ハードバップばかり聴いていると、時々胸焼けがして気持ち悪くなることがあります。 そういう時は、フリー・ジャズを処方します。
そして数日間フリーばかり聴いていると、不思議とだんだんすっきりしてくる。
Don Cherry / Togetherness ( Cloud 9 Music FC CD 110 )
このたび、めでたく初CD化されました。 原盤を聴いたことはないのでうまくCD化できてるのかどうかわかりませんが、全体的にザラッとした
音場感の中でガトーのテナーの音が生々しく鳴っています。 vibの音が弱くて、これがもう少しクリアだったらよかったかなあ、と思います。
一般的なフリー・ジャズのイメージと比べるとこれはフリー度合いは低く、かなり尖ったジャズ、という感じです。 それなりにテーマ部があって、
ユニゾンでそれが導入されているし、哀感たっぷりな展開部のメロディーもあります。 ドン・チェリーという人は、やはりこういうところが
オーネット・コールマンの影響を受けているんだなあ、と思います。 結構好きですね、これは。 音の鮮度がもう少し高ければ言うことなしです。
フリーといっても実際は内容の振れ幅はかなり大きくて、スケールが無いというだけでそれ以外は普通のジャズのフォーマットを敷いている演奏は
たくさんあるわけです。 私はフリー自体は好きでも嫌いでもなくて、特に好んで音盤を買うことはしませんが、それはフリー・ジャズが
わからないからではありません。 どちらかといえば、私にはフリーをやらざるを得なくなったアーティスト達の気持ちが痛いほどよくわかります。
だから、心情的には、フリー系の人たちはメインストリーム系の人たちよりもずっと健全なんじゃないかなあ、と思います。
ただ、彼らのやったのは、音楽とは言えません。 ここにフリー・ジャズの根源的な矛盾と悲劇があるわけです。 音楽を深く愛し過ぎたが故に、
音楽が演奏できなくってしまった人。 それが、フリー・ジャズ・ミュージシャンです。
Ornette Coleman / At The "Golden Circle" Stockholm Vol.1 ( Universal Music TYCJ-81037 )
毎度のことで恐縮ですが、この75周年記念の再発盤は本当に音がいいです。 この盤は今までベースの音がちゃんと聴こえなくて、それが
長い間の課題だったわけですが、このリマスターで初めてクッキリと分離して粒立ちのいい音で聴こえるようになって、ビックリ。
ただの通奏低音でしかなかったベースの音が、"Faces And Places" でこんなに速弾きしてたのか、とわかって腰を抜かしてしまいます。
アルトの音もシンバルの音も、これまでの音盤の音とは全然違います。 お願いですから、Vol.2も出してくれませんか?
RVGリマスターって、あれ嫌いなんです。
現時点で、これをフリー・ジャズという人はもういないだろうと思います。 少なくとも私の耳には、ロリンズのヴィレッジ・ヴァンガード盤と
まったく同じように聴こえます。 ただ単に、スタンダードをやってない、というだけです。
私はドルフィーがあまり好きではなくて、オーネットのほうが遥かに好きです。 オーネットのほうがずっと正統派だ、という気がします。
オーネットがどうして天才かと言えば、それは初めてフリーのアルバムを出したからではなくて、フリーとメインストリームの間にある
普通の人には見えない波打ち際を上手く歩くことができた唯一の人だからだ、と思うのです。
俯瞰的に眺めた場合、ジャズはフリーを経験してよかったと思います。 クラシックはアルバン・ベルグやシェーンベルクらが興した
無調音階をうまく消化できずに時間が止まってしまいました。 その後、ジェラルド・フィンジのような優れた作曲家は出ましたが、
それが新しい主流となることはなく、個人的な才能で終わってしまっている。 ロックはパンクやアンビエントを経験してもそれを
消化するよりはを再度ブラックミュージックを取り込むことを選びました。 でも、ジャズはフリーを上手く消化できたと思います。
現在の演奏の至る所にその影を見ることができます。
でも、逆に言えば、フリー・ジャズはそれほどフリーには成り切れなかった、ということだったのかもしれません。
そして数日間フリーばかり聴いていると、不思議とだんだんすっきりしてくる。
Don Cherry / Togetherness ( Cloud 9 Music FC CD 110 )
このたび、めでたく初CD化されました。 原盤を聴いたことはないのでうまくCD化できてるのかどうかわかりませんが、全体的にザラッとした
音場感の中でガトーのテナーの音が生々しく鳴っています。 vibの音が弱くて、これがもう少しクリアだったらよかったかなあ、と思います。
一般的なフリー・ジャズのイメージと比べるとこれはフリー度合いは低く、かなり尖ったジャズ、という感じです。 それなりにテーマ部があって、
ユニゾンでそれが導入されているし、哀感たっぷりな展開部のメロディーもあります。 ドン・チェリーという人は、やはりこういうところが
オーネット・コールマンの影響を受けているんだなあ、と思います。 結構好きですね、これは。 音の鮮度がもう少し高ければ言うことなしです。
フリーといっても実際は内容の振れ幅はかなり大きくて、スケールが無いというだけでそれ以外は普通のジャズのフォーマットを敷いている演奏は
たくさんあるわけです。 私はフリー自体は好きでも嫌いでもなくて、特に好んで音盤を買うことはしませんが、それはフリー・ジャズが
わからないからではありません。 どちらかといえば、私にはフリーをやらざるを得なくなったアーティスト達の気持ちが痛いほどよくわかります。
だから、心情的には、フリー系の人たちはメインストリーム系の人たちよりもずっと健全なんじゃないかなあ、と思います。
ただ、彼らのやったのは、音楽とは言えません。 ここにフリー・ジャズの根源的な矛盾と悲劇があるわけです。 音楽を深く愛し過ぎたが故に、
音楽が演奏できなくってしまった人。 それが、フリー・ジャズ・ミュージシャンです。
Ornette Coleman / At The "Golden Circle" Stockholm Vol.1 ( Universal Music TYCJ-81037 )
毎度のことで恐縮ですが、この75周年記念の再発盤は本当に音がいいです。 この盤は今までベースの音がちゃんと聴こえなくて、それが
長い間の課題だったわけですが、このリマスターで初めてクッキリと分離して粒立ちのいい音で聴こえるようになって、ビックリ。
ただの通奏低音でしかなかったベースの音が、"Faces And Places" でこんなに速弾きしてたのか、とわかって腰を抜かしてしまいます。
アルトの音もシンバルの音も、これまでの音盤の音とは全然違います。 お願いですから、Vol.2も出してくれませんか?
RVGリマスターって、あれ嫌いなんです。
現時点で、これをフリー・ジャズという人はもういないだろうと思います。 少なくとも私の耳には、ロリンズのヴィレッジ・ヴァンガード盤と
まったく同じように聴こえます。 ただ単に、スタンダードをやってない、というだけです。
私はドルフィーがあまり好きではなくて、オーネットのほうが遥かに好きです。 オーネットのほうがずっと正統派だ、という気がします。
オーネットがどうして天才かと言えば、それは初めてフリーのアルバムを出したからではなくて、フリーとメインストリームの間にある
普通の人には見えない波打ち際を上手く歩くことができた唯一の人だからだ、と思うのです。
俯瞰的に眺めた場合、ジャズはフリーを経験してよかったと思います。 クラシックはアルバン・ベルグやシェーンベルクらが興した
無調音階をうまく消化できずに時間が止まってしまいました。 その後、ジェラルド・フィンジのような優れた作曲家は出ましたが、
それが新しい主流となることはなく、個人的な才能で終わってしまっている。 ロックはパンクやアンビエントを経験してもそれを
消化するよりはを再度ブラックミュージックを取り込むことを選びました。 でも、ジャズはフリーを上手く消化できたと思います。
現在の演奏の至る所にその影を見ることができます。
でも、逆に言えば、フリー・ジャズはそれほどフリーには成り切れなかった、ということだったのかもしれません。
なにより、ほとんどのフリー・ジャズ・ミュージシャンは苦しそう…に感じるのは、私だけですね。
とかそういうことをがんがさせられるんですね。