッションだったようだ。
60年代前半のフリー・ジャズ・ムーヴメントの反動でかつての主力メンバーたちがこうして主流派の音楽で巻き返しを図る動きがあったが、
1度壊れてしまったものが元に戻ることはなく、下火のまま消えていくことになるが、その残り火の記録がこうして残っている。

片面4曲と楽曲が短くなり、アドリブの面積も減り、ジャズという音楽の聴かせ所が変わってきている。"Giant Steps" に女性ヴォーカルの
スキャットを被せるなんてコルトレーンが聴いたら腰を抜かしそうなアレンジをしているのも、人々が求めるところが変わってきていることへの
対応だったのだろう。全体的になまめかしい雰囲気が漂うようなアレンジが施されており、50年代のジャズとは明らかに異質な感じがあるが、
それでもファーマーのフリューゲルホーンはなめらかにスモーキーで、このメンバーの要になっている。

時代の空気感や変化に敏感に反応した音楽になっているところに現場のミュージシャンたちの感受性の良さを感じる。このメンバーらしく、
押しつけがましさのないところがいいのではないか。こういうタイプの音楽はこのあたりが最後になるのだろうけど、それでもこうして
レコードとして残されたのはよかったと思う。

ステレオとモノラルの併売になっていたが、モノラルで聴くと音楽に精気がなく、ダメな感じ。こういうところにも時代の違いを感じる。








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