廃盤蒐集をやめるための甘美な方法

一度やめると、その後は楽になります。

間を聴くピアノ・トリオ

2021年01月02日 | Jazz LP

Pete Malinverni / Don't Be Shy  ( 米 Sea Breeze Jazz SB-2037 )


昨年末の猟盤は不調を極め、12月に入って拾えたのは3枚だけ。一体、いつになったら回復するのやら。
それでも内容には満足しているので、楽しんで聴いている。これはその中の1枚。
初めて聴く人だが、あまりの良さに久し振りに衝撃を受けた。まだまだ優れた演奏はあるものだ。

ゆったりとしたテンポの楽曲がメインで構成されていて、非常に間の多い演奏が心地よい。こんなに優雅なスイング感に浸るのは
長らくなかったような気がする。写真を観る限りでは若い人のようだが、落ち着き払った弾きっぷりが素晴らしい。
若い演奏家には大抵の場合、どこかに野心があるものだが、この人はそういうものはどこかに置いてきたかのようだ。

全編に歌心が溢れていて、紡ぎ出される優しいフレーズが終始語りかけてくる。やっぱりそれがどんな音楽であっても、
歌を忘れてはいけないのだ、ということを想い出させてくれる。最小限の音数で、最大限の効果を生み出している。
ピアノが表面的な綺麗さに流れず、適度の粘りが効いており、過去の名盤たちに共通するある種の香りが濃厚だ。

そして、バックのメル・ルイスのブラシ・ワークが最高だ。まるでデビーのモチアンのようなブラシさばきで音楽をゆったりと揺らし、
全体を上品な質感に仕上げている。最後に置かれた "Who Cares" の何と素晴らしいことか。ピアノ・トリオの快楽の結晶のようだ。

選曲も良く、私好みの名曲がずらりと並んでいるのが嬉しい。エヴァンスやファーマーの愛奏曲を上手く消化して、
オリジナルな音楽として提示してくれている。これはまちがいなく傑作。最後まで手放すことはないだろうと思う。


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4 コメント

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ピート・マリンベルニ (azumino)
2021-01-02 12:20:05
こんにちは

本年も貴ブログを楽しみにしております。よろしくお願いします。
マリンベルニは、好きなピアニストで自分のブログで取り上げたこともあります。「Don't Be Shy」のオリジナル盤のジャケットを初めて拝見しましたが、文字の配列もよく、やはりレコードがいいなと思います。内容的には、まさにお話のとおりで、素晴らしい。

なお、拙ブログのの記事は次のとおりです。時間があればご覧ください。
https://blog.goo.ne.jp/azuminojv/e/d2eb4d7ccdb8812c5a2e2700d5e8a94e(Don't Be Shy)
https://blog.goo.ne.jp/azuminojv/e/3b5ede922ea032b9521dc3238bfc0884(Autumn
in New York)
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Unknown (ルネ)
2021-01-02 13:01:02
azumino さん
本年もよろしくお願いします。
CDにはレコード未収録曲が入っているんですね。この時の演奏は素晴らしいので、聴いてみたいです。
ジャケットもカッコいいですね。他のアルバムも聴いてみようと思います。
レコードは千円台で買えるので、見かけたら是非どうぞ。
単なる高音質には留まらない、趣き深いサウンドです。
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 (松葉蘭)
2021-01-11 18:41:44
 こんにちは。
 ピート・マリンベルニはレザボアのCD二枚しか持っておりませんが、内一枚は一時期ホントによく聴いた愛聴盤です。闊達に弾く演奏も勿論良いのですが、仰る通りに間を生かした淡々とした演奏にこそこの演奏者の良さが出ていると思います。録音がヴァンゲルダーであるのも一因かと思います。
 掲載の盤にはstar-crossed loversが入っているのですね。これを機に是非聴いてみたいと思います。
 今年も貴ブログの記事、楽しみにしております。
返信する
Unknown (ルネ)
2021-01-11 20:49:14
松葉蘭さん

こんにちは。今年もよろしくお願いします。
本文で書くのを忘れましたが、このレコード、RVG録音/カッティングです。ただ、RVGの有難みは特にありません。
この時代くらいになると、もう彼の出番ではありませんね。
レコード漁りをメインにしていると、こういう時代のアルバムはどうしても盲点になって、今までこういうのがあることを知りませんでした。
遅きに失した感がありますが、それでも聴くことができたので、今年は幸先がいいかもしれません。


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