Charlie Rouse / Takin' Care Of Business ( 米 Jazzland JLP 9195 )
最近のステレオプレス聴きの中で気付くのは、単に音がいいというようなことだけではなく、その音楽がとても明るい印象へと変わることだ。
「明るい」というと誤解されるかもしれないが、言い換えるとその音楽の本当の姿が突然目の前に現れてくるということだ。これはかなり
重要なことのように思える。
ラウズのこのアルバムなんかはその典型で、モノラル盤を聴いていた時はなんて暗い音楽なんだろうと思っていたが、ステレオ盤を聴くと
これはブルーノートの1500番台後半のようなブライトでブリリアントな音楽だったんだ、ということがわかって驚いてしまった。
モノラル盤で聴いていた時の印象が180度ひっくり返ってしまったのだ。
CDが商用化された時、人間の耳には聴き取れない高周波帯域をカットしたために倍音などが消されて音が悪く聴こえるようになった、と
言われるが、その説明が正しいかどうかはさておき、ステレオ録音だったものをモノラルへリミックスしてプレスされたものも、これと
似たような現象が起きている盤があるのかもしれないな、と思うようになった。その時に消失したのは音色の艶やかさや音場の奥行き感
だけではなく、その音楽にとって重要な何かまでもが削れてしまったタイトルがあったのかもしれない。
1960年の録音だし、ラウズは元々新しい感覚を持っていた人だからいち早くニュー・ジャズの要素を取り入れたのかなと思っていたが、
そうじゃなかった。これは生き生きとした王道のハードバップだったのだ。他の4人のメンバーも明るくしっかりとした演奏をしていて、
良き時代のジャズの匂いが濃厚に漂う佳作だったんだなあと目から鱗が落ちた。ステレオ盤はモノラル盤の1/3以下の値段だし、
これはわざわざ高いものを買わされる必要はまったくないと思う。モノラル盤で聴いていてこのアルバムがあまり好きになれなかったら、
それは正しい感想なんじゃないか。その場合はステレオ盤で聴き直すと、きっと印象が変わって好きになる。