廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

新鮮な感覚が支える傑作

2023年08月12日 | Jazz LP

Clark Terry, Bob Brookmeyer / Tonight  ( 米 Mainstream Records S/6043 )


クラーク・テリーとボブ・ブルックマイヤーというパッとしない2人のフロントでガン無視されるアルバムだが、これは傑作。

クラーク・テリーに限らず、エリントニアン達は楽団から離れてアルバムを作るときは音楽の指向性がはっきりとせず、聴いていて唸るような
ものはほとんどないし、ブルックマイヤーもモダンになり切れず、いつも大抵はもどかしい。そんな2人の弱点を補ったのがロジャー・ケラウェイ、
ビル・クロウ、デイヴ・ベイリーの3人のバックで、非常に新鮮な感覚によるタイトな演奏がこのアルバムの大きな肝になっている。ややもすると
「伝統に回帰した」演奏へとレイドバックしがちなこの2人をグイっと現代に引き戻して、同時代の中に立たせることが出来た。グループの演奏で
バックのトリオが如何に大事かということがこれを聴くと本当によくわかる。

元々演奏家としては超一流の2人が伸びやかで輝かしい音色で吹くアドリブ・ラインはどれも冴えわたっている。フレーズの受け渡しも見事で、
一体感が半端ない。管楽器のジャズの快楽を全身で浴びることができる。

このレコードは音がとてもよく、ビル・クロウのベースの凄さがよくわかる。深いトーンで鋭く切り込んでいく様子がわかって痺れる。
デイヴ・ベイリーの音数を抑えた的確なサポート、ケラウェイのピアノの新しい感覚、すべてが手に取るようにわかる。

ハービー・ハンコックの楽曲を取り上げるなど、アルバム作りの企画としても丁寧に考えられており、きちんと正対して聴くべきアルバムだと思う。



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