廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

名声の正体

2014年05月04日 | Jazz LP (Blue Note)
いくら 75周年再発盤のリマスターがいいといっても、どの盤もそうだということではありません。
50年代のモノラル期に録音されたものは、やっぱりどれだけ磨いてみても限界があります。 私がこのシリーズの音がいいと褒めるのは、
原盤の音を凌いだという意味で言っているのでは当然なく、原盤とは全く別の魅力を引き出したという意味で言っているわけですが、
1500番台のモノラル音源はどう手を加えてみてもやっぱり限界があるようです。



Clifford Brown / Memorial Album ( Blue Note 1526 )


これもこのシリーズの中で出されましたが、やはりそれまでのものよりちょっと音がクッキリしたかな、という程度で終わっています。
きっと、ブレイキーのやつとかも一緒なんでしょう。

そもそも、なぜこの盤が人気投票の上位に入ってきているのかも私にはよくわかりません。 これは当時の若い演奏家たちの生々しい姿を捉えている
という意味では貴重な録音ですが、正直、それ以上の価値があるとは思えない演奏です。 まだまだ編曲重視のフォーマットの中で各演奏家に
与えられたスペースは短くてその演奏を十分に堪能することもできず、不満の残る内容です。 ブラウニーはそれまでのトランぺッターと
比較すれば確かに全く違うタイプであることはよくわかりますが、まだまだ青くて硬い。 この中で印象に残るのは、エルモ・ホープがブルーノートの
中では一番いい演奏をしているということと、53年という早い時期にもかかわらずフィリー・ジョーが既に圧倒されるドラムミングを見せることくらい。

ブラウニーは、その名声の割には満足できるレコードが1つもない、というのが正直なところです。 エマーシーに残された比較的多いレコードも、
はっきり言って、どれもつまらない。 そういうことを言いにくい雰囲気はありますが、でも、つまらないんだからしかたがない。 

この人は偉大な演奏家だったとは思いますが、本当に優れたミュージシャンだったんだろうか、と疑問に思うことがあります。 
人柄も良くて多くの人に愛されたそうですが、もし、あの雨の夜に車に乗っていなくて、長生きしていたとして、モードやフリーや電化の時代に
音楽家として生き残ることが果たしてできたのだろうか、と思ってしまいます。




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4 コメント

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???? (starraney)
2014-05-06 21:16:57
クリフォード・ブラウンて音はきれいだし、演奏もいいし、だけど何枚も聴きたくなるトランペッターじゃないですね。
また、たとえばジャズ雑誌がほめるロン・カーターも、マイルスの東京、ベルリンのライブでのバックは迫力あるとしても、他の演奏ではボワッとしたつまらないベースの音ばかり。
こういうのをつまらない、というとジャズがわかってない、といわれるんでしょうね。
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こんばんは。 (ルネ)
2014-05-06 21:46:35
starraneyさん、こんばんは。

クリフォードは抜群に上手い人だと思います。 腕は別格です。 歌心もパーカー並みに素晴らしいと思います。
でも、アルバムとして作品を作るとなると、その音楽はなぜか魅力が無くなるんです。
ロン・カーターも、まったくご指摘の通りで、魅力のない演奏家です。

私は思うんですが、つまらないものはつまらない、とやっぱり言うべきです。 このブログは、本音でいきたいですね。
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Unknown (森彦)
2019-05-17 22:23:24
八月社でこのレコードを「買いは買いなんですが…いかがです?」と勧められたことがあるのですが、たぶん聴かないだろうなぁ…と思い、見送りました。正解だったと思います。
クリフォード・ブラウンのレコードはどれも魅力を感じません。なんというか…“毒”がない…んですよね。
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Unknown (ルネ)
2019-05-17 23:57:47
そうですね、毒がありません。 クリーンな人柄が音楽にそのまま反映されてるんだろう、と思います。
まだまだ若かったわけなので、これから、という感じだったのかもしれません。 演奏は最高にいいと思いますけど。
音楽の方はもっと熟すのを待たなければいけない感じでした。
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