Cecil Payne / "The Connection" Composed By Cecil Payne And Kenny Drew ( 米 Charlie Parker Records PLP-806 )
前衛ミュージカル "The Connection" のオリジナル・スコアを書いたのはフレディ・レッドだったが、このミュージカルが再演された際に
セシル・ペインとケニー・ドリューが新たなスコアを書きおろした。その新たな楽曲をペイン、クラーク・テリー、ベニー・グリーンの
セクステットで録音したのがこのアルバムで、私の知る限りではこれらの楽曲バージョンはこのアルバムでしか聴けない。
麻薬がテーマのこの演劇の音楽を最初に演奏したメンツが本物のジャンキーたちだったことから、そのイメージを払拭するためのリ・スコア
だったのかもしれない。
劇中音楽であることから各楽曲はメロディーラインがしっかりとしていて、音楽としての纏まりがよく、聴いていて楽しい。フレディー・レッドの
楽曲ほどキャッチーではないけれど、どの楽曲も表情が豊かで朗らかなムードに溢れている。私はこのミュージカルを観たことはないのでどういう
あらすじなのかは知らないが、これらの演奏を聴いた限りはどうやら暗い話ではないようである。
バリトン、トランペット、トロンボーンという重奏は厚みと重みがあってとても聴き応えがある。ピアノはドリューではなくデューク・ジョーダン
が担当していて、ここでも彼の音色の魅力が一役かっている。ドリューの無味無臭のピアノではこういうコクのような味わいはなかっただろう。
ペインのバリトンはキレが良く勢いがあって、素晴らしい演奏だ。他の2名の管楽器とは一枚も二枚も上手の存在感を放つ。これらのスコアは
こうやって演奏するんだぞ、とでも言うかのように、しっかりと自身の手のうちに収まった確信に基づいた演奏であることを感じる。
映画「危険な関係」の劇中音楽の正当な権利をアート・ブレイキーの手から取り戻すために、このレーベルでデューク・ジョーダンらの演奏で
アルバムを作ったように、ドリス・パーカーはこの音楽の権利を守るために先手を打ってセシル・ペインに演奏させたのだろう。ジャケットの
裏面には彼女の執筆した短文が載せられていることからも、このアルバムは彼女の肝入りだったようだ。製作者のミュージシャンへの愛と
演奏者の音楽への想いが詰まったとても良いアルバムに仕上がっている。